舞踊の天使、微笑みの天使(第12回)
BABYMETALが「GQ Men of the Year 2015」、「VOGUE JAPAN Women of the Year 2015」を相次いで受賞! ジャンルも国も言語も、そして性別まで乗り超えてしまったBABYMETAL!
GQ もVOGUEも、世界的な男性向け、女性向けファッション雑誌。ついにBABYMETALは音楽の枠を超え、グローバルなファッション・アイコンとしても認知されるにいたったのである。...
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BABYMETALが「GQ Men of the Year 2015」、「VOGUE JAPAN Women of the Year 2015」を相次いで受賞! ジャンルも国も言語も、そして性別まで乗り超えてしまったBABYMETAL!
GQ もVOGUEも、世界的な男性向け、女性向けファッション雑誌。ついにBABYMETALは音楽の枠を超え、グローバルなファッション・アイコンとしても認知されるにいたったのである。
と最新ニュースをおさえつつ、今回のテーマはBABYMETALのkawaiiについて。
すごい、かっこいい、うまい、かわいい、…などなど、さまざまに形容される
BABYMETALだが、そのかわいい成分の80%くらいを担っているのが、実はYUIMETAL(水野由結)とMOAMETAL(菊地最愛)だ。
実は今回のテーマ、非常に書きにくい。なんといっても、孫ほど歳が離れているおじさんが10代半ばの女の子に可愛い可愛いと連呼するのは、気が引ける。抵抗がある。いらぬ誤解を招くかもしれない。
とはいえ、この二人抜きには、BABYMETALは成立しえない。だからいつものように、つらつらと感じていることを、内心の抵抗を押し殺しつつ、書いてみる。
BABYMETALをはじめて見た時は、両脇でちょろちょろしているのはなんだろう? と不思議に思った。初見の人はいまだに「いらねんじゃね?」という人もいる。
個人的にも最初はそう思った。
ただ、何度も見ているうちに、YUIとMOAこそ、BABYMETALをBABYMETALたらしめていることに気づく。
もともとさくら学院でも、水野由結と菊地最愛の可愛らしさは飛び抜けていた。それは幼い、というカワイイもあったし、まるでリスやモルモットなどの愛玩動物的カワイサを感じさせるものでもあった。また多くのおじさんにとっては、この5年間の成長の過程を微笑ましく見つめてしまう保護者的な目線も入ってくる。
デビュー当初は3人とも、幼い、という意味でも可愛かったのだが、中元すず香がQueen of METALへと凄みを増しつつある今日、Kawaiiは両脇の二人が主に担っている。
ということで、まずはYUIMETALに関して。
見るほどにそのダンススキルの高さに驚くYUIMETALだが、数年前のバラエティ番組や最近のインタビューなどでかいま見る水野由結という女の子は、シャイで控えめで、いつもはにかんでいるようで、でも無邪気で屈託のない笑顔にあふれ、その所作のひとつひとつが愛らしい。
切れ味抜群のダンスを見せるYUIMETALだが、普段のおとなし目の態度とのギャップが、さらにKawaiiを増幅させている。こういうのを専門用語で「ギャップ萌え」というそうだ
そしてMOAMETAL(菊地最愛)
普通に見れば、菊地最愛は顔立ちも整っているし、普通にアイドルとして可愛い。
どこかファンサイトのアイドル美少女ランキングで、中学生時代の菊地最愛が優勝したのを見たこともある(話題の橋本環奈は2位だった。ちなみに水野由結は4位)。
アイドル度はきわめて高いし、歌もダンスもそこそこ上手。アイドルグループに入ればすぐにセンターに収まるだろうし、ソロでも十分な才能に恵まれているように思える。
ただしBABYMETALにいると、歌は中元すず香、ダンスは水野由結という超弩級の天才に囲まれているので、どうしてもアイドル度だけが目立ってしまう。
ただアイドルとしてのあり方が、一般のそれとかなり違うようだ。
愛くるしい笑顔だけでなく、その所作、振る舞いすべてに、全身全霊をかけてファンに喜んでもらおうという心意気、姿勢が貫かれているからだ。
さくら学院時代のインタビューで、彼女は自分に関してこんなことを言っていた。
「誰かの笑顔の理由になりたい」
まだ小学生だったアイドル志望の女の子としては、驚くほどの覚悟の深さだ。
なぜ若い女の子はアイドルをめざすのか。その理由は、みんなから注目されたい、チヤホヤされたい、それとお金を稼ぎたい? だからなのか、アイドルにはどうしても作り笑顔やおもねり、計算高さ、あざとさ、といったものを感じてしまう。しかしMOAMETALにはそれがない。
今年の夏、メトロックフェスのROR。観客とシンガロングをするシーンでお立ち台に登ったMOAMETALは、観客の声を直に聞くために自らイヤモニを外し、満面の笑みを放ちながら観客に向かって拳を振り上げていた。そのケレン味のないひたむきさには、感動すら覚えた、
ファンに笑顔になってもらうためにどんなことをすればいいのか、MOAMETALはいつも考え態度に現してしているように見える。言い換えれば、プロ意識がとても高い。だからだろうか、ファンの間では「菊池プロ」と呼ばれたりもしているらしい。
見れば見るほど、知れば知るほど、YUIとMOAのKawaiiは、おじさんたちの心を乱す。そしてこれは癖になる。中毒性はかなり強烈なのだ。だからBABYMETAL初心者の方は、くれぐれもご用心あれ。
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「神バンド」の神々はなぜ神なのか?(第11回)
METALやROCK好きがBABYMETALを聴いてまず最初に驚くのが、楽器隊である通称「神バンド」の超絶的な演奏スキルだ。
一体どんな人がメンバーなのだろう、と誰しも疑問を抱く。
編成はツインギター、ベース、そしてドラム。
メンバーの個々の略歴を調べてみた。
(敬称略)
■大村 孝佳(おおむら たかよし)ギタリスト
1983年12月26日生まれ 大阪出身
通称「大神様」。...
