進化の扉が開く ~Y.M.O.を超えて~③(第27回)
たまたまKARATEのSU-METALの声だけの流出音源を聴く機会があったのだが、そこにはコーラスパートの上と下が録音されていた。
え? どういうこと?
ではSU-METALは、ステージでは生歌でハモっているの?
実はSU-METALは、通常のライブでもとくにサビの部分など、自分の声でハーモって歌っている箇所がある。
録音であれば多重で録ることは当然だけれど、ライプの場合は、ハーモナイザーとかピッチシフターなどの、いわゆるボーカルエフェクターで上下3度、5度などの音をリアルタイムに流すことができるので、当然そうしていると思っていた。...
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たまたまKARATEのSU-METALの声だけの流出音源を聴く機会があったのだが、そこにはコーラスパートの上と下が録音されていた。
え? どういうこと?
ではSU-METALは、ステージでは生歌でハモっているの?
実はSU-METALは、通常のライブでもとくにサビの部分など、自分の声でハーモって歌っている箇所がある。
録音であれば多重で録ることは当然だけれど、ライプの場合は、ハーモナイザーとかピッチシフターなどの、いわゆるボーカルエフェクターで上下3度、5度などの音をリアルタイムに流すことができるので、当然そうしていると思っていた。
でも上声、下声の別バージョンがあるということは、ステージ上でSU-METALはバックで流れる自分の別録音した声に自分の声をリアルにかぶせながら歌っているのだろうか? しかもあんなにエモーショナルに、あんなに踊りながら?
確かめようはないが、もしそうなら、これまた驚くべきことといえる。だとしたらSU-METALはやはり天才である。
もちろん歌だけではない。
最近のエレクトロニクス技術を駆使しながらも、歌、ダンス、演奏、作詞作曲編曲、そしてマニュピレーター(この件についてはいつか詳しく)たちの個々の天才的な才能と努力と創意工夫によってBABYMETALはこの高みを極めているのだなあ、とつくづく感じ入ってしまう。
かくて『KARATE』は、従来のミクスチャ感たっぷりの楽曲から、見事にハイブリッド・メタルへと進化したのである。
さて、ここでさらにひとつ懸念が生まれる。
果たして「BABYMETALという新しいジャンル」は生まれるのか、という問いだ。
かつてY.M.O.は新しいエレクトロニクス技術をふんだんに生かした画期的な作曲技法と演奏方法により、一世を風靡した。新たなカテゴリーを創出し、後に続く多くの者たちを生み出した。
しかしBABYMETALは、作曲技法と演奏方法に加えて、さまざまな分野における、個々の天才的な能力が結集している。
方法論は継承できても、才能は受け継げない。
果たしてBABYMETALの後に続く者は現れるのか? それは可能なのだろうか?
日本でもこれまでメタルっぽいアイドルは何度も登場してきたが、ここまでの高みに到達しているバンド(ユニット)はかつてなかった。そもそも不可能だった。
BABYMETALが一部で話題になった頃、お隣の国でもメタルっぽいK-POPバンドが登場したが、YouTubeのコメント欄などで散々に叩かれ、いつの間にか消えてしまった。
それほどまでに、BABYMETALとは、さまざまな才能が奇跡的に融合した“総合芸術の極み”といえるのだ。
いつまで続くかはわからない。
もう2度と視る(聴く)ことはできないかもしれない。
でもかつてない世界の頂きを次々と見せてくれている。
だからこそ、儚いひとときを楽しみ尽くす覚悟と密やかな期待を胸に抱きつつ、私たちはBABYMETALに熱狂するのではないだろうか。
■追記
ここ数週間、まるでダムが決壊したように、あるいは地獄の底が抜けたように(笑)、新情報が次々と出てくる。
国内外ではエンタメ系、芸能系、HR/HM系、ファッション系雑誌への掲載が続々と起こり、『KARATE』はiTunes発売日数日後にMV公式公開。しかも公開後3日目で130万View達成!(ちなみに『Road of Resistance』は公開8ヶ月で約600万View。勢いの凄さがわかる)。
そして待望のNHK特番は4月4日(よんよん)に決定。
4/4(月) 0:06~ >>4/3深夜
NHK総合「MJ presents BABYMETALスペシャル(仮)」
4月1日の新譜発売、4月2日のウェンブリー・アリーナ公演を機に、国内外でかつてない怒涛のプロモーションが展開されそうだ。
ついていくのが大変そう…
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進化の扉が開く ~Y.M.O.を超えて~②(第26回)
かつてY.M.O.はたしかに世界の音楽シーンにテクノ・ポップという新しいジャンルを提示し、大きな影響を与えた。
またその曲作りや録音方法もまた、新規性にあふれたものだった。
専門家ではないので詳しくはいえないが、当時登場したばかりのシーケンサーを使って、一度作った曲に次々と他の演奏を多重録音で加えていったり、音にエコーやリバーブ(残響音の一種)をかけたりといった、さまざまなアイデアを駆使して録音していた。...
