既報どおり、6選を果たしたと宣言しているアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(66歳)は、欧米からの不正選挙との非難にも馬耳東風で、欧米対立の雄であるウラジーミル・プーチン大統領(68歳)の後ろ盾を得てやりたい放題である。そして今度は、大統領選を戦った野党勢力代表スビャトラーナ・ツィハノフスカヤ氏(48歳)が投票日翌日に隣国に逃れた事態について、反政府運動活発化のために仲間内から生贄として命を奪われそうになった同氏を救うために国外退去を支援したとまで言い出している。
10月9日付米
『AP通信』:「ベラルーシ大統領、自身が対立候補の命を救ったと発言」
ベラルーシの独裁大統領のアレクサンドル・ルカシェンコ氏は10月9日、対立候補だったスビャトラーナ・ツィハノフスカヤ氏を無事に国外退去させたのは自分だと言い出した。
同大統領によると、反体制派が抗議活動を先鋭化させる一環で、政権側の仕業とするために対立候補の命を狙っていたとし、“同氏の要請に応えて、国境近くまで車で送り届け、無事にリトアニアに出国させた”とした上で、現金1万5千ドル(約160万円)も渡したと主張した。...
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10月9日付米
『AP通信』:「ベラルーシ大統領、自身が対立候補の命を救ったと発言」
ベラルーシの独裁大統領のアレクサンドル・ルカシェンコ氏は10月9日、対立候補だったスビャトラーナ・ツィハノフスカヤ氏を無事に国外退去させたのは自分だと言い出した。
同大統領によると、反体制派が抗議活動を先鋭化させる一環で、政権側の仕業とするために対立候補の命を狙っていたとし、“同氏の要請に応えて、国境近くまで車で送り届け、無事にリトアニアに出国させた”とした上で、現金1万5千ドル(約160万円)も渡したと主張した。
しかし、ツィハノフスカヤ氏の代理人のアンナ・クラスリーナ氏はこれを全否定し、政権側が強制的に同氏を国外退去させたことは紛れもないことと反論した。
その上で同代理人は、“同大統領はツィハノフスカヤ氏を投獄しなかったことを悔やんでいるだろう。何故なら、彼女を中心とした国内外の反ルカシェンコ運動が益々活発化しているからだ”と言及している。
欧州連合(EU)及び米国は、8月9日実施の同国大統領選が自由でも公平でもなかったと非難し、抗議活動を展開するデモ隊への暴力、不当逮捕等に抗議して、政権側の多くの高官に制裁を科すことを決定している。
政権側は抗議活動鎮静化を狙って、数百人のデモ隊参加者を逮捕し、また、主だった指導者を起訴している。
ただ、一部の反体制指導者は国外退去しているものの、反政府運動は依然勢いが衰えず、毎日曜に首都ミンスク市街で行われる抗議活動には10万人近くの市民が参加している。
同日付ロシア『タス通信』:「ルカシェンコ大統領、ツィハノフスカヤ氏の求めで無事に国外退去させたと明言」
ベラルーシ国営メディア『BelTA通信』(1918年設立)は10月9日、ルカシェンコ大統領がツィハノフスカヤ氏の要請に応えて、同氏を無事に隣国リトアニアに出国させたが、“後にリトアニア諜報機関の手に落ちて、いい様に利用されている”と明言したと報じた。
同メディアによると、ツィハノフスカヤ氏の支援団体が、彼女を“神に捧げる生贄”に祀り上げて反政府運動を活発化させようとしたため、同大統領が一肌脱いで、彼女を救うべく無事に国外退去させ、またリトアニア在ベラルーシ大使館にも支援するよう指示を出していた、としている。
しかしながら、反体制派“調整協議会”が主導する反政府運動は留まることなく、更に先鋭化、暴力化してきているので、ベラルーシ当局は、市民の安全を確保するため、取り締まりを強化している。
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ロシアの強権大統領のウラジーミル・プーチン氏(67歳)には、過去に多くの政敵を葬り去ったとの噂が付きまとっている。そしてこの程、最も強力な政敵と目される野党代表が毒を盛られた模様で、搭乗中の機内で容体が急変し、目下病院の集中治療室で治療を受けているものの、昏睡状態が続いているという。
8月20日付米
『NBCニュース』(
『AP通信』配信):「ロシア野党代表のナワルニィ氏が毒を盛られて昏睡状態」
ロシアの野党代表とされるアレクセイ・ナワルニィ氏(44歳)が毒を盛られた模様で、現在病院の集中治療室で治療を受けているものの、人工呼吸器につながれ昏睡状態が続いている。
同氏の広報担当のキラ・ヤルミシュ氏が8月20日の朝にツイッターに投稿したもので、シベリア西部のトムスクからモスクワに戻る飛行機の中で容体が急変したことから、オムスクに緊急着陸させて病院に緊急搬送されたという。...