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METALやROCK好きがBABYMETALを聴いてまず最初に驚くのが、楽器隊である通称「神バンド」の超絶的な演奏スキルだ。
一体どんな人がメンバーなのだろう、と誰しも疑問を抱く。
編成はツインギター、ベース、そしてドラム。
メンバーの個々の略歴を調べてみた。
(敬称略)
■大村 孝佳(おおむら たかよし)ギタリスト
1983年12月26日生まれ 大阪出身
通称「大神様」。マーティ・フリードマンなどのバンドのサポートギタリスト、MI JAPAN大阪校講師。
■藤岡幹大(ふじおか みきお )ギタリスト
1981年1月19日生まれ 兵庫出身
身長158cm、通称「小神様」。超絶のテクニックが売りのセッション・ミュージシャン、MIJ東京校講師。
■BOH 棒手大輔(ぼうて だいすけ) ベース
1982年8月14日生まれ 北海道出身
6弦ベースのベーシスト。数多くの国内アーティストやロックバンドのレコーディングやライブをサポート。神バンド結成時から不動のメンバー。
■青山英樹 ドラムス
1986年8月29日生まれ 神奈川県出身
自身が所属するバンドEVER+LASTのドラム、および日本芸術専門学校講師。父は山下達郎などのバックもつとめた青山純(故人)、弟の青山友樹もドラマー。
その他、過去にはLeda(本名不詳)がギターとしてサポートしていたが、現在は自身のバンドに注力中。個々のスケジュールの都合により、現在でも前田遊野(ドラム)、ISAO(ギター) などが随時入れ替わってる。
ただしメンバーが多少替わっても、高いクオリティは変わらない。
たとえば、「Road of Resistance」という曲。
メロイックスピードメタルの凄腕バンド「DragonForce」が曲作りに参加したそうだが、「自分たちが弾くんじゃないから、ありえない速弾きにしようぜ」という曲に仕上がった。しかし神バンドは、いとも安々と(ではないかもしれないが)弾きこなし、その超絶的なテクニックを披露している。
※ちなみにこの「Road of Resistance」のテンポは記号で表すと
BPM(Beats Per Minute)=204
1分間に204拍、つまり1秒間に3.4拍。この速さは尋常ではない。こんな曲を演奏するなど、人間業を超えている。
ところでイギリスのケラング!の授賞式で、当のDragonForceはBABYMETALとコラボすることなり、自分たちは演奏するはずのなかったこの「Road of Resistance」をステージで披露する羽目に陥った、というオチもついている(演奏はさすが本家。素晴らしかった)。
BABYMETALが世界市場に参戦するにあたり、神バンドの存在は不可欠だった。ステージでもカラオケやアテフリが多い日本のアイドルと比較して、欧米はあくまで、バンドとしての文脈でBABYMETALを判断するからだ。
海外遠征したかわいい系アイドルがカラオケをバックに歌っていることは多いが、あれはあくまで「日本から来た変なもの」だから許される。HR/HMというど真ん中の欧米マーケットで勝負に出るためにはバンドは欠かせない。だからAmuseが招集をかけたのだろうが、声をかけるとこれだけ超技量のプレイヤーが集まってしまうところがなんとも凄い。
欧米ならいざしらず、なぜ日本にはなぜこのような凄腕のミュージシャンが揃っているのだろうか?