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かつてY.M.O.はたしかに世界の音楽シーンにテクノ・ポップという新しいジャンルを提示し、大きな影響を与えた。
またその曲作りや録音方法もまた、新規性にあふれたものだった。
専門家ではないので詳しくはいえないが、当時登場したばかりのシーケンサーを使って、一度作った曲に次々と他の演奏を多重録音で加えていったり、音にエコーやリバーブ(残響音の一種)をかけたりといった、さまざまなアイデアを駆使して録音していた。
しかもY.M.O.の新規性は、曲作りだけにとどまらない。
ライブでもあらかじめプログラムした演奏に生演奏をかぶせたり、当時としてはおそらく初めての演奏方法に挑戦している。また当時としてははじめて、ライヴでヘッドフォンを装着して演奏するという画期的な方法も考案している。これは、いわゆるモニタースピーカー代わり、ということもあったろうが、主な目的は自動演奏と生演奏を同期させるためのクリック音を聞くためだった。
(ちなみにヘットフォンはやがてイヤーモニター(通称:イヤモニ)へと進化する。現在でも生歌でステージをするBABYMETALの3人は、リズム同期のクリック音を聞くため、そしてもちろん後ろの轟音から自分の声を判別するため、といった理由でステージ上ではイヤモニを付けている)
そして1990年代以降、Y.M.Oに影響を受けたと自称する国内ミュージシャンが数多く現れ、彼らは「YMOチルドレン」とも呼ばれた。
もちろん影響は国内にととどまらなかった。1990年代以降、BOSTONやELOといったグループが登場して次々とヒットを飛ばし、プログレが一気にポップス化したが、そのきっかけづくりになったのもY.M.Oだと、個人的に思っている。
日本から出て、海外でそこそこヒットしたバントはいくつかあるが、個人的な印象をいわせてもらえば、欧米生まれのHR/HMをとても上手に真似できました、というレベルを超えていはいない。あくまで“日本から来た変なもの”と捉えられている。
たしかに演奏は上手、しかしオリジナリティがもの足りないし、音楽性で他のミュージシャンや業界に大きなインパクトをもたらしたバンドは、Y.M.O以降なかったのではないか。
一方J-popは、確かにどこにもないという意味でオリジナリティはあるが、洋楽との共通分母が少ないし、なによりクオリティが? なので、こちらも海外では一部の日本マニア以外にはなかなか広がらない。
そしてBABYMETALなのだ。
もちろん、最初は同じように“日本から来た変なもの”と見られていたし、他のアイドルと同じようにグールジャパン戦略に乗っかっている時期もあった。アニメフェスへの参加、とかね。でも、ある段階で方向性を変えたようだ。
BABYMETALのもそもそもの発端は「メタルとアイドルの融合」で、最終目標も「BABYMETAL」という新しいジャンルをつくること、と折りに触れSU-METALもいっている。これも最初はネタ化冗談だと思われていたが、ここまで来ると、その飛び抜けたオリジナリティは本物だと、多くの人が気づき始めている。
初期から、そのとんでもないオリジナリティを、強く感じた人たちもいたようだ。
海外のどこの雑誌だったが、「BABYMETALは発明である」と看過していた記者がいた。
まさにそのとおり。「メタルとアイドルの融合」というコンセプトも新鮮だが、若い(幼い?)3人の女の子を配置し、センターがボーカル、両脇がフロント! でダンスを踊る組み合わせは画期的だった。しかも歌は図抜けてうまく、ダンスはありえないほど激しく、そして3人ともかわいい。よくこんなことを思いついたと、ほとほと感心する。
