音楽プロデューサーというお仕事・海外編 (第31回)
BABYMETALの快進撃を見るにつれて、徐々に明らかになってくるのがプロデューサーKOBAMETALこと小林啓氏の存在だ。彼なくしてBABYMETALは生まれなかっただろうし、これほどビッグにはならなかっただろう(しかもまだ成長の途上にある)。
ところで音楽プロデューサーとはどんな仕事をする人なのだろうか、バンド(ユニット)の中でどのような役割を果たしているのだろうか?
(良いにつけ悪いにつけ)音楽史に残る著名なプロデューサーを通して、この前代未聞のBABYMETALというユニットをプロデュースするとはどういうことなのか、探ってみたい。...
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BABYMETALの快進撃を見るにつれて、徐々に明らかになってくるのがプロデューサーKOBAMETALこと小林啓氏の存在だ。彼なくしてBABYMETALは生まれなかっただろうし、これほどビッグにはならなかっただろう(しかもまだ成長の途上にある)。
ところで音楽プロデューサーとはどんな仕事をする人なのだろうか、バンド(ユニット)の中でどのような役割を果たしているのだろうか?
(良いにつけ悪いにつけ)音楽史に残る著名なプロデューサーを通して、この前代未聞のBABYMETALというユニットをプロデュースするとはどういうことなのか、探ってみたい。
とはいえ音楽業界関係者ならぬ身のこと、ググッたりウキッたりしながらのことなので、単なる印象雑記にとどまるとは思うが、それはまぁいつものことなのでご勘弁いただきたい。
・ジョージ・マーティン(ビートルズ)
音楽プロデューサーといえばこの人、といえるほどたぶん誰もが知ってる超ビックなプロデューサーだ。「5人目のビートルズ」ともいわれ、ビートルズの楽曲作りにも多大な影響を与えたことで知られている。
ご本人は独学で音楽を学び、海軍で兵役を過ごした後、音楽演劇学校で主にクラシック音楽やオーボエ奏者として活動。EMIに入社して出会ったビートルズに惚れ込み、周囲の反対を押し切ってレコードを発売し大ヒットにつなげる。
性格的には温厚かつ冗談好きな典型的なイギリス紳士。豊かな音楽性も持ち合わせていたことから、メンバーからの信頼も絶大だったようだ。
彼の最大の功績は、才能あふれる4人の若者の音楽を全面的に受け入れ、自由かつ奔放なアイデアを曲として形にしたこと。さらにジョージ本人のクラシックの素養を土台に、数多くの独創的な楽曲づくりに協力したことだろう。同時に編曲者や優れた演奏家を紹介するなど、プロデューサーとしての手腕も光る。ちなみに「イエスタデイ」の弦楽四重奏は、ジョージ作曲・編曲とのこと。
ポップスの決まりごとをひっくり返し、画期的な楽曲によって世界を熱狂させたビートルズという稀有のバンドに、ジョージ・マーティンは欠かせない存在だった。ある意味、音楽ブロデューサーの理想を体現した人物だったといえるだろう。
・NBC(モンキーズ)
NBCはアメリカのテレビ局であって音楽プロデューサーではない。しかしかつて多くの若者を熱狂させたモンキーズを生み出し、流行らせた張本人はNBCなので、あえてプロデューサー扱いとする。
そもそもモンキーズは、当時世界中を席巻していたビートルズに対抗するため、NBCがオーディションを行い、若さと見栄えの良さでメンバーをかき集めたバンド。あくまでテレビドラマとの連動が前提だったので、演奏もほとんどできなかったらしい。だがドラマ&テーマ音楽という今でいうメディアミックス戦略が功を奏し、デビューアルバム『恋の終列車 (The Monkees)』は、500万枚という驚異的な売上を達成したという。
日本でも何度か再放送されたので、名前くらいは知っている方も多いのではないか。テレビ局という大会社によって作られたバンドだったが、日本でも若い女の子を中心にけっこう流行った。曲はまさにポップの王道を行くキャッチーさにロックの要素を加えたもの。出来はなかなか良かった。
ところでモンキーズの活躍の裏には、実は凄腕のミュージシャンやアレンジャー、エンジニアたちがいたことが今日では明らかになっている。
彼らの名前は「レッキング・クルー」。フランク・シナトラ、エルヴィス・プレスリー、ビーチ・ボーイズ、ママス&パパスなど、さまざまアーティストたちのレコーディングに協力し、影で支えた。
モンキーズの楽曲でも、代表曲「アイ・アム・ア・ビリーバー」や「デイドリーム・ビリーバー」などのヒット曲の演奏はレッキングクルーだったという。
洋の東西を問わず、人気スターのバックには、いつもこうした無名ではあるが凄腕のミュージシャンがいるようだ。
BABYMETALも、世界第一級のバンドマンや作曲者、アレンジャーなどがバックを支えている。ただBABYMETALの場合は、そうしたプレーヤーたちの名前が公表されているので良心的といえるのかもしれない神バンドなんて、いまやBABYMETALとは別の意味で世界的に脚光を浴びているみたいだしね。
参照:「レッキング・クルー」①~モンキーズの音楽を支えていた腕利きのスタジオ・ミュージシャンたち
http://www.tapthepop.net/song/39690
・イワン・シャポヴァロフ(t.A.T.u.)
