【日本の課題】
日本の原発政策(8月29日)
三井物産・三菱商事はサハリン2への出資を継続する方針を示したが、ウクライナ戦争の長期化が確実視される中で、日本側が呑めない条件をロシア側から突き付けられ、サハリン2からのLNGが入って来なくなる可能性も依然として残っている。
そうしたエネルギー安全保障リスクや電力不足に対応する意味でも、日本は現在止まっている原子力発電所を動かしていく必要がある。
24日、政府は総理大臣官邸でGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を開き、これまでに再稼働した原発10基に加え、来年の夏以降、追加で7基の再稼働を目指す方針を確認した。...
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三井物産・三菱商事はサハリン2への出資を継続する方針を示したが、ウクライナ戦争の長期化が確実視される中で、日本側が呑めない条件をロシア側から突き付けられ、サハリン2からのLNGが入って来なくなる可能性も依然として残っている。
そうしたエネルギー安全保障リスクや電力不足に対応する意味でも、日本は現在止まっている原子力発電所を動かしていく必要がある。
24日、政府は総理大臣官邸でGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を開き、これまでに再稼働した原発10基に加え、来年の夏以降、追加で7基の再稼働を目指す方針を確認した。
にわかに追い風が吹き始めたかのように見える日本の原子力政策だが、ロシア側の動きによって今、窮地に追い込まれている。ロシア側がウクライナのザポリージャ原発に対しミサイル攻撃を行ったことによって「テロ対策の強化」「安全性第一」という原発に対する規制強化の機運が強まり、原発の再稼働を急ぎたい政府の方針を揺るがしている。
特重(特定重大事故等対処施設)はテロ攻撃などがあった場合、放射性物質の拡散を防ぐための施設で、その設置を義務付けた原子力規制委員会の規則は、福島第一原発事故の教訓を生かし、大変厳しいものとなっている。
例えば、福井県の関西電力「美浜原発3号機」は2021年6月に再稼働が認められたものの、定められた期限内にテロ対策施設が完成しなかったという理由で、たったの4か月で運転を停止するはめになった。
ベースロード電源のひとつである原発の稼働には時間がかかることは間違いなく、経済や社会からの需要と安全性の間で政府は板挟みになっているように見える。
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原発は電力危機克服の切り札となるか(8月13日)
老朽化原発を稼働させるという施策により、今夏の電力需給はなんとか乗り切れる見通しとなった日本だが、厳しいのはとどまるところを知らない電力価格高騰と今冬の電力需給である。
電力需給に関しては、電力インフラへの投資不足、火力発電の停廃止、厳しい審査による原発再稼働の遅れ、再生可能エネルギーの発電が天候に左右されることなどによる発電能力の不足、ロシアのウクライナ侵攻に伴う天然ガス価格の高騰などにより、今冬の電力需給の東京電力管内の予備率はマイナスに落ち込む可能性すら指摘されている。...
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老朽化原発を稼働させるという施策により、今夏の電力需給はなんとか乗り切れる見通しとなった日本だが、厳しいのはとどまるところを知らない電力価格高騰と今冬の電力需給である。
電力需給に関しては、電力インフラへの投資不足、火力発電の停廃止、厳しい審査による原発再稼働の遅れ、再生可能エネルギーの発電が天候に左右されることなどによる発電能力の不足、ロシアのウクライナ侵攻に伴う天然ガス価格の高騰などにより、今冬の電力需給の東京電力管内の予備率はマイナスに落ち込む可能性すら指摘されている。
ロシアからの日本へのLNG輸入は全体の1割弱を占めているが、今後の日本の電力需給に暗い影を投げかけているのが「サハリン2」について、ロシア側から1か月以内に新ロシア法人への参画に同意するかの判断を迫られていることである。
水面下でロシア側に非友好国と認定された日本は、呑めない要求を迫られている可能性があり、予断を許さない状況に置かれている。仮に「サハリン2」から撤退となった場合にはこれを代替できるLNG契約は他になく、今後の日本の電力需給に大きな影響を及ぼす可能性がある。
8月10日に行われた内閣改造で新たに経済産業担当大臣に就任した西村康稔大臣は来夏以降の電力安定供給のために原発の再稼働が必要との立場を打ち出している。加えて次世代原発SMRなどの研究開発も積極的に行っていきたいとするなど、原発推進姿勢を明確にしている。
今冬の電力需給をいかに乗り切るかについては原発の運転再開と休止中の火力発電所を着実に稼働させていくことによって乗り切っていきたい方針である。
欧州や韓国、中国、トルコなど、世界中がクリーンエネルギーとしての原発に回帰する動きがある中、日本は2011年の福島第一原発事故のトラウマを抱えており、原発への回帰に関しては他国に比べてひと際ハードルが高いと言わざるを得ない。
菅政権下で、コロナ担当大臣として地域や社会に対し説明を行い説得する役割を担った西村大臣に、今度は原発再稼働について白羽の矢が立った形である。
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人口減少の中での外国人労働者問題(6月28日)
日本の少子化問題の打ち手の1つは外国人労働者の受け入れである。日本人労働者が減少する中、今後、外国人労働者の割合が高くなってくることも予想されている。
歴史を振り返ると、第二次安倍政権の下で急速に進んだのが、外国人労働者の受け入れであった。在留資格に「特定技能」という項目を追加したことによって事実上の外国人労働者受け入れが進み、日本人がやりたがらない仕事も気軽に引き受けてくれる外国人労働者に助けられてきたのは事実である。...
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日本の少子化問題の打ち手の1つは外国人労働者の受け入れである。日本人労働者が減少する中、今後、外国人労働者の割合が高くなってくることも予想されている。
歴史を振り返ると、第二次安倍政権の下で急速に進んだのが、外国人労働者の受け入れであった。在留資格に「特定技能」という項目を追加したことによって事実上の外国人労働者受け入れが進み、日本人がやりたがらない仕事も気軽に引き受けてくれる外国人労働者に助けられてきたのは事実である。
厚労省のデータによれば現在、日本における外国人労働者の国籍はベトナム、中国、フィリピン、ブラジルの4か国だけで7割近くとなっており、国にやや偏りが見られるところが気がかりである。
外国人労働者が従事する中で最も多いのは建設業で、次がサービス業、卸売業・小売業となる。
こうした流れの中で、厚生労働省は来年度、外国人労働者の統計を新設することを決めた。新統計では国籍や在留資格、賃金や雇用形態、勤続年数、労働時間、前職や転職理由、母国での最終学歴や家族への仕送り額などが把握できるという。この統計は政策立案やマーケティング、外国人労働者の待遇改善や就労支援、企業とのマッチングに役立てることが期待されているという。
日本において外国人労働者はコンビニなどで既に顔なじみの存在となっているものの、国民不在のまま、政策によってどんどん水面下で外国人労働者の受け入れが進んでいるようにも感じられる。
受け入れることで既成事実化させてしまうのではなく、改めて国民的な議論も必要となる。
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日本列島周辺のきな臭い動き(6月26日)
尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で25日、中国海警局の船2隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは71日連続である。中国船の出没はもはや常態化しており、実効支配している証拠とエビデンスを無理やり作り出しているといえる様な行動様態である。
一方、ロシア海軍も日本を威嚇するかのような動きを見せている。20日にはロシア海軍の駆逐艦やフリゲート艦など5隻が沖縄本島と宮古島の海域を通過し、太平洋から東シナ海に入ったのを海上自衛隊の艦艇や哨戒機が確認した。...
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尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で25日、中国海警局の船2隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは71日連続である。中国船の出没はもはや常態化しており、実効支配している証拠とエビデンスを無理やり作り出しているといえる様な行動様態である。
一方、ロシア海軍も日本を威嚇するかのような動きを見せている。20日にはロシア海軍の駆逐艦やフリゲート艦など5隻が沖縄本島と宮古島の海域を通過し、太平洋から東シナ海に入ったのを海上自衛隊の艦艇や哨戒機が確認した。
5隻はいずれも15日に北海道・襟裳岬の南東沖で確認されその後、千葉県沖や伊豆諸島周辺を航行し、日本列島を威嚇するようにほぼ半周した。ロシア国防省は、太平洋で40隻以上の艦艇などが参加する大規模な演習を行うと発表しており、防衛省関係者によると、5隻はこの演習に参加していたとみられる。
ロシアの日本への威嚇は経済制裁以来、どんどんエスカレートしてきているようにも見える。プーチン政権は、日本を繰り返し非難し、「ビザなし交流」事業も停止、4月にはモスクワに駐在する日本大使館の外交官ら8人を追放し、5月にはロシアへの入国を禁止する岸田首相を含む日本人63人のリストを公開するなど、強硬な姿勢を続けている。
ロシアはサイバー空間でも日本に攻撃を仕掛け続けており、マイクロソフト社は「日本も(サイバー攻撃の)標的になっている」と報告書で警鐘を鳴らしている。さらに第2次世界大戦が終結したとする9月3日の記念日の名称について、ロシア議会議員グループは24日、「軍国主義日本に対する勝利と第2次世界大戦終結の日」にする法案を下院に提出した。その理由として、ウクライナへの特別軍事作戦の開始以降、日本は、欧米とともにロシアに対して前例のない非友好的キャンペーンを展開していることを挙げている。北朝鮮も中国とロシアと連携した動きを見せている。国連安保理で中国とロシアが拒否権を発動し、事実上の野放し状態が続いている。近日中に北朝鮮はミサイル実験・核実験を行うとみられるが、場合によっては日本列島上空を通過させる可能性も否定できない。
ロシア・中国・北朝鮮に囲まれた日本は地政学的な脅威に囲まれ、日々威嚇されているにも関わらず、現下の参院選挙において安全保障の話があまり取り上げられない。
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慢性的な電力不足に備えよ(6月20日)
ウクライナ情勢などによるエネルギー供給への影響などにより、来月7月にも電力が足りなくなる可能性が出てきている。今夏も高温が予想されるが、停電してしまうとエアコンが使えなくなり、高齢者が熱中症にかかる確率が高まるなど、命にかかわるケースが予想される。
電力を安定供給するには需要に対して3%の余力が必要といわれるが、7月の余力は東北・東京・中部電力管内で3.1%となっており、まさにぎりぎりの綱渡りの状態である。...
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ウクライナ情勢などによるエネルギー供給への影響などにより、来月7月にも電力が足りなくなる可能性が出てきている。今夏も高温が予想されるが、停電してしまうとエアコンが使えなくなり、高齢者が熱中症にかかる確率が高まるなど、命にかかわるケースが予想される。
電力を安定供給するには需要に対して3%の余力が必要といわれるが、7月の余力は東北・東京・中部電力管内で3.1%となっており、まさにぎりぎりの綱渡りの状態である。さらに来年1月の余力を見てみると、東京電力管内ではマイナス0.6%となっており、より厳しい状態が予測されている。
今は原発を動かせないため、老朽化のため一旦廃炉にした火力発電所を再動させ急場をしのいでいる。メンテナンスもされていなかった為、雨漏りさえしているという。
現在、日本のエネルギーの電源構成(2019年度)は火力発電が84.8%と圧倒的に多い(原子力2.8%、水力3.5%、再エネ8.8%)。
脱炭素が叫ばれる中で火力発電所を使うことは地球環境全体から見れば好ましくない事態であり、日本は将来的に現在の電源構成比率を変えていかなくてならない。天候に左右される再エネでは安定性に欠けておりベースロード電源にはなり得ない。火力発電を当面の間使う分には問題ないが、ウクライナ戦争が長期化した場合には、他の方法を考える必要が出てくる。
その場合、日本に残された選択肢は原発を再稼働していく以外にない。そのためには政治家は停電が続いたリスクと原発を稼働させた場合のリスク、日本が原発をやめても世界では原発が増加していること、日本には長年蓄積された原子力発電のノウハウがあること、将来的にはより危険性がすくない核融合などの技術につなげていくことができることなどを地域住民に分かりやすく説明し、納得させる努力が必要となってくる。
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日本周辺波高し(6月5日)
6月5日、防衛省は北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射され、日本のEEZ(排他的経済水域)の外側の日本海に落下したと見られると発表した。ミサイルであれば5月25日に発射した3発の弾道ミサイルに続くものとなる。
最近の動きをまとめると6月3日、日米韓3か国の北朝鮮担当高官による協議が行われたことに続き、米韓両軍が原子力空母を投入した共同訓練を4年7か月ぶりに行った。この訓練は沖縄の南東の公海上で行われ、米国の原子力空母「ロナルドレーガン」や韓国のイージス駆逐艦なども参加する本格的なものであった。...
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6月5日、防衛省は北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射され、日本のEEZ(排他的経済水域)の外側の日本海に落下したと見られると発表した。ミサイルであれば5月25日に発射した3発の弾道ミサイルに続くものとなる。
最近の動きをまとめると6月3日、日米韓3か国の北朝鮮担当高官による協議が行われたことに続き、米韓両軍が原子力空母を投入した共同訓練を4年7か月ぶりに行った。この訓練は沖縄の南東の公海上で行われ、米国の原子力空母「ロナルドレーガン」や韓国のイージス駆逐艦なども参加する本格的なものであった。今回の北朝鮮の飛翔体の発射は連携を強める日本、米国、韓国の3か国への反発を示し、けん制するねらいがあると見られる。北朝鮮は7回目の核実験を行う兆候も見せている。
一方、中国船が沖縄周辺で不審な動きを見せている。4日、外務省は石垣島北およそ73キロメートルのEEZ内で中国の海洋調査船が観測機器のようなものを海中に投入しているところを海上保安庁が確認し、現場で中止を求めたものの、中国船からは応答がなかったという。外務省は事前の同意がなかったとして、中国側に対し即時中止を求めて抗議している。
最近の動きを総括すると5月23日にバイデン大統領が来日し、日米首脳会談、24日にはインドのモディ首相、豪州のアルバニージー首相を呼んでクアッドが行われた。この同じタイミングで中ロの爆撃機が日本海・東シナ海上空を共同飛行し、25日には北朝鮮が3発の弾道ミサイルを発射した。
26日には中国・王毅外相がIPEFやクアッドに対抗するかのように南太平洋島嶼国を歴訪し、26日には国連安保理で中国・ロシアが北朝鮮制裁決議案を拒否するなど中国・ロシア・北朝鮮は完全に連動した動きを見せている。
ロシアも活発な外交を見せており、3日にはアフリカ連合(AU)議長国セネガルのサル大統領がプーチンにアフリカの食料危機を訴えた。8日にはプーチンがトルコ・イスタンブールに赴きエルドアンとの会談を行うという情報もある。
特に警戒すべきは6月12日のロシア建国記念日であり、この日にプーチンが何らかの宣言を行うとも言われている。今、中国・ロシア・北朝鮮の連動した動きに警戒していく必要がありそうである。
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驚き・想定より6年早く少子化が進行(6月4日)
【想定より6年早く少子化が進行】
驚くべき数字が上がってきた。コロナ禍における出産控えの影響もあり、出生数は国の推計より6年も早く81万人に突入し、想定より早く少子化が進行している。今、日本にとっての一番の脅威は少子化になってきた。
このままで行くと、2049年より前に日本の人口は1億人を切る可能性が高まっている。さらに1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2021年は1.30で、6年連続で低下した。...
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【想定より6年早く少子化が進行】
驚くべき数字が上がってきた。コロナ禍における出産控えの影響もあり、出生数は国の推計より6年も早く81万人に突入し、想定より早く少子化が進行している。今、日本にとっての一番の脅威は少子化になってきた。
このままで行くと、2049年より前に日本の人口は1億人を切る可能性が高まっている。さらに1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2021年は1.30で、6年連続で低下した。背景には子どもを持ちたいとの意欲が減退しているとの指摘があり、子育てや教育にお金がかかりすぎることが問題視されている。
【少子化の影響】
人口が減れば確実にGDP国内総生産が減り、経済力が落ちる。物流や公共交通機関における人材不足で、物流が滞り、コストも上がる。災害等の予期せぬ事態に対応可能な自治体職員もいなくなり、災害列島日本はその災害に対応できる力も劣化していくなど社会基盤も揺らぐ。
生活必需サービスを提供する看護師・介護士・保育士・ごみ収集員などエッセンシャルワーカーが激減し、有料サービスがクリーンで手厚いサービスを受けられる一方、無償の公共サービスは削減され、質が劣化する可能性もある。
【解決策は?】
解決策は生産性を上げ、ハイテク化・機械化を進め技術革新イノベーションを進めること。外国人労働力を導入すること。女性・高齢者の賃金水準を上げ労働力として採用すること。
男女の差別をなくし、子育てや教育にかかる費用を軽減させ育児分担を軽減する公共サービスを充実させる。
外国人労働力導入はなかなか日本社会にとって難しい課題ではあるが、推し進めていく以外ない。
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世界は不安定な時代に(2月14日)
コロナ禍から経済活動の復活を見越した原油先物市場での動きや、脱炭素化の動き、さらにロシアによるウクライナ侵攻などの予測を受け、原油が大きく値上がりしている。
原油から作られる様々な石油製品も連動して値上がりしている。日本のガソリン価格は13年4ヶ月ぶりに170円を突破し、トリガー条項を発動するかどうかというところまで話が及んでいる。
暖房やプラスチック製品など、身の回りの多くのインフラに石油が使われているために庶民生活への大きな影響が出ている。...
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コロナ禍から経済活動の復活を見越した原油先物市場での動きや、脱炭素化の動き、さらにロシアによるウクライナ侵攻などの予測を受け、原油が大きく値上がりしている。
原油から作られる様々な石油製品も連動して値上がりしている。日本のガソリン価格は13年4ヶ月ぶりに170円を突破し、トリガー条項を発動するかどうかというところまで話が及んでいる。
暖房やプラスチック製品など、身の回りの多くのインフラに石油が使われているために庶民生活への大きな影響が出ている。世界各国の消費者物価指数も軒並み上昇し、人々の生活は苦しくなる一方である。市場では現在の原油価格の高止まり傾向は当分続くという悲観的な見立てさえ出されている。
こうした流れを食い止めようと、動き出したのが米国である。FOMCのメンバーでもあるセントルイス連銀・ブラード総裁は「7月までに1%の利上げを行う」と発言した。ところがこの発言がFRBによる過度な引き締めが行われるとの憶測を生み、記録的なインフレ懸念をもたらしてしまった。ウクライナ情勢の悲観的見立てとも絡み合って、株価は大幅に下落し逆の結果を招いている。
これにともない金利の上昇が世界的な広がりを見せ、経済基盤の弱い南欧や新興国を直撃し始めている。まさに世界は動乱の時代を迎えている。
一方で、資源高の恩恵を享受している一部の企業や中東やロシアのような国も存在している。ウクライナ危機のキープレーヤーであるロシアは、資源高の恩恵を受け、金を買いあさっており、足元の外貨準備は金と合わせると史上最高の6300億ドルになっているという。
民主国家より専制国家が生きやすい時代に入っているのかもしれない。世界のどこかでウクライナ侵攻のような事態がまた起きるかもしれない。
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老朽化した社会インフラ(1月21日)
近年、老朽化した社会インフラの問題が先進国の間で喫緊の課題となっている。
2007年、米国・ミシシッピ川にかかっている橋が突如崩壊し、多くの死傷者を出した。全米の25%の橋が老朽化し欠陥を抱えている他、トンネルの12%は建設されてから100年経過したものだという。こうした中で、バイデン大統領は1兆ドル(115兆円)規模の超党派インフラ法案に署名し、老朽化インフラ復興プロジェクトを稼働させた。...
