中国・台湾侵攻への複雑なシナリオ(6月4日)
中国は米欧日との経済における依存関係があるため、米欧日から経済制裁を受けた場合の影響はロシアへの経済制裁に比べ格段と大きくなるため、台湾への武力侵攻の可能性はロシアによるウクライナ戦争突入よりは低いといえる。
ただし、プーチン大統領の力が温存されたままウクライナ戦争が停戦を迎えた場合には、中国共産党大会で3期目を確実にしてから2023年~2027年にかけて習近平国家主席は台湾侵攻を行う可能性も出てくる。...
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中国は米欧日との経済における依存関係があるため、米欧日から経済制裁を受けた場合の影響はロシアへの経済制裁に比べ格段と大きくなるため、台湾への武力侵攻の可能性はロシアによるウクライナ戦争突入よりは低いといえる。
ただし、プーチン大統領の力が温存されたままウクライナ戦争が停戦を迎えた場合には、中国共産党大会で3期目を確実にしてから2023年~2027年にかけて習近平国家主席は台湾侵攻を行う可能性も出てくる。
台湾軍は8万から9万人いることを念頭に入れ、攻撃にはその3倍から5倍の兵力が必要となることを考えると、40万人の人民解放軍がいれば台湾上陸は可能となる。ただし、中国人民解放軍の実質的な揚陸能力は4万人ぐらいであり、40万人は難しいと言われている。
ただし、兵力を艦船だけでなく貨物船、カーフェリーなどの民間船、複数の漁船に分散させて輸送してくる可能性も想定される。当然、空からの侵攻も考えられる。輸送の視点から見ると,港湾からの上陸侵略の方が、海浜の上陸より効率が良いとされているが、その両方を使う可能性もある。なかなか上陸はできないが40万人近くの人員を周辺海域に張り付けておくという状況を作り出すかもしれない。ただし、気象条件は変わりやすくその状態を長い時間維持することは難しいとみられている。
有事と平時の境界が低くなっている現在、日本も関与する可能性が出てきている台湾海峡有事のシナリオを陸・海・空・宇宙・サイバーなど、あらゆる分野でシミュレーションしておく必要があることは確かである。
更には、軍事だけではなく、政治、経済、文化など多角的に状況の観測をする必要性が出てきたともいえる。
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日本を巡る安全保障の現実(6月4日)
冷戦期、日本は第二次世界大戦への反省と憲法の縛りの中で安全保障は米国に任せ、自らは経済成長と経済発展に専念するというある意味都合のよい状況下で高度成長を遂げ、世界第二位の経済大国にのしあがった。この流れの中では、安全保障や防衛、核の話をすることはタブーとなってきた。
ところが、2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻がこうした流れを大きく変えた。日本と同じ専守防衛主義であった主権国家ウクライナに突如、ロシアが一方的に戦争をしかけたことで国土は焼き尽くされ、数万人の犠牲者が出た。...
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冷戦期、日本は第二次世界大戦への反省と憲法の縛りの中で安全保障は米国に任せ、自らは経済成長と経済発展に専念するというある意味都合のよい状況下で高度成長を遂げ、世界第二位の経済大国にのしあがった。この流れの中では、安全保障や防衛、核の話をすることはタブーとなってきた。
ところが、2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻がこうした流れを大きく変えた。日本と同じ専守防衛主義であった主権国家ウクライナに突如、ロシアが一方的に戦争をしかけたことで国土は焼き尽くされ、数万人の犠牲者が出た。
これを目の当たりにした日本人は大きなショックを受けた。この時代になってもまだ侵略戦争はあり得るのだということを改めて認識したことに加え、日本の周囲を見渡すと核を持つ中国・ロシア・北朝鮮にいつの間にか囲まれている現状に呆然となった。今になって「複合自体だ」「防衛費GDP2%にするべきだ」と慌てている。
ある意味、ようやく日本は目が覚めて現実的になったと言える。より現実的な議論がされるようになった。例えば、国会やテレビ、ネット、新聞、ラジオなどでは、堂々と安全保障、防衛費、核の話がされるようになってきており、テレビでは防衛省関係者、自衛隊OB、安全保障関係の専門家、軍事評論家の顔を見ない日はない。
半導体は産業にも兵器にも欠かせない素材であり、デュアルユースはもはや常識となった今、経済・ハイテク分野においても経済安全保障の概念が打ち出されるようになり、こうした知識なしに、もはやビジネスが行えない時代になってきている。また、セキュリティークリアランスの概念が打ち出され、身元のはっきりしない人間は重要情報にアクセスできなくなってきている。
戦後70年、安全保障の話を自ら真剣にしようとしてこなかったことが、今になって一気に出てきていることだけは間違いない。このインド太平洋で、今後日本が生きてゆくにはこの関門を突破してゆくしかないと覚悟するしかない。
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米報告書・新疆ウイグル自治区を収容所のように監視(6月3日)
米国国務省は世界各国の信教の自由に関する年次報告書で「中国の新疆ウイグル自治区では2017年以降イスラム教徒など100万人以上が当局によって特別に作られた収容所などに強制的に入れられたと推計される」という分析を示した。
記者会見したブリンケン国務長官は「中国は大半がイスラム教徒のウイグルの人たちなどにジェノサイドと抑圧を続けている」と述べ「民族などの集団に破壊する意図をもって危害を加えるジェノサイドが続いている」と指摘した。...