一言でいえば、当然だがプレイヤーをめざす若者が多いから、だろう。
昔からミュージシャンや役者になりたいという人は多かったし、最近ではアニメーターや声優などを夢見る若者も多い。しかし、
山高ければ裾広し。
山高ければ谷深し。
大成功でも遂げないかぎり、エンタメ業界で有名になったり、大きなお金を稼ぐことは難しい。でも多くの若者がこの戦場に人生をかけて挑戦する。
とくにROCKやMETALは日本ではメインストリームではないので、成功したとしても自分のバンドで演奏しながら、他の仕事、たとえばお呼ばれしてセッションのライブやプロ歌手のレコーディングに参加するとか、アイドルのバックバンドするとか、あるいは楽器の先生になるとか、が主な食扶持となる。
しかも夢が遂げられず、挫折したり、ずっと底辺で生きているミュージシャン(売れない役者なども)は数知れない。
実利的な成功ではなく、やりたいことをやり遂げた上での成功こそ、本物。
そう夢見る若者が、この国ではいつの時代も一定数存在するからだろう。
そしてあまたの屍を乗り越え、頂点をきわめた者はやがて神となる。
神バンドを見て聴いて、思い巡らせたのはそんな現実だった。
神にいたるまでの層の厚さは、日本は世界有数、アジアではおそらく随一だろう。
この分厚い重層構造の頂点に、神レベルのミュージシャンが生まれる。しかもそのクオリティは、神バンドが証明したようにすでに世界レベルだ。
ただ日本ではそれほど活躍の舞台はなさそうなので、クールジャパン戦略にも乗っかって(乗っからなくてもいいけど)、ぜひ世界に挑戦していただきたい。
BABYMETALや神バンドをきっかけに、数多くの才能あるミュージシャンが世界から発見され、世界に羽ばたくことを期待したい。
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それは辺境の地から噴出する神秘の発酵マグマ?(第10回)
文化という観点からみると、日本は今も昔も、圧倒的な輸入超過国だ。
古来の仏教伝来にはじまり、中世期の工芸品・芸術品などはほぼすべて中国から、そして明治維新以降は食事、服装、生活様式から鹿鳴館に代表される舞踏音楽等まで、ヨーロッパ文化が怒涛のごとく流入した。そして世界大戦後は、ご存知のようにアメリカ文化の洪水にさらされ続けている。
ただし不思議なことにこの国は、輸入した文化をそのままにしておかない。...
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文化という観点からみると、日本は今も昔も、圧倒的な輸入超過国だ。
古来の仏教伝来にはじまり、中世期の工芸品・芸術品などはほぼすべて中国から、そして明治維新以降は食事、服装、生活様式から鹿鳴館に代表される舞踏音楽等まで、ヨーロッパ文化が怒涛のごとく流入した。そして世界大戦後は、ご存知のようにアメリカ文化の洪水にさらされ続けている。
ただし不思議なことにこの国は、輸入した文化をそのままにしておかない。
宗教も本来は中国伝来だったにもかかわらず、日本独自のさまざまな分派が生まれ、時代によっては神教との融合さえ果たした。
演劇・音楽の分野でも、能・狂言はもとより、江戸時代の文化円熟期には鎖国という政策ともあいまって、京劇を発祥する舞台と音楽の総合演劇が「歌舞伎」へと一大発展した。
そして、それらの独自文化は時に、世界へ拡散することがある。
明治維新直前の1867年に開催されたパリ万博では、浮世絵・琳派・工芸品などの美術品が絶賛を集め、ジャポニスムの一大ブームが起きた(今日、フランスが日本のアニメや音楽などの世界的ブームの起点となっているのも、この150年以上前の出来事が端緒となっているのかもしれない)。
このように、ほぼすべてが伝来文化であるのにもかかわらず、いつの間にか世界のどこにもない独自性を確立してしまう、ふしぎの国ニッポン。
つねに吸収し続け、長年の間“完コピ”を繰り返しながら、ある日休火山の突然の目覚めのように、世界のどこにもない文化を世界に向かって噴出する、油断のならない国ニッポン。
戦後の音楽シーンにも、それは当てはまる。
戦後、日本で最初に世界的な大ヒットとなった『上を向いて歩こう』は、切々とした歌謡曲でありながら、ベースはブルージーでジャージーなサウンドだった。欧米の音楽、とくにジャズ畑出身の中村八大という天才が生み出した、これもまた世界に向けて噴出させた独自性あふれる曲だったのだ。