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近年、老朽化した社会インフラの問題が先進国の間で喫緊の課題となっている。
2007年、米国・ミシシッピ川にかかっている橋が突如崩壊し、多くの死傷者を出した。全米の25%の橋が老朽化し欠陥を抱えている他、トンネルの12%は建設されてから100年経過したものだという。こうした中で、バイデン大統領は1兆ドル(115兆円)規模の超党派インフラ法案に署名し、老朽化インフラ復興プロジェクトを稼働させた。
欧州でも状況は変わらない。ドイツの高速道路は建設から50年が経過している。英国・ロンドンの水道の50%は築後100年となるという。
日本もまた状況は同じである。中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し、9人が犠牲になった事故も設備の老朽化が原因であった。
日本のインフラは50年代から70年代初頭にかけての高度経済成長期に整備された施設が多く、特に地震や自然災害も多い日本の老朽化設備の刷新は待ったなしの状況である。
そういう意味では東京オリンピック特需、東日本大震災復興関連事業などの追い風が少なくなってしまった日本のゼネコンにとっては新たな風が吹いてきている状況かもしれない。
起爆剤として期待をかけていた統合リゾート計画も白紙撤回された今、老朽化したインフラの整備、災害に強い国土強靭化計画にゼネコンは活路を見出している。
ただの大規模インフラ整備で終わってはならない。ドローンやAIなど新しい技術と組み合わせ、結びつけることで日本の成長産業にしていく必要もある。
例えば下水道管の中を飛行しAIを駆使し、ひび割れ箇所を見つける小型ドローン開発を手掛けるスタートアップなども出てきている。
マイナスをプラスに転じる知恵が日本に求められている。
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東京電力・福島第一原発・処理水・ことし秋以降・満杯の見込み(1月3日)
東京電力の福島第一原発では2011年の事故でメルトダウンが起き、溶け落ちた核燃料を冷却するため現在も水を入れ続けていて、冷却に伴って出る汚染水は1日あたり約140トン発生している。
汚染水は特殊な装置を使って放射性物質を取り除くが、除去が難しいトリチウムなど一部の放射性物質が残った処理水がたまり続けていて、敷地内の大型タンクで保管しているがことし秋以降に満杯になる見通しである。
このため国は処理水を基準以下に薄めたうえで来年春をメドに海に流す方針を決め、東京電力はこの方針に従って原発の1キロほど沖合から放出する計画で、原子力規制委員会が審査している。...
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東京電力の福島第一原発では2011年の事故でメルトダウンが起き、溶け落ちた核燃料を冷却するため現在も水を入れ続けていて、冷却に伴って出る汚染水は1日あたり約140トン発生している。
汚染水は特殊な装置を使って放射性物質を取り除くが、除去が難しいトリチウムなど一部の放射性物質が残った処理水がたまり続けていて、敷地内の大型タンクで保管しているがことし秋以降に満杯になる見通しである。
このため国は処理水を基準以下に薄めたうえで来年春をメドに海に流す方針を決め、東京電力はこの方針に従って原発の1キロほど沖合から放出する計画で、原子力規制委員会が審査している。
東京電力は計画が認められ地元や関係者の理解を得たうえで、ことし6月ごろから処理水を海水で薄める設備や海底トンネルなどの工事に着手したい考えで、来年4月中旬頃には工事を完了したいとしている。
一方で、処理水の放出は地元の漁連などを中心に風評被害を懸念する声が根強く、韓国や中国からも撤回が求められているなど計画どおり進むかは不透明で、東京電力は地元をはじめ国内外の関係者からどのように理解を得るかが引き続き課題となる。
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地球環境と産業構造のバランス(12月31日)
2021年に起こった「これからの地球環境と産業発展のバランス」の動きを纏めると1.脱炭素化、2.EV化、3.新エネルギーの促進に向かう3つの方向性がはっきりと打ち出されたということがいえる。英国・グラスゴーで開催されたCOP26では気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、2030年までを「決定的な10年間」と位置づけ、産業革命前からの気温上昇幅を、1.5度に抑えるよう世界が努力するという合意がなされた。...
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2021年に起こった「これからの地球環境と産業発展のバランス」の動きを纏めると1.脱炭素化、2.EV化、3.新エネルギーの促進に向かう3つの方向性がはっきりと打ち出されたということがいえる。英国・グラスゴーで開催されたCOP26では気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、2030年までを「決定的な10年間」と位置づけ、産業革命前からの気温上昇幅を、1.5度に抑えるよう世界が努力するという合意がなされた。世界各国がこの目標達成に向けて一斉にスタートを切った年とも言える。
1.脱炭素化
COP26議長国・英国は当初、「石炭火力の段階的廃止」を共同文書に盛り込む意向であったが、石炭火力発電に依存しているインドなどの反対で盛り込むことができなかった。一方、福島第一原発事故以降、化石燃料に依存している日本は火力発電にアンモニアを混ぜるなどしてCO2の排出量を減らすことで今後も火力発電を続けていく方針を示している。とは言っても、我が国にも脱炭素化に本格的に取り掛かる機運が生まれている。
2.EV化
世界ではEV化の流れに合わせ、充電ステーションなどインフラ整備の話題が日々報じられる中で日本は世界のEV化の流れに出遅れていると言われてきた。その理由は世界の自動車産業トップ企業であるトヨタ自動車が慎重な姿勢を見せていたためであった。日産、ホンダはEVシフトを鮮明にしていたが、トヨタ自動車においてはEVは脇役的な立ち位置に過ぎなかった。ところが、豊田章男社長は突然、会見を開き、「2030年にEV販売目標を350万台に増やす」と宣言し、HV、PHVなどと同等にEVにも力を入れていくとした。これは事実上の方針転換と言ってよいのではないか。今後は日本国内でもEV化の流れ、充電ステーションの整備、蓄電池の開発・製造が大幅に加速しそうである。
3.新エネルギーの促進
脱炭素の流れを受けて、炭素を排出しない太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーや小型原発などの新エネルギーが大きな注目を集めている。今、注目されているのが大規模な洋上風力発電である。三菱商事などが中心となって秋田県沖(65基)と千葉県沖(31基)の設置を進めるなどし、今後も様々な企業が風力発電に参入してくるものとみられる。発電量が天候に左右されず、火山国・日本の特性を生かすことができる地熱発電にも期待が集まっていて、北海道や岩手、秋田などで稼働が開始されている。原発再稼働や小型原発導入に関しては東日本大震災・福島原発事故を契機に国民に原発トラウマがあるため、国民を説得していく必要があり、手続きに時間が割かれる可能性もある。太陽光や風力などは国土や地形の問題、自然災害による被害の影響などがあり安定供給が難しいとの見立てもある。
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いまだに国産ワクチンができない現状(12月29日)
新型コロナウイルスの流行が来年の1月で3年目を迎えるが、日本は科学立国として多数のノーベル賞受賞者を輩出していながら、残念ながら国産ワクチンがないまま、他国のワクチンの言い値で高価なワクチンを入手する立場に甘んじている。
国産ワクチンの話がしばしばマスコミを賑わせるが、登場は2022年以降になるとも言われている。日本はなぜワクチン敗戦国になったのか。それには複数の要因が考えられる。
そもそも国の意識としては、ワクチンが安全保障物資という認識がなかった。...
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新型コロナウイルスの流行が来年の1月で3年目を迎えるが、日本は科学立国として多数のノーベル賞受賞者を輩出していながら、残念ながら国産ワクチンがないまま、他国のワクチンの言い値で高価なワクチンを入手する立場に甘んじている。
国産ワクチンの話がしばしばマスコミを賑わせるが、登場は2022年以降になるとも言われている。日本はなぜワクチン敗戦国になったのか。それには複数の要因が考えられる。
そもそも国の意識としては、ワクチンが安全保障物資という認識がなかった。その為、補助金をつけるなどの対策をして優秀なワクチン製造会社を育ててこなかった。旧日本陸軍に731部隊という細菌兵器を製造する部隊があったことも日本のワクチンに対するトラウマとなった。
企業にとってはいつまでパンデミックが続いていくのかを予測することが非常に難しく、設備投資や研究開発に資金を投入するには大きなリスクがあった。
海外のメガファーマと異なり、資金力に欠けるため巨額の費用を要する大規模な治験もできないことなどが大きなネックとなった。さらに国民と厚生労働省がワクチンの副作用に対する強い恐怖心を持っていることなどが追い打ちをかけた。
特に大きなボトルネックは既に出来上がっている仕組みを変えることが日本ではなかなか難しいということであった。
問題提起されても解決や改善することなく、一定の時間が経過すると、うやむやになってしまうことが繰り返されてきた。問題の所在はわかっているが、そこから先に話は進まない。
既得権益、利害関係が絡んでいるために、そこに手を入れない限りは状況をなかなか変えることができない。国産ワクチンができない背景にはこのような大きな構造的な問題が横たわっている。
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中国とアジアの歴史・そこから見える中国とアジアのこれから(11月27日)
2日、中国とASEANはオンライン会議を開催し、議長を務めた中国・習近平国家主席は「域内諸国を抑圧し覇権を追求することはない」などと表明し、ASEAN取り込みに躍起になっている。
それというのもASEANが中国が支援するミャンマー軍トップのミンアウンフライン総司令官を(欧米に忖度して)排除したり、G7がリバプールで行われる外相会談にASEANを招待するなど、欧米が政治、軍事両面でASEANに関与していく動きを察知したからと見られている。...
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2日、中国とASEANはオンライン会議を開催し、議長を務めた中国・習近平国家主席は「域内諸国を抑圧し覇権を追求することはない」などと表明し、ASEAN取り込みに躍起になっている。
それというのもASEANが中国が支援するミャンマー軍トップのミンアウンフライン総司令官を(欧米に忖度して)排除したり、G7がリバプールで行われる外相会談にASEANを招待するなど、欧米が政治、軍事両面でASEANに関与していく動きを察知したからと見られている。
ASEAN構成国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアだが、現在のミャンマーは排除されている。
ASEANは2000年代に入って大きく中国寄りに舵を切った。中国にとって、ASEANは自国製品の売り込み先であると同時に、「一帯一路」構想における投資対象地域であり、安価な労働力の調達先であり、資源・エネルギーの確保先であり、物流ルートの確保先であり、絶対に手放すことのできない地域であったし、これからもそれは変わらない。
しかし、ここへ来てASEANは中国の専制国家的な動きに反応して中国とも一定の距離を保つようになっている。
一方、中国はASEANの取り込みを図る以外にも、例えばカンボジアにおける「ダラサコーロングベイプロジェクト」への援助に見られるように一つ一つの国と個別に関係を築いていきながら自陣営に取り込もうとしている。
中国が「一帯一路」に力を入れるのは欧米、特にかつて香港を割譲させられた英国に対する軋轢という要素も大きい。その英国が音頭をとるG7外相会議がASEANを取り込もうとしている動きは中国にとっては脅威であり、許せない動きでもある。
ASEANの中で中国寄りの国はインドネシア、カンボジア、タイ、ラオスで、中立の国はシンガポール、どちらかというとアンチ中国の国はフィリピン、ベトナムと言われているが、いずれの国も中国との間に、歴史的な関係があり、日本が考えるほど単純ではなく複雑である。今後の動きを予測するのであればそうした視点を取り入れつつ見ていく必要があると思われる。
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脱炭素で注目集める原発(11月13日)
化石燃料に代わる有力なベースロード電源として世界で原発に対する注目度が高まっている。
裏を返せば当初期待していた自然エネルギー、例えば風力発電についてデンマークで無風状態が続き、発電できないなどの欠点が見えてきた今、安定性があり現実的な選択肢として原発が再浮上してきたということである。
トルコ政府はロシアに2基の原発を発注する方向である。中国は新規原発6基に着手し、現在18基を建設中である。...
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化石燃料に代わる有力なベースロード電源として世界で原発に対する注目度が高まっている。
裏を返せば当初期待していた自然エネルギー、例えば風力発電についてデンマークで無風状態が続き、発電できないなどの欠点が見えてきた今、安定性があり現実的な選択肢として原発が再浮上してきたということである。
トルコ政府はロシアに2基の原発を発注する方向である。中国は新規原発6基に着手し、現在18基を建設中である。フランス・マクロン政権は加圧水型原子炉を最大6基、建設する計画を進めている。
さらに米国・英国・フランスは小型モジュール原発(SMR)の開発に乗り出している。SMRの特徴は小規模な為、例え事故を起こしても小規模で済むというものである。モジュールはレゴのように1基のみ設置することも、複数のモジュールを組み合わせて発電所の一部として導入することも可能である。
一方、日本は原発の導入では厳しい状況にある。未だに福島原発事故が大きなトラウマとして残っているからであり、特に原発の新規建設については住民の反対が大きく、かなりハードルが高い。
日本と同じく原発の技術力では定評の高い韓国も福島原発事故を受けて、脱原発に舵を切ったため、国内での原発の設置は難しい模様となっている。
現在のところ、日本は2050年カーボンニュートラルを実現するためには少なくとも間つなぎのエネルギー源として原発を使わざるを得ない。このことを原発トラウマの大きい国民にどう説得していくのかという手腕が政治家に問われている。
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林外相・初の日米電話外相会談・そこから見えるもの(11月13日)
林外務大臣が13日、米国・ブリンケン国務大臣と就任後初となる日米外相電話会談を行なった。
この中でブリンケン氏は「尖閣には日米安保第五条が適用される」と改めて表明した。
両首脳は中国の南シナ海、東シナ海における一方的な現状変更に強く反対することで一致し、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。また外務防衛2プラス2の早期開催を目指して調整していくことで一致した。
両首脳の根底にある共通認識は人民解放軍を世界レベルの軍隊にしようと軍拡を急ぐ中国に対する脅威である。...
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林外務大臣が13日、米国・ブリンケン国務大臣と就任後初となる日米外相電話会談を行なった。
この中でブリンケン氏は「尖閣には日米安保第五条が適用される」と改めて表明した。
両首脳は中国の南シナ海、東シナ海における一方的な現状変更に強く反対することで一致し、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。また外務防衛2プラス2の早期開催を目指して調整していくことで一致した。
両首脳の根底にある共通認識は人民解放軍を世界レベルの軍隊にしようと軍拡を急ぐ中国に対する脅威である。
特に先週、米国国防総省・年次報告書が「中国が2030年までに少なくとも1000発の核弾頭の保有を目指している可能性がある」との分析を発表したことが大きな影響を及ぼしている。中国の隣国・日本にとっては中国の尋常でない軍拡は看過することができないものである。
米国国防総省報告書がきっかけとなって、米中の軍事拡張競争が際限なくエスカレートした場合、米国は、日本を含む太平洋地域に例えば中距離弾道ミサイルなど、より多くの軍備を配備し、より積極的・具体的に中国と対峙していこうと考えることは時間の問題となっている。
自民党内部からは日本の防衛費を他国並みのGDP比2%水準にするべきだとの声もあがっているが、急激に軍備を拡張することは難しい情勢にある。
基本路線はあくまでも日米同盟であり、段階を経て、日本の軍事費を将来的に2%水準にしていくという方向が現実的である。お金、武器を増やしても憲法や法律の問題、人材が足らないという問題が将来的に出てくる可能性もあり、こうした問題も将来的に念頭に入れておく必要が日本にはある。
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温暖化ガスの46%削減の実現可能性は(11月9日)
今世紀末までに世界の気温上昇を1.5度に抑えるという目標に向けて世界が一斉に動き始めている。日本は中期目標として2030年までに温暖化ガスの46%削減(2013年度比)を国際公約にした。
この目標達成は日本にとって容易なものではなく、現段階では目標数値ありきで、明確な目標達成の裏付けの見えないまま、目標を示している状況である。
これからは、目標達成のために何をどうしようという具体的な説明の必要性が出てくる。...
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今世紀末までに世界の気温上昇を1.5度に抑えるという目標に向けて世界が一斉に動き始めている。日本は中期目標として2030年までに温暖化ガスの46%削減(2013年度比)を国際公約にした。
この目標達成は日本にとって容易なものではなく、現段階では目標数値ありきで、明確な目標達成の裏付けの見えないまま、目標を示している状況である。
これからは、目標達成のために何をどうしようという具体的な説明の必要性が出てくる。まず自然エネルギーに関してひとつひとつ見ていきたい。まず風力発電であるが、実はこの10年間、日本は浮体式風力発電を模索してきたが、本腰を入れてこなかったため、その間にノウハウを蓄え実績を積んできた英国やデンマークなど欧州の企業が、次々と日本市場に参入して来ようとしている事態となっている。このままいくと欧州製の風力発電によって日本は目標を達成するのと引き換えに自然エネルギー市場のシェアを欧州勢に奪い取られてしまう可能性が出てきた。
太陽光発電に関しては中国の独壇場でポリシリコンの生産から太陽光セル、太陽光モジュールの製造に至るまで、すべての工程が中国の手中に握られており、自然エネルギー市場の太陽光発電のシェアに日本企業が入り込む隙間がない。加えて日本はウイグル族の人権弾圧問題で中国を批判しているが、新疆ウイグル自治区で太陽光発電の機器の多くが作られていることをどう捉えるのかという問題も残る。
地熱発電はどうか。地熱発電のポテンシャルについて日本は世界第3位と言われており、自然エネルギーの中では一番期待が持てるが、開発する為に8年とか9年ぐらいの時間がかかる上、法的基盤整理にも時間がかかる。今からやっても2030年にはほぼ間に合わないとも言われている。
結局、欧州製の風力発電と中国製の太陽光発電を援用してもなお、温暖化ガスの46%削減には届かないため、日本は、原発を使っていくしかない。しかし3.11を経験している日本の政治家は原発について踏み込んだ発言をすることができないという状況である。
2030年まであと9年しかない中で、耐用年数が過ぎた原発は廃炉にし、動かせる原発は動かし、それでも足りない部分は米国製の小型モジュール原発で補うという選択肢も浮上してきている。
この他、「水素」を活用する等、選択肢はまだまだあるので、更に視野を広げて可能性を追求するしかない。
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“核のごみ”処分場の調査の是非争点・北海道寿都町長選・きょう告示(10月21日)
北海道寿都町では高レベル放射性廃棄物“核のごみ”の最終処分場の選定をめぐり、原子力発電環境整備機構による文献調査が行われている。寿都町の町長選挙がきょう告示される。
調査の是非を最大の争点になり、20年ぶりの選挙戦が展開される見通しである。
片岡春雄は調査を継続し、国から得られる交付金を地域振興に役立てたいとしている。
越前谷由樹は、調査に反対だとして当選したら町の方針を撤回する考えを示している。
再び半導体と向き合う日本(10月19日)
資金も能力も、戦略も必要とされる半導体分野に日本は再度、足を踏み入れようとしている。
半導体が重要と甘利氏や政府が声を挙げ始めたのはわずか5か月前ぐらいからであり、唐突感は否めない。確かに一時期(80年代)は半導体で成功体験もある日本だが、その勢いは日米半導体摩擦で米国によって木っ端微塵にされた。
現在の半導体はハイレベルなものであり、当時の半導体産業とは様変わりしている。本当に足を踏み込んで大丈夫なのだろうかという声が半導体に以前関わった日本の技術者の間からも聞こえてくる。...