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米国国務省は世界各国の信教の自由に関する年次報告書で「中国の新疆ウイグル自治区では2017年以降イスラム教徒など100万人以上が当局によって特別に作られた収容所などに強制的に入れられたと推計される」という分析を示した。
記者会見したブリンケン国務長官は「中国は大半がイスラム教徒のウイグルの人たちなどにジェノサイドと抑圧を続けている」と述べ「民族などの集団に破壊する意図をもって危害を加えるジェノサイドが続いている」と指摘した。
報告書を取りまとめた米国国務省高官は「中国はAI(人工知能)や顔認証などの先端技術を利用し新疆ウイグル自治区を収容所のように監視し管理している」と述べた。チベット自治区についても「中国政府が仏教徒に対する弾圧を続けている。チベットの言語や文化を広めるなどした人たちを逮捕し拷問している」と厳しく非難した。
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中国の南太平洋戦略(5月29日)
太平洋島嶼国をめぐって米中のせめぎ合いが激しさを増している。
中国・王毅外相が26日から6月4日までの10日間の日程で南太平洋(キリバス、パプアニューギニア、東ティモール、ソロモン諸島、バヌアツ、フィジー、トンガ、サモア)を歴訪中である。小さな島国のひとつひとつに大国である中国の外相が出向いていく姿を見ていると、何かに焦り突き動かされているような不自然さを感じる。
実はこうした中国の動きの背景には米国主導のクアッドやIPEFなどの枠組みが将来的にアジア版NATOに発展するかもしれないという中国の強い懸念がある。...
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太平洋島嶼国をめぐって米中のせめぎ合いが激しさを増している。
中国・王毅外相が26日から6月4日までの10日間の日程で南太平洋(キリバス、パプアニューギニア、東ティモール、ソロモン諸島、バヌアツ、フィジー、トンガ、サモア)を歴訪中である。小さな島国のひとつひとつに大国である中国の外相が出向いていく姿を見ていると、何かに焦り突き動かされているような不自然さを感じる。
実はこうした中国の動きの背景には米国主導のクアッドやIPEFなどの枠組みが将来的にアジア版NATOに発展するかもしれないという中国の強い懸念がある。王毅外相の外遊直前には日本でクアットが開催され、米国主導のIPEF・インド太平洋経済枠組みの立ち上げが発表された。
中国は自らの思い通りにできると思っていたブルネイ、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなどのアジア諸国や南太平洋の島嶼国・フィジーなどが次々と加盟する姿を見て相当ショックだったはずである。クアッドについてもインドのモディ首相が参加していることを相当意識しており、わざわざ中国にパキスタンを呼びつけるなどしてインドをけん制している。
今回、王毅外相が回る8か国は第二列島線と第三列島線ではさまれたエリアであり、米国領サモアの真下であり、豪州の真上に位置しているという米豪にとって重要なゾーンであり、米豪にとって中国の動きは看過できないものである。
例えば王毅外相は「軍事基地を建設する意図はない」としているが、仮にソロモン諸島に中国の軍事拠点を作られてしまった場合、オーカス経由で導入する予定になっている豪州の原子力潜水艦の動きがソナーで中国に筒抜けになってしまう恐れがある。これはオーカスメンバー国や日本にとっても由々しき事態である。なおかつ危険なのが2015年から豪州・ダーウィンの港湾管理権が99年間の貸与契約で中国企業に渡ってしまっていることである。このエリア一体で中国が南シナ海で行ったような現状変更を行わないという保証はどこにもない。例えばこの辺り一帯を人民元流通エリアにしてしまうことも考えられる。
民主国家にとってはいよいよ中国が世界のあらゆる場所に進出し始め、目の前で中国の影響力を見せつけるという時代に突入したのかもしれない。
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北朝鮮制裁決議案・安保理で否決・中国・ロシアが拒否権行使(5月27日)
国連安保理ではウクライナ情勢をめぐり欧米各国とロシアが対立、軍事侵攻を非難する決議案をロシアが自ら拒否権を行使して否決するなど安保理の機能不全が指摘されてきた。
今回は欧米各国が北朝鮮に一層圧力をかけるべきだとしたのに対し、中国、ロシアは制裁を緩和すべきだと主張、安保理決議に違反し、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮をめぐっても分断が際立つ形となった。
米国・トーマスグリーンフィールド国連大使は「採決結果は北朝鮮をさらに危険な行動に向かわせかねない」と中国とロシアの対応を非難したのに対し、中国・張軍国連大使は「米国こそ朝鮮半島の緊張を高めている」とし双方の応酬となった。
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