そしてHR/HM(ハードロック/ヘビィメタル)の世界も同じことが起きている。
日本で最初にヘビィメタルバンドとして一般的な人気を獲得したのがX JAPAN。
しかし欧米のそれと異なり、X JAPANは激しい中にもメロディもその有り様も独創的な甘美さがあった。そのため彼らを端緒に日本独自の“ビジュアル系”が生まれ、時に聖飢魔IIといったイロモノなども生みつつ(でもそのプレイはあくまで本格派だった)、LUNA SEAやL’Arc~en~Cielほか、あまたビジュアル系バンドを生み、最近ではネオ・ビジュアル系へと深化と拡散を続けている。ただし、HR/HM全般にいえることだが、海外同様、日本においてもその人気にかつての勢いはない。
そしてBABYMETALである。
HR/HMの独自解釈はさらに深まり、世界のどこにもない、見たこともと聴いたこともないサブジャンルが突如誕生し、世界が驚嘆した。
ある海外雑誌がBABYMETALを以下のように紹介したことがある。
「日本から来た3人の娘が、欧米の音楽シーンに巨大な中指を突き立てた!」
単なる真似ごとではなく、本来のカテゴリーを揺るがしかねない超弩級のオリジナリティが、世界の音楽シーンに忽然と登場したのだ。そしてその激震は、いまもなお続いている。
極東の辺境地にあり、文化の吹き溜まりのような地政学的特徴を逆手に取ることで、日本は渡来文化の発酵坩堝となり得たのだろう。世界中からさまざまな文化を吸収した後に熟成し、何十年(数百年?)に一度の頻度で、ある日突然、とんでもないエネルギーが爆発するのだ。
その意味でBABYMETALは、日本から久々に噴出した神秘の発酵マグマ、といえるのかもしれない。
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中元すず香は1000年に一度の歌姫か③(第9回)
BABYMETALのVocal、SU-METALの歌唱の最大の特徴は、豊かで幅広いエモーショナルな表現力だ。
その歌声を聴けば、多くの人は心を動かさずにいられない。
激しい歌は激しく、哀しい歌は哀しく、楽しい歌は楽しく、そして馬鹿みたいな歌は馬鹿みたいに、SU-METALは深い情感を込めて歌い分けることができる。しかも曲だけでなく、一曲中のフレーズにも、異なったエモーションで歌い分けることができる。...
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BABYMETALのVocal、SU-METALの歌唱の最大の特徴は、豊かで幅広いエモーショナルな表現力だ。
その歌声を聴けば、多くの人は心を動かさずにいられない。
激しい歌は激しく、哀しい歌は哀しく、楽しい歌は楽しく、そして馬鹿みたいな歌は馬鹿みたいに、SU-METALは深い情感を込めて歌い分けることができる。しかも曲だけでなく、一曲中のフレーズにも、異なったエモーションで歌い分けることができる。
こんな芸当ができるSingerは、めったにない。
とくに注目したいのが、哀切成分。哀切成分とは、声質そのものに、切々とした哀愁の色が含まれていること。もともと日本において売れる歌手に必須とされる要素だ。
演歌はもちろんだが、ウェットな心性に共鳴しやすい日本人は、この哀切成分を持っている歌手の人気が高くなる傾向がある。
声質にこの哀切成分を大量に含んでいるアイドルとして人気を集めたのが、たとえば山口百恵、中森明菜、坂井泉水(ZARD)、浜崎あゆみ、あたりだろうか。
この哀切成分を、SU-METALもまたたっぷりと持っている。
ASH時代、つまり小学校の頃の中元すず香の歌唱にさえ、心揺さぶられるものがある。興味のある方は動画サイトで『中元すず香 同じ空を見上げてる』を探していただきたい。荒削りなところはあるが、とても小学生とは思えない切々とした表現力にはただただ驚くばかりだ。ものが違うとかしかいいようがない。Amuseがスカウトに走ったのも、むべなるかな、である。
これほど多彩なエモーショナル表現力を持った歌手を他で探すとしたら、ジャンルはまったく違うけれど、強いていえば、美空ひばりか?