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資金も能力も、戦略も必要とされる半導体分野に日本は再度、足を踏み入れようとしている。
半導体が重要と甘利氏や政府が声を挙げ始めたのはわずか5か月前ぐらいからであり、唐突感は否めない。確かに一時期(80年代)は半導体で成功体験もある日本だが、その勢いは日米半導体摩擦で米国によって木っ端微塵にされた。
現在の半導体はハイレベルなものであり、当時の半導体産業とは様変わりしている。本当に足を踏み込んで大丈夫なのだろうかという声が半導体に以前関わった日本の技術者の間からも聞こえてくる。
日本が半導体に踏み込んだ背景には、経済安全保障の観点から米国・バイデン政権が半導体の中国への依存度を下げるよう言ってきたことが大きい。柱となる成長産業がない中で、政治的な判断で決めたようにも見える。
経済安全保障の観点で米国と連携していくとしているが、コロナ禍ということもあり、明確な役割分担が詰められておらず、日米台で意思統一がされているようには見えない。それはTSMCの最先端工場が米国に行き、日本も先端工場を誘致するなど、微妙な誘致運動にも表れている。
この曖昧な流れを放置したままにすれば、この先、米国の雇用を重視するバイデン政権の采配によっては、日本の半導体会社も含めた先端の半導体工場がまるごと米国に行ってしまわないという保証もない。
先端半導体のノウハウが日本の半導体メーカーに引き継がれないうちにTSMCが撤退してしまうリスクや、2024年の台湾総統選挙で蔡英文氏が敗北し、新総裁が方針転換するリスクもある。
こうしたリスクを十分に踏まえた上で日本は腹を括って半導体に新たに踏み込んでいくべきであると提言したい。
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サーモスフィア(熱圏)の戦い(その2)(10月18日)
16日、中国は女性1人を含む宇宙飛行士が搭乗した有人宇宙船「神舟13号」を打ち上げ、中国が独自に建設を進めている宇宙ステーション(高度425キロ)とのドッキングを成功させた。
18日には世界初となる国際宇宙ステーション(高度408キロ)での映画撮影に臨んだロシアの女優・ユリアペレシルドらが宇宙船「ソユーズ」で地球に帰還した。
サーモスフィアにおけるこうした明るい話題は歓迎したいが、中には物騒な話題もある。...
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16日、中国は女性1人を含む宇宙飛行士が搭乗した有人宇宙船「神舟13号」を打ち上げ、中国が独自に建設を進めている宇宙ステーション(高度425キロ)とのドッキングを成功させた。
18日には世界初となる国際宇宙ステーション(高度408キロ)での映画撮影に臨んだロシアの女優・ユリアペレシルドらが宇宙船「ソユーズ」で地球に帰還した。
サーモスフィアにおけるこうした明るい話題は歓迎したいが、中には物騒な話題もある。中国の宇宙を利用した新型兵器と宇宙デブリの話題である。
英国・フィナンシャル・タイムズ(電子版)は、中国が今年8月にマッハ5以上の極超音速で飛び、宇宙空間を利用し、地球上のどこでも攻撃できるハイパーソニック新型核兵器の飛行実験に成功していたことを暴露した。
この兵器は、一旦、ロケットとして打ち上げられ、地球を周回するサーモスフィア(熱圏)の軌道に乗った後、攻撃目標に近づくと再び大気圏内に突入し、その後、ロケットとして超低空を細かく経路を変えながら飛行し目的物を目指すという、現在の米国が構築するミサイル防衛システムでは太刀打ちができない兵器である。
だが、こうした兵器でさえ衝突する可能性があるのがサーモスフィア(熱圏)に無数に漂う宇宙デブリである。どんなに精工に作られ計算されつくした武器でも高速で宇宙を飛び交うデブリと衝突しない保証はない。
こうした宇宙デブリが増えたのは米ソ時代に人類が宇宙進出を始めて以来、打ち上げられたロケットや人工衛星、およびそれらの破片の多くが軌道上にそのまま放置されているためである。
宇宙に進出したのはいいがゴミの後始末をしてこなかったツケが現在の宇宙デブリ大量発生につながっている。活動中の人工衛星などと衝突が起きた場合には新たな宇宙デブリを大量に発生させることになり、鼠算式にデブリは増えていく可能性がある。
今後は宇宙開発だけでなく、宇宙のごみ問題である宇宙デブリを解決しなくてはならない局面に来ている。
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日本が生きる厳しい道(10月18日)
米国側につくのか中国側につくのかという議論が起きているが、ポジションをことさらはっきりさせることは日本にとって得策ではない。安全保障は米国、貿易は中国と米国という形に分野別に立場を切り離し、まだら模様のポジションを容認し使い分けていくことこそが、これからの日本の生き残る道かも知れない。
これまで日本は米中の間をうまく泳ぎ、何とか生きてきたが、これからはそうはいかないと悲観する声が聞かれる。ところが、今まで日本は両国の間を上手に泳いできたとはとても言えないのではないかという疑問も残る。...
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米国側につくのか中国側につくのかという議論が起きているが、ポジションをことさらはっきりさせることは日本にとって得策ではない。安全保障は米国、貿易は中国と米国という形に分野別に立場を切り離し、まだら模様のポジションを容認し使い分けていくことこそが、これからの日本の生き残る道かも知れない。
これまで日本は米中の間をうまく泳ぎ、何とか生きてきたが、これからはそうはいかないと悲観する声が聞かれる。ところが、今まで日本は両国の間を上手に泳いできたとはとても言えないのではないかという疑問も残る。
日本の年収が過去30年間横ばいだったことや、名目GDPが他国に比べ横ばいのままだったということだけ見てもそれは明らかである。今の日本は富裕層も含めた国民全体の生活水準さえ地盤沈下を起こし始めており、この状況をなんとか打開していく必要がある。
それには米中の間のバランスを取りながら、米国とは安全保障と貿易を中国とは貿易をこれまで以上にうまくやっていく以外に方法はないかも知れない。
注意しなくてはならないのは今後、米国と中国双方が日本に対し、自陣営につくように踏み絵を要請したり、強い圧力をかけてくる機会が増えてくる可能性があることである。
中国のTPP参加申請もこうした流れの一環であり、中国は日本を試しているといえる。日本はいろいろ理由をつけて中国を拒絶するのではなく、ここは米国、中国、台湾の参加を一挙に認めるなどといった、展開も必要となるかも知れない。
さらに気がかりなのは2025年までに中国が台湾に対して何らかのアクションを起こす可能性である。
日本はこうしたことが起きた場合、貿易や経済にどのような影響が及ぶのか、その時日本はどういう行動をとるのか、経済界などとも議論し細かく具体的なシナリオを用意しておく必要があるのではないだろうか。
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CASEにおける日本の半導体の役割(10月17日)
今、半導体業界は大きなゲームチェンジに差し掛かっている。例えばPCの半導体でインテルが世界標準になり、スマホでアームが世界標準となった時のような大きなゲームチェンジの時期に再び、差し掛かっている。
次の曲がり角にあるのはCASE(コネクテッド、自動運転、共有化、電動化)である。CASEにおいて、どこの国のどの会社の半導体が世界標準、半導体覇権をもぎ取るのかという熾烈な戦いが水面下で展開されている。...
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今、半導体業界は大きなゲームチェンジに差し掛かっている。例えばPCの半導体でインテルが世界標準になり、スマホでアームが世界標準となった時のような大きなゲームチェンジの時期に再び、差し掛かっている。
次の曲がり角にあるのはCASE(コネクテッド、自動運転、共有化、電動化)である。CASEにおいて、どこの国のどの会社の半導体が世界標準、半導体覇権をもぎ取るのかという熾烈な戦いが水面下で展開されている。現在、頭ひとつ抜けているのが米国のイーロンマスク率いるテスラである。
細部に目を奪われることなしに全体像の把握からまずは見てゆきたい。どれぐらいの大きさでどういう論理回路を使い、どれぐらいのスピードで、どのような機能をもたせるか、それらをどうコントロールできるようにしていくかといったスペックをまずは、はっきりさせていくべきである。目的を達成するためにこれらと周辺をどう組み合わせていくかといったアーキテクチャーの構築も非常に大事である。その後、フロアプランをはっきりさせてから、設計、製造に落とし込んでいく一連の流れを押さえておくことが重要である。
TSMCを日本に誘致したことをはずみにして、半導体を日本の成長戦略の中に組み込んでいきたい日本だが、自分自身の強みを正確に把握しておくことも重要である。日本の一番の強みは、半導体製造装置や微細素材など、日本にしかできない隙間技術を多数持ち、競争力を持っていることである。
TSMCも日本の金銭的援助以上に日本に期待しているものがシリコンウエハやフッ化水素、フォトレジスト、CMPスラリー、窒化ガリウム、炭化ケイ素などの微細素材の存在である。
この流れで見ていくと、あくまでも餅をつくるのはTSMCで、日本はその餅を整えるこね役のようにも見えなくもない。実際問題、CASEにおいて日本がアーキテクチャーに関わることや、テスラ以上の半導体を提供できるような存在になることはかなり難しい。
しかし、半導体の世界のレベルが上がったとは言え、ノーベル賞受賞者を多数輩出している日本が太刀打ちできない世界ではない。歴史を遡って見ればPCの半導体で世界標準になった米社の半導体は実は日本の嶋正利氏が設計したものであるということも日本人は頭の片隅に入れて置くべきである。
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サーモスフィア(熱圏)の戦い(10月16日)
かって米国は自由と豊かさを、そしてニューフロンティアを求めて、西部にどんどん進出していったが、これと同じことが今、地球表面に近い宇宙で起きている。米国だけでなく中国やロシアなどの他、各国の民間企業などが入り乱れて様々な目的を達成するために衛星打ち上げにしのぎを削っている。
今や60を超す国・地域がカーナビやスマートフォンの位置情報、天気予報、ATMを使うために衛星を運用している。地表から80キロ~800キロを熱圏(Thermosphere:サーモスフィア)と呼ぶが、さしずめ「サーモスフィアの戦い」とも呼ぶべき現象である。...
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かって米国は自由と豊かさを、そしてニューフロンティアを求めて、西部にどんどん進出していったが、これと同じことが今、地球表面に近い宇宙で起きている。米国だけでなく中国やロシアなどの他、各国の民間企業などが入り乱れて様々な目的を達成するために衛星打ち上げにしのぎを削っている。
今や60を超す国・地域がカーナビやスマートフォンの位置情報、天気予報、ATMを使うために衛星を運用している。地表から80キロ~800キロを熱圏(Thermosphere:サーモスフィア)と呼ぶが、さしずめ「サーモスフィアの戦い」とも呼ぶべき現象である。
まず目につくのは高度400キロ圏を飛ぶ軍事衛星である。軍事衛星には主に4種類あり、地表面の広範囲の捜索と緻密な偵察を行う偵察衛星とがある。これを経由してCSISなどが北朝鮮からのデータを日本などに送ってきている。
精密誘導弾や弾道ミサイルの発射探知や核実験などの検知を行うのは早期警戒衛星であり、中国や北朝鮮を隣国に持つ日本には欠かせない衛星と言える。他国の衛星やミサイルを撃ち落とす衛星が衛星攻撃衛星であるが、これからクローズアップされてくると思われる。
戦略通信を行う軍事用通信衛星では中国などが量子暗号技術を使った絶対破れない暗号を衛星経由で飛ばし、一帯一路の沿線国と連絡を取り合っているとされている。この他、軍事衛星に含めるべきではないかもしれないが、潜水艦の正確な位置を知るためにカーナビなどに使われるGPSが不可欠な衛星となっている。
高度550キロを飛ぶ超小型通信衛星コンステレーション群はスペースX社のスターリンクである。世界中でくまなくインターネット通信ができるようにするため、これまでに計360基が飛ばされている。これらの衛星は地上のインターネットでも今どこにいるのかが確認できる。
この他、災害対策・国土強靭化や農業など地球規模課題の解決のために飛ばされる地球観測衛星や気象衛星などがある。気象衛星といえば、今年3月に中国の気象衛星が、空中分解する事故が起きた。
この原因としてロシアの偵察衛星から放出されたスペースデブリと衝突した可能性があると指摘されている。2009年には米国の通信衛星とロシアの軍事通信衛星が衝突し、サーモスフィアに大量のごみが発生したことがあるが、様々な国が進出し宇宙のごみ問題はこれからますますクローズアップされてくることが予想される。
サーモスフィアでは最近、観光のためのロケットが飛ぶようになってきているが、今後はサーモスフィアを旅行者が一時的に滞在できる滞在衛星などが作られると期待されている。
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ノーベル賞候補・藤島昭氏が中国に(10月11日)
大気、水質、土壌の浄化から、抗菌・除菌など環境問題に応用できる「光化学触媒」の権威で、将来のノーベル賞候補でもある日本人科学者・藤島昭氏率いる研究チームが中国に拠点を移すことになった。
上海市政府と上海理工大学が共同で数十億円を藤島昭氏の研究チームに出資し、藤島氏は上海理工大学に新たな研究所を立ち上げて研究を行うという。
日本のマスコミは世界的な研究者の中国移籍により、日本の「頭脳」流出への懸念が高まっていると報じ、一部からは「外国の有能な研究者を招致する中国の1000人計画の一環ではないのか」という声も出ている。...
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大気、水質、土壌の浄化から、抗菌・除菌など環境問題に応用できる「光化学触媒」の権威で、将来のノーベル賞候補でもある日本人科学者・藤島昭氏率いる研究チームが中国に拠点を移すことになった。
上海市政府と上海理工大学が共同で数十億円を藤島昭氏の研究チームに出資し、藤島氏は上海理工大学に新たな研究所を立ち上げて研究を行うという。
日本のマスコミは世界的な研究者の中国移籍により、日本の「頭脳」流出への懸念が高まっていると報じ、一部からは「外国の有能な研究者を招致する中国の1000人計画の一環ではないのか」という声も出ている。
藤島氏が直面していたのは、日本の大学の少ない研究費では複数の研究員を養えないという現実であった。
多くの日本人研究者が同じ問題を抱えており、生活の立ちいかない研究者も出てきている。この問題を放置した場合、日本の頭脳が条件のいい海外に活躍の場を求め、いつの間にか日本からノーベル賞候補がいなくなっていたなどということにもなりかねない。
日本政府は手を打つ必要があるが、その打ち方にも注意が必要である。
日本学術会議に対して進めたような上から抑えつけるようなやり方を政治が押し進めた場合は、学者の反発を招き、日本の頭脳海外流失を早める結果になりかねない。
まずは学者が研究しやすい環境環境の整備を行うことが第一歩であると思われる。
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社会の変化と今後のエネルギー構想(10月2日)
脱炭素の流れが加速し、デジタル庁が発足し、テレワークが仕事や教育に定着し、電子決済が増え、その上EVに乗る人が増えていく中で、電力の使用量も増加して行く傾向にある。
日本は東日本大震災・福島第一原発事故以来、エネルギー政策を大転換し大幅に火力発電を増やし、大幅に原子力発電を減らすという大転換を成し遂げた。今度は異常気象、巨大台風、干ばつ、巨大竜巻など地球温暖化危機が目の前に迫ってきており、再びエネルギー政策の大転換を迫られている。...
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脱炭素の流れが加速し、デジタル庁が発足し、テレワークが仕事や教育に定着し、電子決済が増え、その上EVに乗る人が増えていく中で、電力の使用量も増加して行く傾向にある。
日本は東日本大震災・福島第一原発事故以来、エネルギー政策を大転換し大幅に火力発電を増やし、大幅に原子力発電を減らすという大転換を成し遂げた。今度は異常気象、巨大台風、干ばつ、巨大竜巻など地球温暖化危機が目の前に迫ってきており、再びエネルギー政策の大転換を迫られている。
こうした流れの中で、今から約1年前の10月、菅総理は国会での所信表明演説の中で、「2050年までにカーボニュートラルにする」と脱炭素宣言を行った。この発言によって脱炭素化の世界の動きにかろうじて日本が追いついたと言われている。2050年と言うとまだ先の話ようにも思えるが、僅か29年しか時間が残されていないという言い方もできる。
日本の現在の電源構成割合を見てみると火力がおよそ74%、原子力が4%、再エネが9%、水力が8%(2020年環境エネルギー研究所調べ)である。東日本大震災直後は91%だったことを考えると火力はかなり減ってきてはいる。
2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、今から4年後の2025年までに火力発電は少なくとも現在の占有率の半分以下、つまり37%よりは少なくなっていなくてはならない計算になる。
CO2を出さない火力発電であるアンモニア火力発電や地熱発電を使うという手もあるが、こうした発電方法はベースロード電源とはなりえない。37%分を補うためには4年以内にベースロード電源としての原子力と再エネを組み合わせて30%まで持っていく必要がある。
こうしてみると、これからも現在では不可能と思われる新たな技術構想が不可欠と思われ、できるだけ緻密に具体的に詰めて議論していくという姿勢が求められている。
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EV化めぐる自動車メーカーの動き(10月2日)
今、「CASE」という新たな産業の革命に向けて世界中が一斉に走り出している。
自動車のEV化もこの大きな流れの中の一環であり、内燃機関がガソリン駆動エンジンから電気仕掛けのモーターに変わろうという大きな動きの中で、IT大手のアップルや精密工業の鴻海など異業種の参入も相次いでいる。
先月16日、EUは2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出したが、こうしたEUの動きをEVへの全面移行が早まる兆候と捉える専門家もいる。...
