【世界の新技術】
最先端半導体を巡る台湾の動き(6月11日)
台湾の地政学リスクが何度もささやかれる中、台湾では総額16兆円規模の未曽有の半導体の投資ラッシュが起きている。台湾「TSMC」など4企業が台湾全土に20の新工場を建設中か、完成させたばかりである。
台湾が半導体の巨額投資に突き進んでいる背景には半導体大国として独自の存在感を示したいという思惑があるとみられる。TSMC・マークリュウ会長はかつて、米中両国を念頭に「将来的に情報交換が不自由になり、太平洋の両側で自国の供給網を自己完結化させる動きが出ている」とした上で、「開発と製造にかかる費用が増大する」などと懸念を示したことからもわかるように、米中の政治的な動きにからめとられたくないというのが台湾=TSMCの本音のところである。...
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台湾の地政学リスクが何度もささやかれる中、台湾では総額16兆円規模の未曽有の半導体の投資ラッシュが起きている。台湾「TSMC」など4企業が台湾全土に20の新工場を建設中か、完成させたばかりである。
台湾が半導体の巨額投資に突き進んでいる背景には半導体大国として独自の存在感を示したいという思惑があるとみられる。TSMC・マークリュウ会長はかつて、米中両国を念頭に「将来的に情報交換が不自由になり、太平洋の両側で自国の供給網を自己完結化させる動きが出ている」とした上で、「開発と製造にかかる費用が増大する」などと懸念を示したことからもわかるように、米中の政治的な動きにからめとられたくないというのが台湾=TSMCの本音のところである。
もうひとつ、台湾が最先端の半導体大国になることで、有事の際にもウクライナのように扱われないようにするという布石を台湾・蔡英文総統は打っているのかもしれない。例えばウクライナに核兵器があれば、ロシアの侵攻を招かなかったと言われているが、蔡英文総統は核兵器に代わるカードとして半導体を考えているのではないかという仮説も成り立つ。
一方、米国としては最先端の半導体工場をリスクが高い台湾から米国本土に移転させたいと思っているが、今回の台湾の動きはその思惑に逆らっているようにも見える。
米国の強みはアーキテクチャー系の半導体会社が多いことであり、台湾が最先端半導体に強くても、現段階では米国抜きでは立ち行かないことは確かである。
懸念されるのは中国の動きである。台湾への武力侵攻も当然危惧されるが、政治的に台湾統一を叫ぶ中国は本音のところでは台湾の半導体産業を手中に入れたいと考えている。
TSMCの上層部を完全に親中国に変えてしまう工作や、例えばロシアがウクライナの穀物の輸出入を妨害して世界に打撃を与えているように、中国が台湾からの半導体の輸出入を妨害するなど嫌がらせをして圧力をかけてくることも考えられる。その時、日本や米国、世界の産業界はどう動くのかといった様々なケースをシミュレーションしておくべき時を迎えている。
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米中では6G周辺がにわかに活気づいてきている(5月30日)
ネットワークを語る上で重要なキーワードとなるのがG(ジェネレーション)である。米国ではアップルやグーグルなどが「ネクストGアライアンス」という組織を作り、6Gの開発を推し進めている。
歴史を遡ると1940年に0Gネットワークが存在した。これは電話ネットワークを指すものであった。それから40年後の1980年代に出てきたのが1Gである。
これはアナログ携帯電話ネットワークを指すものであった。...