音楽プロデューサー主導でメジャーになったバンド(ユニット)になにがあるか、記憶を辿って思い出したのが「t.A.T.u.(タトゥー)だ。ロシアから来たセーラー服を纏ったレズビアンの少女デュオ、というインパクトあり過ぎのコンセプトで華々しくデビューし、世界的なヒットとなった。曲調は斬新だったし、社会性のある重いテーマを扱う歌も衝撃だったし、妖しげでインモラルな雰囲気も人々の耳目を集めた。
日本でのデビュー・アルバムとなった『t.A.T.u.』は世界で200万枚が売れたそうだし、アルバムとシングルの累計販売枚数は全世界で1500万枚! 揺るぎないビックアーティストではある。
ところでBABYMETALのセカンドアルバムは、現在のところ国内外で販売数30万枚程度。売上だけがすべてだとは思わないが、山の頂きはまだはるかに遠いようだ。
ただしt.A.T.u.が日本においてその名を馳せたのは、来日の際にしでかしたあの有名なMステドタキャン事件である。番組ではオープニングには顔を出したものの、自分たちの出番になっても顔を出さず、スタッフもタモリさんも右往左往。そのあまりの勝手ぶり、傲慢ぶりに日本中が大騒ぎになり、以後日本出禁となってしまった。
こうしたドタキャン事件は世界各国であったらしく、それもこれも「不良娘」を演出するためのプロデューサーによるやらせだったことが後から判明したが、コトすでに遅し、t.A.T.u.人気が日本で復活することはついになかった。
このユニットのプロデューサーだったのが、イワン・シャポヴァロフという人。女の子たちもオーデションで選び、また作曲家、作詞家、アレンジャーなども無名だけど才能のある若手をかき集めてヒット曲を量産したのだから、それなりに有能なプロデューサーだったのだろう。ただ、いろいろとやり過ぎて破綻した。
メンバーたちとも溝ができて、結局日本出禁騒動からしばらくして解雇されたとのこと。その後いろいろあったようだが、ネット上の噂では最終的には精神病院に入ったらしい。ある意味、天才と○○○○は紙一重、という人だったのかもしれない。
ただt.A.T.u.の女の子たちは離れたりくっついたりしながら、とくロシア内では高い人気を維持していたようで、なんとソチオリンビックのプレコンサートにも出ていた。
参照:t.A.T.u. Not Gonna Get Us (Live Performance) Sochi Olympics 2014
https://youtu.be/-jxO22-dakg
いくら才能と野心にあふれたプロデューサーであっても、いやだからこそ、独断専横に走ると、とんでもなく危険な事態を招くことを、このイワン・シャポヴァロフさんは自ら語っているといえそうだ。
※ ※ ※
BABYMETALは「メタルダンスユニット」と呼ばれているが、その実態は大がかりなプロジェクトチームだ。大手芸能事務所が才能あふれた女の子たちを独自の育成枠で徹底的に鍛え、合わせて優秀な作曲家、作詞家、編曲者、演奏家、振付師やボイストレーナー、舞台演出家を集め、前人未到のステージングを実現している。そもそもバンドにボイストレーナーが付いているなんて、聞いたことがない。
BABYMETALに対して「自分で曲を創っていない」「演奏していない」と批判する人たちが相変わらずいるようだが、そもそもの発想が違うのだから仕方がない。
KOBAプロデューサーも以前「BABYMETALはミュージカルのようなもの」といっていたし、ミュージカルであれば、歌い手や演奏者、演出家が別々なのは当たり前のこと。
BABYMETALがめざしているのは、まさにメタルベースの「総合エンターテイメント」なのだろう。
