米韓、北朝鮮問題に関するWG開始(2月11日)
10日、米韓は北朝鮮問題に関するワーキンググループ(WG)を開始した。米韓は2018年11月から北朝鮮問題に関するWGを開催し、南北問題や北朝鮮への経済制裁などについて協議していたが、北朝鮮が「外部勢力に鼻づらを引っ張られている」として韓国を非難していたことから、韓国は昨年下半期にはWGという言い方を避けていた。
韓国の李東烈・平和外交企画団長と米国のアレックス・ウォン国務次官補代理との間で協議が行われているもの。...
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10日、米韓は北朝鮮問題に関するワーキンググループ(WG)を開始した。米韓は2018年11月から北朝鮮問題に関するWGを開催し、南北問題や北朝鮮への経済制裁などについて協議していたが、北朝鮮が「外部勢力に鼻づらを引っ張られている」として韓国を非難していたことから、韓国は昨年下半期にはWGという言い方を避けていた。
韓国の李東烈・平和外交企画団長と米国のアレックス・ウォン国務次官補代理との間で協議が行われているもの。韓国は北朝鮮への個人旅行や、南北間の鉄道や道路の接続、非武装地帯(DMZ)の平和地帯化などの南北協力事業の推進方向について、米国側の協力を求めた。
とくに韓国側は、個人旅行について、人道主義的な立場から、失郷民(朝鮮戦争時に現在の北朝鮮から韓国に非難してきた人々)や朝鮮戦争時の離散家族を優先して推進したいと強調した。つまり個人旅行は営利目的ではなく、人道主義的観点から行われるというものである。さらに鉄道や道路の連結は、北朝鮮が非核化すれば、北朝鮮に明るい未来があることを具現化するプロジェクトだとし、さらにDMZの平和地帯化は実質的な安全保障の一環として推進すると説明した。
米国はこの説明に対し、基本的な理解は示したものの、個人旅行や南北の協力プロジェクトに必要な北朝鮮への経済制裁の緩和問題については討論されていない。
訪韓期間中アレックス・ウォン氏は李度勲・外交部朝鮮半島平和交渉本部長や、青瓦台や統一部の関係者とも面談し、12日に韓国を離れる予定である。
なお10日ウォン氏は、記者団に対し、新型肺炎の防疫に対し北朝鮮に援助を申し出たが、北朝鮮からはまだ回答がないと語った。
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2019年の中朝貿易(2月10日)
2019年の中朝貿易は、中国の対北朝鮮経済制裁が本格的に行われる前の2016年には遠く及ばないものの、2018年よりは輸出入ともに1割増加した。以下はGlobal Trade Atlasの中国の貿易統計の数字である。
中国の対朝輸出は16.7%増の25億8888万㌦だった。最大の輸出品目はプラスチック製品で23.4%増の2.7億㌦である。かつての最大の輸出品目であった一般機械は少なかった2018年よりさらに90.6%減の70万㌦、輸送機械も78.0%減の42万㌦にとどまった。...
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2019年の中朝貿易は、中国の対北朝鮮経済制裁が本格的に行われる前の2016年には遠く及ばないものの、2018年よりは輸出入ともに1割増加した。以下はGlobal Trade Atlasの中国の貿易統計の数字である。
中国の対朝輸出は16.7%増の25億8888万㌦だった。最大の輸出品目はプラスチック製品で23.4%増の2.7億㌦である。かつての最大の輸出品目であった一般機械は少なかった2018年よりさらに90.6%減の70万㌦、輸送機械も78.0%減の42万㌦にとどまった。人道支援なのかコメは16.1万㌧、トウモロコシは2.3万㌧輸出されている。ただし北朝鮮では化学肥料不足から農業生産が不振であり、人糞集めに力が注がれているとされているといわれているが、化学肥料は49.1%減の12.3万㌧にとどまっている。
国連の経済制裁で上限が6万㌧に定められている石油製品は、中国からの対朝輸出は1万923㌧で、上限よりはるかに低い水準である。原油については、中国は2014年から対朝輸出額・量を通関統計に計上していない。沖合で船から船へ荷物を積み替える「瀬取り」が行われていることからすると、中国の公式の輸出量は、2013年以前の52万㌧前後より少なくなっていると思われる(国連の経済制裁の上限は52.5万㌧である)。
中国の対北朝鮮輸入は10.7%増の2.16億㌦だった。
