抗ガン剤プリチデプシンが対コロナ治療薬として有効であることが確認される(2021/02/03)
米国、フランス、スペインの多くの研究機関に所属する研究者の大規模なチームが、抗ガン剤として開発されたプリチデプシンという薬が、治療薬として既に承認されているレムデシビルよりも新型コロナウイルス治療に効果があることを発見した。学術誌「サイエンス」に1月25日に掲載された論文で、プリチデプシンに関する調査した内容とその結果が紹介されている。
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『メディカル・エクスプレス』によると、新型コロナウイルスの治療薬の開発のために、医学研究者らは、FDAなどの機関によってすでに承認されている薬に注目してきた。既存の薬を新しい目的で使用することは、新薬の開発、テスト、および試行よりもはるかに迅速だからだ。その努力の一環として、レムデシビルという薬がコロナに有効であることが発見されている。
今回、新たに新型コロナウイルスに対する有効性が確認されたプリチデプシンは、現在多発性骨髄腫(骨髄腫の一種)の治療に使用されている薬剤であるが、新型コロナウイルスの患者のウイルス量を減らすのに効果的であることが判明した。...
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『メディカル・エクスプレス』によると、新型コロナウイルスの治療薬の開発のために、医学研究者らは、FDAなどの機関によってすでに承認されている薬に注目してきた。既存の薬を新しい目的で使用することは、新薬の開発、テスト、および試行よりもはるかに迅速だからだ。その努力の一環として、レムデシビルという薬がコロナに有効であることが発見されている。
今回、新たに新型コロナウイルスに対する有効性が確認されたプリチデプシンは、現在多発性骨髄腫(骨髄腫の一種)の治療に使用されている薬剤であるが、新型コロナウイルスの患者のウイルス量を減らすのに効果的であることが判明した。実験室での初期結果では、欧米で販売許可を取得しているレムデシビルと比較して、ウイルスを殺す効果が27.5倍になることが分かった。
フランスの健康医学雑誌『サンテ・マガジン』によると、プリチデプシンとレムデシビルの相乗効果も実験室内で検証してみたところ、プリチデプシンはレムデシビルとの相加効果を持ち、併用療法の可能性も考えられることが判明した。
プリチデプシンはスペインの製薬会社ファーママー社が開発したものである。同社はプレスリリースで「プリチデプシンは、臨床試験のデータと初期の良好な結果から、新型コロナウイルスの治療のための拡大臨床試験の対象として強く検討されるべきであることが示唆された」としている。また、「第3相臨床試験の開始に向けて、スペイン当局と協議中」であることを伝えている。
マウントサイナイ医科大学のクリス・ホワイト教授は、「プリチデプシンは新型コロナウイルスに対する非常に強力な阻害剤だが、一番の強みは、ウイルスタンパク質ではなく宿主タンパク質を標的とすることだ」と説明している。最終的に「プリチデプシンが新型コロナウイルスの治療薬として使用できることになった場合には、ウイルスは突然変異によってこの薬に対する耐性を獲得できなくなることを意味する。」この点については更なる研究によって確認が必要となるものの、英国と南アフリカの変異株が世界に広がっている中、注目すべき事項だという。
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WHOがポリオ撲滅達成のため、ワクチンを変更(2016/04/18)
ポリオは、ウィルスによって感染する病気の一つで、小児麻痺とも呼ばれている。このウィルスに感染しても多くの場合は症状が出ないか、出たとしても風邪や胃腸炎に似た症状だけで済むことが多い。しかしながら、感染者の1000人~2000人に一人は手足に麻痺が残るという。この病気が小児麻痺と呼ばれるのは、5歳以下の小児が多く(約90%以上)感染するためであるが、成人も感染しうる病気であることがわかっている。主な感染源は患者の便から排出されるウィルスによるとされ、現在世界各地でポリオワクチンの接種が行われている。ポリオはウイルス接種によりほとんどの国で根絶されつつあり、現在はパキスタンとアフガニスタンでごく少数の患者が出ているのみである。しかしながら、患者数がたとえ少数であっても、根絶されない限りは再び流行する危険性があるため、世界保健機関(WHO)はポリオ撲滅のキャンペーンを展開してきた。そして、今週からワクチンの型を変更し、ポリオ撲滅のためのラストスパートをかけている。各メディアは次のように報じている。
4月16日付
『PBS』(米)によれば、ポリオには3つの型があり、それぞれ1型、2型、3型とされ、全ての型に対応したワクチンは3価型と呼ばれる。しかし現在2型のポリオは撲滅済みとされ、2型を含んだワクチンの接種は無意味どころか、2型のポリオの流行を引き起こす可能性を有する。そのため、2型を排除したワクチン(2価ワクチン)を世界150か国で今週から導入する予定だという。このキャンペーンはWHO、米国疾病対策センター、ビル・アンド・メリンダゲイツ財団主導で行われるという。...
