JAL機衝突炎上で全員脱出の奇跡(2024/01/03)
2日夕刻、羽田空港で、新千歳発羽田行き日本航空(JAL)516便(エアバス350型)が、地震の被災地に物資を運搬する予定だった海上保安庁の機体(DHC8型)と滑走路上で衝突した。この事故で、海保機の乗員のうち機長を除く5人が死亡したが、JAL機の乗客が負傷者を出しながらも、全員脱出避難できたことが奇跡的だと報じられている。
1月2日付英
『Guardian』:「羽田空港で滑走路での衝突事故後、乗客の奇跡的救出」:
羽田空港の滑走路で海上保安庁の機体と衝突した日本航空の全乗客乗員が「奇跡的」な脱出に成功した。
海保機は元日の地震の救助物資を新潟へ運ぶ準備をしていた。通称「ダッシュ8」、デ・ハビランド・カナダ DHC-8に乗っていた海上保安庁の6人のうち5人は死亡。
元旅客機パイロットのロジャー・ホイットフィールド氏は、「まずはミラクルが起きたと言える。...
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1月2日付英
『Guardian』:「羽田空港で滑走路での衝突事故後、乗客の奇跡的救出」:
羽田空港の滑走路で海上保安庁の機体と衝突した日本航空の全乗客乗員が「奇跡的」な脱出に成功した。
海保機は元日の地震の救助物資を新潟へ運ぶ準備をしていた。通称「ダッシュ8」、デ・ハビランド・カナダ DHC-8に乗っていた海上保安庁の6人のうち5人は死亡。
元旅客機パイロットのロジャー・ホイットフィールド氏は、「まずはミラクルが起きたと言える。乗客全員を脱出させた方法が信じられない」とする。
機内の様子を写したソーシャルメディアの映像からは、衝突後、滑走路を走行中に、客席の窓から機体後方に煙が見えている。
生存者の話によると、避難準備をする乗員は、乗客に落ち着くよう促すが、荷物を手に取ろうとした人々に持ち物を置いていくように言った。その後、電気が消え、機内の温度が上がり始めたという。乗客は暗闇と濃い煙の中、懐中電灯を持った乗員に誘導された。
搭乗していた17歳のスウェーデン人でアントン・デイベ氏は、スウェーデン紙「アフトンブラデット」に、「機内全体に数分で煙が充満した。皆が下の階に降り、非常ドアが開かれそこから脱出した」と述べている。また、「キャビン内の煙は酷く、どこに向かっているかも分からないまま外に出た。混乱状態だった」とも述べている。
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、オーストラリア国籍の12人が搭乗していたが、全員怪我なく避難したと発表している。
1月3日付米『Business Insider』:「日本航空機の死者ゼロ、最新安全性能と秀逸な訓練」:
羽田空港で着陸前に炎上しているJAL機の恐ろしい映像は世界を震撼させた。
着陸の際、海上保安庁の機体と衝突したが、驚くべきことに379人全ての乗客がエアバス350から救出された。
英国クランフィールド大学の航空安全の専門家グラハム・ブレイスウェイ教授は、航空機のデザインや、ハイレベルなスタッフの訓練が災難を回避するのに役立ったと分析する。
機内で撮影された映像をみると、乗客が避難する間に煙が充満するのが確認できる。エンジンを炎が包み込む中、緊急脱出スライドを滑り降り、飛行機の下を乗客が走っている。
安全ルールに従うと、緊急時に非常出口の50%のみが使える場合、90秒で脱出する必要があるという。だがこれは、今回の様な事故で発生するパニック状態を勘案していない。子どもや高齢者などを含めると、安全な避難に必要な時間は更に必要だと推定される。
