4月16日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「前駐日米国大使だった上院議員、日米蜜月関係を称賛するも日本側に厳しい注文」
ジョー・バイデン大統領は4月16日、初の外国首脳として招待した菅義偉首相と首脳会談を持つ。
かかる蜜月関係構築への貢献が認められたためか、2017~2019年に駐日米国大使を務めたビル・ハガティ氏が、現在は共和党上院議員の立場であるため異例な事態ながら、民主党政権の首脳会談が開かれるホワイトハウスを訪れ、両首脳を表敬訪問した。...
全部読む
4月16日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「前駐日米国大使だった上院議員、日米蜜月関係を称賛するも日本側に厳しい注文」
ジョー・バイデン大統領は4月16日、初の外国首脳として招待した菅義偉首相と首脳会談を持つ。
かかる蜜月関係構築への貢献が認められたためか、2017~2019年に駐日米国大使を務めたビル・ハガティ氏が、現在は共和党上院議員の立場であるため異例な事態ながら、民主党政権の首脳会談が開かれるホワイトハウスを訪れ、両首脳を表敬訪問した。
同氏は、2020年秋の上院議員選挙に立候補するため、任期途中で退任した訳だが、見事にテネシー州の上院議員選挙で当選したことから、民主党政権としても特別に来訪を認めたものとみられる。
同氏は両首脳に挨拶した後、『VOA』のインタビューに答えて、“バイデン新大統領が初の外国首脳として菅首相を招待したこと、かつ、かかる早期に日米首脳会談が開かれることをうれしく思う”と語った。
更に同氏は、“当該会談の開催は、日本との戦略的連携が重要であることを強調するのみならず、米国はもとより国際社会の安全保障上も重要であることを内外に示すという意義深いものである”とも付言した。
ただ、同氏は、第二次大戦後、廃墟と化した敗戦国日本を世界有数の民主主義国家となれるよう、全面的に支援した米国の努力を忘れてはならないと強調した。
そして、日本の経済再構築のためにも、“戦後以降、米国政府が絶え間ない支援を続けたこと、例えば、米国民に日本製品を購買するようはたらきかけたことも特筆すべきことである”とも言及した。
しかし、同時に同氏は、現代において、“日米両国は軍事、経済、外交とあらゆる面で戦略的連携を強化していく必要に迫られている”とした上で、“しかしながら、米国政府の対中強硬政策において、日本が消極的な態度であることは問題だ”と指摘した。
すなわち、“米国が対中制裁の一環で、制裁対象と認定した中国企業向けの半導体製品の輸出販売制限措置を取っているにも拘らず、日本の一部企業が、この隙を狙って中国向けに同製品の輸出を強化しており、看過できない”とし、“米国による対中政策の効果を削ぐような対応は改めるべきだ”と苦言を呈した。
これに関しては、マイアミ大(1925年創立のフロリダ州私立大学)政治科学部のジューン・テューフェル・ドレイヤー教授も、“移動通信事業も手掛ける、大手企業の楽天グループ(1997年設立)が、中国企業とこの事業分野で提携強化している点について、米国政府も眉をひそめている”とハガティ氏に同意する発言をしている。
同教授は更に、“同盟国であることを理由に情報共有していた米国の最先端技術が、このような好ましくない事業関係を通じて、目の敵とされる中国に漏洩するリスクがあることを懸念している”とも強調した。
閉じる
3月23日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国の地政学的勢力拡大で米国の影響力は減退」
米独立機関の外交問題評議会(CFR、注1後記)が3月23日にリリースした報告書によると、米前政権及び現政権が対中強硬政策を取っているが、中国の地政学的勢力は拡大していて、米国による影響力は大きく制限されつつあるという。
何故なら、8年前に立ち上げたOBOR政策の下、中国資本による世界多数の国々での道路、鉄道、発電所、通信網設備等の建設が満遍なく進捗しているからである。
