フランスのオリビエ・べラン保健相は21日、この先1週間の新型コロナウイルスの状況を鑑みて、一層厳しい規制措置を取るかどうかを決定すると発表した。現在フランスでは飲食店などの営業禁止に加えて、午後6時までに帰宅するよう夜間外出制限が取られている。
仏日刊紙
『リベラシオン』によると、1日の新規感染者数が2万人前後を推移しているフランスでは、イギリス変異種の国内での蔓延を危惧する声が高まっており、国内の医師らは完全なロックダウンの必要性を求め始めている。パスツール研究所の元所長であるパトリック・ベルシュ医師は、「国民にとって負担であるとしても、夜間外出制限などよりも厳しい完全なロックダウンを早めに実施することがウイルス拡散防止の最も効果的な方法だ」と述べている。
仏金融紙『レゼコー』によると、新型コロナウイルスがフランス国内で猛威を振るっている中、べラン保健相は木曜日の定期会見で、まだあと1週間様子を見ながら今後の対策を検討したいと述べた。ただし、スキー場やレストラン、文化施設、スポーツ施設の1月中の再開はないことを明らかにした。
フランス当局は、変異種の出現に警戒を強めており、人との距離を現在の1メートルから2メートルに拡大すると発表している。さらにフランス高等公衆衛生審議会も、少なくとも90%以上のろ過機能を保証するカテゴリー1のマスクのみを使用すべきであることを推奨するようになった。市販の布製マスクのほとんどは問題ないとしているが、自家製マスクはバスや地下鉄などでの使用には安全性が不十分であるとしている。
べラン保健相は、「もしイギリスの変異種の割合が大幅に増加し、英国のような状況をたどることになりそうであれば、ロックダウンは絶対的に必要性になるだろう」と述べ、日単位の「時間との競争」であると指摘した。
仏ラジオ放送局『ヨーロッパ1』によると、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は21日、加盟国に対し今後数週間の間に変異種の拡散を封じ込めるために、各国でより厳格な措置を取る準備をするよう呼びかけた。ECDCは12月、変異種がもたらす医療危機を「高い」から「非常に高い」にレベルを上げている。変異種が蔓延した場合、入院患者や死者の急増が懸念されている。
1月12日時点、イギリス変異種は欧州加盟国内で約1,300例確認されており、南アフリカの変種については19日時点で、ドイツ、フランス、ベルギーを含む10カ国で27例が確認されている。
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今回の大統領選挙であらわになった米国社会の分断。ヨーロッパメディアでもその分断の深さに対し驚きの声が上がっている。そもそも分断の背景は何なのか、今後民主主義は存続できるのか、フランスやイギリスメディアも注目している。
フランスの日刊紙
『リベラシオン』は、今年の選挙で見られた米国社会の分断について、パリ政治学院の教授で政治経済学を専門としているジュリア・カジェ氏にインタビューを行っている。
カジェ氏は、インタビューで、今回の選挙で見られた両陣営の二極化の度合いに驚いたと話している。「二極化は4年前よりもはるかに顕著化」している。しかし、米国のリベラルメディアやフランスのメディアの一部は、トランプ政権がコロナ対策の失敗と経済不況によって歴史の片隅に捨てられるだろうという盲目的な見方に陥り、民主党の大勝を予測していたが見事に外れた、とコメントしている。...
