ミャンマーでは、今年2月初めの軍事クーデター発生以来、アウンサンスーチー氏ら民主派指導者が拘束される等、国軍による恐怖政治が続いている。そうした中、ブルネイで今週開催される東南アジア諸国連合(ASEAN、注後記)サミットに国軍トップが招待されないことから、同軍事政権がサミットに代表を送らない可能性がでている。
10月26日付
『ユーラシア・レビュー』:「ミャンマー軍事政権、ASEANサミットをボイコットするとの脅し」
ASEANサミットが今週、今年度議長国のブルネイで開催される。
しかし、ASEAN側がミャンマー軍事政権トップを招待しないとしたことから、ミャンマーが同サミットをボイコットする可能性がでてきた。
ミャンマー軍事政権は10月25日、ASEANが同国トップのミン・アウン・ブライン国軍総司令官兼国家行政評議会議長(65歳、2月1日軍事クーデター首謀者)ではなく、外務省事務次官を招待することに反発し、同事務次官は“政権代表ではない”として、同サミットに同事務次官を出席させるかどうか未定であると発表した。...
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10月26日付
『ユーラシア・レビュー』:「ミャンマー軍事政権、ASEANサミットをボイコットするとの脅し」
ASEANサミットが今週、今年度議長国のブルネイで開催される。
しかし、ASEAN側がミャンマー軍事政権トップを招待しないとしたことから、ミャンマーが同サミットをボイコットする可能性がでてきた。
ミャンマー軍事政権は10月25日、ASEANが同国トップのミン・アウン・ブライン国軍総司令官兼国家行政評議会議長(65歳、2月1日軍事クーデター首謀者)ではなく、外務省事務次官を招待することに反発し、同事務次官は“政権代表ではない”として、同サミットに同事務次官を出席させるかどうか未定であると発表した。
今回のASEANサミットは、10月26~28日の間、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題のためにオンライン会議として開催される予定である。
しかし、今月初め、ASEAN外相会議において、ミャンマーに派遣されたASEAN特別代表から、ミャンマーの平和的民主化への復帰は困難との報告があったことを理由として、同サミットに同国軍総司令官を招待しないことを決定していた。
その代わりとして、ASEANは同国外務省事務次官を招待すると発表した。
これに対して、同国軍少将のゾー・ミン・トゥン報道官は、“ASEANサミットには加盟国の代表が出席するものだと理解している”とし、“ASEANの全会一致の原則のみならず、他国への不干渉との姿勢にも反する”とした上で、“従って、我が国が同サミットに出席するかは未定だ”と表明した。
一方、多くのミャンマー人がSNS上で、同事務次官も軍事政権が任命したものであるから、ASEANが“政府を代表する人ではない”人物を招待するとしたことを非難している。
また、同国最大政党の国民民主連盟(NLD、1988年成立、党首はアウンサンスーチー氏)青年部代表のロバート・ミン氏は、“ASEANが、国を代表しない国軍が任命した外務省事務次官をサミットに招待することに対して、非常に失望している”と述べた。
(注)ASEAN:東南アジア10ヵ国の政治・経済・安全保障・社会文化発展等で協力する組織。1976年2月にインドネシアで第1回サミット開催。なお、前身組織は1967年8月にインドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイの5ヵ国で発足。
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米国原子力潜水艦が今月初め、インド太平洋を航行中に未確認物体に衝突する事故を起こした。米軍による同事故の発表が5日後のことであったことから、中国側がこの時とばかりに、無責任な隠蔽体質だと非難する声明を出した。
10月21日付米
『ユーラシア・レビュー』:「中国、米軍潜水艦衝突事故を理由に航行の自由作戦中止を要求」
中国はこの程、今月初めに米軍原子力潜水艦が起こした未確認物体に衝突する事故について“愚かな過ち”と非難するとともに、これを契機に南シナ海で米軍が展開している航行の自由作戦(FONOP)を中止するよう要求した。
この中国の声明は、10月2日に高速攻撃型原子力潜水艦“コネチカット”(注後記)が衝突事故を起こしてから数日後に米軍が公表して以来、最も厳しいものとなっている。...