しかもその発明は単に、形態だけにとどまらない。
当然のことながら、曲や演奏も、斬新で画期的なアイデアにあふれていた。
新曲の「KARATE」を聴いてみた。
これまたとんでもない曲。
イントロの暴力的きわまりないリフに続いて、ユイモアのかわいすぎる声がかぶり、天上から甘美かつ戦闘的なSU-METALのVocalが舞い降りてくる。バッキングはあくまでブルータル、と思いきやどこか郷愁を誘うアルペジオをはさみ、エンディングはエコーやリバーブをかけて余韻たっぷりに終わる。
曲構成も凝りまくっているし、一フレーズ一フレーズ、音の一粒一粒が計算され尽くしている。これまでの他の曲もそうだったのだが、KARATEに関しては、ミキシングとかアレンジなど、その練り具合というか、工夫の入れ具合というか、相当ランクアップしている、と感じる。
それと、もうひとつ気づいたことがある。
SU-METALのハーモニーだ。
(つづく)
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進化の扉が開く ~Y.M.O.を超えて~①(第25回)
ニューアルバム発売を目前にして、いろいろと情報が出てくる。
細かい話は大盛り上がりの各ファンサイトを見ていただくとして、なんといっても注目したいのは、2ndアルバム『METAL RESISTANCE』のジャケ写や曲名が公開されたこと。
そして「せいやそいや」(仮)改め「KARATE」(正)の先行配信だ。
翌日には、あっという間に日本のiTunes ROCKカテゴリーで1位、総合ランキングでもなんと2位! さらにUK、USチャートでも1位!
さらにさらに、カナダ、オランダ、オーストリア、フィンランド、オランダ、デンマーク、スウェーデン、オーストラリアなど各国のMETAL or ROCKのチャートでも軒並み1位を獲得!
この勢いを勝ってアメリカではMETALのアルバム予約で1位、総合でも5位!
(順位はいずれも2016/2/29近辺)
またイギリスのBBCラジオでは、世界初でフル放送されてさらに盛り上がりを見ている。...
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ニューアルバム発売を目前にして、いろいろと情報が出てくる。
細かい話は大盛り上がりの各ファンサイトを見ていただくとして、なんといっても注目したいのは、2ndアルバム『METAL RESISTANCE』のジャケ写や曲名が公開されたこと。
そして「せいやそいや」(仮)改め「KARATE」(正)の先行配信だ。
翌日には、あっという間に日本のiTunes ROCKカテゴリーで1位、総合ランキングでもなんと2位! さらにUK、USチャートでも1位!
さらにさらに、カナダ、オランダ、オーストリア、フィンランド、オランダ、デンマーク、スウェーデン、オーストラリアなど各国のMETAL or ROCKのチャートでも軒並み1位を獲得!
この勢いを勝ってアメリカではMETALのアルバム予約で1位、総合でも5位!
(順位はいずれも2016/2/29近辺)
またイギリスのBBCラジオでは、世界初でフル放送されてさらに盛り上がりを見ている。
「KARATE」ティザー配信、大成功の模様!!
あと1ヵ月ほど我慢したら同じ曲が新譜でも聴けるのに、この盛り上がりようはすごい。これでニューアルバムのチャートインは確定だね。
ところで。
振り返ってしみじみ思うに、かつてこれほどまでに世界的に大騒ぎを起こした日本のミュージシャンはいただろうか?