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フランスの日刊紙
『リベラシオン』は、今年の選挙で見られた米国社会の分断について、パリ政治学院の教授で政治経済学を専門としているジュリア・カジェ氏にインタビューを行っている。
カジェ氏は、インタビューで、今回の選挙で見られた両陣営の二極化の度合いに驚いたと話している。「二極化は4年前よりもはるかに顕著化」している。しかし、米国のリベラルメディアやフランスのメディアの一部は、トランプ政権がコロナ対策の失敗と経済不況によって歴史の片隅に捨てられるだろうという盲目的な見方に陥り、民主党の大勝を予測していたが見事に外れた、とコメントしている。
過去最高の投票率を集めたバイデン氏だが、「敗れたトランプ大統領の地盤は衰退しているようには見えず、アメリカはこれまで以上に分断され、二極化しているように見える、民主主義にとっては非常に悪いニュースだ」と指摘している。指示する党が昔から決まっている州の単位で見るのではなく、群ごとに分析していくと、両陣営の支持率の極端化が広がっており、根本的に相容れない価値観を持つ人々が、並行して生活しており、お互いを無視して暮らしている、「2つの国」が存在しているという。もはや情報源も別々で、相手の主張を知ろうともしない2つの有権者層が存在する。これはまた、領土の空間的分離における政治的・経済的不平等の重さが増していることも反映していると指摘している。
また同氏は、米国の選挙では寄付金が、共和党と民主党の双方に懸念される流れであり、「一人一票」という民主主義の基本原則を弱体化させているという。民主党はますます大規模な個人献金に依存し、労働者階級から遠ざかってしまった。バイデン氏は平均年収10万ドル以上の人たちからより多くの寄付を受けているが、トランプ氏はより低所得層世帯から資金を集めた。これはバイデンの選挙人の構造にも反映されている。こうした資金調達方法によって、労働者階級の民主党に対する幻滅を招いていしまった。米国は、民主主義国家で平和的な政治的審議のための能力を失ってしまっている。もはや議論と交代で問題を解決することはできなくなっていることが問題だと警告している。
歴史家のブルーノ・カバヌ教授は『ヨーロッパ1』に対し、両陣営は「同じチャンネルを見ない、同じラジオ局を聞かない、そしてソーシャルネットワークがこの現象を増幅させている」とし、国民は政治的対立と恐怖が日々高まる中で暮らしているという。
こうした分断の背景として、カバヌ氏は理由がいくつか考えられると話している。1つ目は南北戦争まで遡るもので、過去の歴史認識が両陣営で一致していないという。2つ目に、選挙制度そのものから来る相手陣営に対する恨みだという。カバヌ氏は、「2016年の何人かの同僚は、中西部がなければトランプ氏は当選しなかったと言っていた」が、今回、トランプ支持者も、リベラルな大都市さえなければ大統領が当選していたはずだと結論づけるのではないかとコメントしている。そして3つ目に、コロナウイルスが2つの陣営間の対立を増幅させたと述べている。
英『ザ・ガーディアン』は、民主党が若く多様な人口を抱える都市部で成功しているのに対し、共和党は小さな町や農村部の年配の白人有権者からの支持を得ていると報じている。
新米国研究機構の上級研究員であるドラットマン氏は、過去40年の間に「嫌悪と不信の連鎖がエスカレートしている」と述べ、それに対する3つの原因を挙げた。1つ目に、地方、州レベルよりも国政に重点が置かれているため、議員たちが新しい有権者を取り込んでいくことが難しくなっているという点。2つ目に、民主党員と共和党員が都市部か農村部、文化的にリベラルか保守的かで分かれている点。3つ目に、国政選挙で接戦となることが多くなっている点だという。そのため今年の選挙では両陣営とも、当選すれば全てを手に入れ、落選すればすべてを失うかのような選挙メッセージを繰り広げた。
「Public Religion Research Institute」CEOのロバート・P・ジョーンズ氏は、米国は人口動態の歴史的変化に差し掛かっており、それが多くの分裂を煽っていると指摘している。これは政治への影響だけでなく、アメリカ人のアイデンティティーという根本的な問題にまで及んでいるという。米国はこれまでの歴史のほとんどすべてにおいて白人のアングロサクソン系プロテスタントの国として自らを認識してきた。
しかし「2008年にオバマ氏が大統領選に出馬した時には、白人クリスチャンが人口の54%を占めていたのに対し、今では44%しかいない。」この10年間で、白人とキリスト教徒が多数派だった国から、もはや白人とキリスト教徒が多数派ではない国へと変わった」というのだ。そして、「特に白人プロテスタントのキリスト教徒による文化と国の所有者であるという感覚は、アメリカの文化の中で非常に強いものであり、それが人口動態が変化していく中で、保守派の喪失感、混乱につながっているというる。それが、米国が抱えているすべての政治的なもめ事の背景にある」と指摘している。
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