南シナ海をめぐる最近(8月)の動き;日米共同海上訓練や中国による米軍爆撃機への緊急発進【米メディア】(2018/09/05)
南シナ海をめぐる動きに関し、7月にはフィリピン、米国、ベトナムでそれぞれ反中国運動が起こり、また、日本も、同海域産出の天然ガスをベトナム公社から買付ける契約を締結する等、依然騒がしい状況が続いている。そして8月においても、日米が同海域で大掛かりな共同海上訓練を実施し、日本として、同海域における中国政策に対抗する動きをみせている。一方、中国も、日本の動きに警告を発するだけでなく、2013年11月に東シナ海上空に勝手に設定した防空識別圏(ADIZ、注後記)に進入したとして、米軍大型爆撃機に対して緊急発進(スクランブル)をかける等、引き続き強硬姿勢を貫いている。
9月3日付
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「南シナ海をめぐる最近の動き」
* 日米が共同海上訓練
海上自衛隊が保有する最大級の艦船が8月末、米軍の原子力空母“ロナルド・レーガン”
率いる空母打撃群とともに、南シナ海周辺で共同海上訓練を実施した。
同訓練に参加したのは、2隻のミサイル駆逐艦を伴ったヘリコプター搭載護衛艦“かが”
で、8月31日付の『ジャパン・タイムズ』紙報道によると、編隊航行、演習工作、海上補給、連絡将校の情報交換等を実施したという。...
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9月3日付
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「南シナ海をめぐる最近の動き」
* 日米が共同海上訓練
海上自衛隊が保有する最大級の艦船が8月末、米軍の原子力空母“ロナルド・レーガン”
率いる空母打撃群とともに、南シナ海周辺で共同海上訓練を実施した。
同訓練に参加したのは、2隻のミサイル駆逐艦を伴ったヘリコプター搭載護衛艦“かが”
で、8月31日付の『ジャパン・タイムズ』紙報道によると、編隊航行、演習工作、海上補給、連絡将校の情報交換等を実施したという。
海上自衛隊の艦船による同海域での訓練参加によって、日本として、中国による海洋進出に対抗していく意向を更に鮮明化したものとみられる。
これに対して中国国防部(省に相当)は先週、日本は平和憲法を変更し、“かつての拡大主義”を復活させようとしていると非難する声明を発表した。
なお、安倍晋三首相はこれまで、中国の南シナ海進出に懸念を表明しており、昨年には、ヘリコプター搭載護衛艦“いずも”を3ヵ月間同海域に張り付ける作戦を実施させている。
* フィリピン海軍フリゲート艦が座礁
フィリピン海軍は、同海軍フリゲート艦“グレゴリオ・デル・ピラール”が8月29日
夜半、南シナ海スプラトリー(南沙)諸島内のハーフムーン礁(フィリピン西端のパラワン島西沖100キロメーターの環礁で、フィリピンが実効支配)周辺で座礁したと発表した。
同礁は、中国が人工島を建設して軍事拠点化を進めている海域の東端にあるため、フィ
リピン高官は、誤解を生まないよう中国側に事態を通知したとする。
フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は、中国側から救助の申し出があったが、
自分たちで対応可能だと回答したと表明した。
なお、座礁したフリゲート艦は、米国沿岸警備隊から譲り受けた3隻の中古船の1隻で、フィリピン海軍が保有する最大級の戦艦である。
* 中国が米軍B-52爆撃機にスクランブル発進
中国国防部報道官の呉謙(ウー・チャン)大佐は8月30日、米軍のB-52大型爆撃機
が8月23日に東シナ海上空のADIZに進入してきたため、中国軍機がスクランブル発進して警告したと発表した。
一方、米太平洋空軍によると、グアムのアンダーソン空軍基地所属の当該機2機が、南シナ海における第96遠征爆撃訓練のため、8月27及び30日に東シナ海上空を“通常飛行”したに過ぎないと表明している。
更に米軍の発表では、B-52爆撃機は原子力空母“ロナルド・レーガン”率いる空母打撃群との訓練に参加していること、また、これらの作戦は、2004年3月から展開しているインド太平洋爆撃機持続配備作戦に基づく活動で、航行の自由を確保するための、国際法にも叶った作戦であるとしている。
(注)ADIZ:海洋に面した国が安全維持のために、領空を越えた公海上空に設定する一定の空域。この空域への侵入に関する事前報告を要求し、違反時には国内法上の処罰を適用する。
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日米豪印4ヵ国、中国の「一帯一路」経済圏構想に対抗する共同インフラ計画を検討?【米・インドメディア】(2018/02/21)
2月18日付豪州メディア
『オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー』紙が、日米豪印4ヵ国が、中国の「一帯一路」経済圏構想(OBOR)に対する代替案として、共同インフラ計画を検討していると報じた。豪州高官は、競合策などではなく、あくまで中国単独では経済的に存立できない港湾・道路等のインフラへの賛助の目的だとコメントしている。しかし、米国トランプ大統領は、昨年12月発表の「国家安全保障戦略」の中で中国への対抗心を剥き出しにしているし、インドも、中国が、パキスタン・スリランカのみならず、かつては親印国であったモルディブ(インド洋東部島嶼国)まで抱き込み、インド包囲網を築き上げつつある現状下、中国憎しと思っているに違いない。そこで、日本としても、表向きは日中関係改善を表明しているものの、東・南シナ海等で中国の勢力拡大に危機感を抱いていることから、反中国での日米豪印連携は願ってもないことではないかとみられる。
2月19日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「日米豪印、中国のOBOR対抗の共同インフラ計画検討」
2月18日付豪州『オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー』紙によると、日米豪印4ヵ国が、台頭する中国に対抗するため、特に中国が推し進めるOBORに対抗するため、共同インフラ計画を検討中という。
『CNBCニュース』は、OBORには、最多で65ヵ国が対象となり、これは国内総生産(GDP)で世界第3位、地球上の全人口の60%を占めることとなるとする。...
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2月19日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「日米豪印、中国のOBOR対抗の共同インフラ計画検討」
2月18日付豪州『オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー』紙によると、日米豪印4ヵ国が、台頭する中国に対抗するため、特に中国が推し進めるOBORに対抗するため、共同インフラ計画を検討中という。
『CNBCニュース』は、OBORには、最多で65ヵ国が対象となり、これは国内総生産(GDP)で世界第3位、地球上の全人口の60%を占めることとなるとする。
また、『ジャパン・タイムズ』紙は、豪州のジュリー・ビショップ外相が2月19日、4ヵ国による共同インフラ計画について協議していることを認めたと報じている。
ただ、『オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー』紙は、ビショップ外相も米高官も、同計画が中国構想と“競合”するものではなく、“代替案”としてのものだとしている。
また、菅義偉官房長官も2月19日の記者会見で、中国構想に敵対するものではないと明言した。なお、日本は昨年既に、「自由で開かれたインド太平洋構想」を発表している。
一方、インドは、OBORに明確に反対を表明しており、ジム・マティス国防長官が昨年10月、中国は同構想に関わる事業計画について他のどこの国とも協議していない(単独行動している)と明言したことに喜んでいる。
なお、『ブルームバーグ』オンラインニュースは、ドナルド・トランプ大統領としては、中国対抗の4ヵ国共同インフラ計画が自身の考えに沿うものとみていると報じている。何故なら、同大統領は、昨年12月に発表した「国家安全保障戦略」の中で中国・ロシア勢力に対抗していくと明言しており、更に、環太平洋経済連携協定(TPP)から脱退した上で、二国間、あるいは小グループの経済連携を標榜しているからであるとする。
2月20日付インド『ファーストポスト』オンラインニュース:「日米豪印4ヵ国、中国のOBORの代替案策定に向けて協議開始」
インドは現在、中国のOBORの“代替案”としての共同インフラ計画を、日米豪と協議している。
インドは他に先駆けて、中国のOBORに反対を表明しており、2017年に北京で開催されたOBORサミットを欠席している。理由は、同構想の中で中国がパキスタンと推し進める「中国・パキスタン経済回廊」構想が、インドの主権、特にパキスタンが実効支配しているカシミール地方のインド領有権を踏みにじっているからである。
なお、米国もインドに続いてOBORに異議を唱えている。米高官によると、中国が港湾を建設するとしても単独では経済性がない場合もあり、その際は共同インフラ計画の中で、当該港湾にアクセスする道路や鉄道を建設することで、当該地域の経済性が高まることも考えられるとする。
一方、豪州のターンブル首相は、2月21日から3日間訪米し、トランプ大統領と会談する。当該共同インフラ計画についても協議されようが、目下のところ豪州は、最大の貿易相手国である中国寄りで、OBORへの投資にも積極的であるため、米豪間協議で同共同計画が進展することはないとみられる。
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