世界一流のスタッフを集めて繰り広げる総合エンターテイメント、それは例えるならシルク・ドゥ・ソレイユに比するといえるかもしれない。オリンピック金メダル級のパフォーマーを集め、徹底的に訓練を重ね、奇跡的なパフォーマンスを提示する。ステージの舞台装置や照明演出は素晴らしく、音楽もすべて生演奏。
Amuseが、そしてKOBAプロデューサーがめざしているのも、そんな世界第一級のパフォーマンスなのだ。まさに全社一丸、いや社外のメンバーも多いから、オールジャパン体制で世界に挑むBABYMETAL。これは応援しないわけにはいかないよね。
一人のプロデューサーの職域を超えて、BABYMETALには名前が明らかになっていないさまざまな天才や献身的なサブマネージャーやスタッフたちが関わっていることは想像にかたくない。今後ともさまざまな分野の異能の人材を集め、BABYMETALさらなる高みを見せてくれることだろう。
さて次回は、日本人の音楽プロデューサーに関して、またいろいろと勝手を綴っていきたい。
(つづく)
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中元すず香は日巫女なのか? (第30回)
ご無沙汰してしまいました。
本職が忙しかった、ということもあるのだけれど、いやはや、ここ1ヶ月のBABYMETAL関連情報の洪水は凄まじかった。
2ndアルバム発表に前後して、いくつもの雑誌で超増ページの特集やらインタビューやらが組まれ、アメリカツアーがはじまれば、ほぼリアルタイムでファンカム映像がアップされる。さらに各国のラジオやウェブメディアではインタビューが動画でアップされ、そんなこんなであっという間の1ヶ月強。...
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ご無沙汰してしまいました。
本職が忙しかった、ということもあるのだけれど、いやはや、ここ1ヶ月のBABYMETAL関連情報の洪水は凄まじかった。
2ndアルバム発表に前後して、いくつもの雑誌で超増ページの特集やらインタビューやらが組まれ、アメリカツアーがはじまれば、ほぼリアルタイムでファンカム映像がアップされる。さらに各国のラジオやウェブメディアではインタビューが動画でアップされ、そんなこんなであっという間の1ヶ月強。
実に幸せな日々でした。雑誌をいろいろ買ったので、おかげで財布も軽い(泣)。
6月からは、また怒涛のEUツアーが始まるので、ようやっとの1回休みの今日このごろ。
そこで、ここ最近読み漁った記事などから、印象深かったものをいくつか紹介したい。
ここ数十年、音楽雑誌にはまったく縁遠い日々か続いていたので、「ギターの専門誌を買ったのは高校生のとき以来だなぁ」とか、「ミュージック・マガジンってまだあったの? さすがにもう中村とうようさんじゃないのよね」、とか「渋谷陽一ってまだ生きてたんだ」などなど、いろいろと感慨にひたることは多かったのだが、なかでも「これは面白い切り口だなぁ」と感心したのが「別冊カドカワ Direct04 徹底特集HR/HM考察」に掲載された脳科学者・中野信子さんの「ベビメタ私論」だった。
脳科学的にみたクラッシック音楽とヘビーメタルの近似性や、両者のファンに共通する心的傾向などの指摘がなかなか面白かった。そしてなぜ欧米でBABYMETALが受けているかという問いに対する答えが秀抜だった。少し引用させていただく。
「東洋から来たミステリアスなメタルで、しかも『男性じゃなくて若い女性』。いわば異教徒みたいな感覚。(中略)アンチキリストだとわかりやすく怖いけど、正体がわかってしまう。でも異教徒だとそもそも得体が知れない。メタルの世界観が好きな人にとっては、得体のしれない恐怖感とかわいい見た目のギャップもフックになる」
「西洋のキリスト教文化圏に、突如舞い降りた謎の巫女たち。その異質性が魅力(中略)自分たちの理論や世界を統べる理屈に合わないものに対する恐怖感を刺激するものとしてのBABYMETALというイメージはあると思います」
