仏メディアが見る北朝鮮核実験:中国の意向と巧妙な北朝鮮
国連決議を無視して北朝鮮が5度目の核実験を実施した。今回の実験によって、直接脅威にさらされる日米韓だけでなく、北朝鮮の核開発能力は国際社会の評価よりずっと高い可能性が高まり、欧米各国も深刻に受け止める。国連安全保障理事会は北朝鮮に対してさらに厳しい制裁を課すべく準備を始めたが、中国の出方が注目される。フランスメディアは次の通り報じる。
『ルモンド紙』によると、国連安全保障理事会は「国連決議の目に余る違反」「国際平和と安全保障への明白な脅威」として経済制裁決議案準備を決定した。全会一致だったが特に米仏が厳格な制裁を求め、国連憲章第41条(軍事力を伴わない経済制裁に関する条項)に沿って協議を開始。「新たな制裁の適用と現行制裁の厳格化を大きく左右する」と見る中国の意向は「控えめなまま」である。安保理会議後に中国大使は「(北朝鮮も国際社会も)双方とも緊張を悪化させる挑発や行動を慎むべき」と述べ、「韓国への米国防衛ミサイル設置計画」をほのめかす発言をしたという。...
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『ルモンド紙』によると、国連安全保障理事会は「国連決議の目に余る違反」「国際平和と安全保障への明白な脅威」として経済制裁決議案準備を決定した。全会一致だったが特に米仏が厳格な制裁を求め、国連憲章第41条(軍事力を伴わない経済制裁に関する条項)に沿って協議を開始。「新たな制裁の適用と現行制裁の厳格化を大きく左右する」と見る中国の意向は「控えめなまま」である。安保理会議後に中国大使は「(北朝鮮も国際社会も)双方とも緊張を悪化させる挑発や行動を慎むべき」と述べ、「韓国への米国防衛ミサイル設置計画」をほのめかす発言をしたという。
『リベラシオン紙』も国連決議の効力は「中国の支持があるかどうかで決まる」が、中国が北朝鮮の核実験に「断固とした反対姿勢」を表明するも「外交的には慎重姿勢」であると報じる。米国の防衛ミサイル設置が中国の激しい怒りを招いただけでなく、「中国は北朝鮮が完全に崩壊する事を恐れている」ためだとの味方を示す。「中国と国境を接する北朝鮮が米国の軍事的配下に置かれる事になる」事を中国は懸念している。また韓国の朴大統領はミサイル設置に関する集会に反対を促した。
一方で、
『レゼコー紙』は北朝鮮の強気について「非常に巧妙な北朝鮮は現在の地政学的模様を理解し、核開発に最適とみる」と報じる。「北朝鮮を核開発から退去させるのに強制力のために各国が意見を一致させるより、北朝鮮の核を認めざるを得ないと踏む」という専門家の見解を「レゼコー紙」は引用する。また「米中の不信感が大きな障害となる」と報じ、金正恩第一書記が国連制裁を嘲笑するのを虚勢と片付けるのは早いと戒める。また「米国支援と韓国統制下での南北統一」を避けたい中国の今後について、「北朝鮮への控えめな経済制裁を受け入れるしかない」が、「制裁案の全面適用を渋る」との見通しを示した。
また
『AFP通信』は「北朝鮮は、核保有国として米国が認識する事を求める」と報じる。
問題の北朝鮮の軍事力は次の通り報じられる。「北朝鮮は長・中距離弾道ミサイル用の核弾頭の小型化に成功した」、「15から20の爆弾を含む核兵器のストックを持つ」(レゼコー紙)。「これまで核実験の間隔は3年に1度だったが、今回の5度目と4度目の間隔は8か月」(リベラシオン紙)
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仏メディアが見る南シナ海問題とASEAN会議
G20終了後にラオスで開催されたアセアンの年次サミットでは、主要議題の一つだった南シナ海の領土紛争では、進展はほぼ皆無だったと言える。仲裁裁判所が下した中国の排他的領土主張を認めない判決を、中国は無視する形でスカルボロ環礁の埋め立てを続けるが、参加国はこの議題に極めて慎重だった。フランスメディアは次の通り報じる。
『ルモンド紙』は、南シナ海紛争にアセアン加盟国が慎重姿勢を見せた事で、「アセアン会議で中国は隣国の批判を逃れる」と報じる。また、この慎重姿勢が「中国の覇権主義で地域の緊張が益々熾烈になる事に加担する」と批判的だ。「ルモンド紙」は「アセアンの最終声明のどこにも中国の名前が無く」、「中国の人工島建設継続が緊張を高めると警告して海洋法順守を求めるにとどまった」事に驚きを見せた。南シナ海域での中国の領有権主張は不当で海洋法に違反するとしてハーグ仲裁裁判所は裁定を下したが、中国はこの裁定を無視し続ける。...