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10月21日付米
『ユーラシア・レビュー』:「中国、米軍潜水艦衝突事故を理由に航行の自由作戦中止を要求」
中国はこの程、今月初めに米軍原子力潜水艦が起こした未確認物体に衝突する事故について“愚かな過ち”と非難するとともに、これを契機に南シナ海で米軍が展開している航行の自由作戦(FONOP)を中止するよう要求した。
この中国の声明は、10月2日に高速攻撃型原子力潜水艦“コネチカット”(注後記)が衝突事故を起こしてから数日後に米軍が公表して以来、最も厳しいものとなっている。
専門家は、中国が厳しい態度に出た背景には、9月中旬に発足した、中国を仮想敵とするAUKUS(米・英・豪3ヵ国の軍事同盟)の存在があるとコメントした。
更に、米上院外交委員会が今週初め、南シナ海の平和と安定を脅かす中国の政策に関与した中国企業や高官に対する制裁法案を可決したことから、それへの腹いせとも考えられる。
中国国防部(省に相当)の譚克非報道官(タン・ケーフェイ、45歳)は10月19日、当該潜水艦衝突事故について“中国は重大な懸念を抱いている”と表明した。
同報道官はまた、“米国は当事国として、事故詳細について説明する責任と義務がある”と主張した。
そして更に、米国が行っている行為は“周辺国の安全保障に脅威となるだけでなく、地域の緊張を悪戯に高めるだけである”ので、米国に対して、中国近海や領空におけるFONOPや偵察行為を直ちに中止するよう要求する、とも言及した。
最後に同報道官は、米国が事故発生から5日も経ってから発表したことは、“事故そのものを隠蔽しようとした無責任な行動である”とし、“かかる行動は誤解や誤った判断を誘発しかねない”と糾弾している。
なお、専門家の推測によると、当該潜水艦は沈没した船舶・コンテナ、あるいは海図に表示されていない物体に衝突したものとみられるという。
一方、中国国営メディア『環球時報』は先週、複数の専門家の分析を引用して、米軍潜水艦は“愚かな過ち”を犯したと報じた。
そのうちのひとり李潔氏(リー・ジエ)は、米軍潜水艦は、機動作戦遂行時や複雑な地形の海底を潜航する場合に必須の“探知機”のスイッチを入れ忘れた恐れがあり、それで恥ずべき失敗を糊塗しようとしたと推測される、と述べている。
10月19日付中国『環球時報』:「中国、米軍潜水艦“コネチカット”の衝突事故の原因等詳細説明を要求」
国防部の譚報道官は10月19日、米軍潜水艦が南シナ海の公海において“未確認物体”と衝突した事故について、米国に対して事故の詳細について説明を求めるとの声明を出した。
その上で同報道官は、“米軍は長い間、FONOPの下、南シナ海にしばしば空母、戦略爆撃機、原子力潜水艦等を派遣して、周辺国に脅威を及ぼし、地域の安定を棄損している”と強調した。
10月8日付メディア報道によると、当該原子力潜水艦が10月2日、南シナ海の海中で衝突事故を起こしていたという。
米海軍の発表によると、同艦がインド太平洋の公海における作戦遂行中に、不特定物体と衝突したが、乗組員の中に命に関わる程の負傷者はおらず、また、同艦の原子力発電施設含めて安全で安定した状態だという。
なお、譚報道官は更に、米・英・豪3ヵ国による軍事同盟(AUKUS)に基づいて、原子力潜水艦整備協力を推進しようとしているが、それこそ無用な核兵器拡大リスクをもたらすだけでなく、核拡散防止条約(1970年発効)の精神に反する深刻な違法行為、また、東南アジアを非核地域としようとする活動を阻害するものだ、と糾弾した。
一方、外交部の趙立堅報道官(チョウ・リーチアン、48歳)も10月8日、“米軍潜水艦の衝突事故に深刻な懸念を抱いている”とした上で、“同艦の南シナ海を航行した目的は何か、また、事故に伴う放射線漏洩で海の環境に悪影響を及ぼすことにならないか等、事故の詳細について説明を求める”、と表明していた。
(注)原子力潜水艦“コネチカット”:排水量9284トン規模で、原子炉1基を装着し、25ノット(時速46.3キロメートル)以上の速度での運航が可能。乗組員は140人、トマホークミサイルとMK48魚雷で武装。原子力による動力を使うが、戦略原子力潜水艦と違って核兵器は運用しない。
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