たしかにHR/HMには、反逆、反権力、などと並ぶ欠かせぬ要素として、「反キリスト教」がある。
しかしもともとの発端はBLACK SABBATHの「ホラー映画が受けてるみたいだからウチラも」というなんとも軽い発想だったらしいから、とりあえずの商業的ギミックだったかもしれない。しかしHR/HMが「反キリスト教」を気取ることで、世間の退屈な常識や押し付けがましい価値観に反旗を翻すフックとなり、HR/HMファンのメンタリティを鷲掴みしたとはいえるだろう。
絶対真の神が支配する、この退屈でうっとうしい日常をぶち壊す、それがHR/HM。
まあ、それはそうかもしれない。ただ日本人にはピンと来ない。「退屈でうっとうしい日常」はたしかにあるけど、それは少なくとも日本においてはキリスト様のせいではない。
BABYMETALも、デビュー当初、ステージ上に建立されたマリア像をぶっ倒して「反キリスト教」を演出したことがあった。でもBABYMETALはもともと日本人だし、本人たちもスタッフも観客も、それほど大仰に捉えていたとは思えない。むしろHR/HMの様式美へのオマージュとして、あんな演出をしたのだろう。
しかも最近ではそんな「反キリスト教的」な演出も、すっかり影を潜めている。
記事の指摘にもあるように、BABYMETALが海外で受けるのは、「反キリスト教的」ではなく、多神教である日本からやってきた、なんともキリスト教色のない得体のしれなさ、故ではないか。
とはいえ、宗教的ではない、とはいえない。むしろありすぎではないか、ともいえる。
BABYMETALのライブは、観客たちの熱狂ぶりがケタ違いだ。
昨年末の横アリのライブで、はじめてBABYMETALを取材した外国人記者が「これはカルトか?」とつぶやいていたそうだが、初見の人ならその思うのも理解できる。
普通でもHR/HMのライブで客は熱狂と暴虐?の限りを尽くすけれど、BABYMETALのライブはのっけから沸点となり、そのままの熱量で最終まで怒涛のごとく雪崩れ込む。
しかもそのライブは、熱狂からに狂躁へと移行し、最終的には浄化、救済にいたる。これを宗教的といわずしてなんといおう。
そもそも音楽は、祝祭ととともに生まれた。人々は打ち鳴らされるリズム、厳粛・荘厳な祝詞、天上からのお告げを代唱する巫女の声や歌により神の降臨を見た。
その象徴といえるのが、SU-METALの歌唱力だ。
その圧倒的な歌唱力、人々の心を捉えて離さない甘美な歌声は、巫女と呼んでも疑問はない。まさに
「絶対神を崇める一神教の世界に舞い降りた、日出る国より来たれし多神教世界の巫女」
それがSU-METALなのだ。
SU-METALはたしかに歌が上手。いろいろと分析的に見ても、とてつもなく上手い。でもそれだけでは、世界中の人々の心をこれ程までに捉えてしまうことに、説明がつかない。理由が見つからない。そうつねづね思っていたのだけれど、あるサイトで秀抜なご意見を拝読した。
ジャズピアニストでありガチメタラーでとしても知られる西山瞳さんのブログより引用させていただく。
http://blog.livedoor.jp/hitomipf79/archives/52369512.html
「(SU-METALの歌い方で)特徴的に感じるのは、とにかくまっすぐに歌ってるんですよね、ライブでも。言葉の入口を少ししゃくったり、色気出してフェイクしたりビブラートかけたり、そういう事が90分一切なかった気がします。言葉尻、音の終わるところまで、終始まっすぐなんですわ。(中略)
普通、人間なのでそういうわけにいかないと思うんですよ。色気出したいし、自分のこと表現したいって思うし。