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『ルモンド紙』は、南シナ海紛争にアセアン加盟国が慎重姿勢を見せた事で、「アセアン会議で中国は隣国の批判を逃れる」と報じる。また、この慎重姿勢が「中国の覇権主義で地域の緊張が益々熾烈になる事に加担する」と批判的だ。「ルモンド紙」は「アセアンの最終声明のどこにも中国の名前が無く」、「中国の人工島建設継続が緊張を高めると警告して海洋法順守を求めるにとどまった」事に驚きを見せた。南シナ海域での中国の領有権主張は不当で海洋法に違反するとしてハーグ仲裁裁判所は裁定を下したが、中国はこの裁定を無視し続ける。ベトナムや提訴したフィリピンは最も領土問題の影響を受ける国だが、声明は「仲裁裁判所の裁定を言及しただけ」だった。「東南アジアと中国の関係は最も重要で相互の利益をはぐくみ、平和、安定と繁栄に貢献する」と称えすらした。
「ルモンド紙」は、比大統領によるオバマ大統領への侮辱も中国の根回しの一環とみており「フィリピンが演出した挑発」と示唆する。結果的に両国大統領会談は中止となり、フィリピン大統領は「仲裁裁判所提訴ではなくオバマ大統領への失言」によって語られる事となった。南シナ海問題は完全にかすんだ。
「ルモンド紙」によると「分裂を利用する中国がよく使う手法」だ。例えば「カンボジアは中国から6億ドルの支援と助成金を受けており、中国に批判的な合意を阻止するために何でもやる」中国昆明アセアン会議や前回の外相会議では、南シナ海に言及した声明案からカンボジアは土壇場で手をひいた。また7月には外相会議が仲裁裁判所に言及しない内容となった事を挙げる。
一方で多くの国にとって中国は最大貿易相手国で、中国の感情を損なう事を敬遠する。フランスも例外ではないが、南シナ海問題ではベトナムを選ぶようだ。
『レゼコー紙』によると、G20後にオランド大統領がベトナムで「フランスは海上の軍事海域の安定化においてベトナムを後押し、南シナ海航行の自由と海洋法順守を求めてベトナムと戦略的パートナーシップ強化」すると明言した。以前からドリアン仏防衛大臣は「南シナ海の状況はEUに直接関係する」として、「EUからの動員」と「欧州各国が南シナ海での軍事プレゼンスを確保する事」を提案してきた。今までは「英国離脱」と「中国の感情考慮」が優先された。しかし今後は「EU加盟国はベトナムとの戦略的提携を通して南シナ海の安定化に乗り出す」と「レゼコー紙」は見る。「軍事面でフランスが発言すれば他国が追随するのが常」だからだ。また中国とベトナムの間でオランド大統領は微妙な均衡を保つ必要があると伝える。
『フィガロ紙』は米国が慎重姿勢を見せた事に注目する。オバマ大統領が今回の侮辱の一件後、フィリピンに航空機2機を贈呈した事を、「武力バランスの必要性を見失わない」と、冷静な行為を称えた。
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