KPMGの新しい調査報告書は、英国の町や都市では、コロナ禍の影響により消費者のオンラインショッピングへの移行が加速し、40万人近くの雇用が失われ、小売店が提供するサービスを最大40%近く失う可能性があることを明らかにしている。
『ザ・ガーディアン』によると、経営コンサルティングのKPMGが調査を行った結果、英国では新型コロナウイルスの大流行により、自宅勤務やオンラインショッピングをする人が増えたことで、最大40万人が小売業の仕事を失う可能性があり、南部の裕福な町が最も脆弱であることが明らかになった。
KPMGが調査した109の町と都市のうち、地域の経済活動に対する割合で見ると、小売業の雇用が最も減少するリスクが高い町は、ロンドンの通勤圏に入っているブラックネル市であることが判明した。
報告書は、在宅勤務とオンラインショッピングの増加は、コロナの永続的な遺産の1つになると予想しているが、いくつかの地域では他の地域よりも通勤客が大幅に減少しているため、市内のショッピングストリートの空洞化が加速する可能性があると指摘している。
富士通やデルなどの大手テクノロジー企業の本拠地でもあり、ロンドンのオフィスワーカーに人気のあるブラックネル市では、ソーシャルディスタンスが例え緩和されても、依然として最大27.4%の人が在宅勤務を続けるだろうと予想されている。通勤者が減ることで、1,505人の雇用が失われ、地元小売業の約38%が失われることになり、町の小売業者に大きな打撃を与えると推測されている。
この割合は、ベージングストーク、ヘメル・ヘムスステッド、ウォリントン、ギルフォードなどの町でも同様で、特に大通りでの雇用喪失の影響を受ける可能性が高いという。
一方ロンドン、バーミンガム、リバプール、マンチェスターのような大都市は、観光客を引き付ける多様な文化的サービスを提供しているため、より回復力を発揮する可能性が高く、通勤者の流れの減少や小売店の減少による影響を相殺する可能性があると予想されている。
『インデペンデント』によると、KPMGの報告書は、在宅ワークが可能な労働者の割合が高い町ほど、通勤者に依存している小売店やレストランに影響を与え、更にはタクシーからガーデニング、セキュリティサービスまで、企業へのサポートサービスを提供する仕事の需要も減少が予想されると指摘している。
中心街までの通勤が減り、オンラインでの購入が増えることで、中心街は店舗、カフェ、その他のビジネの20%~40%を失う可能性があるという。これは、地元の労働力の最大5%、合計40万人以上の雇用に影響を与えることになるという。
一方で人々の行動の変化は新しい仕事をもたらす機会でもある。しかし、政府が町の中心部の在り方を再考することを支援する必要があると報告書は述べている。
英KPMGのチーフエコノミスト、ヤエル・セルフィン氏は、「英政府の課題は、パンデミックによってもたらされた変化を戦略に組み込むことである。パンデミックは、町おこし計画に新たな視点をもたらした。恵まれない地域の中には、パンデミックの直接的な影響を受けていない地域もあるかもしれないが、パンデミックによってもたらされた変化を踏まえて、成長の道筋を再考する必要がある。」と述べている。
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新型コロナウィルス(COVID-19)感染者及び死者が世界最多となっている米国では、先行して認可・接種が始まっている2種類のワクチンに続いて、他に3種類のワクチンが認可申請前の最終臨床試験段階に入っている。ただ、一年で最も繫忙なクリスマスシーズンを迎えている米市民にとっては、ワクチン接種が行き渡るまで外出自粛等の行動制限には我慢できない模様で、陸・空併せて9,500万人(全人口の約3割)が旅行・帰省等の国内移動を行っている。これに対して、感染症専門家も諦めの声を上げている。
12月29日付米
『AP通信』:「12月27日だけで130万人近くが航空便で国内移動」
米国では直近2ヵ月間で、COVID-19感染者が急増し、死者も33万人超となっている。
(編注;米ジョンズ・ホプキンズ大の12月29日午後8時半現在のデータによると、感染者1,948万4,710人、死者33万8,290人、致死率1.7%)
しかし、クリスマスシーズンを迎えて、米市民の旅行や帰省等の国内移動を制限するのは困難な模様で、米運輸保安庁(TSA、注1後記)によると、12月27日だけで128万4,599人が空港を利用して国内移動をしたという。...