でも、まっすぐを貫徹していると、自分の感情よりも優先すべき別の何かを貫き通したい、自分じゃないどこかに捧げている意志みたいなものを感じるんですね。音楽やってなくて分析的に聴いていない人も、こういう細部の積み重ねが全体の印象に大きく影響を与えるので、絶対じわじわ知らぬ間に効果与えていると思います」
長くなってしまったが、要点は「自分じゃないどこかに捧げている意志みたいなものを感じる」の一言。そうか、やはりそうだったのか。と合点がいったのである。
一言でいってしまえば、SU-METALの声は、神がかりなのだ。
一点の邪気もてらいもなく、ただただ歌の世界を全身全霊で伝えようとするスタンス。それは歌い手というより、歌の化身というにふさわしい。
SU-METALのとてつもなく説得力のある声、人の心を揺るがす声、
さらにいうなら、時代にも影響力を与えてしまうかもしれない声、その存在感。
その声は、戦に向かう男たちを鼓舞する。
その声は、世界を笑顔と平和で満たす。
その姿はまさに神の化身。
しばしばジャンヌ・ダルクにも例えられるその圧倒的なオーラは、巫女ゆえの佇まい、ともいえるのではないか。
そう捉えてみると、BABYMETALの布陣にも納得がいく。
中央に、巫女たるSU-METAL。両脇には狛犬としてYUIMETAL、MOAMETAL。
そして後ろに控えているのは、いかつくも頼もしい限りの軍神たち。
しかもSU-METALは今、巫女として、いや日巫女として、覚醒の真っ最中である。
以下、『ROCKIN´ON JAPAN』6月号、SU-METALへのインタビューから引用させていただく。
「心の中にモンスターがいる感じっていうか。そのモンスターを解放してあげたらどうなるんだろう?っていうちょっとした疑問があって。だからピョッて手放してみたら自由に飛び立っていったんです。そこからライヴの中でしかその子は出てこないけど、その中で自然に暴れ回ってたらどんどん大きくなっていって。それが気づいたらすごく大切な存在になっていてみたいな感じなのかな」
そうか、ついにその域にまで到達したか、すうちゃん。
SU-METALが歌い上げる強い歌、強い言葉は、まさにモンスターならぬ神の声。
今後、内なる神がどのような進化を遂げていくのか、
全解放されたモンスターならぬ神の声が本格的に覚醒したら、なにが起きるのか。全世界の人々の頭上に、どんな歌が舞い降りるのか。
いささか妄想めいてしまったが、そんなことを思ってしまうのである。
SU-METALの声は、そんなことまで考えさせてしまうのである。
かつて日本で歌姫として、圧倒的な存在感を示し、日本中を沸騰させた一人の少女がいた。その姿は凛々しく、その声は多くの人々を魅了し、その歌は日本を浄化した。
そう、それはまさに菩薩の化身だった。感極まったある男が、渾身を込めて一冊の本を著した。
「山口百恵は菩薩である」平岡 正明(評論家、政治運動家)
そして近い将来、こんな書籍が登場するかもしれない。
「SU-METAL(中元すず香)は日巫女である」
そしてただいま現在のご神託こそ、『The One』なのである。
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【番外編】「聴いてみた」から~の Billboard TOP40入!(第29回)
いろいろ勝手をいったけれど、月並みだが、これほど聴き応えのあるアルバムはめったにない。
1stの時は、動画サイトやDVDなどで映像を視聴できていたので、知らない曲はなかった。ほとんど自己所有欲で購入したようなもの。
それに比べて2ndは、知らない曲ばかりだったので、期待感、ワクワク感がとても大きかった。その期待に見事に応えてくれた。
他の方のレビューには「なんじゃこれゃ?!」感や「カワイイ」要素が減ったとお嘆きの向きもあるようだ。...