声質、音域、声量、音圧、倍音、哀切成分などなど、さまざまの要素の相乗効果から生まれるSU-METALのエモーショナルな歌声。その感情表現力は安々と言葉の壁を超えていく。
たとえば代表的なソロ曲「紅月」。
ライブでは世界各国のステージで身長約2メートル超、体重100キロ超、全身にタトゥーを彫った恐ろしげなコアメタラーたちが、日本語はわからないはずなのに、感きわまって身体を震わし、「awesome、awesome…」と呟きながら涙を流している。
SU-METALの、言語を超えた圧倒的な歌唱のなせる技としかいいようがない。
昨年のビルボード総合ランキングで、BABYMETALはチャートインを果たした。日本語の歌でのランク入りは、坂本九の『上を向いて歩こう』以来の快挙。それもこれも、中元すず香の言語を超えた歌唱力ゆえだろう。
この比類なきSU-METALの声に加えて、BABYMETALにはYUI、MOAによる世界共通言語としての超絶ダンスと、バックの楽器隊の超技巧プレイが加わる。パッケージとしてみても、BABYMETALが世界の舞台に立つことは必然だった、と今ならいえる。
さて、いろいろとテクニカル風な分析をしてきたが、結局のところ、なぜ中元すず香の声がこれほどまでに多くの人の心を魅入らせるのか、本当のところはわからない。
もともと本人はバラードが好きだといっていたし、そのままいけば、そこそこ売れるバラード系のソロ歌手になっていたかもしれない。
しかしBABYMETALという、楽曲の方向性が全方位のユニットに在籍していることで、SU-METALの歌唱力もまた、ただ今現在、全方位で進化している真っ最中だ。
BABYMETALのSU-METALとしてはもちろん、BABYMETAL以降の中元すず香がどのようなSingerへと飛翔するのか。そんなことにまで期待が膨らんでしまう。
最後に、このテーマの結論めいたことを言わせていただく。
中元すず香は、ジャンルや言語を超えた、1000年に一度の歌姫(Diva)である。
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中元すず香は1000年に一度の歌姫か②(第8回)
歌唱テクニックについて。
実はSU-METALはよくある歌唱のテクニックをまったくといっていいほど使っていなない。歌唱の代表的なテクニックとは、ビブラードやファルセットなど。
こうしたボーカリストには必須といえるワザをほとんど使わず、どこまでも真っ直ぐな声で歌い上げる。それがまっすぐに聴く者の心に突き刺さる。細かいテクニックを使わないことで、生来の声の魅力が十二分に生かされている。
唯一ファルセットを使ったのが、インディーズ時代のコンサートで歌った『翼をください』だった。...
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歌唱テクニックについて。
実はSU-METALはよくある歌唱のテクニックをまったくといっていいほど使っていなない。歌唱の代表的なテクニックとは、ビブラードやファルセットなど。
こうしたボーカリストには必須といえるワザをほとんど使わず、どこまでも真っ直ぐな声で歌い上げる。それがまっすぐに聴く者の心に突き刺さる。細かいテクニックを使わないことで、生来の声の魅力が十二分に生かされている。
唯一ファルセットを使ったのが、インディーズ時代のコンサートで歌った『翼をください』だった。とてもきれいなファルセットが出ている。たしかにMETALには合わないかもしれないので、おそらく現在は封印しているのだろう。
音圧。
そして音圧。声量と似ているが、ちょっと違う。ようするに大きくハリのある声かどうかということ。
彼女の声の音圧は、とても大きい。『さくら学院』の頃のビデオでも、ソロをとっているときはもちろん、メンバー全員でユニゾンで歌っている時でも彼女の声だけが突出してよく聴こえる。
当時から「とにかく声がでかい」とファンの間でも評判だったそうだが、これもまた生まれつきの音圧の持ち主だったからだろう。
これだけ音圧が大きいと、アイドルグループに入っても一人だけ目立って仕方がない。ソロでいくしかないだろうが、この時代、ソロのアイドルはなかなか売るのが難しい。それに中元すず香は正統派過ぎて、アイドルというイメージとはほど遠い。だから「METALの轟音をバックをこの声で歌わせたら面白そう」と発想したプロデューサーの慧眼には感服してしまう。
リズム感。
リズム感は歌い手であれば、当然の能力。ただ彼女の場合は、カウントではなく、身体でリズムを捉えているのではないかという印象が強い。
それが顕著に見えるのが『悪夢の輪舞曲』だ。
輪舞曲(ロンド)だから本来は三拍子のはずなのだが、この曲はとくにイントロや間奏の部分で5分の3拍子や7分の5拍子といったとんでもない変拍子が入っている。これで歌い出すのは至難の業だ。
とはいえ100%感覚派の中元すず香は、頭の中で拍子をとっているとはとても思えない。
ギターの大村氏も「すぅちゃんは天才」と驚いていた。この超感覚的リズム把握力もまた、天才のなせるワザなのだろう。
現在、BABYMETALという全方位ジャンルのさまざまな曲を歌いこなすことによって、彼女の声は今も進化を続けている。現時点でも凄いのに、これほど伸び代を感じさせてくれるSingerは他にちょっと見当たらない。
(結局今回も語り尽くせかなったので、次回に続く)
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