インド太平洋地域:中国とソロモン諸島の安保協定への懸念(2022/04/13)
太平洋の島国ソロモン諸島における中国の軍事的プレゼンス拡大が懸念される。ソロモン諸島と中国との間の安全保障合意を巡り、これに反対するオーストラリアの担当大臣が13日ソロモン諸島入りした。
4月12日付豪
『シドニー・モーニング・ヘラルド』:「中国協定を巡り、豪大臣がソロモン諸島を緊急訪問」:
中国が海軍の艦船拠点を認める協定締結を進めているのを受け、オーストラリアのゼッド・セセリャ国際開発太平洋大臣がソロモン諸島を緊急訪問する。
先月、ソロモン諸島が安保協定について発表した際には大きな衝撃が走り、豪、米、ニュージーランドが懸念を強めている。豪は草案発表後の対応が遅いとの批判を受け、直接ソロモン諸島政府との直接交渉に臨むとしている。...
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4月12日付豪
『シドニー・モーニング・ヘラルド』:「中国協定を巡り、豪大臣がソロモン諸島を緊急訪問」:
中国が海軍の艦船拠点を認める協定締結を進めているのを受け、オーストラリアのゼッド・セセリャ国際開発太平洋大臣がソロモン諸島を緊急訪問する。
先月、ソロモン諸島が安保協定について発表した際には大きな衝撃が走り、豪、米、ニュージーランドが懸念を強めている。豪は草案発表後の対応が遅いとの批判を受け、直接ソロモン諸島政府との直接交渉に臨むとしている。
セセリャ大臣は、「ソロモン諸島は太平洋地域における重要な位置にある。我々は自国の安全保障に関する同国の自治権を尊重しつつ、地域共通の安全保障を継続していく」としている。 一方で中国は、協定草案を巡り脅威を利用する豪を批判している。
流出した文書によると、中国大使館が、ここ1年で安全保障プレゼンスを拡大しており、中国人外交官の保護目的で治安部隊の配置等を要求しているという。ソロモン諸島は、これらの要求を拒否したが、草案合意では、中国当局や企業が武力で資産を守る行動を拡大することを受け入れており、中国警察の巡回や、地元警察の訓練を盛り込んだ内容となっている。
各国当局はソロモン諸島との連携を深めつつも、強制を避け慎重な態度で臨んでいる。先週、豪秘密情報機関のトップと国家情報長官も、懸念を訴えるためソロモン諸島のソガバレ首相と面会。その後、米国のカート・キャンベル元アジア太平洋担当次官も同地を訪問している。
ソロモン諸島はオーストラリア・ニュージーランドとアジア太平洋をつなぐ重要な海洋ルートに位置する。中国の海軍船があると、豪の防衛物資に問題となるため、外交交渉により中立を保つよう促している。同国は中国に軍事基地建設を許可する意図はないと主張しているが、草案の合意後は詳細については発表されていない。モリソン豪首相は、同国の自治権を尊重するとしながらも、ソロモン諸島沖の巡航問題を注視していく姿勢を強調している。
4月13日付米『ロイター通信』:「中国との安全保障協定を議論するため豪大臣がソロモン諸島入り」:
太平洋の島国ソロモン諸島と中国との間の安全保障合意締結を巡り、これに反対するオーストラリアの担当大臣が13日ソロモン諸島入りした。
セセリャ国際開発大臣は、野党労働党の支援を受け同国に2日滞在予定。選挙キャンペーン中の他国外交は異例となる。到着後はツイッターで、この訪問により「二国間の関係を強化する。豪は透明性を保ちつつパートナー国を尊重する」と投稿している。
中国とソロモン諸島は、安全保障協定の草案段階でありまだ署名は交わしていない。協定には豪の他、ニュージーランド、米国、近隣の太平洋諸国も反対し、地域の安定を損なうと批判している。
今月12日、ソーシャルメディアでリークされた文書が明るみとなった。それは中国政府が昨年11月のホニアラで起きた反政府暴動を機に、翌12月、現地の中国大使館スタッフの警護を目的で、ライフル銃やマシンガン、電子傍聴機器などの武器を所持した中国人警官10人からなる治安部隊の配備をソロモン諸島に打診したという内容である。この文書は豪国内で大々的に報道されている。
同国のソガバレ首相官邸は声明で、リーク文書は「同政府と中国との正式対話を含むもの」と認めつつも、「懸念する必要はない」とコメントしている。先月リークされた安保協定草案に関する文書では、中国警察が企業やインフ警護することや、海軍艦船の補給が認められるとの内容が含まれていた。
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駐豪中国大使、オーストラリアの教育と観光産業が次の標的になると警告(2021/05/01)
駐オーストラリア中国大使は、新型コロナウイルス終息後、中国の学生や観光客がオーストラリアに戻るかどうかを疑問視するだろうと主張し、オーストラリアに対するさらなる貿易上の打撃の可能性を提起した。
アメリカの中国系メディア
『エポックタイムズ』によると、成競業大使は4月29日、オーストラリア中国ビジネス協議会で1時間にわたるビデオ講演を行い、同国に居住する中国人に対する「人種差別」が増加していると主張した。
「それは中国人旅行者が戻ってくるのに障害を生み出す可能性がある。この国が中国人旅行者の来訪をまだ歓迎しているのかどうか、人々に疑問を抱かせることになる」と述べ、「中国はいかなる挑発行為も行っていない。...