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今、「CASE」という新たな産業の革命に向けて世界中が一斉に走り出している。
自動車のEV化もこの大きな流れの中の一環であり、内燃機関がガソリン駆動エンジンから電気仕掛けのモーターに変わろうという大きな動きの中で、IT大手のアップルや精密工業の鴻海など異業種の参入も相次いでいる。
先月16日、EUは2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出したが、こうしたEUの動きをEVへの全面移行が早まる兆候と捉える専門家もいる。
ホンダの三部社長はEUの方針を受け、「ルールが変わるなら対応していくしかない」と2040年にホンダが設定したガソリン車全廃計画を前倒しにし、EV化に対応していく姿勢を見せた。
ホンダはこれまでも、厳しい状況を乗り越えてきた。1978年、米国市場においてガソリン乗用車から排出される窒素酸化物の排出量を90%以上削減しなくてはならないという厳しい環境規制「マスキー法」を課せられたが、低公害のCVCCエンジンを自力で開発し、苦境から見事に脱出してみせた。
EVという枠の中にあっても十分にやっていけるだけの技術力・開発力がホンダにはある。
一方、トヨタも動きを見せている。トヨタはEVへの全面移行にはすぐにはならないと踏んでおり、FCV(水素自動車)への強いこだわりを見せている。
トヨタのシナリオはHV→FCV→EVである。FCVであればEVのように部品点数が極端に少なくならないので、製造技術が劇変するという事態も避けられる。
FCVは長距離走行が可能であるという点でEVよりも優れており、長距離走行ができないEVの弱点をトヨタとしては突いていきたいと考えている。視界の先にあるのは長距離走行を必要とするトラックやバスである。
さらにその先をトヨタは見据えており、地球上でもっとも豊富にある元素である水素を使ったFCVシステムをパッケージとして鉄道や船舶などにも売り込んでいきたいと考えているようにも見える。
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日本のエネルギー政策の行方(9月28日)
菅総理が2020年9月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と国際公約したことが、自民党内部を分裂させている。このことが、今回の自民党総裁選のエネルギー政策討論会で浮かび上がった。
自民党総裁選に立候補した岸田氏、高市氏、野田氏はこれから電力需要が拡大する中で、太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーだけでは安定性に欠け、ベースロード電源としての役割は難しく、原発を使っていかなければカーボンニュートラルは達成できないと主張している。...
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菅総理が2020年9月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と国際公約したことが、自民党内部を分裂させている。このことが、今回の自民党総裁選のエネルギー政策討論会で浮かび上がった。
自民党総裁選に立候補した岸田氏、高市氏、野田氏はこれから電力需要が拡大する中で、太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーだけでは安定性に欠け、ベースロード電源としての役割は難しく、原発を使っていかなければカーボンニュートラルは達成できないと主張している。
特に高市氏は高レベルの放射性廃棄物が出ない小型の核融合炉の開発を「国家プロジェクトとしてやるべきだ」と主張した。
一方、河野氏も、稼働中の原発の維持は認めつつ、既に核燃料サイクルは破綻しているとし、原発を稼働し続けるのは行き場のないプルトニウムを増やしていくようなものだとして、コスト面・安全性の面からも疑問視し、再生可能エネルギーをもっと増やしていくべきだとの持論を展開した。
この対立はそのまま、経済産業省と環境省の対立とも重なりあう。両者の間には大きな溝が横たわっている。カーボンニュートラルはエネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベーションの創出といった取組を加速させなければ、実現できない。
経済界としてはできるだけ小さな変化に留めたいし、できるだけこれまで確立された収益構造を変えたくないというところが本音である。
世界のカーボンニュートラルの流れを止めることはできない。持続可能な日本のエネルギー政策を確立するべき時ではないか。
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巨人・グーグルと国家及びその民(9月25日)
世界中の人々がグーグルやグーグルマップ、グーグルアースを使って検索し、知りたいことをより便利に、手軽に、詳しく知ることができるようになっている。
その一方で、グーグル側は膨大な量の検索者のビッグデータを入手し、それらの資源を自らのビジネスのエネルギー源に変えている。
インターネットの検索履歴や訪問履歴をもとにあらゆる人の関心の優先順位を推測し、効果的な広告をブラウザ上に表示する手法は、日常のものとして既に定着している。...
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世界中の人々がグーグルやグーグルマップ、グーグルアースを使って検索し、知りたいことをより便利に、手軽に、詳しく知ることができるようになっている。
その一方で、グーグル側は膨大な量の検索者のビッグデータを入手し、それらの資源を自らのビジネスのエネルギー源に変えている。
インターネットの検索履歴や訪問履歴をもとにあらゆる人の関心の優先順位を推測し、効果的な広告をブラウザ上に表示する手法は、日常のものとして既に定着している。
グーグルユーザーに特色ある店のレポートを自発的に投稿してもらうローカルガイドなど、グーグルは必要とする知識をビジネスにしてしまう会社と言っても過言ではない。
世界中の優秀なAI設計者、プログラマーがグーグルに集結していることがこうしたことを可能にしている。彼らは次から次へと新しいビジネスやマーケティングの仕組みを考え続けている。
世界中がデジタル化に向かって突き進んでいる現在の状況は、グーグルの活動範囲や、ビジネスチャンスを増々大きく広げている。
例えば日本ではGIGAスクール構想が進行中で、全国の自治体で小中学生にタブレットを配布しそれを教科書代わり使う動きが出てきている。
こうした教育市場にグーグルはクロームブックを提供するなどし、教育の中枢にまで食い込んできている。
安全保障上、多少問題であるようにも感じるが、デジタル化後進国である日本は全体を設計したグーグルより高い立場に立って方向を決めること等は難しくなってきている。
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次のフロンティアとして熱圏に注目(9月25日)
日本が産業政策として目を向けるべき分野として宇宙がある。ここでいう宇宙とは高度500キロ以上の外気圏ではなく、中間圏(50~80キロ)から熱圏(80~500キロ)あたりの大気圏内をイメージしている。
例えば最近、話題になったイーロンマスク率いるスペースXの宇宙観光船が飛行している高度は500キロあたりで、熱圏に相当する。さらにジェフベゾズ率いるブルーオリジンの宇宙船も100キロ圏内で熱圏、バージンギャランティック社の宇宙船はこれよりさらに下の80キロ圏なので中間圏となる。...
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日本が産業政策として目を向けるべき分野として宇宙がある。ここでいう宇宙とは高度500キロ以上の外気圏ではなく、中間圏(50~80キロ)から熱圏(80~500キロ)あたりの大気圏内をイメージしている。
例えば最近、話題になったイーロンマスク率いるスペースXの宇宙観光船が飛行している高度は500キロあたりで、熱圏に相当する。さらにジェフベゾズ率いるブルーオリジンの宇宙船も100キロ圏内で熱圏、バージンギャランティック社の宇宙船はこれよりさらに下の80キロ圏なので中間圏となる。中国も、「紅雲」「鴻雁」「ギャラクシースペース」という3つの低軌道衛星コンステレーションを熱圏に打ち上げるために開発を進めている。
日本が宇宙に目を向ける必要性がある理由として、このエリアが未開拓領域であり、まだまだ参入の余地があること、今後も成長が見込まれる空間であること、民間にも参入でき多くのビジネスチャンスが広がっていることなどが挙げられる。
ちなみに宇宙ビジネスの世界規模での市場規模は2019年で約40兆円まで成長していて、このペースで進めば2040年代には約100兆円市場になると見込まれている。
現状では日本が宇宙ビジネスで、米中に大きく差をつけられている状況であるが、まだまだ参入の余地は多い。
衛星軌道が「宇宙ゴミ」で混雑してしまわないうちに日本は衛星コンステレーションの製造設計、衛星(通信・放送・気象・偵察・ナビゲーション)開発や打ち上げ、宇宙インターネット、宇宙観光、ロケット輸送サービス、情報分析サービス、スペースポート誘致、部品供給など、熱圏を積極的に新たな付加価値を生み出す成長戦略のプラットフォームとして活用していくべきである。
こうした宇宙戦略は日本の成長戦略を満たすと同時に国の安全保障にも寄与するものとなる。
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今こそ、新たなアーキテクチャーを生むことが重要だ(9月18日)
気候変動に端を発したカーボンニュートラルやCASE、SDGs、DX、ダイバーシティ、半導体をめぐるサプライチェーン再編など、世界の産業構造・ルールが抜本的に変わろうとしている。これまでの価値観が通用せず、何が起こるかわからない、日本にとっては厳しい時代がやってきているともいえる。
なぜ日本にとってこのような時代が厳しいのかといえば、このような変革期には戦略的アーキテクチャ(新しい産業の構造体・仕組み)が必要なのにも関わらず、独自のアーキテクチャがないからである。...
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気候変動に端を発したカーボンニュートラルやCASE、SDGs、DX、ダイバーシティ、半導体をめぐるサプライチェーン再編など、世界の産業構造・ルールが抜本的に変わろうとしている。これまでの価値観が通用せず、何が起こるかわからない、日本にとっては厳しい時代がやってきているともいえる。
なぜ日本にとってこのような時代が厳しいのかといえば、このような変革期には戦略的アーキテクチャ(新しい産業の構造体・仕組み)が必要なのにも関わらず、独自のアーキテクチャがないからである。
昔から、日本は既存のものやコトを改造したり、改善、改良していいモノを生み出すことは得意ではあったが、アーキテクチャを作るということについては苦手であった。その存在すら知らない人も多い。
日本の構造体は大体が受け売りであり、それをブラッシュアップして日本独自のものとして綺麗に見せていただけにすぎない。これには平均的な知性の持主や、情緒的な人が多く、ロジカルな人、天才的な人があまり排出されないという日本の特性に起因する。
しかし、そうも言っていられない状況になってきた。今後、日本が画期的なアーキテクチャを生み出していかないと、激動の世界情勢のもとで、遅れが出てくる可能性がある。
課題はあるが、今こそアーキテクチャを作り、日本人全体で共有する必要があることは確かである。
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デジタル社会の発展には電力政策が必須となる(9月11日)
9月1日に「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」をスローガンに掲げ、日本全体のデジタル化を目標とするデジタル庁が発足した。
デジタル化は日本だけの話のように見えるが、実は世界全体がデジタル化に向けてまっしぐらに進んでいる。
政府はデジタル化の進行が世界をより便利にし、バラ色の未来を約束するかのように見せているが、実はこうしたIT化の進行によって電力がひっ迫する可能性が見えてきている。...
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9月1日に「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」をスローガンに掲げ、日本全体のデジタル化を目標とするデジタル庁が発足した。
デジタル化は日本だけの話のように見えるが、実は世界全体がデジタル化に向けてまっしぐらに進んでいる。
政府はデジタル化の進行が世界をより便利にし、バラ色の未来を約束するかのように見せているが、実はこうしたIT化の進行によって電力がひっ迫する可能性が見えてきている。
国立研究開発法人・科学技術振興機構の調べによれば、世界における情報通信関連の電力消費は2030年に現在の30倍以上、2050年には4000倍以上に激増するという。
現在の状況のまま、まったく省エネルギー対策がなされなかった場合、情報関連だけで世界の全てのエネルギーを消費してもまだ電力が足りないという事態に陥るという。
特にAIやデータセンターは膨大な電力が必要で、例えば瞬間電力25万ワットの電力が必要とされる「アルファ碁」は1時間の稼働だけで、驚くべきことに60世帯分の電力を消費する。今から近い未来に向けたエネルギー政策が肝要となる。
現在、スマホをはじめ多くの生活家電にAIが組み込まれているが、今後は通信機能の受信待時電力を極小化し、超低消費電力タイプに置き換えるなど、AIやデータセンターに対する省エネテクノロジーも求められることになる。
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「9.11」から20年、更に大きな課題が(9月11日)
「2001年9月11日米国でオサマビンラディンによる同時多発テロが勃発し、民間人3000人が犠牲となった。米国本土が攻撃されたのは1812年の米英戦争以来で、米国人の「誇り」はこの衝撃で凍り付いたが、すぐに怒りに変わった。米国ブッシュ政権はアフガニスタン・タリバン政権に対する報復を開始した。
米国は国防戦略を見直し、米ソ冷戦に象徴される特定の相手国を脅威に認定するこれまでの手法を180度変えた。...
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「2001年9月11日米国でオサマビンラディンによる同時多発テロが勃発し、民間人3000人が犠牲となった。米国本土が攻撃されたのは1812年の米英戦争以来で、米国人の「誇り」はこの衝撃で凍り付いたが、すぐに怒りに変わった。米国ブッシュ政権はアフガニスタン・タリバン政権に対する報復を開始した。
米国は国防戦略を見直し、米ソ冷戦に象徴される特定の相手国を脅威に認定するこれまでの手法を180度変えた。つまり米国はアルカイダのような顔の見えないテロリストを脅威相手とする非対称なテロとの戦いに舵を切ったのである。
2011年米国はパキスタンでオサマビンラディンを暗殺し、テロの首謀者に責任をとらせるという米国の当初の目的は達成したが、アフガニスタンやイラクなどの破たん国家に米国が軍事介入し、民主国家に変えていくという理念に固執したため、結果的にアフガニスタンでの戦いに20年間を消費することになった。
20年が経過し、米国はアフガニスタンやイラクを民主化することはできなかった。日本円にして250兆円の資金と民間人23万人と米兵7000人の命が失われた。さらにアフガンからの退避時には米兵のぶざまな退避シーンが世界中のメディアにさらされてしまった。
バイデン政権は、非対称なテロとの戦いから中国やロシアを念頭とした競争に重心をシフトしていく姿勢をみせている。非対称なテロとの戦いから特定の相手国を競争相手に認定するというこれまでの手法に戻すことを決めたのである。一方でアフガニスタンはこれからも20年前と同じようにタリバンが恐怖政治で統治する状況が続くものと考えられる。
日本にとっても、アフガニスタン復興支援に血税7500億円が使われたが、今後、アフガニスタンに残された日本政府関係者500名を日本政府がどのように救っていくのか、タリバン政権、そしてパキスタンやイラン、イラク、サウジアラビアなどの中東各国とどういう関係を構築して行くのかという大きな課題に直面している。
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半導体・続々と大規模投資(8月24日)
世界的に需要が高まる半導体だが、国内で大規模な設備投資の動きが今、相次いでいる。
ソニーグループは2023年度までの3年間、半導体事業で合わせて7000億円を投資する計画である。
スマートフォンの画像センサーなどの半導体で高いシェアを持ち、長崎県の工場を拡張するほか、自動車用の画像センサーも拡大していく方針である。
スマートフォンやデータセンター用の記憶媒体フラッシュメモリーを製造するキオクシアは、最先端の製品を作る新工場を建設するため岩手県で用地の整備を進めている。...
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世界的に需要が高まる半導体だが、国内で大規模な設備投資の動きが今、相次いでいる。
ソニーグループは2023年度までの3年間、半導体事業で合わせて7000億円を投資する計画である。
スマートフォンの画像センサーなどの半導体で高いシェアを持ち、長崎県の工場を拡張するほか、自動車用の画像センサーも拡大していく方針である。
スマートフォンやデータセンター用の記憶媒体フラッシュメモリーを製造するキオクシアは、最先端の製品を作る新工場を建設するため岩手県で用地の整備を進めている。
電力を効率よく動力に変換するパワー半導体を手がける三菱電機はことし11月に新しい工場を稼働させるほか、2025年度までに1000億円規模の投資を計画している。
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日本・半導体産業空洞化の恐れ(8月7日)
パンデミックが起きたことで半導体を国内で生産することがいかに大事かということを認識した米国議会上院は6月、自国の半導体産業におよそ5兆7000億円を投資する法案を可決するなど、米国は半導体産業誘致を急いでいる。米国は自国を半導体強国にしようとしている。
ひときわ注目を集めているのが米国資本100%の会社「スカイウォーターテクノロジー」社である。主に軍事向け半導体を生産している。今年に入り、フロリダ州で第2工場を取得するなど大規模な投資を続けている。...
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パンデミックが起きたことで半導体を国内で生産することがいかに大事かということを認識した米国議会上院は6月、自国の半導体産業におよそ5兆7000億円を投資する法案を可決するなど、米国は半導体産業誘致を急いでいる。米国は自国を半導体強国にしようとしている。
ひときわ注目を集めているのが米国資本100%の会社「スカイウォーターテクノロジー」社である。主に軍事向け半導体を生産している。今年に入り、フロリダ州で第2工場を取得するなど大規模な投資を続けている。
仮に台湾有事になった場合、米国は台湾・TSMCから半導体が全く入って来なくなるということを危惧している。
そのため、トランプ政権時代からTSMCにアプローチをかけていた。結局、TSMCは120億ドルをかけて、アリゾナに工場を建設することになった。
米国はTSMCだけでは足りないと考え、韓国からもサムスンの工場を170億ドルでアリゾナ州、テキサス州、ニューヨーク州のいずれかに作ってもらう方向で話を進めている。
米国内からはインテルの工場を200億ドルかけてアリゾナに建設することになっている。補助金520億ドルもこれらの企業に出そうとしており、合計1000億ドルをかけて半導体生産を強化するためにこうした企業を米国に呼び込もうという動きを活発に行っている。
一方、日本は最先端の技術を持つ企業がないため、経済産業省が日本にTSMCの工場を誘致しようとしている。この計画がうまく回らないと、日本の半導体関連企業は、競争力の維持を図るために米国に行かざるを得ず、逆に日本の産業が空洞化してしまう可能性もある。
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米国ゼロエミッション車政策の現状(8月7日)
5日、米国・バイデン大統領が2030年に新車販売の半分を「ゼロエミッション車」にするという目標を定めた大統領令に署名した。
この目標には強制力はないが、米国に自動車の市場を持つ日本車産業も当然のことながらこの大統領令に影響を受けることになる。
今回、日本車が得意とするHV(ハイブリッド車:エンジンとモーター組み合わせ、複合動力を有効に活用)が「ゼロエミッション車」から除外されることになった。...