今回の状況で、死者を出さずに軽症の負傷者が僅か17人とは、クルーの避難誘導の素晴らしさを物語る。一方の海上保安庁の機体の5人は死亡し、1人は重傷となっている。
メトロポリタン州立大学の航空安全学のジェフリー・プライス教授は、全員が安全に避難できたのは「奇跡だ」とする。クルーの素晴らしい行動のみならず、乗客自身も、機内に煙が充満してしまう前に、多くの人が飛行機から脱出できるよう迅速に行動した」と分析する。
乗客が混乱と人命喪失につながるパニックを起こさず、冷静さを保ったことが更に奇跡的だ。飛行場でレスキュー隊や消防隊員が現場に到達するにも、3分以上は要する。飛行機の機内に炎が入るまでが約90秒。これらの数字から、乗客、乗員クルーは、救助が来る前の最初の1,2分は自分たちの判断で行動したこととなる。
また、航空機の最新設備設計の耐久性も重要な要素だったと指摘する。機内の炎上は航空安全上の最大の脅威だと長く考えられてきた。飛行機には非常に可燃性の高い燃料と物質が積載されている。
エアバス350には火の急速な広がりと、毒性のある煙の発生を抑える特別な素材が使用されているという。また、現在は、どこに座っていても、煙が充満した場合など、見えにくい状況下でも見えるようライトが点灯しており、非常口に容易にたどりつけるよう設計されている。
運も作用した。2002年の研究によると、機内の炎を感知した場合にパイロットが安全に着陸させるまでには17分を要するという。今回旅客機が既に着陸していたことは、乗客の救出に重要な要素であったといえる。
JALの乗客安全へのアプローチも素晴らしく、「安全性向上への取り組みが組織全体に根付き、標準操作手順に従う厳格な文化が守られている」と称賛する。
520人の死者を出し、航空機史上最悪の事故となった1985年の日航機墜落事故をきっかけに、同社は乗客の安全を非常に重視するようになった。全スタッフが本社の航空安全センターを訪れ、間違えが起きる可能性と、乗客安全に必要な仕事がどれだけ必要かを教え込まれるという。JALの文化が今回の惨事を見事に回避したとしている。
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スウェーデン;国民に範を垂れないでクリスマス旅行をした非常事態対応庁トップを更迭【米・ロシアメディア】(2021/01/08)
本邦では、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大が続く中、本来率先して範を垂れるべき政治家や官僚トップが、自粛などどこ吹く風といった行動に出ておりながら、反省と口ではいうものの一切責任はとっていない。しかし、同じく防疫失敗で感染拡大が深刻なスウェーデンでは、防疫対策等非常事態に当たるべき役所の庁が、市民に自重を求めていたクリスマス期間中に旅行をしていたことが判明し、更迭されてしまっている。
1月7日付米
『AP通信』:「スウェーデンの高官、COVID-19感染流行の最中にスペインにクリスマス休暇旅行して更迭」
スウェーデンの高官トップが1月6日、クリスマス休暇を利用してカナリア諸島(アフリカ大陸北西岸沖のスペイン領)に旅行したことが発覚し、辞任に追い込まれた。
市民を緊急事態から擁護することを目的とした政府機関、スウェーデン非常事態対応庁(MSB)のトップであるダン・エリアセン長官(59歳)で、COVID-19感染拡大が続くスウェーデンで、クリスマス休暇での旅行を自重するように政府通達が出されていたにも拘らず、リゾートとされる同諸島に旅行していたことが現地メディアの報道で明らかになった。...