中国の輸入では制裁品目に含まれていない時計が57.9%増の4.9万㌦であった。中国からは時計の部品が8.3万㌦(78.5%増)も輸出されており、今後も時計の対朝輸入は増加するものと思われる。
一方かつての北朝鮮の主力輸出品目であり、かつ国連の経済制裁の対象になっている鉄鉱石や石炭、銅、鉛、亜鉛、水産品の輸出実績は2019年も2018年同様実績はなかった。かわって鉄鋼(4.53万㌧、3386万㌦)やタングステン(1899㌧、1255万㌦)、モリブデン(1010㌧、896万㌦)が輸出されている。
また電力は北朝鮮からも中国からも輸出されている。共同使用されている水豊ダムで発電された電力だと思われるが、北朝鮮から中国へは2.27億kWh輸出されているのに対し、中国から北朝鮮への輸出は2759万kWhである。北朝鮮で電力不足がいわれて久しいが、外貨稼ぎのためなのか、北朝鮮からの輸出が8倍以上多いことになる。ただし電力価格は北朝鮮からの輸出価格が0.05㌦/kWhであるのに対し、中国からの輸出価格は0.10㌦/kWhと中国からの輸出価格が2倍になっている。
中朝間では公式の通関統計の数字以外に、当然密貿易もあると思われるが、密貿易であるがゆえに実態はわからない。ただし新型肺炎の影響で、2020年1月下旬から国境が完全に封鎖されていることから、当面は密貿易も難しそうである。
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米韓作業部会開催、米朝対話を推進できるか(2月7日)
韓国の『KBS』は7日、来週ソウルで、北朝鮮の非核化および対朝制裁問題、南北関係について話し合うための韓米の作業部会(ワーキンググループ)が開催されると報じた。
米国の国務省・北朝鮮政策担当のアレックス・ウォン次官補代理が訪韓し、韓国外交部の平和外交企画団長の李東烈氏と会談すると、外交部が発表したもの。
ワーキンググループでは、米朝対話の早期再開を促すために、南北協力について協議するというもので、韓国政府が提案している北朝鮮への個人旅行等の具体的な協力構想も話し合われる予定。...
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韓国の『KBS』は7日、来週ソウルで、北朝鮮の非核化および対朝制裁問題、南北関係について話し合うための韓米の作業部会(ワーキンググループ)が開催されると報じた。
米国の国務省・北朝鮮政策担当のアレックス・ウォン次官補代理が訪韓し、韓国外交部の平和外交企画団長の李東烈氏と会談すると、外交部が発表したもの。
ワーキンググループでは、米朝対話の早期再開を促すために、南北協力について協議するというもので、韓国政府が提案している北朝鮮への個人旅行等の具体的な協力構想も話し合われる予定。
韓国政府は北朝鮮への個人旅行それ自体は北朝鮮への制裁決議違反にはあたらないとしているが、旅行客が携帯する外貨や物品を持ち込むことについては問題が生じる可能性があるとして、米側と意見を交換したいと考えている模様。
一方韓国の『国民日報』が政府の消息筋の話として、「北朝鮮への個人旅行について、北朝鮮が先月“もう少し回答を待ってくれ”と言ってきた」という記事を掲載したが、これについては、7日韓国統一部の副報道官がはっきりと否定した。
現在北朝鮮は、新型肺炎対策として国境をすっかり閉鎖しているが、たとえ新型肺炎が終息しても、北朝鮮が韓国からの個人旅行を受け入れることは難しそうである。まして南北朝鮮の協力が米朝の対話を促すことにはなりそうにないが、文在寅大統領の任期も折り返しを過ぎ、レームダック化が始まらないうちに、なんとかレガシー作りをしたいということなのだろうか。
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北朝鮮では新型肺炎の発症者はいない(2月6日)
6日北朝鮮の国営メディアである「民主朝鮮」は、北朝鮮ではまだ新型肺炎の発症者はいないと報じ、ただし感染者がいないからといって、警戒を緩めずに厳重に対処していくとも報じている。
5日に韓国の”Liberty Korea Post”が、消息筋の話として、北朝鮮で7人の新型肺炎の感染者がおり、朝鮮人民軍が訓練を全面的に中断していると報じたため、この報道があったものと思われる。
「民主朝鮮」ではさらに、中央の指示に従って、緊急防疫体制をとり、隔離対象の範囲を決めており、実際症例が疑われる患者が1名いて、隔離措置をとっているが、新型肺炎か否かはまだ確定していないと報じた。...