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5日、米国・バイデン大統領が2030年に新車販売の半分を「ゼロエミッション車」にするという目標を定めた大統領令に署名した。
この目標には強制力はないが、米国に自動車の市場を持つ日本車産業も当然のことながらこの大統領令に影響を受けることになる。
今回、日本車が得意とするHV(ハイブリッド車:エンジンとモーター組み合わせ、複合動力を有効に活用)が「ゼロエミッション車」から除外されることになった。日本の自動車メーカーにとって痛手となるが、幸いなことにPHV(プラグインハイブリッド車)はゼロエミッション車として認められた。
PHVはエンジンを併用している点で、HVと違いはないが、家庭の電源から充電できる点が異なる。いわばHVとEV(電気自動車)の中間に位置するのがPHVである。
実はEUや英国ではPHVの販売禁止が打ち出されていて、日本の自動車業界には不穏な空気が流れていた。そんな中、バイデン大統領があたかも日本車に救いの手を差し伸べた格好となっている。トヨタ幹部は「PHVが含まれるなら我々としてもいくらでもやりようがある」と大歓迎している。
バイデン大統領がPHVを「ゼロエミッション車」に入れた背景には、国土が広く長距離移動が多い米国において、走行距離の短いEVだけでは地方からの支持が得られないという現実的な理由があった。
裏を返せば、この問題が解決されれば、すぐにでもPHVは「ゼロエミッション車」から除外される可能性もあるということである。
日本車メーカーはこうしたことも念頭に入れつつ、PHVにもEVにも使用可能な電池の研究開発投資に力を入れ、どんな状況になっても対応できるようにしておく必要があると感じられる。
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日本にも必要とされるスーパー科学者の知見(7月31日)
日本ではデータとエビデンスに基づく対策がとられず、世界の最先端の医学情報に合わせた対策が行われていない。
日本では「ランセット」や「ニューイングランドジャーナルオブメディシン」などで紹介される世界の最先端の学説が主流となりにくい状況がある。
例えばコロナに関しては、最新の科学論文では今年の春ぐらいから飛沫感染よりも圧倒的にエアロゾル感染で広がると言われてきたにも関わらず、日本ではコロナは飛沫感染で広がるという今では古くなった学説が主流であり、東京五輪パラリンピックでは飛沫感染を念頭に置いた方式であるバブル方式を組み込んでしまった。...
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日本ではデータとエビデンスに基づく対策がとられず、世界の最先端の医学情報に合わせた対策が行われていない。
日本では「ランセット」や「ニューイングランドジャーナルオブメディシン」などで紹介される世界の最先端の学説が主流となりにくい状況がある。
例えばコロナに関しては、最新の科学論文では今年の春ぐらいから飛沫感染よりも圧倒的にエアロゾル感染で広がると言われてきたにも関わらず、日本ではコロナは飛沫感染で広がるという今では古くなった学説が主流であり、東京五輪パラリンピックでは飛沫感染を念頭に置いた方式であるバブル方式を組み込んでしまった。
さらに飛沫感染を理由に飲食店に対して強制的な規制をかけているのも世界的に見ればピントがずれてきている。
エアロゾル感染だと場所を問わず、どこでも感染する。一番重要なのは換気であり、窓がない場所に窓を作り、換気ルートを作ることが何より重要な対策となってくる。
日本のコロナ政策ではワクチンやPCRの話も含めて、最新の医学情報をベースにした判断および施策がされていない為に、最新の学説に基づいた対策が取られず、古びた学説に基づいた対策になっている。
一方、米国は、数学者・科学者・脳科学者・ゲノム工学者・エリックランダーや、ネイチャーではノーベル賞級の論文を書き1000本もの論文を書いているアンソニーファウチなど、スーパー科学者がバイデン政権の閣僚の中におり、最新の知見に基づいた適格なアドバイスを行っている。
ノーベル賞級科学者を数多く輩出してきた日本ならば優秀な科学者を閣内に迎え入れることはそんなに難しいことではないはずである。今回のコロナ禍を通じて疫学分野での知見と人材の刷新を期待する。
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日本の医療体制(7月17日)
英国は19日にも全ての規制を解除するという方針を示している。その一方で日本では、五輪を直前に控えているにも関わらず4度目の緊急事態宣言が出された。
感染者数も重症者数も英国と比べ、けた違いに低く抑えられており、英国最悪の時期と比べても100分の1程度で推移しているにもかかわらず、医療ひっ迫が起き、緊急事態宣言が出されるということが日本では繰り返されている。
包括的なデータを取るという科学的手法が政策の中核に存在していないため、勘に基づいた恣意的な判断で緊急事態宣言が決められている。...
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英国は19日にも全ての規制を解除するという方針を示している。その一方で日本では、五輪を直前に控えているにも関わらず4度目の緊急事態宣言が出された。
感染者数も重症者数も英国と比べ、けた違いに低く抑えられており、英国最悪の時期と比べても100分の1程度で推移しているにもかかわらず、医療ひっ迫が起き、緊急事態宣言が出されるということが日本では繰り返されている。
包括的なデータを取るという科学的手法が政策の中核に存在していないため、勘に基づいた恣意的な判断で緊急事態宣言が決められている。
緊急事態宣言では国民に一方的に行動制限を要請し、飲食店に時短要請などを要請しているが、本質的な問題解決にはつながっておらず、すぐに医療ひっ迫を招いてしまう。
コロナ禍になって1年以上が経過したのに、残念ながら、同じことの繰り返しを日本が続けているのは医療キャパシティの問題を改善しようとしていないためである。
そもそも日本では私立のクリニックや診療所など小さな医院が多く、政府の統制が利きにくいということがある。
こうした医院はベッド数が限られている上、専門医・看護師の数も少ない、狭いために動線の導入が困難で、財政基盤も貧弱なため、風評被害によって簡単に経営状態が傾いてしまうなど、コロナの患者を受け入れることができないいくつもの条件がそろっている。
日本はこうした問題を早急に突き詰めて改善しないと、同じようなパンデミックが来た場合、また同じことを繰り返すことになってしまう危険性がある。
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日本の半導体戦略(7月15日)
今、中国が猛烈な勢いで半導体の開発を進めていて、政府が事実上の補助金を出している。
より価格の安い製品が出てきて世界の市場を席けんしてしまう可能性がある。
そうなる前に日本としても国内で必要な半導体を調達できる体制を整えようとしている。
かつては世界をリードしていた日の丸半導体だが、最先端の分野はとても追いつけないほど差が開いてしまっているため先端技術を持つ企業を日本に誘致しようとしている。...
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今、中国が猛烈な勢いで半導体の開発を進めていて、政府が事実上の補助金を出している。
より価格の安い製品が出てきて世界の市場を席けんしてしまう可能性がある。
そうなる前に日本としても国内で必要な半導体を調達できる体制を整えようとしている。
かつては世界をリードしていた日の丸半導体だが、最先端の分野はとても追いつけないほど差が開いてしまっているため先端技術を持つ企業を日本に誘致しようとしている。
一方で日の丸のこだわる部分もある。具体的には半導体製造に欠かせない素材、製造装置の分野で日本メーカーは世界の半分以上のシェアを持つところが少なくない。
こうした日の丸企業の競争力を維持するには、やはり先端技術を持つ半導体メーカーと共に装置や素材の研究開発を行っていくということが必要である。
それが海外から半導体メーカーを誘致するもう一つの大きなねらい。
ただ問題は米国やEUも数千億円から1億円規模の資金を用意して誘致しようとしていることだ。
日本政府の方針は「他国に匹敵する取り組みを早急に進める」というだ。
政府高官によると誘致には数千億円必要だということであるが、財政事情もひっ迫する中でどこまで予算が出せるかは不透明だ。
過去には日本政府が民間企業の活動に口を出して、ろくなことはなかったと冷めた見方もある中で巨額な予算を使ってでも半導体を確保することが日本の成長にとって必要だということを国民に広く理解してもらえるかどうか、それが新たな半導体戦略が成功するかどうかの鍵を握ることになる。
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本格的な人口減少社会に突入した日本(6月26日)
総務省が25日に発表した国勢調査によると、日本の人口は約1億2622万7000人となり、5年前の調査と比べて86万8000人減少した。
2010年の調査をピークに前回の調査に続いての減少となる。国別人口規模ランキングでは、日本が戦後ずっとトップ10以内を維持してきたが、メキシコに抜かれ、初めて圏外に姿を消した。今後はエチオピア、フィリピンにすら抜かれると予測されている。
日本のトップ10からの脱落は日本が本格的に人口減少社会を迎えたことを象徴するものである。...
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総務省が25日に発表した国勢調査によると、日本の人口は約1億2622万7000人となり、5年前の調査と比べて86万8000人減少した。
2010年の調査をピークに前回の調査に続いての減少となる。国別人口規模ランキングでは、日本が戦後ずっとトップ10以内を維持してきたが、メキシコに抜かれ、初めて圏外に姿を消した。今後はエチオピア、フィリピンにすら抜かれると予測されている。
日本のトップ10からの脱落は日本が本格的に人口減少社会を迎えたことを象徴するものである。
日本ではしばしば人口減少について話題になることがあるが、人口減少の影響はそこかしこに現実味を帯びてでてきている。
人口減少によって、何が起きるのかを今からできる限り具体的にイメージし、それに備えておくことが必要となる。
人口が減少すると、その分消費が減る。そうすると、GDPの6割は個人消費によるものなので、日本のGDPにその影響が大きく出てくることは確かである。
消費税収入が国に入ってこなくなる上、1人あたりから徴収する税収も減少するため、国や地方自治体による国民への行政サービスは低下する。社会保障も支え手が少なくなるために、国民が払う保険料が高くなる一方で、受けられるサービスは低下する。
首都圏と過疎地の格差は大きく開き、国政には首都圏の意向が強く反映されることになる。その結果、過疎地では、過疎化が進み、整備されない土地が増え荒廃していく。一方で、便利な大都市には増々人が集中するというアンバランスな構造となる。
働き手不足を補うために、これまで以上に多くの外国人労働者に日本に来て働いてもらう必要も出てくるが、外国人労働者は日本に定住しないために日本に彼らのノウハウは残らないことになる。
人口減少の結果として、日本独自の文化や技術等を失う可能性もあることは覚悟しておいた方が良いようだ。
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日本の幸福度を上げるには(6月19日)
国連が毎年発表している「世界幸福度ランキング」の2021年版で、日本は56位となった。トップはフィンランドで、続いてデンマーク、スイス、アイスランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、ルクセンブルク、ニュージーランド、オーストリアと欧州勢、オセアニア勢が続く。
それにしても、日本はGDP世界第3位の大国で、金持ち国家であるにも関わらず、なぜこのような低い順位なのか気なるところである。
「世界幸福度ランキング」の評価基準には6つの項目があり、1つ目は「人口あたりのGDP」、2つ目は「困った時の社会的支援があるかどうか」、3つ目は「健康寿命」、4つ目は「人生の選択の自由度」、5つ目は「ボランティア活動などをしたり、相手を受け入れて人とのつながりを作ることができたかどうかを測る寛容さ」、6つ目は「腐敗の認識(不満や悲しみ、怒りの少なさ、政府の腐敗が蔓延していないかなど)が多いかどうか」で測定されているという。...
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国連が毎年発表している「世界幸福度ランキング」の2021年版で、日本は56位となった。トップはフィンランドで、続いてデンマーク、スイス、アイスランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、ルクセンブルク、ニュージーランド、オーストリアと欧州勢、オセアニア勢が続く。
それにしても、日本はGDP世界第3位の大国で、金持ち国家であるにも関わらず、なぜこのような低い順位なのか気なるところである。
「世界幸福度ランキング」の評価基準には6つの項目があり、1つ目は「人口あたりのGDP」、2つ目は「困った時の社会的支援があるかどうか」、3つ目は「健康寿命」、4つ目は「人生の選択の自由度」、5つ目は「ボランティア活動などをしたり、相手を受け入れて人とのつながりを作ることができたかどうかを測る寛容さ」、6つ目は「腐敗の認識(不満や悲しみ、怒りの少なさ、政府の腐敗が蔓延していないかなど)が多いかどうか」で測定されているという。
6つ目の腐敗の認識は日本人はかなりあるのではないかと推察される。これ以外で特に重要なのが4つ目の人生の選択の自由度と5つ目の寛容さである。
寛容さは日本人は東日本大震災や熊本地震でみられたように、自発的に助け合う民族性があるので問題はない。
人生の選択の自由度においては日本人の事なかれ主義が若干自分の自由を全体のために犠牲にしている傾向があると言えるので問題かもしれない。
特に日本人は自分のために社会を煩わせることとか、他人に迷惑をかけることを不幸だとする傾向が強い。
その最たるものは老後に人の世話になることで、多くの日本人がこのことを恐れているし、避けたいと考えている。
寝たきりになったらどうしようとか、トイレに行くのに、お風呂に入るのをどうしようとかいう恐怖は、人間が老化するにつれ強まっていくが、人の手を煩わせることなく、こうした不安を取り除くことができれば日本人全体の幸福に大きく寄与することになる。
例えば、天井にレール、配線を埋め込み、ボタンひとつで必ずしも人型ではないロボティクスガイドによって自由にトイレに行け、入浴できるシステムが作れれば、日本人の幸福度は上がることは間違いない。
AIやロボティクスなどの最先端技術をこの分野に積極的に援用していくことができれば日本人の幸福感を上げ、高齢化や介護士不足という社会問題も解決できる。加えて日本の技術やテクノロジーの水準も上げることができ、一石二鳥といえる。さらにこのシステムを今後高齢化社会を迎える国々にパッケージで提供することも可能となる。
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“領海警備に万全期す”海上保安庁長官会見で(6月17日)
沖縄県の尖閣諸島沖合の接続水域で中国海警局の船が航行し続けて連続日数が過去最長を更新し領海への侵入が相次いでいる。
また、石川県の能登半島沖の大和堆周辺の日本の排他的経済水域では、去年、この時期までは見られなかった中国漁船の違法操業がことしはきのうまでに148隻確認され、退去警告を行ったと明らかにし違法操業漁船に対して厳正に対処すると述べた。
防衛省・AI搭載の無人機開発へ(6月14日)
航空自衛隊の次期戦闘機の開発に合わせ、防衛省は、戦闘機と離れた空域を飛行して早期に危険を探知するAIを搭載した無人機の開発も進める方針である。
防衛省は、無人機が天候や地形に合わせて自律的に飛行できるようにするため、AI技術の高度化に向けた研究費用を来年度予算案の概算要求に盛り込むことにしていて、次期戦闘機と同じ2035年ごろの配備を目指している。
米中が動き出したデジタル通貨覇権争い(5月22日)
これまで米中は貿易分野、ハイテク分野で覇権争いを繰り広げてきたが、遂にデジタル通貨でも覇権争いに突入した。
きっかけは5月18日から19日に起きた4万ドルを大きく割り込んだビットコインの大暴落だった。この半値以下の大暴落によって数千ドル(数十兆円)の時価総額が失われた。
国家の裏書きがないビットコインはそもそも安定性には欠けるというデメリットがあるが、今回のような大きな下落はあまり見られなかった。...
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これまで米中は貿易分野、ハイテク分野で覇権争いを繰り広げてきたが、遂にデジタル通貨でも覇権争いに突入した。
きっかけは5月18日から19日に起きた4万ドルを大きく割り込んだビットコインの大暴落だった。この半値以下の大暴落によって数千ドル(数十兆円)の時価総額が失われた。
国家の裏書きがないビットコインはそもそも安定性には欠けるというデメリットがあるが、今回のような大きな下落はあまり見られなかった。暴落の裏側には、中国人民銀行が「仮想通貨を中国は認めていない。中国では実生活においても、いかなる用途であっても仮想通貨を使うことはできない」と発言するなど、中国当局がビットコインに対して規制強化する姿勢を示したことが大きい。
加えて中国・清華大学顧問員会の顧問を務める親中派のテスラ社・イーロンマスクCEOが「マイニングによって膨大なCO2が発生するので仮想通貨は環境に悪い」という見方を示したことも大きく影響した。
意図的に中国はビットコインを暴落させた可能性も感じられる。その理由としては2022年のデジタル人民元発行に向けた環境整備のためということが考えられる。つまり、中国市場からビットコインを締め出すという中国の意思表示であり、デジタル人民元発行に本腰を入れるという中国のシグナルということである。中国は中央銀行が発行するデジタル通貨で世界の先頭に行き、国際標準づくりの主導権を握りたい考えである。
一方の米国の動きを見てゆくと、2020年に、ムニューシン財務長官(当時)が「米国は2024年まではCDBCを発行しない」と発言したことからもわかるように、CDBCには慎重姿勢を取っており、中国に出遅れた感は否めない。しかし、ここに来てようやく重い腰を上げた。FRB・パウエル議長が「今夏にCBDCを討議するための資料を公表する」と発表するなどし、米国も前倒しでCDBCに乗り出す構えを見せている。
今後ますます世界中がCDBCに向かって突き進んでいくことが考えられる。日銀も4月にCBDCの実証実験を開始した。ワクチン開発のような状況を生まないためにも、新たな戦略の構築とその準備をする時が来ている。
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ワクチン開発の今後(5月15日)
欧米のワクチンメーカーが開発で先行している一方で、国産ワクチンの開発の遅れを懸念する声が日増しに大きくなってきている。
ひところは大阪大学・アンジェスなどによる国産ワクチンが大きな話題を集めていたが、今、第3相治験という大きな壁が日本の国産ワクチンの行く手に立ちふさがっている。
感染力が強く、重症化も早いとされる変異種が感染拡大する中で、数万人規模のワクチン未接種者を確保することは日本においては至難の業であるとともに、日本以上に厳しい状況にある海外で治験者を確保することも難しい。...
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欧米のワクチンメーカーが開発で先行している一方で、国産ワクチンの開発の遅れを懸念する声が日増しに大きくなってきている。
ひところは大阪大学・アンジェスなどによる国産ワクチンが大きな話題を集めていたが、今、第3相治験という大きな壁が日本の国産ワクチンの行く手に立ちふさがっている。
感染力が強く、重症化も早いとされる変異種が感染拡大する中で、数万人規模のワクチン未接種者を確保することは日本においては至難の業であるとともに、日本以上に厳しい状況にある海外で治験者を確保することも難しい。
さらに問題なのは、ワクチンを打つグループとプラセボ(偽薬)を打つグループに分けて効果を比較するという第3相治験の手法自体も問題視されている。
つまりプラセボを打たれたグループは本物のワクチンを打つ機会を奪われる上に、感染にさらされるという道義上の問題が出てくることが問題になっている。
そこで日本は奥の手として第3相治験を省き、使用許可は与えるが薬事承認ではない中間解析のような形で早く使うことができる仕組みを考えている。さらに日本はこの特殊な承認方法を国際標準にしたい考えである。
ワクチンパスポートを念頭に入れ、この仕組みを世界共通にして同じような問題に直面している国と進め、世界共通で承認できるような流れを作っていくという2正面作戦となる。
その試金石となるのが6月2日に行われるワクチンサミットである。このサミットは日本が主宰国のひとつでもあり、こうしたワクチン開発や薬事承認をどのような形で推進していくか、そのためのガバナンスをどのように確立していくかをより深く議論をするための絶好の機会となる。
今後、第2、第3の新たなパンデミックが出てくることは確実であり、これに備えるためにも、日本が国際ワクチンの牽引役となることはこれまでの遅れを取り戻すことにもつながることにもなる。
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日本の脱炭素社会に向けた課題と展望(4月24日)
小泉進次郎環境大臣はBS「プライムニュース」に出演し、「再エネをもはやコストで語る時代は終わり、雇用で語る時代になっている」と表現した。再エネを前提としなければビジネスが成り立たないという再エネ経済圏のグローバル新時代が到来したと語った。
今の産業を変えずに続けていく場合、失われるものは多い。例えばEUはグリーンなものはこれだという定義を作って、そこに資金が流れるルールを作っている。ついて行けない日本企業はEUとの取り引きにも影響が及び、資金調達も難しくなる。...