自分の知る限りでは、実はいた。
これほど熱狂的だったどうかはうろ覚えだが、かつて世界的に注目を集め、数々のミュージシャンに大きな影響を与えた日本発のバンド(ユニット)がいた。それが、Y.M.O.(イエローマジックオーケストラ)だ。
ご存じない方に簡単に紹介すると、Y.M.O.は、リーダーの細野晴臣(エレクトリックベース、シンセベース)、高橋幸宏(ドラムス・ヴォーカル)、坂本龍一(キーボード)の3人編成によるユニット。
1980年に『Rydeen』という曲が世界でも大ヒットし、その後日本のCMやゲームなどでも折りに触れ登場したので、頭の片隅に残っている方は多いと思う。
Y.M.O.は、シンセサイザーやコンピューターを駆使したポップなサウンドと独特のファッションで世界中から注目を集めた。日本にも逆輸入で人気となり、社会現象にもなった(このへんBABYMETALにも似ている)。
そんなかれらの音楽的な最大の功績は、世界のミュージック・シーン、少し限定的にいうならエレクトロ・ミュージック・シーンに “テクノ・ポップ”という、新しいジャンルを確立したことにある。
そもそもエレクトロ・ミュージックとは、電子楽器を駆使した楽曲や演奏形態のこと。
モーグ・シンセサイザーがその嚆矢といえるだろうが、当時人類がこれまで聴いたことのない音色を奏でる楽器群に多くのミュージシャンが注目し、さまざまな楽曲を世に問うていた。
クラシックでは冨田勲の「惑星」が有名になったし、喜多郎はシンセサイザーを駆使したヒーリングミュージックにより、このジャンルの第一任者とされた。ゴールデングローブ賞やグラミー賞も受賞している。
ROCK分野では、とくにプログレッシブ系のバンドたちがエレクトロニクス楽器を積極的に取り入れた。Tangerine Dream、Vangelis、Jean Michel Jarre、Mike Oldfield、Devo、Kraftwerk などのバンドがエレクトロニクスの音を大胆に取り入れ、そこそこのヒットを飛ばしていた。
しかし電子楽器の音色が、どちらかと言えば冷たい、無機的という印象を与え、また楽曲も壮大、荘厳、神秘的、一面でいえば地味、不気味、暗いといった曲調だったので、ホラーやSF映画のテーマ音楽や効果音に使用されることも多かった。
たとえばTangerine Dreamは実に多くのホラー、SF映画に楽曲を提供していたし、Mike Oldfieldの名曲『Tubular Bells』はあのホラー映画の代表作『エクソシスト』のテーマに採用されたことで、彼自身、世界的なビッグネームになった。
ちなみにVangelisは、アカデミー作品賞を受賞した映画『炎のランナー』のテーマ音楽でアカデミー賞オリジナル作曲賞を受賞している。
さて、上記のようにどちらかといえば重い楽曲の多かった電子音楽の世界に、ポップな曲を携えてさっそうと登場したのがY.M.O.だった。そして世界は熱狂した。
エレクトロ・ミュージックは、Y.M.O.の登場により、よりキャッチーでダンサンブルな方向に大きくかじを切った。その後、トランスなどのちょっと怪しげな亜種など生みながら、テクノポップは現在におけるその最終進化形態として、いま人気沸騰のEDMに継承された、といえるのではないか。
つまり世界の音楽シーンは、日本のY.M.O.による“テクノポップ”という新たなカテゴリーの誕生により、大きく進化の扉を開けたのだ。それほど大仰に言うことではないかもしれないが、やはり日本人としてはちょっと誇らしい気分になる。こんなことは、これまで日本の音楽史上にはなかったことなのだから。
そして、いま再び日本発で世界のミュージックシーンを揺るがし、HR/HMの世界に新しいカテゴリーを創出し、音楽進化の扉を開ける爆発力を秘めているのが、BABYMETAL(かもしれない)のだ。
(つづく)
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共創のマーケティング(第24回)
昨年末のMステSP以来、すっかり姿を消してしまったBABYMETALだが、今頃はきっと4月1日発売予定のセカンドアルバムのレコーディングや新曲のダンスの練習、さらにSU-METALは高校卒業の準備か? ヘビメタロスに悶々とするファンが急増しているようだが(含・自分)、彼女たちはいろいろと忙しい日々を送っているのだろう。ここは我慢のしどころか。
とはいっても4月1日のニューアルバム発売、4月2日のイギリス、ウェンベリーアリーナに向けて、運営側はこの約3ヶ月で何を起こすのか、どんなプロモーションを展開するのか、マーケティング的にも興味は尽きない。...
