【隅田川シーズンズ】
朝早く出発・「水郷佐原」に水の季節を求めて(その157)
その睡蓮の美しいピンクの花を横目で見ながら、どんよりとした空の下、華麗に咲き乱れる紫の菖蒲の花の優雅さを暫し堪能した。 舟から降りると、その菖蒲の花の園をスマホで撮りまくり、ふと見えた「十二橋めぐり」と書いてある看板に目を止めた。 昨年は、「潮来」で船に乗り、その一帯を楽しんだ思い出がふと蘇り、早速その船に乗り込んだ。 初老の船頭は、利根川から細い川に入り、辺りのことについて次のように説明をした。 昔は、各家に小さな細い橋が掛けられ、そこが生活道となっていたと張りのある声で、話してくれた。いつしか船のモーターは止まり、竹竿一本で船頭さんが漕ぎ始めた。 その細い川の向うから、同じような大きさの船がすれ違った。 川の両側には、団子などを売り子が、声をかけて盛んに売り込んでいた。今ではその一か所だけとなっていたが、過去には鈴なりに商店が並んでいたと懐かしそうに船頭が説明した。 コンクリートで作られている、川の壁に船がぶつかる様にして、船はすれ違い、暫らく船は走ったが、水門まで来ると、船頭が船の横の細い足場を器用に後ろから前にと「つっつ」と渡り、進路が逆に変わった。 川に架かった橋は、「面影橋」だとか「子育て橋」などと一本一本名前が付けられ、住民の思いが感じられた。 川の両サイドには、紫陽花が綺麗に咲き誇り、情緒を盛り上げてくれた。 あやめパークに帰ってくると、先ほどの川には4隻の舟が浮かび、女船頭さんが佐原音頭を吟じていた。 その頃、他の舟の上では、男衆が大きな太鼓に撥をあてていた。 そのお囃子を聞きながら、私は佐原の駅へと向かい、11時11分の千葉行きの電車で帰路に就いた。まだ肌寒く雲の厚い日であった。 戻る |