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小泉進次郎環境大臣はBS「プライムニュース」に出演し、「再エネをもはやコストで語る時代は終わり、雇用で語る時代になっている」と表現した。再エネを前提としなければビジネスが成り立たないという再エネ経済圏のグローバル新時代が到来したと語った。
今の産業を変えずに続けていく場合、失われるものは多い。例えばEUはグリーンなものはこれだという定義を作って、そこに資金が流れるルールを作っている。ついて行けない日本企業はEUとの取り引きにも影響が及び、資金調達も難しくなる。
アップルは「2030年までに100%再エネでやらないと下請けや孫請けやサプライチェーンの中小企業を含めてビジネスの取引はしない」とまで言い切っている。再エネができなければこれからの時代、ビジネスチャンスを失うことを意味している。
現在、北欧ノルウエーでは約55%が電動車になっているが、日本でも2035年以降は新車販売は100%電動車になるとみられる。
そもそも日本は自国内での内需と市場だけではやっていけない国である。世界経済の中で持続可能な成長をしていく必要があるが、少なくとも脱炭素市場は今後数十年、もしくはその先まで永続的にビジネスが発生し続ける市場である。
この中でいかに技術の主導権をとり市場をとっていくかに日本の将来が懸かっている。日本は再生可能エネルギーの特許数は世界1位であるが、残念ながら市場を握っていない。技術開発は得意だが、技術普及は不得手ともいえる有様である。このため技術普及が得意な中国や台湾メーカーに追い抜かれ先にシェアを取られてしまうという結果をもたらしている。
小泉大臣は「9年の中でどこまで再生可能エネルギーを入れることができるかが重要だ」と指摘し、9年間でできることとして、一般住宅やため池、耕作放棄地、処分場などへの太陽光設置の義務化、陸上風力、バイオマスなどの普及を掲げた。
日本は技術普及を得意分野にし、今はまだ脱炭素の需要が大きくない国々に日本の先端技術を輸出していくことが日本の成長産業になっていく可能性があると小泉大臣は強調した。
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日本に追い風が吹いている(4月19日)
米中対立が激化する中で、今、日本に追い風が吹いてきている。米国・バイデン大統領は環境分野では中国との連携を探っているが、経済・安全保障・テクノロジー分野では価値観や理念を同じくする国や地域と連携していくという方向に舵を切った。
具体的には世界の今後を左右する戦略物資・半導体などの重要分野でサプライチェーンに関する協力を拡大していくこと、安全で信頼できる5Gネットワークの構築を信頼のおける国や地域と推進していくということが米国・バイデン政権の戦略である。...
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米中対立が激化する中で、今、日本に追い風が吹いてきている。米国・バイデン大統領は環境分野では中国との連携を探っているが、経済・安全保障・テクノロジー分野では価値観や理念を同じくする国や地域と連携していくという方向に舵を切った。
具体的には世界の今後を左右する戦略物資・半導体などの重要分野でサプライチェーンに関する協力を拡大していくこと、安全で信頼できる5Gネットワークの構築を信頼のおける国や地域と推進していくということが米国・バイデン政権の戦略である。
この中で、もっと最も期待されている国が同盟国・日本であり、半導体分野で米国は日本と組んで中国に対抗できる強力なサプライチェーンを構築していきたいと考えている。
そのための布石第一弾として半導体製造大手・TSMCを中国から引きはがし、米国はアリアゾナ州、日本はつくば市にそれぞれ同社を誘致した。
米国はTSMCを招致するだけでなく、インテルを半導体製造企業として強化していくつもりである。設計ではアームを傘下に収めた米国・エヌビディアに大きな存在感があるし、部材では日本の東京応化工業、JSRなどが期待できる。
設備では米国・アプライド、東京エレクトロンなどがそれぞれ強みを発揮できる。他にも日本には基盤系半導体会社のルネサスエレクトロニクスや、メモリー系半導体会社・キオクシャのような有力企業が存在しており、日米はこれら企業を連携させつつ中国と対抗していきたい考えである。
日本政府もこうした動きに呼応するように、経済産業省が中心となり「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を立ち上げた。
日本におけるネックは土地代が高いことと、人件費が高い点であるが、こうした障害をうまく乗り越えていけば、日本の成長産業につなげていくことも夢ではない。日本は1980年代に見られた活力をよみがえらせ、このチャンスを生かしてゆくべき時が来たともいえる。
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ゲノム解析の必要性が高まっている(3月6日)
変異株は子どもに対する感染の割合が高いのではないかと言われており、学校での変異種の大流行が懸念されている。
変異株が日本でどういう広がりを持っているのかを調べ、追跡するためのゲノム解析の必要性がこれまで以上に高まっている。
神戸市は、独自にゲノム解析を実施し、新規陽性者の約60%を調査した結果、半数以上が変異ウイルスだったことを突き止めた。
ただ、神戸市のケースは例外であり、日本においてコロナでゲノム解析を行ってきたのは国立感染症研究所だけというのがほぼ実情である(※地方衛生研究所でもゲノム解析は行ってはいるが感染研ほど精密なものではない)。...
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変異株は子どもに対する感染の割合が高いのではないかと言われており、学校での変異種の大流行が懸念されている。
変異株が日本でどういう広がりを持っているのかを調べ、追跡するためのゲノム解析の必要性がこれまで以上に高まっている。
神戸市は、独自にゲノム解析を実施し、新規陽性者の約60%を調査した結果、半数以上が変異ウイルスだったことを突き止めた。
ただ、神戸市のケースは例外であり、日本においてコロナでゲノム解析を行ってきたのは国立感染症研究所だけというのがほぼ実情である(※地方衛生研究所でもゲノム解析は行ってはいるが感染研ほど精密なものではない)。
日本はコロナ陽性患者のうちの1割しかゲノム解析ができていないということからもわかる通り、諸外国と比べ、日本のゲノム解析がなぜか遅れている。
ゲノム解析機器を多くの大学・大学病院でも所有されているので、本来ならばできないはずはないのだが、こういう施設が今回のコロナ禍で積極的に活用されていない。
これは日本のシステムが平時対応で作られており、緊急時対応にできていないということに起因している。
加えて、省庁の縦割りも大きな障害のひとつであり、今後は省庁の壁を取り払い、民間の力も援用し人員を増やすなどして、総力を挙げてオールジャパンでゲノム解析をやっていく必要がある。
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注射器問題で露わになった厚生労働省問題(2月13日)
日本政府は米国製薬会社ファイザーと7200万人分の契約をかわしたが、早くも問題が生じてきている。7200万人分を日本と契約したファイザーだが、この前提としていたのは1本で6人分とれる特殊な注射器であった。一方、日本側は一本で5人分とれる通常の注射器を想定していた。
そもそも最初からボタンの掛け違いが存在していたことになる。厚労省は6人分とれる特殊な注射器は現時点では入手不可能としており、今後1200万人分のワクチンが無駄になる可能性が高い。...
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日本政府は米国製薬会社ファイザーと7200万人分の契約をかわしたが、早くも問題が生じてきている。7200万人分を日本と契約したファイザーだが、この前提としていたのは1本で6人分とれる特殊な注射器であった。一方、日本側は一本で5人分とれる通常の注射器を想定していた。
そもそも最初からボタンの掛け違いが存在していたことになる。厚労省は6人分とれる特殊な注射器は現時点では入手不可能としており、今後1200万人分のワクチンが無駄になる可能性が高い。契約慣れしていない日本が損をした形である。
厚労省は「6人分とれる注射器というのは日本では普段使わない」と主張し、自己弁護している。そもそも契約の段階で前提となる注射器を確認しておくのが筋である。加えて、この注射器の問題について途中で誰も気が付かなかったということも信じがたいことである。このような組織が国民の税金を使い、他国や団体と契約を交わすことについては懸念する声もあがっている。
政治ジャーナリスト・田崎史郎は今回の事態は、厚労省の医薬局という部署のずさんな仕事が招いたとしている。
田崎は医薬局は他にも名称が類似した薬剤の取り違えや、PTP包装シートの誤飲問題など数多くのミスを犯しているとしているが、今回の注射器問題は特大級のミスであろう。田崎は厚労省の立て直しをやらない限り、誰が総理になろうとも、どこの政党が政権をとろうとも失敗するだろうとしている。
厚労省がミスを犯しがちである背景には他省庁に比べ、全体的に業務量が多いことがある。厚労省内部で行ったアンケートで65%が業務量について多いと感じているという結果が出たことがこれを象徴している。
以前と比べ官公庁を指向するエリートが減っていることも理由の1つとしてあげられる。厚生労働省分割案や厚生労働省に複数の大臣を置く案など、本格的に厚労省を改革すべき局面に来ているのかもしれない。
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日本の「ワクチン開発」事情と対策(2月11日)
先進国であると自負してきた日本でなぜ「ワクチン開発」が遅れているのだろうか。
2月10放送のBSフジの番組「プライムニュース」でその一端がはっきり見えた。
出演者は、KMバイオロジクス社の永里社長、大阪大学森下教授、武見敬三自民党新型コロナ対策本部本部長代理の三氏であった。
結論的に言えば、3つ問題点が浮き上がってきた。
第一に厚労省を始めとする国の機関に今回のような「パンデミック」時の対策が出来てなかったということである。...
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先進国であると自負してきた日本でなぜ「ワクチン開発」が遅れているのだろうか。
2月10放送のBSフジの番組「プライムニュース」でその一端がはっきり見えた。
出演者は、KMバイオロジクス社の永里社長、大阪大学森下教授、武見敬三自民党新型コロナ対策本部本部長代理の三氏であった。
結論的に言えば、3つ問題点が浮き上がってきた。
第一に厚労省を始めとする国の機関に今回のような「パンデミック」時の対策が出来てなかったということである。
第二の問題はワクチンの治験に対するルールであり、特に第三ステージの治験の対象人数とそれにかかる膨大なコストの問題がある。
第三に巨大なコストがかかる開発費と製造工場の整備コスト等を、国や製薬会社、それに資本市場やベンチャーキャピタルが充分に先行投資ができていないという点がある。
どうやら、今回のワクチンの開発に挑戦をしている日本勢のKMバイオロジクス社や大阪大学臨床遺伝治療学のチームは、従来型「不活化ワクチン等」や最先端の「DNAやmRNA型ワクチン」の開発に目途をつけている様子である。
今回の様に世界を巻き込む「パンデミック」に対する認識とその非常事態に対応するべき特別な対策を日本全体で早急に議論し、「その考え方」「対処方法」「リスク」について明確に結論を出さなければならない状況にあると言える。
しかもこのパンデミックは、1年や2年では収束しない恐れもあり、走りながら考え、結論を出し、実行することが求められている。
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コロナ禍によって炙り出された日本の課題(1月16日)
新型コロナウイルスによって日本の弱点が浮き彫りとなった。特にはっきりしたのが日本という国が平時のオペレーションを想定し、緊急時のエマージェンシー体制が弱いため、パンデミックなどの非常時に対しスピーディかつ効果的な対策がなかなか打てなくなっているということである。
例えば、新型コロナウイルスに際し日本政府の打ち出す措置は、ことごとく「あまりに小さく、あまりにも遅いため、有権者の支持を失っている」と外国メディアからも批判されてきたが、ここに至ってもこの域を出ているようには見えない。...
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新型コロナウイルスによって日本の弱点が浮き彫りとなった。特にはっきりしたのが日本という国が平時のオペレーションを想定し、緊急時のエマージェンシー体制が弱いため、パンデミックなどの非常時に対しスピーディかつ効果的な対策がなかなか打てなくなっているということである。
例えば、新型コロナウイルスに際し日本政府の打ち出す措置は、ことごとく「あまりに小さく、あまりにも遅いため、有権者の支持を失っている」と外国メディアからも批判されてきたが、ここに至ってもこの域を出ているようには見えない。
今後、パンデミックだけではなく気候変動による環境の激変、大地震などによる数多くの緊急事態が想定される中、日本にとって必要なのは緊急事態における国家運営を平時のオペレーションからエマージェンシー体制に素早くスイッチできる体制を構築しておくことではだないだろうか。
その為には、日頃からどんな緊急事態が起こり得て、その時にそれに対しての対応を大枠で決めて置かなければならないのではないだろうか。
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2028年中国がGDPで米国を追い抜く(12月28日)
中国のGDP(国内総生産)の規模が、2028年に米国を上回って世界1位になるという驚くべき報告書を英国の民間シンクタンクであるCEBR(経済経営研究センター)がまとめた。
このレポートはCEBRが世界193の国や地域のGDPについて2035年までの長期的な推移を予測しまとめたもので、これまでに出した報告書で2033年に中国が米国のGDPを追い抜くと予想していた。
今回、CEBRはこの予想をさらに5年前倒しにしたが、その理由として挙げているのが、欧米が新型コロナウイルスの感染拡大抑え込みに失敗した一方で、中国経済はコロナを抑え込み、いち早く回復したことで、CEBRは「パンデミックとそれに伴う経済への影響は、確実に中国に有利に働いた」と結論づけている。...
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中国のGDP(国内総生産)の規模が、2028年に米国を上回って世界1位になるという驚くべき報告書を英国の民間シンクタンクであるCEBR(経済経営研究センター)がまとめた。
このレポートはCEBRが世界193の国や地域のGDPについて2035年までの長期的な推移を予測しまとめたもので、これまでに出した報告書で2033年に中国が米国のGDPを追い抜くと予想していた。
今回、CEBRはこの予想をさらに5年前倒しにしたが、その理由として挙げているのが、欧米が新型コロナウイルスの感染拡大抑え込みに失敗した一方で、中国経済はコロナを抑え込み、いち早く回復したことで、CEBRは「パンデミックとそれに伴う経済への影響は、確実に中国に有利に働いた」と結論づけている。
感染拡大の影響で2020年の世界全体のGDPの伸び率は-4.4%に落ち込む一方で中国については、GDPの伸び率を+2%とプラス成長を維持すると予測している。
日本については感染拡大の影響が深刻だとして、2020年のGDPの伸び率は-5.5%に落ち込むと予測しており、2030年にはインドに抜かれ、GDP世界第4位になり、2050年には世界第7位になると予測している。
この予測は日本にかなりのインパクトをもって受け止められている。2030年までにガソリン車が電動車に切り替わり、日本の基幹産業である自動車産業が揺らいでいるとして危機意識を強めていた日本だったが、それよりさらに前の2028年に中国のGDPが世界一になるとの予測は大きな衝撃を与えるものである。
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なぜ日本はタイムリーにワクチンを作れないのか(12月26日)
世界で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。日本も例外ではない。25日、日本全国では、過去最多の3832人の感染が確認され、亡くなった人の数は63人で感染者、死者ともにこれまでで最も多くなった。
この状況を収束させる為にはワクチンの力に頼らざるを得ない。厚生労働省の専門部会は、2021年2月下旬から3月中にかけて医療従事者や救急隊員、3月から4月にかけて65歳以上の高齢者、それ以降に基礎疾患のある人と高齢者施設の職員らに順次ワクチン接種をしていく方針である。...
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世界で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。日本も例外ではない。25日、日本全国では、過去最多の3832人の感染が確認され、亡くなった人の数は63人で感染者、死者ともにこれまでで最も多くなった。
この状況を収束させる為にはワクチンの力に頼らざるを得ない。厚生労働省の専門部会は、2021年2月下旬から3月中にかけて医療従事者や救急隊員、3月から4月にかけて65歳以上の高齢者、それ以降に基礎疾患のある人と高齢者施設の職員らに順次ワクチン接種をしていく方針である。
今回、接種されるワクチンが全て外国製であり、日本製ワクチンの開発がパンデミック拡大阻止のタイミングに間に合わなかったということである。副反応がどうなのかという問題は残るが、米国、中国、ロシア、ドイツは自国製ワクチンの開発を何とか間に合わせている。
このパンデミックを収束させる為にはウイルスの変異にも対応可能でスピーディーな開発が可能なメッセンジャーRNA型のワクチンが有効となるが、日本も同じ遺伝子系ワクチンであるDNAワクチンをバイオベンチャーのアンジェスと大阪大学が共同開発していた。しかし大幅に後れをとり、発売される頃には出番がない可能性が高い。
なぜ日本のワクチン開発は出遅れたのか。ひとつには副反応などのリスクを恐れ、あまりにも慎重になり過ぎていることがある。さらに言えば、2010年新型インフルエンザのパンデミックが起きた際、日本はワクチンの生産体制構築に100億円近い予算を投じたものの、結果的にパンデミックは起きず、支援が終了したという負の経験がある。投資した額に見合わないとしてこの後のフォローを日本政府が行わなかったために技術基盤は育たなかった。
世界の開発競争の先頭を走る米バイオ企業モデルナ社は新型コロナ禍が発生すると、ガン治療用の遺伝子配列を新型コロナ用に書き換え、既に2020年3月半ばに臨床試験を開始していた。こうした素早い動きの背後には国家の安全保障を念頭にしたワクチン開発への投資があった。2001年の同時多発テロ直後に炭疽菌テロが起き、米国に死者を出したトラウマを持つ米軍は、派兵先で感染症が起きた場合、すぐに米兵に接種できるメッセンジャーRNAワクチン開発への投資を開始した。
抗原タンパク質の遺伝子情報をRNA(リボ核酸)やDNA(遺伝子情報)に組み込んで注射することによって、細胞内で抗原タンパク質が合成され、免疫反応が誘導されるシステムで、製造過程で感染するリスクが低い上、DNAさえ分かれば1カ月前後の超短期で開発でき、化学薬品と同じ要領で量産化が可能である。
設備の維持管理などに多額のコストがかかるが、米軍は毎年数千万ドルをモデルナ社のようなバイオ企業に投資し、平時から多様な様式のワクチンを確保してきたという。今回のワクチン開発競争で見られた国力の差は国家の安全保障投資への差が背後に潜んでいたといえる。
日本は安全保障の観点からも衛生学的見地からも今後、最低でも2~3の技術基盤とワクチンの自国製造能力を確保する必要がある。生産能力ゼロの場合、欧米企業の言い値を呑むしかなくなってしまう。次のパンデミックに備え、政府・民間は資金を投下し、人材を育て、技術を完成させ、タイムリーに日本製ワクチンを供給できるよう体制を整備するべきと考える。
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先が見えない日本(12月22日)
日本の産業や経済の進化の勢いが目に見えて衰えてきている。日本の厳しい状況を象徴的に示しているのが科学の成果を示す論文数で、例えば新型コロナ関連で主要な論文を数多く発表しているのは米国、英国、中国である一方で日本は残念ながら16位である。ワクチン開発に出遅れた日本はワクチンの接種時期でも先進国では一番遅くなっており、かってワクチン先進国だった国とは思えない。
現在、地球温暖化問題が待ったなしの状況になり、世界的に持続可能で革新的な技術が求められている状況にある。...