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6日北朝鮮の国営メディアである「民主朝鮮」は、北朝鮮ではまだ新型肺炎の発症者はいないと報じ、ただし感染者がいないからといって、警戒を緩めずに厳重に対処していくとも報じている。
5日に韓国の”Liberty Korea Post”が、消息筋の話として、北朝鮮で7人の新型肺炎の感染者がおり、朝鮮人民軍が訓練を全面的に中断していると報じたため、この報道があったものと思われる。
「民主朝鮮」ではさらに、中央の指示に従って、緊急防疫体制をとり、隔離対象の範囲を決めており、実際症例が疑われる患者が1名いて、隔離措置をとっているが、新型肺炎か否かはまだ確定していないと報じた。また医療従事者には、防護服や防護眼鏡、マスクなどの医療用品と、電力、食糧、飲料水や生活用品なども緊急に提供されているという。
北朝鮮は今月2日にも感染者がいないと、朝鮮保健省の局長が発表していて、今回が新型肺炎に関する報道としては2回目となる。
医療者にマスク等だけではなく、電力や食糧なども緊急に提供されているということは、通常は医療現場にも十分な電力や食糧などが行きわたっていないことが、期せずして明らかになった。
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5ヵ年計画は何処に(2月5日)
2020年は北朝鮮で2016年に始まった5ヵ年計画の最終年である。経済制裁の下、北朝鮮経済が悪化しているであろうと推測されているなかで、5ヵ年計画の現状がどのようなものかは全く明かされていない。もっとも昨年末に行われた第7期中央委員会第5回全体会議の金正恩報告では、経済状況についてデータを示していたということであるが、報道では具体的な数字は明らかにされていない。
5ヵ年計画の現状がわからない中で、同会議ではいきなり「十大展望目標」なる言葉がでてきた。...
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2020年は北朝鮮で2016年に始まった5ヵ年計画の最終年である。経済制裁の下、北朝鮮経済が悪化しているであろうと推測されているなかで、5ヵ年計画の現状がどのようなものかは全く明かされていない。もっとも昨年末に行われた第7期中央委員会第5回全体会議の金正恩報告では、経済状況についてデータを示していたということであるが、報道では具体的な数字は明らかにされていない。
5ヵ年計画の現状がわからない中で、同会議ではいきなり「十大展望目標」なる言葉がでてきた。「展望目標が確定すれば」とあることからすると、まだ目標自体は検討途中のようである。5ヵ年計画はどうなってしまったのか。
北朝鮮では40年前にも同じようなことが起こっていた。当時北朝鮮では第二次7ヵ年計画(1978-84)中であったが、1980年になって80年代末を達成の目標とする「十大展望目標」が掲げられた。奇妙なのはその目標数字である。第二次7ヵ年計画に比べ、「十大展望目標」では鉄鋼生産量では2倍(1500万㌧)、干拓面積に至っては3倍(30万ha)という過大な数字が掲げられていた。当時第二次7ヵ年計画がうまくいっていなかったために、目標を80年代末までにのばしたかのようであったが、あまりにも過大な目標数字であった。実際第二次7ヵ年計画はうまくいかなかったためか、工業総生産額の伸び率の指数の発表も1982年を最後に発表されなくなった。
結局第二次7ヵ年計画は、85年2月に終了したとの発表があったが、達成数字は発表されず、85,86年を「調整期間」として、87年からようやく第三次7ヵ年計画(1987-93年)が始まったのであった。さらにこの計画の目標のなかには鉄鋼のように1000万㌧と、「十大展望目標」の数字(1500万㌧)よりも低いものもあった。
今回の「十大展望目標」がどのようなものになるのかはまだ定かではない。期限も公表されていない。ただしもしも5ヵ年計画がうまくいっていないとしたならば、金正恩委員長は祖父(金日成主席)の時代にとられていた手法を使おうとしているともとらえることができる。
そういえば、金正恩委員長は就任当初、祖父のスタイルを意識的に踏襲しているのではないかとしきりに噂されていた。
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