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8月20日付米
『NBCニュース』(
『AP通信』配信):「ロシア野党代表のナワルニィ氏が毒を盛られて昏睡状態」
ロシアの野党代表とされるアレクセイ・ナワルニィ氏(44歳)が毒を盛られた模様で、現在病院の集中治療室で治療を受けているものの、人工呼吸器につながれ昏睡状態が続いている。
同氏の広報担当のキラ・ヤルミシュ氏が8月20日の朝にツイッターに投稿したもので、シベリア西部のトムスクからモスクワに戻る飛行機の中で容体が急変したことから、オムスクに緊急着陸させて病院に緊急搬送されたという。
同氏は、『モスクワのこだま』ラジオニュースのインタビューに答えて、同日朝に飲んだ紅茶に毒が入っていた模様で、機内で気を失ってしまったと事情を説明した。
更に同氏は、“当病院の医者によれば、熱い液状のものと一緒に飲むと効き目が早い毒を盛られた可能性があるというので、即座に地元警察に捜査するよう求めた”と言及した。
ロシア国営メディアの『タス通信』は、当病院院長の言葉を引用して、同氏が重体となっている、とのみ報じた。
同氏は昨年も、政治犯として逮捕された際、拘置所で毒を盛られた模様で、病院に緊急搬送されている。
ただ、当時の入院先の医師が、激しいアレルギー反応が出ただけだと診断したため、翌日には拘置所に送り返されている。
同氏は、公務員の不正を追及する“腐敗と戦う財団(FFC)”を組織して、政府高官も含む多くの汚職疑惑を暴いている。
しかし、プーチン政権に近い実業家エフゲニー・プリゴーチン氏(59歳、レストラン・ケータリング事業経営者、プーチン氏の片腕の異名)から膨大な額の訴訟を起こされたため、FFCは先月、閉鎖に追い込まれている。
FFC顧問弁護士のヤーチェスラブ・ジマーディ氏は8月20日、“ナワルニィ氏の政治的スタンス及び活動より、同氏が毒を盛られたことは疑いのないこと”だとツイートし、ロシア調査委員会に本件捜査を徹底するよう求めたことを明らかにした。
同日付英国『ジ・エクスプレス』紙:「ロシア被毒事件;プーチン氏政敵が“毒入り紅茶”を飲んだ後に緊急搬送」
ナワルニィ氏の広報担当のヤルミシュ氏によれば、同氏は8月20日の朝、トムスク空港のカフェで紅茶を飲んだ以外何も口にしていないので、その紅茶に毒が入っていた可能性が高いという。
同氏は、モスクワ行きの機内で容体が急変したが、同乗した乗客によれば、同氏は“苦痛によって悲鳴を上げ”、そのまま気を失ったという。
緊急搬送されたオムスクの病院の医師は、“ナワルニィ氏が毒を盛られたのかどうか不確か”だとしながらも、“「自然毒」の可能性も含めて、いろいろな毒素の検査等の診断結果を待たなければならない”とコメントした。
また、同市保健局のタチアナ・シャキロバ報道官は、“毒を盛られた可能性は否定しないが、数ある急病の原因の一つでしかない”として、“今現在は、何ら確たることは言えない”と表明している。
なお、ロシアでは来月、地方選挙が予定されていて、ナワルニィ氏らは、与党・統一ロシアの独裁体制に対抗すべく、地方回りをして活動を活発化している最中であった。
一方、欧州人権裁判所(ECHR、注後記)は、ロシア当局によるナワルニィ氏の2012年及び2014年の逮捕・拘束が政略的なもので、同氏の人権を侵害したとの判決を下している。
(注)ECHR:1959年にフランスのストラスブールに設置され、1998年11月1日条約改定により常設組織となった人権救済機関。欧州評議会加盟国を対象とする。国家間の紛争を処理する国連の国際司法裁判所とは異なり、国家対国家だけでなく個人や団体の国家に対する提訴も受け付ける。
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