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アメリカの中国系メディア
『エポックタイムズ』によると、成競業大使は4月29日、オーストラリア中国ビジネス協議会で1時間にわたるビデオ講演を行い、同国に居住する中国人に対する「人種差別」が増加していると主張した。
「それは中国人旅行者が戻ってくるのに障害を生み出す可能性がある。この国が中国人旅行者の来訪をまだ歓迎しているのかどうか、人々に疑問を抱かせることになる」と述べ、「中国はいかなる挑発行為も行っていない。実際のところ、中国に対する認識を変えているのはオーストラリア側だ」と語った。
2020年のオーストラリアへの海外旅行者市場454億ドルのうち、中国人観光客の市場は124億ドルを占めていた。2019年には、オーストラリアに留学している中国人学生は12万7千人を超え、33万5千人の留学生全体の38%を占めていた。この数字は、新型コロナウイルスの流行後も安定しており、教育サービスは、オーストラリアの輸出部門で第4位を占めている。
オーストラリア戦略政策研究所のマイケル・シューブリッジ防衛局長は、オーストラリアの企業や大学のリーダーたちへの「真のメッセージ」は、中国共産党が支配している間は中国とビジネスを行うことはリスクが高いということだと述べている。そして、多様化の必要性が重要であることを強調している。「現在、中国市場に大きく依存することによるオーストラリアの教育・観光分野へのリスクは低いと主張することは不可能」であり、「オーストラリアの観光や高等教育の事業計画は、中国本土に住む14億人ではなく、中国本土に住まない地球上の64億人に目を向ける必要がある」と指摘している。
豪日刊紙『シドニー・モーニング・ヘラルド』は、中国大使のコメントは、ビクトリア州の一帯一路協定を取り消すというオーストラリア連邦政府の決定に対する対抗措置の警告であると報じている。同大使は、過去1年間のオーストラリアの行動に対する批判を強めており、これに拍車をかけているのが反オーストラリア政策を推し進める中国外務省だと伝えている。
成競業大使は、「二国間の貿易関係の問題は、中国がオーストラリアに対して経済措置の結果だと主張する人がいる。これは馬鹿げた無関係な議論だ。」と述べ、「古くから言われているように、結び目を作った人には、それを解く責任がある」と主張した。
しかし中国がオーストラリアの200億ドルの輸出を対象に経済措置を行ったため、特にオーストラリアのワイン生産者が厳しい打撃を受けているという。石炭、大麦、木材は概ね他の市場に分散することができたが、ワインメーカーの中国への輸出額は、2019年12月から昨年3月の間の3億2500万ドルから、今年の同時期には1200万ドルにまで減少し、96%の落ち込みを記録した。
現在、オーストラリアのブドウ輸出業者からは、新型コロナウイルスによる中国の税関での遅れが報告されており、ハチミツ輸出業者も中国の小売業者からの注文が減速していると報告されている。このような兆候は、中国の輸入業者が、国境で政府に阻止されることを恐れて、リスクを取ってオーストラリアからの注文をとることに消極的になっていることが反映されている可能性があるという。
調査会社「IBISWorld」 が 12 月に行った分析によると、中国との関係が悪化し続ければ、中国からの輸出収入が 30~40%を占めるオーストラリアの乳製品、ハチミツ、果物、医薬品は、さらなる貿易停止に見舞われる可能性があるという。しかし、コロナ後の中国のオーストラリアに対する報復措置の最大のリスクは教育と観光だとも推測されている。オーストラリアの大学は2月から、中国の各地方にある代理店が、地元当局からオーストラリアに新入生を送らないように勧められているという報告が届き始めているという。
英紙『デイリーメイル』は、中国大使のコメントは、昨年4月、スコット・モリソン首相が、新型コロナウイルスが2019年に武漢で初めて出現した起源について独立した調査を求めた後、同大使が中国の顧客はオーストラリアの牛肉やワインを買いたくないかもしれないと述べた時の同様の発言を反映したものだと報じている。
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