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4月16日付
『PBS』(米)によれば、ポリオには3つの型があり、それぞれ1型、2型、3型とされ、全ての型に対応したワクチンは3価型と呼ばれる。しかし現在2型のポリオは撲滅済みとされ、2型を含んだワクチンの接種は無意味どころか、2型のポリオの流行を引き起こす可能性を有する。そのため、2型を排除したワクチン(2価ワクチン)を世界150か国で今週から導入する予定だという。このキャンペーンはWHO、米国疾病対策センター、ビル・アンド・メリンダゲイツ財団主導で行われるという。ポリオ患者は1988年の時点では世界125か国で35万5000人の患者がいたが、その後のWHOのワクチン接種キャンペーンにより減り続け、現在では患者数は当時の1%にまで減少しているという。WHOは1980年に天然痘撲滅を宣言して以来のポリオ撲滅宣言が目前だと意気込んでいるという。
4月15日付
『メディカル・エクスプレス』(米)では、2価ワクチンの導入のみならず、現在主流となっている生ワクチンから不活化ワクチンへの転換も行われることが取り上げられている。経口により接種される生ワクチンは、ポリオ予防の効果は高いものの、まれに接種によりポリオに感染するケースがみられるためである。
ただ、これらの2価、不活化ワクチンの導入には2型の再流行を防ぐため、世界が足並みをそろえて導入しなければならないという条件が付く。WHOの広報担当は、今回の切り替えにより、年間3億人に対する接種が行われる見込みだという。ただ、生産に手間がかかる等、様々な制約から完全移行にはもうしばらくかかるという。
同日付
『ハフィントンポスト』(米)はWHOでポリオ撲滅運動の責任者を務めるザフラン氏のコメントを載せている。「今年に入ってポリオの患者数はパキスタンとアフガニスタンで12人のみである。しかし、油断は禁物で、力を注がなければならないのはここからである。一度気を緩めれば、12人の患者が10万、20万人に膨れ上がるのはあっという間だ。今までの活動を無駄にしないためにも、ワクチンの転換は不可欠である」。
ワクチンの生産は、フランスのサノフィパスツール社や、イギリスのグラクソ・スミスクライン社が大きなシェアを占めているが、両社とも新しいワクチンの生産にはコスト、時間、手間がかかるとしている。
ポリオ撲滅運動が始まった1988年当初、ポリオは2000年までの撲滅が目標とされていた。しかし、99%の感染者削減を達成した後、最後の1%の撲滅に世界は苦労している。特に、今回名前が挙がっているパキスタンとアフガニスタンでは、政治的混乱や医療関係者に対する理解の欠如が予防接種活動の妨げになり、ポリオ撲滅に支障をきたしていることが指摘されている。特にパキスタンでの活動には高度な危険が伴うという。医療行為者は西欧諸国のスパイだと疑われ、今年の2月にテロリストから銃撃され、負傷した者もいる。また、1月にはポリオの予防接種会場のすぐそばで自爆テロが起こり、15人が死亡している。
完全な撲滅が達成されないがゆえに、2011年には10年以上ポリオ患者が出ていなかった中国で、パキスタン経由のポリオ感染が確認され、2013年にはシリアで14年ぶりにポリオ患者が発見され、ワクチン接種に多額の費用を費やしているという。
残り1%との戦いはまだまだ続く。
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