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ネットワークを語る上で重要なキーワードとなるのがG(ジェネレーション)である。米国ではアップルやグーグルなどが「ネクストGアライアンス」という組織を作り、6Gの開発を推し進めている。
歴史を遡ると1940年に0Gネットワークが存在した。これは電話ネットワークを指すものであった。それから40年後の1980年代に出てきたのが1Gである。
これはアナログ携帯電話ネットワークを指すものであった。1993年には電波の利用効率を向上させるため、通信方式の転換が行われ、デジタル携帯電話ネットワークである2Gが登場した。
さらに音質を向上させる「符号分割多元接続(CDMA)」という技術が採用されることになり、このCDMAネットワークが3Gと呼ばれるようになった。3G以降、規格や標準づくりが国際団体を通じて進められていくことになったことは特筆すべき点である。
2010年にはスマートフォンが普及し、4Gネットワークが登場し広く普及していった。現在、4Gの100倍のスピードをもたらす5Gが一気に4Gを塗り替えようとしている。
ハイテク先進国・中国でも、6Gを見据えた動きが始まっている。ファーウェイは5Gアドバンストという名称で2030年までの実用化を目指し、実質的な6G研究を進めている。ファーウェイと同じく中国のスマホメーカーであるオッポも6G開発に参戦を表明し、中国の電子情報類学科を中心とする有名大学である電子科技大が世界初の6G向け試験人工衛星の打ち上げに既に成功している。
米国ではさきほど触れた「ネクストG連合」という組織が6Gの開発の将来を左右するものとして注目を集めている。バイデン政権は日米共同声明の中で日本円にして約4900億円をかけて6Gの開発を推し進めようとしている。その中核となって主導するのはクアルコムなど半導体企業とみられている。
日本では総務省・大学・NTTが中心となり「ビヨンド5G推進コンソーシアム(B5GPC)」が設立されたが、米国の「ネクストGアライアンス」と連携していく動きを見せている。
6G周辺がにわかに活気づいてきている。
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先端的ドローン開発の動向(5月28日)
今回のウクライナ戦争では米国製ドローン兵器「スイッチブレード」やトルコ製のドローン兵器「バイラクタルTB2」の活躍が特に目立った。
ドローンはウクライナ軍が地対艦ミサイルを発射した際、ドローンをおとりに使ったとされている他、戦車部隊の破壊に力を発揮した。
アルメニアとアゼルバイジャンによるナゴルノカラバフ紛争でもドローン兵器「バイラクタルTB2」が活躍し、話題になったが、これほどまでにドローン兵器が活躍するようになっていることに関しては、日本人は今回初めて知ったと言っても過言ではない。...
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今回のウクライナ戦争では米国製ドローン兵器「スイッチブレード」やトルコ製のドローン兵器「バイラクタルTB2」の活躍が特に目立った。
ドローンはウクライナ軍が地対艦ミサイルを発射した際、ドローンをおとりに使ったとされている他、戦車部隊の破壊に力を発揮した。
アルメニアとアゼルバイジャンによるナゴルノカラバフ紛争でもドローン兵器「バイラクタルTB2」が活躍し、話題になったが、これほどまでにドローン兵器が活躍するようになっていることに関しては、日本人は今回初めて知ったと言っても過言ではない。
米国はミサイルのように標的に自ら突っ込んで破壊するドローン兵器「フェニックスゴースト」をウクライナ軍にこれから大量に提供するとしている。垂直離陸が可能で、目標の探索と追跡で6時間以上飛行することができ、赤外線センサーにより夜間運用も可能という優れたドローン兵器である。
ドローンはこのように偵察用としても攻撃用としても高性能であり攻撃側の人的被害も出ない上に、低価格であるため、理想的な兵器といえる。
日本政府は防衛省が保有している偵察用ドローンをウクライナに提供したことから、ドローンをたくさん保有しているかのように感じる人も多いと思われるが、実は日本は軍事用ドローンの分野ではかなりの後れをとっている。
それは防衛省が調査費として3000万円を計上するというレベルに留まっていることからも明らかである。実は日本は未だに本格的に導入するかどうかを決めかねている状態なのである。
自衛隊がこれまでドローンを重視してこなかった理由は、伝統的に民間の最新技術を軽視する風潮があったことが挙げられる。中国のドローンがたびたび尖閣に飛来しており、いつ上陸されてもおかしくない状況であることを踏まえれば、日本は攻撃型、偵察型両方のドローン開発にもっと力を入れるべきなのは明らかである。
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デジタルインテリジェンスが戦争の形を変えた(5月16日)
ウクライナ戦争はこれまでの戦争とは異なる2つの特徴を見事に実現した。
①一つ目はデジタル衛星やドローン、スマホなどによる戦況の透明化である。これまでの戦争では戦場で何が起きているのかについては、例えば湾岸戦争などにおいては戦場カメラマンの取材や、撮影に委ねられる部分が大きかった。これに対し、ウクライナ戦争では衛星画像会社の高精細なデジタル画像や、ドローンによる上空映像、現地の兵士撮影によるスマホ映像などによって戦況のデータが日々刻々と入ってくるようになっている。...