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昨年末のMステSP以来、すっかり姿を消してしまったBABYMETALだが、今頃はきっと4月1日発売予定のセカンドアルバムのレコーディングや新曲のダンスの練習、さらにSU-METALは高校卒業の準備か? ヘビメタロスに悶々とするファンが急増しているようだが(含・自分)、彼女たちはいろいろと忙しい日々を送っているのだろう。ここは我慢のしどころか。
とはいっても4月1日のニューアルバム発売、4月2日のイギリス、ウェンベリーアリーナに向けて、運営側はこの約3ヶ月で何を起こすのか、どんなプロモーションを展開するのか、マーケティング的にも興味は尽きない。
公式には、今のところアメリカ東海岸に続き、7月以降の西海岸のツアー日程などが発表されている。
■BABYMETALライブスケジュール
4/2(土) BABYMETAL The SSE Arena, Wembley, London, UK
5/4(水) BABYMETAL Playstation Theater, NewYork, USA
5/5(木) BABYMETAL HOUSE OF BLUES,BOSTON,USA
5/7(土) BABYMETAL Electric Factory, Philadelphia, USA
5/8(日) BABYMETAL Monster Energy Carolina Rebellion, Concord, USA
5/10(火) BABYMETAL Silver Spring, The Fillmore, USA
5/11(水) BABYMETAL The Fillmore, Detroit, USA
5/13(金) BABYMETAL House of Blues, Chicago, USA
5/14(土) BABYMETAL Northern Invasion Festival, Somerset, USA
6月11日(土) Download Festival Paris
7/12(火) BABYMETAL SHOWBOX SODO,SEATTLE,USA
7/14(木) BABYMETAL REGENCY BALLROOM,SAN FRANCISCO,USA
7/15(金) BABYMETAL THE WILTERN,LOS ANGELES,USA
ところで3月に予定されていた、日本人初となるはずだったXジャパンのウェンベリー公演が、メンバーの急病により延期となってしまった。期せずしてBABYMETALは、日本人で初めてウェンベリーアリーナでコンサートをするバンドとなった。Xジャパンには気の毒だが、これでまたBABYMETALは世界および日本の音楽シーンに深く歴史を刻むこととなった。まったくこの娘たちは、もっている、としかいいようがない。
6月の Download Festivalは、昨年いろいろといわくの付いたフェス。主催者に近い人物が、BABYMETALをこきおろしていたのだ。方針が変わったのだろうか? ヨーロッパのファンの熱に押されたのだろうか? ともあれONE OK ROCKとともに、こちらも日本から初参戦。ともにアミューズ。それもすごい。
6月はフランスだけというのは考えにくいので、きっとヨーロッパ・ツアーもするのだろうね。公式発表を待ちたい。
会場の規模はどこもだいたい2000人前後から5000人程度。これまで多くのバンドが日本から海外にドサ回りをしてきたが、箱の規模はだいたい500人程度。BABYMETALの勢いは本当にとどまるところを知らない。
興味深いのは、公式発表はいつも公演予定だけなのに、どんな会場か、チケットはどのくらい売れているのか、といった情報がファンサイトやtwitterなどで逐一報告され、それがさらなる煽りになっているという点。
それらの報告を見ると、すでにニューヨークとシカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルスの会場はソールドアウトしたらしい。ウェンベリーアリーナもほぼ席は埋まったとのこと。
一方テレビ放送に関してだが、WOWOWで昨年の3大アリーナ、つまり埼玉、幕張、そして年末の横アリでのライブの模様が、3月26日の夕方6時30分から夜11時まで4時間30分、3ライブぶっ続けで放送されるらしい。WOWOWも思い切ったことやるなぁ。
またなにやら噂では、NHKで特番(スタジオ収録?)も放送されるらしい。