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12月29日付米
『AP通信』:「12月27日だけで130万人近くが航空便で国内移動」
米国では直近2ヵ月間で、COVID-19感染者が急増し、死者も33万人超となっている。
(編注;米ジョンズ・ホプキンズ大の12月29日午後8時半現在のデータによると、感染者1,948万4,710人、死者33万8,290人、致死率1.7%)
しかし、クリスマスシーズンを迎えて、米市民の旅行や帰省等の国内移動を制限するのは困難な模様で、米運輸保安庁(TSA、注1後記)によると、12月27日だけで128万4,599人が空港を利用して国内移動をしたという。
これは、COVID-19感染拡大後の3月15日以降最多であり、12月18日以降累計1千万人余りが航空便を利用して国内移動をしたことになるという。
一方、陸上でも、全米自動車協会(AAA、注2後記)の推定によると、約8,500万人が車で国内移動をしているという。
米国の感染症研究第一人者のアンソニー・ファウチ米国立アレルギー・感染症研究所長(80歳)は『CNN』のインタビューに答えて、今回の大移動によって感染者が更に増えることを懸念すると表明した。
特に、かかる大人数が空港に集結したことで、ソーシャルディスタンシングが十分保たれることが不可能であるし、また、多くの家族、親戚、友人等が集まることも予想され、感染防止が困難になると考えられるからだとしている。
更に同所長は、“国内移動は可能な限り控えるように、と何度も訴えたが、現実はこれだ”と嘆いている。
一方、ワクチン開発であるが、製薬会社ノババックス(1987年設立、本社はメリーランド州)が研究を進めているワクチンが臨床試験の最終段階になっていることが12月28日に判明した。
米国では既に、米ファイザー(1849年設立、本社ニューヨーク)・独バイオNテック(2008年設立、本社マインツ)が共同開発したワクチン、及びモデルナ(2010年設立、本社はマサチューセッツ州)のワクチンが既に緊急承認され、接種が開始されている。
そして、ジョンソン&ジョンソン(1887年設立、本社はニュージャージー州)及び英国アストラゼネカ(1999年設立、本社ケンブリッジ)が開発中のワクチンも最終臨床試験段階にあるため、ノババックス社分含めて5種類のワクチンが間もなく接種可能になるとみられる。
ファウチ所長は『AP通信』のインタビューに答えて、“これらの開発中のワクチンで、全人口の85%余りの人に接種が可能になる”とコメントしている。
12月28日付英国『ザ・ガーディアン』紙:「米国、クリスマス休暇の旅行で感染急拡大の恐れと警告」
米保健省専門家は、クリスマス休暇による国内旅行増で、COVID-19感染がこれまで以上に拡大する恐れがあると警鐘を鳴らした。
『ロイター通信』によると、TSAは、12月27日だけで128万人が空港から国内各地に移動しており、今年3月半ば以降で最多記録となっていると発表したという。
この数値は2019年同日比では半分であるが、12月18日以降、6日間連続で一日100万人超の人が航空便を利用したことになるとする。
ファウチ所長は12月27日、『CNN』の番組に出演して、“クリスマスそして新年と続いて、旅行やパーティ等のイベントが増えることから、今後感染が飛躍的に増えることが懸念される”とコメントした。
更に同所長は、“晩秋から初冬にかけての感染者数のグラフが急カーブを描いていることから分かるように、残念ながら感染が感染を呼ぶ悪循環に陥りかねない”とも強調した。
ある専門家の推定によると、米国の感染死亡者は来春までに50万人に達するという。
ジョー・バイデン次期米大統領も、“残念ながら、COVID-19感染状況は悪化することはあっても改善することは難しい”とし、“ただ一つ、事実を詳らかに、かつ迅速に伝えていくことを約束する”と、現政権を間接的に批判するコメントを発表している。
(注1)TSA:米国土安全保障省の外局であり、米国における公共交通機関の安全性を保つことが任務。2001年9月11日に発生した、米国同時多発テロに際して編成された。
(注2)AAA:全米 50州とワシントンD.C.の自動車協会が連合した非営利団体。1902年イリノイ州で発足。会員数は約4,600万名で同種の自動車クラブでは世界最大。
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