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1月7日付米
『AP通信』:「スウェーデンの高官、COVID-19感染流行の最中にスペインにクリスマス休暇旅行して更迭」
スウェーデンの高官トップが1月6日、クリスマス休暇を利用してカナリア諸島(アフリカ大陸北西岸沖のスペイン領)に旅行したことが発覚し、辞任に追い込まれた。
市民を緊急事態から擁護することを目的とした政府機関、スウェーデン非常事態対応庁(MSB)のトップであるダン・エリアセン長官(59歳)で、COVID-19感染拡大が続くスウェーデンで、クリスマス休暇での旅行を自重するように政府通達が出されていたにも拘らず、リゾートとされる同諸島に旅行していたことが現地メディアの報道で明らかになった。
同長官は、“COVID-19危機下にあって、社会がどう対応することが重要であるかについて、認識が甘かった”と反省の弁を述べている。
昨年末、COVID-19感染拡大に喘ぐスウェーデン政府の指示を受けて、MSBは大多数の同国市民宛のメッセージで、クリスマス休暇中の旅行の自重を訴えていた。
同長官は、スウェーデン夕刊紙『エクスプレッセン・デイリィ』(1944年創刊)のインタビューに答えて、“感染症流行の期間中、旅行含めて多くのことを諦めてきた”としながらも、息女が暮らす同諸島への旅行は止むを得ないことだったと弁解した。
その上で、同長官は、“重要なことは、MSBのトップである自分が範を垂れなかったことである”と反省するコメントを出している。
同長官は辞任発表直前の1月5日朝、任命責任者であるミカエル・ダンベルグ内務大臣(49歳)と面談したが、今回の行動に対して厳しい批判の声を受けて、これ以上長官に留まれないと判断したものとみられる。
ダンベルグ大臣は公共メディア『スウェーデン・テレビ(SVT)』(1956年設立)に、“MSBは、感染症防疫対策の重責がある部署だが、エリアセン長官は大きな判断ミスを犯してしまったと言わざるを得ない”とコメントしている。
スウェーデンは元々、他の欧州諸国と違って、市民の自主性に任せるとして、強制力の伴う都市封鎖措置等は講じてこなかった。
しかし、同国の感染者は46万9,748人、死者8,985人(致死率1.9%)と、スカンジナビア半島の他国に比し非常に多くなっている。
(編注;ノルウェー感染者5万2,967人・死者465人・致死率0.9%、フィンランド感染者3万7,549人・死者576人・致死率1.5%)
一方、1月6日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「スウェーデン高官、海外のゲイ・フェスティバル参加は“必要”だったと発言して四面楚歌」
エリアセン長官は、クリスマス休暇中の旅行自粛政策を発令する立場にありながら、カナリア諸島に旅行に出ていたことが発覚した際、“COVID-19対策期間中、多くのことを諦めてきたが、今回の旅行は必要なことだった”と釈明した。
息女がそこに暮らしていたことや、旅行中のソーシャルディスタンシングを常に保っていたことにも言及していたが、後日判明したインスタグラム投稿の写真から、ラス・パルマス(同諸島州都)でゲイ達と新年を祝うお祭りに参加していたことが分かった。
同長官は、SVTレポーター、ゲイ活動家のエリック・ギャリー(29歳)、ゲイのメディア番組司会者フレデリック・ソデルホルム(29歳)と酒を酌み交わしながら盛り上がっていた。
このスキャンダルが発覚した1月6日現在、スウェーデン日刊紙『アフトンブラデット』(1830年創刊)・世論調査会社デモスコップ共同調査の結果によると、同長官を支持する人は僅か6%であった。
偶然にも、同じタイミングでのステファン・ロベーン首相(63歳)の支持率も38%から31%まで下落している。
ただ、この背景には、同長官のスキャンダルとは別に、国を挙げての外出自粛キャンペーンの最中にも拘らず、モーガン・ヨハンセン法務大臣(50歳)が大掛かりの買い物に出ており、マグダレーナ・アンデルセン財務大臣(53歳)がスキーに出かけ、更に、ロベーン首相自身もショッピングモールに出掛けていたという事態が判明していることもある。
デモスコップのカリン・ネルソン代表(60歳)は『アフトンブラデット』紙のインタビューに答えて、“国民に旅行や親戚等に会いに行くことを自重するよう求め、また、多人数で集まることも止めるよう要求しているにも拘らず、我が国の閣僚らの行動をみると、正にダブルスタンダードに他ならない”と非難している。
なお、エリアセン長官が苦境に立たされたのは今回が初めてではなく、2011年にスウェーデン移民局長を退いた時には社会保険庁局長に横滑りし、2015年には社会保険庁から警察庁長官に異動し、そして2018年に警察庁長官を退任させられた際にはMSB長官に就任している。
スウェーデンの調査報道ウェブサイト『ストッパ・プレサルナ』は、“エリアセン氏は、いつも解任される度に平然と(何もなかったかのように)次の官職に在り付いていることで有名”だと報じている。
また、同長官が10代の頃、バッド・ブー・バンドというパンクロック・グループに加わっており、1979年には「バンコクでFxxxing」というヒット曲を出していた。
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