まだ放送日は未定。たぶん3月? 特番だから最低でも1時間? 4、5曲は披露するだろう。ドキュメンタリー映像も挟むかもしれないし、新曲の披露もあるかもしれない。いつ、なにを、どのくらい放送するのか、新譜発売を目前にして、これからもいろいろな花火が打ち上がりそうだ。
NHKの特番収録に関しては、ファンクラブ経由で参加者募集のお知らせが送られていたが、あっという間に埋まりそうな雰囲気。最近のBABYMETALのライブは数千人から2万人クラスまで大規模なのが多いので、数百人規模のスタジオ収録なら、音もいいだろうし、3姫の顔も間近で拝めるので、ファンにはたまらないだろうね。
運営側は着々と盛り上げているなぁ、というのが正直な感想。小出しにしているが、出すときはでかい、という戦法か。
それにファンクラブ限定なので、収録には昨年と今年の入会証明書(Tシャツとフードタオル)が必要。つまりファンクラブへの継続新規入会が必須ということなので、アミューズさん、商売もうまい。
ところで、今さらながら、だがこうした情報は、その多くがいくつものファンサイト(twitterやSNSを含む)から仕入れたもの。お世話になってます。
ところで、普通のファンサイトであれば、あれがよかったこれがよかったといった、といった共感を醸成する場であるのが一般的。しかしBABYMETALのファンサイトは、もちろん共感という要素はあるのだが、それ以上に運営が発表する情報を補完、強化し、時には先取りし、より幅広い層に拡散させるという機能を持つ。
それらファン(メイト。つまり仲間、と呼ぶらしい)のパワーは本当に凄い。
昨年の海外雑誌のランキングでも、BABYMETALは「もっとも忠誠度の高いファン層を有しているバンド」でダントツの一位になっていたし、ファンとの一体感はきわめて強い。
今回のアメリカツアーでも、東海岸制覇、とか西海岸制覇とか、何ヶ所も回るアメリカ人のファンも多いようだ。
アイドル方面にはとても疎いのだが、このファンとの一体感を意識的、戦略的に醸成し、仕掛けるマーケティング手法は、やはり日本ならでは、なのだろう。
海外のファンの様子など見ていると、日本ではお馴染みのこの手法に免疫がないためか、日本以上に盛り上がっている感が強い。
またネットで先取りされたり盛り上がった情報を、それとなく運営が採用したりとか、あうんの相互コミュニケーションが図られている、という印象もある。
まさに運営とファンとの間で交わされる、煽りの共創マーケティング、といえそうだ。
さらにファンとの間で共創のマーケティングそれ事態が、運営側の目論見のひとつとなっている点が、とても戦略的と感じる。
それに運営側も、まだまだ大きな隠し玉のひとつやふたつはありそうだ。
なにはともあれ、4月1日のニューアルバム発売に向けて、密かな地響きのようにこうした共創マーケティングが展開されていくことだろう。
運営側はなにを、いつ、どのように仕掛けてくるのか、それに対して、あるいは先んじて、ファンサイトはどう共鳴し、どのような共創マーケティングが展開されるのか、それもまたひとつのエンターテイメントとして楽しめるのがBABYMETALのファンの醍醐味。
実際、この参加している感、というか、参戦している感、はほんとに楽しいのだ。
追加情報
と、ここまで書いてお終いしようとしたら、またまたびっくりな追加情報が。
6月5日に、オランダのメタルフェス「FortaRock 2016」に出演決定とか。やはり6月は欧州ツアーだね。
さらにアメリカツアー中に、CBSの「The Late Show with Stephen Colbert」という国民的なトーク番組に出演するらしい。この番組、日本でいえば「徹子の部屋」クラスの誰もが知ってる番組のようだ。これでアメリカでの認知度が一気に上昇!? これはかなりすごいことかも。公式発表となれば、さらにファンサイトの間で共創のマーケティング(つまり大騒ぎ?)が繰り広げられるのは間違いない。
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バンバンババン考(第23回)
BABYMETALの楽曲は、さまざまな音楽ジャンルのミクスチャだ、と以前書いた。HR/HMはもちろんのこと、パンクやレゲエ、ラップ、EDMなど、ここ数年のさまざまな音楽ジャンルの要素を上手に組み合わせている。この点をもう少し掘り下げてみたい。
まずはHR/HMに関して。
実はHR/HMといってみても、さまざまなカテゴリーがある。
とくにヘビーメタルはサブジャンルが多い。たとえばスラッシュメタル、パワーメタル、デスメタル、LAメタル、プログレッシブメタル、ゴシックメタル、メロディックスピードメタル、などなど、などなど。...