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いろいろ勝手をいったけれど、月並みだが、これほど聴き応えのあるアルバムはめったにない。
1stの時は、動画サイトやDVDなどで映像を視聴できていたので、知らない曲はなかった。ほとんど自己所有欲で購入したようなもの。
それに比べて2ndは、知らない曲ばかりだったので、期待感、ワクワク感がとても大きかった。その期待に見事に応えてくれた。
他の方のレビューには「なんじゃこれゃ?!」感や「カワイイ」要素が減ったとお嘆きの向きもあるようだ。やはりデビュー時の“これまでなかったもの”の登場はとても衝撃的だった。ただ2ndの“”幅広い音楽性への挑戦”というベクトルは、より全方位へ、より深く、より遠くへ、と広がっている印象だ。ポップ感をぎりぎり失わないレベルまで攻めている。その意味で、「なんじゃこれゃ?!」感は増しているともいえるのではないか。
「カワイイ」要素に関しては、みな成長したのだから、“幼子”としての可愛らしさが減ったのは当然だろう。しかしこちらも逆に、“演者”としての可愛らしさはよりパワーアップしている、とも感じる。より自覚的になったというか。それに素の彼女たちは、やはり十代の可愛らしさがいっぱいだ(ここ保護者目線)。
楽曲に関してだが、1stも同様、BABYMETALの曲は聴くたびに新しい発見があるスルメ曲ばかり。この『METAL RESISTANCE』に関しても、聴き重ねていくうちに印象が変わり、新たな魅力が発見できると感じている。
ただひとつ注文を言わせてもらえば、このアルバム、SU-METALの声をいじりすぎているという印象を受ける。バックの演奏がゴリゴリの轟音なので、声はかわいらしくミキシングしたのかもしれないが、SU-METALの声の最大の魅力は、そのエモーショナルの表現力にある。もう少し生の声を生かした録音をして欲しかった。
ただ中元すず香は、客の数や盛り上がりによって、自分のテンションが自然と上がっていく、ある意味天才肌のSingerなので、スタジオでの再現は難しいのも知れない。それにCDにはダンスもないしね。
このため、楽曲個々の魅力は
スタジオ音源<ライブ音源<ライブ動画(DVD、BL)<ライブ
という不等式が成り立ってしまう。
つまりライブ盤も買わなくちゃ、ライブにも行かなくちゃ、ということなんだね。
はいはい、キツネ様の仰せのとおり。
追記
付属のDVD『TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2015』のライブも最高です。
※ ※ ※
3/29のフラゲ以降、アルバム『METAL RESISTANCE』はオリコン・ウィークリーチャートでいきなり第2位!(BMとしては最高位)。これは計算通り?
海外では4/1の世界同時発売以降、AmazonやiTunesなどの配信チャートで、アメリカ、イギリスなど世界各国のロックチャート、メタルチャートなどで軒並み1位にチャートイン。総合チャートでも上位に!
イギリスの公式アルバム総合チャートではウイークリーで第15位。これは英国における日本のバンドの最高位なそうな。冨田勲『月の光(Snowflakes Are Dancing)』の17位(1975年)、坂本龍一の「Merry Christmas Mr.Lawrence」の36位(1983年)などを41年ぶりに更新する快挙となった。
アメリカではCBSの「The Late Show with Stephen Colbert」に登場して「ギミチョコ」を披露。その後、番組のYouTubeチャンネルでも公開され、4日間で200万アクセスを突破、あちこちのtwitterで取り上げられバイラルが急拡散するなど、異例の事態となっている。
さらに余勢をかって、グラミーのサイトで始まった「いまキテいる音楽」アンケートで、98%というぶっちぎりの注目度を集めている(2016/04/11現在)。いよいよアメリカでも“現象”のはじまりか?
ついでにオーストラリアのアルバムチャートでも、初登場7位。日本人でランクインしたのは初めてとか。なんのプロモーションもしていないのに、これもすごい。
なんか、世界規模でとんでもないことが始まりそうだ。
と思っていたら、つ、ついに
Billboard 39位 !!!!!
坂本の九ちゃん以来、53年ぶりの TOP40入り!!!
これを快挙といわずしてなんといおう。
本当に驚いた。
実はLoudness『Lightning Strikes』(1986年)64位 や UTADA (宇多田ヒカル)『This Is the One』(2009年) 69位 は超えることができるかもしれない、と密かに期待していた。
しかしあろうことか、冨田勲『Moussorgsky: Pictures At An Exhibition』(1975年)49位 も超えて、いきなりのTOP40入り!
彼女たちはやり遂げた!
ついに世界の伝説となった!
しかも伝説はいまだ継続中というのだから…。
これ以上なにを期待したらいいのやら。
もう想像の枠を超えている…。
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【番外編】『METAL RESISTANCE』を聴いてみた(第28回)
4月1日に世界同時発売されたBABYMETALのニューアルバム『METAL RESISTANCE』。なぜか手元には3日前の3月29日にAmazonから届いた。
理由はたぶんオリコンのウィークリーチャートにのせるため。ランキングチャートは金曜日から、が世界共通なのだけれど、オリコンだけは水曜日から。というドメスティックルールなので、意図的なフライングなのだろうね。
ということで、期せずしてフラゲできたわけだが、ほぼ2週間経って、現在ただいま30巡目くらい。...