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日本の産業や経済の進化の勢いが目に見えて衰えてきている。日本の厳しい状況を象徴的に示しているのが科学の成果を示す論文数で、例えば新型コロナ関連で主要な論文を数多く発表しているのは米国、英国、中国である一方で日本は残念ながら16位である。ワクチン開発に出遅れた日本はワクチンの接種時期でも先進国では一番遅くなっており、かってワクチン先進国だった国とは思えない。
現在、地球温暖化問題が待ったなしの状況になり、世界的に持続可能で革新的な技術が求められている状況にある。例えば自動車業界。日本は2030年代にもガソリン車が廃止され、日本のお家芸である自動車産業が主力産業でなくなりEVにとって替わる恐れが出ている。
日本が近未来の技術革新に遅れをとっている中で巨像GAFAがEV市場に殴り込みをかける構えをみせている。欧州の環境会議で日本は化石賞という有難くない賞を受けても平然としていたが、今になって慌て始めている。環境分野でもかって日本の太陽光発電は世界トップクラスであったのに太陽光発電市場は中国にシェアを奪われ今は見る影もない。
今後の自動車市場はEV化、自動運転化が鍵を握っているが、中国は14億人のビッグデータをEV化を進めつつ集めている。こうしたデータは自動運転化において中国に有利に作用するとみられる。GAFAも情報産業であるためこうしたビッグデータを集めながら自動車市場に参入してくることになる。
危機感を深め、動き始めている日本企業もある。トヨタ自動車・豊田社長は自動車産業からモビリティ産業への脱構築を提唱し、ホンダは国境を超えた動きを見せGMに出資し、自動運転技術で提携、車体も共同開発するなど意欲的な動きを見せている。さらにはソフトバンクや日立製作所など次世代技術の先行開発で異業種との連携を進めるなど奮闘している。
日本の強みは例えばFCVなどの水素技術やiPS細胞、重粒子線治療技術などまだら模様に点在しているものの、体系的なものではなく、面になるまで多くはない。
日本が海洋大国であることや災害大国であることを逆手にとって発想してみたり、どこに萌芽があるか、必死になって探さないところまで今の日本は追い詰められている。期限も切られておりそれはあと5年から10年の勝負になる。
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日本のこれからの課題(12月19日)
今の中国のGDPは日本の3倍だが、2030年頃には中国が日本の6倍ぐらいの経済的規模をもつことになり、日本がいろんな意味で中国に依存していくような状況になるかもしれない。これは大変リスクの高い状況であることを日本人は強く認識しておく必要があるのではないか。
世界的にCO2排出の抑制要請が求められ、EV化などのパワートレーンの変化、カーシェアやライドシェアによるシェアリングの加速などによって日本最大の産業である自動車産業は10年から15年のうちに業態転換をするよう迫られている。...
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今の中国のGDPは日本の3倍だが、2030年頃には中国が日本の6倍ぐらいの経済的規模をもつことになり、日本がいろんな意味で中国に依存していくような状況になるかもしれない。これは大変リスクの高い状況であることを日本人は強く認識しておく必要があるのではないか。
世界的にCO2排出の抑制要請が求められ、EV化などのパワートレーンの変化、カーシェアやライドシェアによるシェアリングの加速などによって日本最大の産業である自動車産業は10年から15年のうちに業態転換をするよう迫られている。
欧州や中国をはじめ、米国・カリフォルニア州などが、おおむね2030年から2035年を目途にエンジン車販売禁止を打ち出しており、それまでに日本の自動車産業も脱ガソリン車を達成しなくてはならなくなる。そのためにはEV,蓄電池に強い人材育成を行い、設備投資、研究開発分野にも積極的に投資していく必要がある。
もうひとつの日本の収益源が観光産業であるが、コロナ禍が収まれば、復活するだろうとも言われている。ただし、同じようなパンデミックに再度襲われる可能性もないとはいえない。パンデミックに襲われても耐えることができるシステムを構築しておく必要がある。例えば、スペースをゆったりとった乗り物や旅客施設に転換する等、パンデミックに対応した状況を日ごろから心がけて、設計してゆく等ということが求められているのではないだろうか。
コロナに翻弄される中で日本には将来の収益源にたいする危機意識が求められており、国を上げて早急に準備していく必要があるのではないだろうか。
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ワクチン開発に出遅れた日本の将来(12月19日)
コロナ禍の日本でどうにも残念であるのは多くのノーベル賞受賞者を輩出している科学立国日本が、国際ワクチン開発戦争で出遅れてしまい、外国製ワクチンに頼らざるを得なくなっている現状である。このままでは第二、第三のパンデミックが起きても外国製ワクチン頼みの国になってしまうのではないか。
ワクチン接種の監督官庁である厚生労働省の動きが遅いことも気になる。安全性や有効性にプライオリティを置いているため、治験などに多くの時間を割き、動きが遅くなってしまっている。...
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コロナ禍の日本でどうにも残念であるのは多くのノーベル賞受賞者を輩出している科学立国日本が、国際ワクチン開発戦争で出遅れてしまい、外国製ワクチンに頼らざるを得なくなっている現状である。このままでは第二、第三のパンデミックが起きても外国製ワクチン頼みの国になってしまうのではないか。
ワクチン接種の監督官庁である厚生労働省の動きが遅いことも気になる。安全性や有効性にプライオリティを置いているため、治験などに多くの時間を割き、動きが遅くなってしまっている。過去の薬害訴訟などの経験も腰を重くしているとみられる。そもそも厚生労働省は医療安全行政と福利労働行政という2つの領域をカバーしていることから行政機能が肥大化しており、動きが鈍くなっていることがあり、今後は2分割するなど専門性により特化することも必要なのかもしれない。
実は1930年代には日本はワクチン開発の最前線に立っていた。例えば破傷風菌の培養に成功し、血清療法を確立したのは日本の北里柴三郎である。北里の研究がさまざまなワクチン開発につながり、1934年には大阪大学の敷地内に設置された現・BIKENグループが世界で初めての水痘ワクチンの開発に成功し、世界のワクチン界をリードしていたこともあった。
今、日本のワクチン業界が落ち込んでしまった背景には、ジフテリア予防接種禍事件などワクチン接種によって引き起こされる副反応問題の影響が大きくあった。副反応と、国全体の公衆衛生上のメリットとの綱引きが行われた結果、巨額の開発費を投じても、売上げが見込めない大手医療メーカーがワクチン業界から撤退した。その結果として、日本のワクチン市場には国際的にみれば中小ワクチンメーカーだけしか残らなくなってしまった。
規模の小さな日本のワクチンメーカーにはお金も人材も情報も十分には集まらない。この結果、開発能力もどんどん落ちていくという悪循環に陥っている。この先に、新たな感染症のパンデミックが発生したときに、いったい日本はどう対処してゆくのだろうか。
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現実化する医療崩壊(12月12日)
新型コロナウイルス感染症患者が急増し、コロナの医療と通常医療との両立が困難な状況となっている。大阪市は市内の医療機関が新たにコロナ受け入れ病床を増やした場合、1床当たり1千万円の協力金を支給することを明らかにした。
大阪市は民間、公立を問わず、100床のベッドの確保を目指すとしている。しかし例えベッド数だけを増やしても医療体制のひっぱく状態を抜け出すことはできない。そこにはもうひとつ重要な要素が抜け落ちている。...
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新型コロナウイルス感染症患者が急増し、コロナの医療と通常医療との両立が困難な状況となっている。大阪市は市内の医療機関が新たにコロナ受け入れ病床を増やした場合、1床当たり1千万円の協力金を支給することを明らかにした。
大阪市は民間、公立を問わず、100床のベッドの確保を目指すとしている。しかし例えベッド数だけを増やしても医療体制のひっぱく状態を抜け出すことはできない。そこにはもうひとつ重要な要素が抜け落ちている。それはスタッフの数がきちっとそろっているかどうかということである。
現状ではベッドがいくらたくさんあっても回らない。例えばエクモの患者1人につき看護師10人以上、臨床工学技士2~3人の合わせて20人程度の人員が割かれる。加えて看護師は通常の医療補助業務だけでなく、病室の清掃から、患者の介護まで何から何まで全て看護師がやっているのが実情である。病院の経営状況の悪化によってこれに見合う金銭が支払われていないことに加え、周囲の偏見や差別が家族まで及んでいることから、耐え切れずに辞めてしまう看護師が続出している。
コロナ患者が急増し看護師を増やさないといけない局面なのに逆に減っているのである。ここは業務量を減らすために清掃業者、介護業者の力を借りたいところだが、簡単に彼らは感染病棟に入れることはできない。その背景には感染病棟にはきちっとした研修を受けた業者しか入れない決まりになっていることや、医療行政が都道府県の管轄、介護の問題は市町村の管轄という手続き上の煩雑さが複雑に関係していて、結局、看護師がやるしかなくなっているのである。
病院医療が立ちいかなくなっているとして、北海道や大阪市は自衛隊に救護を要請したが、自衛隊は独自に病院を持っており既に1000人単位のコロナ患者を受け入れていて、その人々のケアも必要である。そもそも自衛隊の医者や看護師はそれぞれ1000人ほどしかいない。これ以上の市町村から緊急派遣要請が出ても自衛隊は隊員を派遣することはできない状況にある。
実は看護師の数はコロナ前から慢性的に足りなかった。今後のことを見据え、看護師の待遇改善や養成が急務である。
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電動車に舵を切る日本(12月5日)
経済産業省は今月10日にも国内自動車大手や有識者が集まる会議で「電動車比率100%」に舵を切る、より具体的には2030年代半ばに販売されるすべての新車をEVやFCVなどの電動車に移行させるという方針を表明する。
政府はこの新たな目標設定に合わせ、モーターを動かす心臓部となる蓄電池の開発や、充電インフラの整備を支援していく予定で、FCVに必要な水素の供給拠点の設置も今後、加速させていく考えである。...
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経済産業省は今月10日にも国内自動車大手や有識者が集まる会議で「電動車比率100%」に舵を切る、より具体的には2030年代半ばに販売されるすべての新車をEVやFCVなどの電動車に移行させるという方針を表明する。
政府はこの新たな目標設定に合わせ、モーターを動かす心臓部となる蓄電池の開発や、充電インフラの整備を支援していく予定で、FCVに必要な水素の供給拠点の設置も今後、加速させていく考えである。
電動車に舵を切る背景には2つの考えがある。一つは自動車による二酸化炭素排出量の大幅な削減につなげる環境保護の考えである。もう一つは脱ガソリン車の動きが世界的に加速し、日本の自動車産業が世界での競争力を失なってしまうという危機感である。
EVに切り替えた場合、最大20万人が失業すると言われている。英国やカルフォルニアのように日本が得意なハイブリッド車を電動車に含めないとする国や州も出ており、日本に有利な状況とはいえない。将来を見据えた場合、ハイブリッドという選択肢を外さないとただでさえ出遅れている日本がますます出遅れてしまう事態にもなりかねない。
世界のEV市場で戦うため、今後、日本とってのカギになってくるのがサプライチェーンの構築と業界再編成だということだ。EV化に成功した中国は既に国内にEVサプライチェーンを構築している。
バッテリー最大手にはCATLという会社を持っており、ここから中国製バッテリーが欧州に輸出されるような流れになっている。中国は、かって日本の自動車産業が構築していた産業ピラミッドをEV市場で築きつつあり、日本は後手に回っている。
コロナ禍で忘れがちだが、日本人はこれから、どうやって飯を食っていくのかというシビアな局面に立たされているという危機感は共有するべきである。
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世界はグリーンニューディールに舵を切った(11月21日)
バイデン政権になった米国はグリーンニューディールを前面に立て、二酸化炭素の排出削減へ向けて大きく舵を切った。
菅首相も2050年までに日本の温室効果ガスの排出を実質ゼロにする事を打ち出している。EUも2050年までに排出を実質ゼロにすると宣言した。中国も2060年までに実質ゼロにするとしている。
そんな中で、中国が温室効果ガス削減の切り札と位置付けているのが電気自動車(EV)である。EVは再生可能エネルギーの蓄電池としての役割も期待されており、中国は補助金をつけるなどして、国を挙げてEVの普及に力を入れている。...
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バイデン政権になった米国はグリーンニューディールを前面に立て、二酸化炭素の排出削減へ向けて大きく舵を切った。
菅首相も2050年までに日本の温室効果ガスの排出を実質ゼロにする事を打ち出している。EUも2050年までに排出を実質ゼロにすると宣言した。中国も2060年までに実質ゼロにするとしている。
そんな中で、中国が温室効果ガス削減の切り札と位置付けているのが電気自動車(EV)である。EVは再生可能エネルギーの蓄電池としての役割も期待されており、中国は補助金をつけるなどして、国を挙げてEVの普及に力を入れている。
中国は、日本の自動車産業と同じピラミッド構造を中国国内で作り上げ、世界におけるEVの輸出拠点となりつつある。世界のEV生産台数66万台のうち、およそ40%が中国製EVであり、世界の自動車産業の勢力構造は日米欧から中国に塗り替えられつつある。
米国・テスラ社、ドイツ・BMW、フランス・ルノーも中国で生産したEVを欧州に輸出するなどしている。
この波に乗り遅れまいと日産やホンダも中国企業と合弁でEV生産に乗り出している。
中国で拡大するEV生産の恩恵は日本の部品・素材企業にも及んでおり、EVの駆動モーターには日本電産のモーターが使われている他、旭化成や住友化学なども現地生産でリチウム電池の構成素材を提供している。
自動車産業という基盤事業を失いつつある日本勢は振り切られることがないように、この大きな波についていくことが肝心であり、その上で自らの立ち位置を探していく必要がある。
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「GDP」既に日本は中国の3分の一、米国の4分の一の規模になっている(11月19日)
あるテレビ番組を視聴していたら、画面に表示された国別GDPの数字に仰天した。
GDPでは、日本は中国の3分の一、米国の4分の一の規模になっているという現実を改めて認識させられた。
中国の経済発展については、よく聞く話であるが、こんなに差がついてしまっているのかと改めて、思い知ることになった。
2015年頃では、頑張れば何とか追いつける範囲にいたと記憶していたが、その差の開き具合に、唖然とした。...
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あるテレビ番組を視聴していたら、画面に表示された国別GDPの数字に仰天した。
GDPでは、日本は中国の3分の一、米国の4分の一の規模になっているという現実を改めて認識させられた。
中国の経済発展については、よく聞く話であるが、こんなに差がついてしまっているのかと改めて、思い知ることになった。
2015年頃では、頑張れば何とか追いつける範囲にいたと記憶していたが、その差の開き具合に、唖然とした。
国際社会での、日本の立ち位置は、ますます難しくなってゆくのではないかと、茫然とした。今こそ、国際社会における、5年後10年後の日本の姿を明確に構想する時ではないのか。
中国では、5中全会で所得倍増について習近平国家主席が「2035年までにGDPと一人あたりの所得を倍増させることは完全に可能だ」と述べた。
現在の中国のGDPは1532兆円で米国の2229兆円に次いで2位で、3位は日本で528兆円、4位ドイツは401兆円、5位インドは298兆円となっている。
中国のGDP倍増が実現すると2030年には米国の8割弱に、2030年代半ばには米中が逆転する可能性もあるという。
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菅首相のブレーン・デービッドアトキンソン氏の指摘(10月31日)
成長戦略会議のメンバーに選ばれたデビッドアトキンソン氏(小西美術工藝社社長、元ゴールドマンサックスのアナリスト)は菅政策を知る上でキーパーソンの一人である。菅総理はアトキンソン氏を高く評価している。
英国人のアトキンソン氏は著書の中で、1990年代から日本企業の生産性が上がっていないと指摘している。生産性を押し下げているのは日本の中小企業の存在が大きいとしている。
生産性が低く、潰れるべき中小企業を潰れないよう日本政府が守ってきたことこそが日本の生産性を下げてきたというのである。...
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成長戦略会議のメンバーに選ばれたデビッドアトキンソン氏(小西美術工藝社社長、元ゴールドマンサックスのアナリスト)は菅政策を知る上でキーパーソンの一人である。菅総理はアトキンソン氏を高く評価している。
英国人のアトキンソン氏は著書の中で、1990年代から日本企業の生産性が上がっていないと指摘している。生産性を押し下げているのは日本の中小企業の存在が大きいとしている。
生産性が低く、潰れるべき中小企業を潰れないよう日本政府が守ってきたことこそが日本の生産性を下げてきたというのである。
中小企業を守る政策は、人口が増えている間は有効だったが、人口が減っている今は、企業規模を減らしていかないと、どんどん日本の生産性が悪化していくと強く主張している。
増えすぎてしまったものが減ることは正常化の流れだとしてアトキンソン氏は「企業の淘汰」を促進する提言を今後、あらゆる機会で強く打ち出してくるものとみられる。
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中小企業の再編が加速する?(10月31日)
26日に行われた「財務省財政制度等審議会」の有識者の提言で中小企業へ融資について、「資金繰り支援には意義が認められるが、支援の長期化は中小企業の新陳代謝を著しく阻害するおそれがあるため、前向きな取り組みへの支援に移行すべき」との方向性が発表された。
菅首相は「日本の中小企業の数が多すぎる」として、中小企業基本法の見直しに言及するなど、中小企業の定義を変え、生産性が低く、低賃金が常態化している企業の数を減らす方向性を打ち出している。...