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BABYMETALの楽曲は、さまざまな音楽ジャンルのミクスチャだ、と以前書いた。HR/HMはもちろんのこと、パンクやレゲエ、ラップ、EDMなど、ここ数年のさまざまな音楽ジャンルの要素を上手に組み合わせている。この点をもう少し掘り下げてみたい。
まずはHR/HMに関して。
実はHR/HMといってみても、さまざまなカテゴリーがある。
とくにヘビーメタルはサブジャンルが多い。たとえばスラッシュメタル、パワーメタル、デスメタル、LAメタル、プログレッシブメタル、ゴシックメタル、メロディックスピードメタル、などなど、などなど。まったく覚えられたもんじゃない。
BABYMETALの楽曲は、担当プロデューサーが無類のヘビメタ好きということもあり、通が唸る、あるいは通しかわからないHM要素が隠し味のように入れ込まれている。だからヘビメタのファンであれば、BABYMETALのこの曲のこのリズムやメロディは、あのバンドのあの曲のあそこのフレーズだと連想できる。これはヘビメタファンにはたまらない。
このようにヘビーメタルをはじめ同時代の音楽的要素を上手にミクスチャしている点が、BABYMETALの楽曲の大きな特徴なのだが、一方で、とんでもなく古い、あるいは日本人しかわからない要素が隠れている点も見逃せない。
もっともわかりやすい例が、楽曲『メギツネ』の和古謡『桜』(作者不詳)だ。さらにヲタ芸風ダンスといきなりのラップ展開が耳を驚かす『いいね!』には、ある年齢以上の日本人なら誰でも知っている「こがねむしはかねもちだ~♪ 」でおなじみの童謡『黄金虫』(野口雨情作詞、中山晋平作曲)のメロディが、激しいブレイクダウンの合間に流れてくる。
さらに日本だけではなく、欧米の懐かしい音楽ジャンルも発見できる。
まだ流出音源しか表には出ていない楽曲『ちがう(仮)』には、「これはスカだ!」と指摘する声が多い。
ちなみに「スカ」は1950年代! にジャマイカで生まれた音楽ジャンル。2、4拍目のリズムを強調するのが特徴。
多くの人が指摘している通り、たしかに『ちがう(仮)』は間違いなくスカなのだが、どこかグラムロックやパンクの空気も感じるし、後半のシンセの入れ方なんて、Kate Bushのあの曲に似てるよなぁ、など個人的な感想も湧き、でもやっぱり基本はヘビーメタル、だからBABYMETALっぽい曲に仕上がっている。
同じく現時点では流出音源しかないプログレ風の『ららら(仮)』は、最近のメタルファンなら誰もがDreamTheaterを連想するだろう。しかし一方で、脇からはいや元ネタはQueenだ、いやYesだ、とか、このギターはJohn Petrucciだよね、いやいやMichael Schenkerでしょ、まさかのSteve Howeかもしれない、などなど、異論各論百花繚乱となっている。
つまりBABYMETALの楽曲は、同時代のジャンルだけでなく、過去を遡ってのさまざまなジャンルやバンド、その楽曲、音色、もしくは1フレーズをとても上手に取り込んでいる、と聴こえるのだ。このため多くの人が、どこか懐かしさを感じてしまい、それがまた親しみやすさを増す要因になっている。
こんなふうにいろいろな要素があるので、聴くたびに新しい発見があり、だから何度何度も聴いてしまう、というのがBABYMETALサウンドの蟻地獄でもある。
ところで、懐古的日本的ミクスチャ要素の中でひとつ不思議に思っているのが、横振りヘドバンが特徴の『ヘドバンギャー』という曲中に挿入されている、ユイモアの「ばんばんばばん」という合いの手である。さて、このオリジナルは一体なんでしょう?
答えは、世代でまっぷたつに分かれるようだ。最近まで若者だった比較的新しいおっさんは、かつて一世を風靡したお化け番組「ドリフターズの全員集合」で流れていた『いい湯だな』(永六輔作詞 いずみたく作曲)の「ばばんばばんばんばん」を連想するだろう。
しかし古いおっさんなら、ばんばんといえば、これはもうあの「スパイダース」の怪曲『バンバンバン』(かまやつひろし 作詞/作曲)の「ばんばんばばばばばばばばん」しかありえない。
ということで、何をいいたいかというと、BABYMETALの楽曲は、おっさんと一言では括れない幅広い世代に対しても、おっ、と思わせる仕掛けが重層的に仕組まれているということなのだ。
だからこそ、BABYMETALのファン層は、新旧さまざまな世代のおっさんに広がっていくというわけ。
もしかしたら見当違いのことをいっているのかもしれないし、実は他の元ネタがあるのかもしれないが、とにかくこうした各世代向けのお遊び半分の仕掛けを数多く有している点が、BABYMETALの楽曲の面白さといえる。
横軸に同時代的要素を、縦軸に過去要素をふんだんにとり込んで、まさに縦横無尽。さらに斜めもあるし、回転技もある。だから新しいのか古いのかわからない。それこそBABYMETALの楽曲の大きな魅力なのだろう。
ただ最近の楽曲は、こうした遊び心が減っている気はする。だから今度のセカンドアルバムには、ぜひ回顧趣味要素満載の曲をひとつくらいは入れてほしい、と古いおっさんは思うわけですよ。
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