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ウクライナ戦争はこれまでの戦争とは異なる2つの特徴を見事に実現した。
①一つ目はデジタル衛星やドローン、スマホなどによる戦況の透明化である。これまでの戦争では戦場で何が起きているのかについては、例えば湾岸戦争などにおいては戦場カメラマンの取材や、撮影に委ねられる部分が大きかった。これに対し、ウクライナ戦争では衛星画像会社の高精細なデジタル画像や、ドローンによる上空映像、現地の兵士撮影によるスマホ映像などによって戦況のデータが日々刻々と入ってくるようになっている。それによって地球の裏側にいる一般の人々にも戦場が今、どういう状況にあるのかが手に取るようにわかるようになった。
②二つ目は上記①のデータを生かしたハイテクインテリジェンスによる戦況分析や検証が新しい特徴である。例えば日々ストックされていく衛星画像を比べることでどういう新しい動きが起きつつあるのか、前日の画像と比較してどこがどう異なるのか。どの箇所が多く爆撃されているのかなどを把握していくことで、ロシア軍が今後どのように動こうとしているかの検証や分析が容易になった。さらに異なる衛星同士の衛星画像やドローンが撮影した現地映像、現地兵士が撮影した動画などをリモートセンシング技術などと組み合わせることによって、現地の被害状況など、より奥行のある情報に加工して把握することができるようになった。こうした一連の動きはハイテクによって情報を今後に生かせる情報に加工するという意味において映像インテリジェンスが完成したと言える。もうひとつこうしたハイテクデータを例えば米国を拠点とするシンクタンク「戦争研究所(ISW:インスティテュートフォーザスタディオブウォー)」に所属する専門家などが手間をかけて解析するというスタイルも新しい特徴である。
上記①②の要素が将来の戦争に何をもたらすのかと言えば、以前の戦争であるならばうやむやにされがちであった戦争犯罪を膨大で緻密な証拠を突き付けることによって円滑に裁くことができる可能性がある。
もうひとつは兵士の数、武器の数、採用した戦術など細かい情報がビッグデータ化されISWなどのシンクタンクに蓄積され、AI解析によって戦う前からシュミレーションができる状況が生まれるかもしれない。そうなると狂信的な指導者が無謀な戦争に踏み込んだりしない限りは、戦争の抑止につながるかもしれない。
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日本の新たな技術力(4月30日)
現在の日本の基幹産業は自動車産業であるが、5年~10年でこれまでのガソリン車から電動車に置き換わってくることで、自動車産業における日本の優位性が失われる懸念が出てきている。
日本の強みを洗い出していきたい。日本の強みは技術力であることは異論がない。例えば水素、全固体電池、二酸化炭素貯留技術(CCUS)、自動運転技術、iPS細胞、核融合、半導体製造装置、量子暗号通信技術、次世代デジタルインフラなどである。...
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現在の日本の基幹産業は自動車産業であるが、5年~10年でこれまでのガソリン車から電動車に置き換わってくることで、自動車産業における日本の優位性が失われる懸念が出てきている。
日本の強みを洗い出していきたい。日本の強みは技術力であることは異論がない。例えば水素、全固体電池、二酸化炭素貯留技術(CCUS)、自動運転技術、iPS細胞、核融合、半導体製造装置、量子暗号通信技術、次世代デジタルインフラなどである。
日本の技術の中で特に注目されるのは水素で、例えば水素という形に置き換えることでエネルギーを様々なスケールで貯蔵したり輸送したり幅広い範囲でエネルギーを利用することが可能になると期待されている。
ただ技術力や品質ばかりが重視され注目され過ぎる嫌いがある。上記のような技術をどこの分野にどのように適応していけば、いいのか細かく分析できずに、技術だけが一人歩きあるいはそのままに放置されてしまうような可能性も感じる。
技術バンクのようなものを創設し、国内の異分野から例えば金融関係、映画プロデューサーなど、異業種から日本の技術力を運用できる人材を調達し、運営にあたらせてみるのも1つの方法である。
分野や業界、ジャンルに縛られずに、何でもありのなりふり構わない姿勢が大事である。全体にアンテナを張りつつ、最も適切なタイミングで適切な技術を投入し最大限の効果を発揮できる手法が今、問われている。
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