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26日に行われた「財務省財政制度等審議会」の有識者の提言で中小企業へ融資について、「資金繰り支援には意義が認められるが、支援の長期化は中小企業の新陳代謝を著しく阻害するおそれがあるため、前向きな取り組みへの支援に移行すべき」との方向性が発表された。
菅首相は「日本の中小企業の数が多すぎる」として、中小企業基本法の見直しに言及するなど、中小企業の定義を変え、生産性が低く、低賃金が常態化している企業の数を減らす方向性を打ち出している。
日本の中小企業といえば日本にある企業全体の99.7%を占め、全労働者の7割が働いており、これまでの政府は補助金と優遇策で中小企業を守ってきた。菅政権の方針はこのやり方を180度転換させるものであり、今回の審議会での発表はこうした菅政権の動きに呼応するものと言える。
この動きに連動するかのように最近、企業の合併・買収・事業再編の動きが活発化している。M&A調査会社のレコフデータによると「コロナの影響で今後、中小企業の事業売却や再編のニーズが高まることが予想される」という。
企業再編は成長力や収益性、生産性を高める有効な手段だが、拙速な再編はマイナス面として日本文化が失われたり、成長の芽を摘んでしまうことも考えられる為、慎重に行うべきとの声も出ている。
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日英EPAの背景(10月24日)
茂木外相と英国・トラス国際貿易相が日英EPAに署名した。来年1月1日の発効を目指すことになった。
英国はTPP参加にも興味を示しており、英国サイドは「貿易と供給網のパートナーを多様化し、英国経済を強固にできる」とTPP加盟のメリットを強調したが、日本側にとってもGDP世界第5位の英国が参加して再び12ヶ国体制となるメリットは大きいとみられる。
日英EPAに話を戻すと、日英EPAが発効すると日英間貿易で関税率が大幅に上がることはなくなる見通しであるが、日本にとってのもうひとつの大きな問題点が実は英国とEUのFTA交渉の行方に潜んでいる。...
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茂木外相と英国・トラス国際貿易相が日英EPAに署名した。来年1月1日の発効を目指すことになった。
英国はTPP参加にも興味を示しており、英国サイドは「貿易と供給網のパートナーを多様化し、英国経済を強固にできる」とTPP加盟のメリットを強調したが、日本側にとってもGDP世界第5位の英国が参加して再び12ヶ国体制となるメリットは大きいとみられる。
日英EPAに話を戻すと、日英EPAが発効すると日英間貿易で関税率が大幅に上がることはなくなる見通しであるが、日本にとってのもうひとつの大きな問題点が実は英国とEUのFTA交渉の行方に潜んでいる。
英国で活動しているトヨタ自動車や日産自動車など日系大手企業の多くは部品をヨーロッパから英国に調達し、完成品はEUに輸出するというサプライチェーンを構築している。
年内に英EU間でFTA協定が結ばれないと、英国のEU離脱の余波を日本企業はまともに浴びることになる。具体的にいうと、乗用車の輸出時に10%、輸入時にも部品に応じて関税がかかるようになり、生産コストが大幅に跳ね上がってしまうのである。
このため、自動車大手は英国政府がEUとのFTAを結べなかった場合に備え、発生した関税コストの補償を求めている。ただし、仮に英国がEUとFTAが結べた場合でも問題はまだある。
「原産地規則」という法律がネックとなり、優遇関税の対象となる原材料に日本製を含めることができない可能性があるというのである。
英EU・FTA交渉の行方が日本のサプライチェーンと立地戦略に大きな影を落としていることは間違いない。
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日本の株価を底上げするGPIFと日銀(10月24日)
日本の株式市場は官製相場の度合いが徐々に高まってきている。より具体的に言えば、巨大な資金を持つGPIF(独立行政法人年金積立金管理運用機構)と日本銀行が大株主になることによって、日本企業の株価を押し上げ、投資家らに恩恵をもたらしてきた。
GPIFと日銀は東証一部上場企業の8割にあたる約183社の大株主になっている。例えば、22.1%のファーストリテイリング、15.3%のソフトバンクグループ、14.1%の三菱UFJフィナンシャルグループ、13.5%のANAホールディングス、10.4%のトヨタ自動車、8.6%の日産自動車などである。...
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日本の株式市場は官製相場の度合いが徐々に高まってきている。より具体的に言えば、巨大な資金を持つGPIF(独立行政法人年金積立金管理運用機構)と日本銀行が大株主になることによって、日本企業の株価を押し上げ、投資家らに恩恵をもたらしてきた。
GPIFと日銀は東証一部上場企業の8割にあたる約183社の大株主になっている。例えば、22.1%のファーストリテイリング、15.3%のソフトバンクグループ、14.1%の三菱UFJフィナンシャルグループ、13.5%のANAホールディングス、10.4%のトヨタ自動車、8.6%の日産自動車などである。
株価全体を底上げするメリットがある一方で、逆にそのことによって企業株価がわかりにくくなっているというデメリットも出てきている。
今後、最も懸念されるのは、一例でいえば、政府がこれまでの金融政策を転換することにより株価の大幅な下落や年金の毀損などにもつながることである。
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今後日本はどう成長してゆくのか(9月23日)
コロナ禍にあって世界各国で債務が増加している。日本も例外ではない。2019年末に1328兆円あった借金にさらにコロナの債務がこれから積み増しされてくる。
世界各国が今、どうやって債務を減らすかについて模索している。債務を減らすためには3つの方法1.増税、2.緊縮財政、3.成長戦略などの方法がある。感染が拡大し続け、収束する兆しが見えない中では、1と2の方法は難しい。
各国は3の成長戦略を主眼にグランドコンセプトづくりを急いでいる。...
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コロナ禍にあって世界各国で債務が増加している。日本も例外ではない。2019年末に1328兆円あった借金にさらにコロナの債務がこれから積み増しされてくる。
世界各国が今、どうやって債務を減らすかについて模索している。債務を減らすためには3つの方法1.増税、2.緊縮財政、3.成長戦略などの方法がある。感染が拡大し続け、収束する兆しが見えない中では、1と2の方法は難しい。
各国は3の成長戦略を主眼にグランドコンセプトづくりを急いでいる。フランスは環境分野に的を絞り一点突破しようと目論んでいる。ドイツはデジタル分野における成長戦略を考えている。
日本の菅政権はドイツに近い成長戦略を模索しているように見える。例えば香港がアジアの金融センターとしての地位を失う中で、日本はアジアの金融センターの座をシンガポールと競い合っている。
日本がデジタルを成長戦略の柱に据えるならば、デジタル金融であるフィンテクも視界に入れておく必要がある。
更に考えるならば、日本の成長戦略の本命は科学や医療分野だろう。ノーベル賞受賞者を多く輩出している日本が科学や医療分野で本気を出せばこの分野が成長分野になる可能性が十分にある。
今後、日本に必要とされるのは超高度な科学的人材を育成していくことである。そのためには研究論文数を増やしていくことにもっと力を入れていくべきである。
2020年に自然科学の論文数で中国が米国を抜いて初めて世界1位になったが、注目度の高い論文数で日本は9位と、10年前より順位を落としてしまっている。言うまでもなく科学技術は軍事や産業の基盤であり、国の体幹力となっていくものであり、ここを補強するべきではないだろうか。
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菅政権には守りだけではなく経済成長も期待したい(9月21日)
少子高齢化や経済成長率の低迷が続く中、菅新政権が発足し、「規制改革」や「省庁の縦割り打破」、「デジタル改革」を前面に打ち出し、目玉政策の実現に向けて矢継ぎ早に新閣僚に指示を出している。こうした姿勢が好感され、世論調査では小泉政権、鳩山政権に次ぐ歴代3位の高い支持率を叩き出している。
菅新政権が打ち出している政策は、例えば世界的に見て割高な日本の携帯電話料金を下げたり、省庁の壁を取り払い、本来進めるべき政策が前進できるようにし、コロナ禍で明らかになった日本のデジタル化の遅れを取り戻すということであり、日本にとっては避けては通れない道であり、国民の生活にも直結するものばかりである。...
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少子高齢化や経済成長率の低迷が続く中、菅新政権が発足し、「規制改革」や「省庁の縦割り打破」、「デジタル改革」を前面に打ち出し、目玉政策の実現に向けて矢継ぎ早に新閣僚に指示を出している。こうした姿勢が好感され、世論調査では小泉政権、鳩山政権に次ぐ歴代3位の高い支持率を叩き出している。
菅新政権が打ち出している政策は、例えば世界的に見て割高な日本の携帯電話料金を下げたり、省庁の壁を取り払い、本来進めるべき政策が前進できるようにし、コロナ禍で明らかになった日本のデジタル化の遅れを取り戻すということであり、日本にとっては避けては通れない道であり、国民の生活にも直結するものばかりである。
しかし、これだけでは弱点の補強に過ぎない。菅政権は安倍政権を継承していくとしているが、アベノミクスの3本の矢の内、成長戦略は未だに定まっていない。日本にとって本当に必要なのはこれから先、どう経済成長していくか具体的なビジョンを打ち立てることである。
日本にはまだまだ高度な人材が沢山いることを踏まえれば、日本が目指すべき道は「超高度科学技術人材の活用」ということになるのではないか。
例えば歴代ノーベル賞受賞者に新たなプロジェクトを立ち上げてもらうとか、iPS細胞などの高度医療技術への活用を促進し、、蓄電池の高度化や水素電池の実用化、衛生システムの高度化、6G、電磁波技術や衛星技術、更にはサイバー攻撃に強いシステムの構築などが考えられる。
こうしたアクションを起点として経済成長や市場開発、そして新しいモノやコトを創り出していくクリエーション能力をどのように作り出していけるかが鍵となると思われる。
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新しい産業革命・グリーンリカバリーの動き(9月5日)
ここにきて新しい産業革命の動きが出てきている。グリーンリカバリー、ポストコロナ革命、高度医療革命などである。今回はグリーンリカバリーについて取り上げる。
1982年の統計開始以来、過去最高の海面水温を記録し、日本のすぐ沿岸までの海水温度が30度という異常な事態となっている。近年、巨大台風が日本列島を襲うことが増えているが、こうして温まった海水を巨大なエネルギー源として台風が吸い上げることで勢力が維持されていることが大きい。...
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ここにきて新しい産業革命の動きが出てきている。グリーンリカバリー、ポストコロナ革命、高度医療革命などである。今回はグリーンリカバリーについて取り上げる。
1982年の統計開始以来、過去最高の海面水温を記録し、日本のすぐ沿岸までの海水温度が30度という異常な事態となっている。近年、巨大台風が日本列島を襲うことが増えているが、こうして温まった海水を巨大なエネルギー源として台風が吸い上げることで勢力が維持されていることが大きい。なぜ海水温があがっているのかといえば、人類がたくさんのエネルギーを得る為に石炭や石油などの化石燃料を燃やすようになった結果として、大気中の二酸化炭素が急速に増加し、これが上空にたまり、あたかも地球が温室のようになった結果、温度が上がっている。日本を脅かし始めている災害の原因は地球温暖化である。
今、日本の今後のいく道を探る上で参考になる考え方が欧米で注目を浴びている。
それはグリーンリカバリーという考え方で、「気候変動などの環境対策をコロナ後の経済復興の中心に据えようという動き」である。より具体的には太陽光発電や風力発電、地熱発電などの地産地消のクリーンエネルギーへの投資や、土にかえるレジ袋、紙製のストローなど環境に負荷をかけないプロダクツなどの生産など、コロナ危機で停滞した社会を地球温暖化問題や環境問題に役立てようという考え方である。
欧州や中国が特に積極的な動きを見せており、EUでは7500億ユーロの復興基金(別名:グリーンリカバリーファンド)を設置し、この基金の一部は、例えば化石燃料から再生可能エネルギーにシフトするなど、地球温暖化問題などの環境対策などに充てられている。一方、中国も電気自動車(EV)の補助金を2年延長するなど積極的な対応を行っている。
グリーンリカバリーは新たな産業革命と言っても過言ではなく、世界中でグリーンリカバリーの機運が高まっている。日本も国際社会の一員としてグリーンリカバリーに参入していく道を必然的に選ばざるを得ない。
特に日本はパリ協定において「2030年度に2013年度比でCO排出量をマイナス26.0パーセント」を国の目標として掲げている。グリーンリカバリーによってこの目標を達成することにつなげていくことができる可能性が開け、近未来に台風や災害の数を減らすことにもつながる為、日本にとっては緊喫の課題になっている。
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これから、日本はどこを主戦場にして戦うのか(8月17日)
トランプ政権は13日、ファーウェイなど中国IT企業5社との取引を禁ずる規則を施行し、日本企業も中国企業との取引を見直さざるを得ない状況となっている。
例えばNTTデータの一部のグループ会社は中国製品を他社製品に交換し、KDDIは5G基地局で中国系5社の製品を使わないことを決めた。またソフトバンクは4G基地局の一部でファーウェイやZTEの製品を使っていたが、18年以降はエリクソン社とノキア社製のものに変更済である。...
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トランプ政権は13日、ファーウェイなど中国IT企業5社との取引を禁ずる規則を施行し、日本企業も中国企業との取引を見直さざるを得ない状況となっている。
例えばNTTデータの一部のグループ会社は中国製品を他社製品に交換し、KDDIは5G基地局で中国系5社の製品を使わないことを決めた。またソフトバンクは4G基地局の一部でファーウェイやZTEの製品を使っていたが、18年以降はエリクソン社とノキア社製のものに変更済である。日立製作所は米国政府に納入する製品ではそもそも5社のものを使っていないが、規制の定義が曖昧な為様子見の姿勢である。
これまで日本は米中両方にいい顔をしながら両国の間をうまく泳ぎながらビジネスを行ってきた。これからはさらに米中のデカップリングが進み、少なくともトランプ政権が続く間は米中両国にいい顔を見せることが以前ほど簡単にはいかなくなる可能性が高い。
中国は日本にとって輸出入共に2018年からの最大のビジネスパートナー国で、中国との取引を制限されると日本企業にも大きな影響が出てくることは間違いないが、実は日本企業にとってのチャンスになる可能性もある。中国以外にも市場は米国、欧州、アジアといくらでもある。例えば次世代移動通信システム・5Gの導入が今後進んでくるとみられるが、そうなると世界中で半導体需要が高まってくる。
最先端の半導体を製造するためには、オランダASMK社のエクストリーム・ウルトラバイオレット(極端紫外線)露光装置が必要となるが、同社に必要な部材を供給しているのは信越化学工業や東京応化工業といった日本企業である。
これまで日本は、補完的な産業に過ぎない観光ビジネスの一本足打法に力を注ぎ過ぎ、本来、力を注ぐべきモノづくりなどの産業支援を怠ってきた。今回のような機会を利用して、日本のハイテク産業や部品産業を強化していくいい機会である。
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1年後の東京五輪は(7月25日)
まるでGo Toキャンペーンと歩調を合わせるかのように7月23日、東京五輪の日程が発表された。
同日、競泳女子の池江璃花子が、ランタンを両手に持って来年のメインスタジアムとなる国立競技場の中央に立ち、「1年後の今日、この場所で、希望の炎が輝いていてほしい」と世界にメッセージを発信した。
水面下ではIOCと日本のせめぎ合いが行われている。開催推進派のIOC・バッハ会長は「必要な時期に判断する」としている。...
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まるでGo Toキャンペーンと歩調を合わせるかのように7月23日、東京五輪の日程が発表された。
同日、競泳女子の池江璃花子が、ランタンを両手に持って来年のメインスタジアムとなる国立競技場の中央に立ち、「1年後の今日、この場所で、希望の炎が輝いていてほしい」と世界にメッセージを発信した。
水面下ではIOCと日本のせめぎ合いが行われている。開催推進派のIOC・バッハ会長は「必要な時期に判断する」としている。一方、やや慎重姿勢を見せているIOC・コーツ調整委員長は「今年10月ぐらいが開催可否の判断になる」としている。日本としては、来年3月ぐらいまで判断を先延ばししたい思いがある。
いずれにせよ最終決定権はIOCが握っており、年内には判断が下される可能性が高い。
米国の感染者の状況が鍵となるとみられるが、現在米国の感染者数は依然増加傾向にある。せめてもの光は死者数がピーク時の3分の1程度に減ってきていることである。
こうした中、各国でワクチンの開発競争がヒートアップしている。ただし開催予定の来年7月までにはおそらく間に合わないと言われている。
ワクチンの完成が五輪開催の絶対条件だったはずだったが、ここにきてコロナとうまく共存しつつ開催するという方向に微妙に論調が変わってきている。
コロナ下で開催される場合には複数のシナリオが考えられる。最も可能性が高いのは無観客五輪である。
海外からの観光客を呼んだ場合、コロナに感染したり別の感染症を持ち込まれるなどした場合、日本の医療体制では対応ができないので外国からの観光客は受け入れられない。ただし人数を会場別に上限を設け感染対策を徹底した上で日本人観光客を会場に入れる可能性はある。選手や関係者には徹底したPCR検査を実施し、8K、4Kテレビ放送、5Gなどテクノロジーを駆使するなどし、ウィズコロナ、ポストコロナ時代にふさわしい新しい五輪を演出することになるものとみられる。
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直面する日本政府のIT化の遅れ(7月18日)
今の日本はデジタル先進国からほど遠い。それは未だにハンコ社会であることや、マイナンバーカードシステムをめぐる混乱、新型コロナの感染者数をめぐるやり取りがFAXで行われていたことなどからも明らかである。
日本のIT化が進んでこなかった最大の理由は、行政と政治にある。予算が各省庁に降りてきてもほとんど丸投げで、霞が関が予算を消化するための存在になっていて、その結果に対して誰も責任を持たなかったし、専門的なチェックもなく、周囲から追及もされることがなかった。...
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今の日本はデジタル先進国からほど遠い。それは未だにハンコ社会であることや、マイナンバーカードシステムをめぐる混乱、新型コロナの感染者数をめぐるやり取りがFAXで行われていたことなどからも明らかである。
日本のIT化が進んでこなかった最大の理由は、行政と政治にある。予算が各省庁に降りてきてもほとんど丸投げで、霞が関が予算を消化するための存在になっていて、その結果に対して誰も責任を持たなかったし、専門的なチェックもなく、周囲から追及もされることがなかった。そこにはビジョンも一貫性もなかった。それが当たり前として通用してきた。
そういう中で事業者は、デジタルシステムの互換性をなくして、その事業を囲い込み、独占をすることで利益の最大化を図ることが目的になってしまった。こうしたことが慣習化し、ルーティン化してしまったために、結果として日本のIT化が遅れてしまったといえる。
各省庁がそれぞれバラバラなことをやり、協力し合うこともないので一括した横断的なシステムも作れず、それをシステムとして海外に展開していくということもできなかった。そもそも国権の最高機関が率先してデジタル化を進めてこなかった上に、お題目ではデジタル化、IT化と言いながらその本質を把握できずに、発想もおよそ合理的ではなかった。
例えば日本のスーパーコンピューターが世界一速いと自慢するのは結構なことだが、それをどう使うか、その運用の仕方が重要であることにそもそも気づいていない。速いこと自体にはたいして意味もない。
こうしたことの問題に気が付き、やり方を抜本的に変えない限り、今後も日本政府のIT化進展は望めそうもない。事は大変厳しい状況である。
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