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4月1日に世界同時発売されたBABYMETALのニューアルバム『METAL RESISTANCE』。なぜか手元には3日前の3月29日にAmazonから届いた。
理由はたぶんオリコンのウィークリーチャートにのせるため。ランキングチャートは金曜日から、が世界共通なのだけれど、オリコンだけは水曜日から。というドメスティックルールなので、意図的なフライングなのだろうね。
ということで、期せずしてフラゲできたわけだが、ほぼ2週間経って、現在ただいま30巡目くらい。
この間、英国ウェンブリー・アリーナライブの大成功とか、アメリカの番組に出てバイラルが爆発しているとか、世界各国でチャートインしたとか、日本でも世界でも大騒ぎだが、そんな喧騒を横目で見ながら、まずはアルバムの感想など、語らせていただく。
最初と今では印象もだいぶ変わってきたので、そんなこんなも含めて、新しく音源化された曲を中心とした超個人的なレビュー、というか寸評。
※ちなみに購入したのは『METAL RESISTANCE(初回生産限定盤)(DVD付)』。
※意見には個人差があります。その点、あしからず。
1. Road of Resistance
いまやBABYMETALを代表するアンセムとなった曲。HR/HMの王道まっしぐら、という曲だが、以前CDを買った時におまけで付いていたし、さいたまアリーナでのライブがOfficialで公開されているので、初めの頃の感動はだいぶ薄らいだ。でも聴くと毎度、元気が出る曲。
2. KARATE
新譜に先立って先行販売された曲。これはBABYMETALという新ジャンルの、ただ今現在の最終進化系という印象。いまのBABYMETALの魅力がすべて凝縮されている。
世界各国のヒットチャートを賑わしているのもむべなるかな。「ひたすら、戦うんだ」という清涼なメッセージが心地よいし、「せいやそいや」の脳内リフが止まらない。
3. あわだまフィーバー
この曲はこれまで何度かライブでは披露されてきたが、初の音源化。ごりごりのメタルサウンドなのに、声もダンスもとてつもなく可愛い、といういかにもBABYMETALらしい曲。とくにYUIMOAのダンス。聴くだけで目に浮かんでくる。
4. ヤバッ!
しばらくファンの間で「ちがう」と呼ばれてきたスカメタル曲。これもライブでは何度か披露されていたが初の音源化。スタジオ録音のいいところは、声や演奏を細かく聴き取れるところ。「ほんとに『やばっ』っていってる」とはじめて聴こえた。YUIMOAの「ちがう、ちがう」のバックコーラスが心地よい。それと後半のシンセのうねりが実はとんでもないことがよく聴き取れた。
5. Amore - 蒼星 -
SU-METALのボーカルを堪能できる曲。ブレス音からのゆったりとした歌声にゾクッとし、その後は、とんでもない超スピードメタルとなるメロイックサウンド。「紅月」と対を成す曲だそうだが、この2曲を続けて歌われたら、しばらく立ち上がれなくなるだろうな。
曲の途中、スパニッシュギターのようなフレーズがあって、「え、アコスティック?」 と思ったのけれど、漏れ出たウェンブリーの動画をちら見したら、ベースの音だった。さすがBOHさん、さすが6弦ベース。ライブでじっくり聴きたい曲。
6. META! メタ太郎
これはずっこけました。そのまんまウルトラマン最新シリーズの主題歌になれる。はたまた地球防衛軍の勧誘ソングか。
曲調はマーチ(行進曲)。つまり前代未聞のマーチメタル?。メタル的にはバイキングメタルとかフォークメタルとかいうジャンルらしいが、よく知らない。
ウェンブリーでも、YUIMOAが鼓笛隊のフリしていたし、やっぱ行進曲だよね。それにYUIMOAがわりと長い尺で歌っていたり三人のコーラスがあるのも特徴。で、これも脳内リピート率がハンバない中毒曲である。
そんなふざけた曲なのに「君に届いているか、仲間の声」といったまっすぐな歌詞が、なぜか胸に滲みてくる。それはやっぱりSU-METALの歌唱力ゆえか。
7. シンコペーション
これはJ-ROCKです。しかもビジュアル系が流行った頃の、ウエット感たっぷりな、ちょっと懐かしさを感じる楽曲。でもこのメロディラインが、予想以上にSU-METALの声に合っている。そしてバックや間奏は、安易に泣きのギターには走らない、あくまでもイマドキのメタルなのがいい。
先日NHKで放送されたスペシャル番組でも、場面展開でこの曲のイントロが使われていた。NHKのスタッフさんも気に入ったんだろうね。なにげに自分のiTunesの再生回数を見たら、この曲が最多だった。ファンサイトの人気投票でも、一番だった。隠れた人気曲、になるかもしれない。
ただこの曲、日本向け、ということで、EU版には収録されていない。漏れ聴いた外国人からは「なんで入っていないんだ!」という文句も聞こえてくる。海外でもジャパンカルチャーに汚染(もとい精通)したファンの人気は高いようだ。でも入れたら入れたで「こんなんメタルじゃない!」という非難も当然予想されるので、難しいところだね。