CFRの報告書は、“中国の積極姿勢のみならず米国の不作為によって、目下米国が自覚している経済的かつ戦略的苦境がもたらされた”とし、“米国が撤退した隙をついて中国が進出した”と言及している。
更に、同報告書は、“米国も長い間、アジア諸国のインフラ建設、貿易振興等を通じて同地域においてシルクロードを連想させるような開発促進を試みてきたが、同地域が本当に必要とするものにマッチしていなかった”とし、“米国による、今現在OBORに参画している国々への融資や投資は限定的であったばかりか、現在では大きく後退している”と評価している。
CFRの分析研究員のデビッド・サックス氏は『VOA』のインタビューに答えて、中国の数兆ドル(数百兆円)のOBOR投資は“際限なく、どこにも満遍なく”行き渡っていて、従来型のインフラ投資のレベルを越えてしまっている、とコメントした。
また、オバマ政権下で財務長官及び大統領首席補佐官を務めたジャック・ルー氏(65歳)は、“OBOR政策によって中国は、アジアのみならず世界に勢力を拡大しつつある”とし、“米議員は、OBORに代わる政策をOBOR加盟国に幅広く提案していく必要がある”と強調した。
更に、かつて米通商代表部(1962年設立)で法務責任者だったジェニファー・ヒルマン氏(64歳)は、中国がアジアやアフリカで進めるOBOR政策は、かつての米国より大きな影響力を持っている上に、陸上のシルクロード、海上のシルクロード、更には北極ルートのシルクロードまで拡大されつつある、と説明した。
その上で同氏は、トランプ政権下で蔑ろにされたこれら諸国との通商条約締結に向けて、“再び積極的に行動する必要がある”と主張している。
これに対して、バイデン政権の幹部は『VOA』のインタビューに答えて、“中国と競争していくため、これまでの外交方針を全面的に変更していく”とコメントした。
バイデン政権は今週、小規模・低人口島嶼国経済救済推進政策(SALPIE)を立ち上げ、カリブ海、北大西洋及び太平洋地域の島嶼国との経済連携を強化すると宣言している。
同幹部は、“中国からの圧力を受ける恐れのある小国との連携強化が重要だ”と言及した。
この流れで、ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当、44歳)及びブライアン・ディース国家経済会議委員長(43歳)が3月22日、対象となる小国の全権公使らとのテレビ会議を共催し、米国の29の省庁が協力して推進するSALPIE政策への参加を促している。
一方、CFRのサックス氏は、“非公式ながら連携を強化しようとしている四ヵ国戦略対話(クワッド会議、注2後記)があるので、それを通じてアジアにおけるインフラ投資メカニズムを構築すればよい”とし、これに韓国と台湾を加えることも考えられる、と言及した。
なお、同氏は、“他に多くの懸案事項を抱える国務省や商務省がインフラ投資メカニズム構築の推進役となるのは無理があるので、例えば、国家安全保障会議(1947年設立)、あるいは国家経済会議(1993年設立)の中に推進部隊を設けて、大統領に報告する体制とすればよいと考える”とも付言した。
(注1)CFR:米国のシンクタンクを含む超党派組織。1921年に設立され、外交問題・世界情勢を分析・研究する非営利の会員制組織であり、米国の対外政策決定に対して著しい影響力を持つと言われている。超党派の組織であり、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の刊行などで知られる。本部所在地はニューヨーク。会員は米政府関係者、公的機関、議会、国際金融機関、大企業、大学、コンサルティング・ファーム等に多数存在する。
(注2)クワッド会議:非公式な戦略的同盟を組んでいる日・米・豪・印の四ヵ国における会談で、二ヵ国同盟によって維持。対話は2007年当時、安倍晋三首相(当時53歳)によって提唱され、その後ディック・チェイニー副大統領(同67歳)の支援を得て、ジョン・ハワード首相(同68歳)とマンモハン・シン首相(同75歳)が参加して開催。なお、今年3月初め、ジョー・バイデン大統領の主導で、2007年以来のクワッド会議サミットが開催されている。
閉じる