8. GJ!
YUIMOAだけのユニット、通称BLACK BABYMETALの曲。まずは最初とエンディングの三三七拍子にのけぞった。曲調はラップ風。先日のウェンブリー・アリーナでのライブでも披露。イギリスの巨大なライブ会場に三三七拍子が響き渡った。感無量。
9. Sis. Anger
同じく、BLACK BABYMETALの曲。これも腰が抜けた。
こんな極悪の歌詞を、こんな可愛い声で歌うなんて。その落差にまさに“ギャップ萌え”してしまう。
YUIMOAも最初に歌詞をみたときびっくりしたそうだが、「おねだり大作戦」に次ぐ新たなキラーチューンになることは確実。自分の言葉遣いも汚くなりそう。
10. NO RAIN, NO RAINBOW
前曲の極悪な毒を浄化する癒やしのデトックス曲。Jpopというジャンルの中でのロッカバラード? ほとんど歌謡曲に近い。いい曲だし、好きだし、この曲順での存在感はある。ただしBABYMETALとしての必然性は薄いかも? BABYMETALではなく中元すず香の代表曲として、長く愛されるのかもしれない。その日、その時の気分によって、この曲だけ聴きたい、ということはありそう。
11. Tales of The Destinies
唯一、この曲だけは消化不良。このごった煮感というか闇鍋感というか、実験精神に溢れすぎている曲。Frank Zappaに通じるものがある。Zappaの実験的な曲が好きな人は気に入るかも。本来は次の「THE ONE」と合わせた組曲のなるはずだったらしいので、この曲のエッセンスを組み込めばいいかもしれない。
ただ10回ほど聴き重ねて見ると、だんだん良くなってきた。一部ユーザーからの評価とても高いので、それだけアクの強い楽曲とはいえるのだろう。
ただ構成も演奏も超難解なので、ほんとにライブで披露できるのか、疑問に思ってしまうよ。
12. THE ONE
自分的にこれは神曲。日本の音楽シーンから、こんな壮大、琉美な作品が誕生したことに驚くばかり、嬉しいかぎり。リピートが止まらない。
最初にハマったのは、イントロのリフ。ロック系の音楽はリフが命、といえる。たとえば『Smoke on the Water』(Deep Purple)のイントロ・リフなんて耳に付いたら一生はなれない(古い?)。多くのギター入門者がコピペするフレーズだけれど、この『THE ONE』のイントロにも同じ吸引力を感じる。それにギターの音も美しい。ただ指の動きは忙しないし、弾くのはちょっと難しいかも。そして当然だけど、SU-METALの歌唱力がなければ成り立たない曲。
ただリズムやメロディラインは、単調といえば単調。前曲の「Tales of The Destinies」と組み合わせればCrimsonの「Epitaph」に迫る歴史的な名曲に豹変するかもしれない。
さて、総括。
(つづく)
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特番 ベビーメタル革命
4月3日深夜NHK「MUSIC JAPAN」でメタル・ダンスユニット「ベビーメタル」日本の少女たちは世界と闘う、その衝撃は海を越え現象となった。唯一のスタジオライブを披露するとともに10代にして世界を語る本音に迫る。
「ベビーメタルの魅力」内の検索