2007年に当時の安倍晋三首相の提唱で始まった日米豪印四ヵ国戦略対話(クワッド会議、注後記)は、軍事的に台頭する中国を牽制するという目的が益々強まり現在に至っている。そしてこの程、豪州政府としても、また9年振りに返り咲いた労働党政権としても初めて本国でクワッド会議サミットを主催することになった。
4月26日付米
『ABCニュース』(1945年開局)、豪州
『ABCニュース』(1947年開局)等は、豪州労働党政権が初めて、クワッド会議サミットを主催する旨報じている。
豪州のアンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)は4月26日、5月24日にシドニーのオペラハウスにおいて、日米印首脳、岸田文雄首相(65歳、2021年就任)、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)及びナレンドラ・モディ首相(72歳、2014年就任)を招いてのクワッド会議サミットを主催する旨発表した。
同首相は、直前(5月19~21日)に広島で開催される主要7ヵ国(G-7)サミットにオブザーバー参加した後、他首脳と豪州に移動して後、同サミットに臨むことになる。
同首相は記者会見で、“ロシアによるウクライナ軍事侵攻含めて、世界の安全保障が目下著しく脅かされている”とした上で、“(中国の台頭を念頭に)アジア太平洋地域でも戦略的競争が激化しており、クワッド会議メンバー国は一致して、インド太平洋地域の平和と安定確保・維持に向けて対応していく必要がある”と訴えた。
更に同首相は、“クワッド会議メンバー国の他、東南アジア諸国連合(ASEAN、1967年設立)、太平洋諸島フォーラム(1971年前身設立)、環インド洋地域協力連合(1995年設立)やその他の地域パートナー国とも連携していく”とも強調している。
同首相は今年3月、訪米して米・英国・豪州軍事同盟(AUKUS、2021年設立)サミットに出席し、バイデン大統領、リシ・スナク首相(42歳、2022年就任)と会談した上で、前政権が決めていた米国製原子力潜水艦8隻の獲得を再確認している。
そして同首相は11月、米国の招待に応じて、サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC、1989年設立)サミットにも出席する。
なお、同首相は、バイデン大統領が2024年大統領選に再出馬するとの表明について、コメントすることは控えるとしている。
(注)クワッド会議:日本、米国、豪州、インドの4ヵ国でつくる連携や協力の枠組み。メンバーは、民主主義などの価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で存在感を高める中国の行動を抑えたい狙いを持つ。米国は中国に対抗する上で価値観を共有する同盟国や友好国との連携を重視していて、クワッド会議をその枠組みの1つと位置づけており、バイデン大統領は閣僚レベルの枠組みだったクワッドを首脳レベルに引き上げて、2021年3月にオンラインの首脳会合を開催。同年9月には対面での首脳会合を初めて開き、今後は毎年開催することで合意。2022年5月には日本で開催。
閉じる
ロシアの裁判所がこの程、ウクライナ侵攻を非難する反体制派活動家筆頭のジャーナリストに対して禁固25年の有罪判決を下した。西側諸国は一斉に、ロシア国内での政権批判派を恐怖に陥れて活動を止めさせるためのスケープゴートにされた不公正裁判だと非難している。一方、ロシア政府は、裁判所の判断にコメントはしないとして、三権分立を装う体裁を取っている。
4月17日付米
『AP通信』、
『ABCニュース』等は、ロシアの裁判所が、政権批判を展開する活動家の筆頭のジャーナリストに対して、昨年2月のウクライナ軍事侵攻後に新たに制定した法律に基づき、禁固25年の有罪判決を下したと一斉に報じている。
ロシアのモスクワ地裁は4月17日、政府に批判的な活動家でジャーナリストのウラジーミル・カラムルザ氏(41歳)に対して、国家反逆罪等の罪で禁固25年の有罪判決を言い渡した。
ロシアでは2022年2月のウクライナ軍事侵攻後、戦争反対の声を抑え込むべく、政権批判する活動家らを取り締まるため、新たな刑法改正(注後記)が次々に行われている。
今回のカラムルザ氏への判決は、これら改正刑法が適用されて以降最も重い量刑となっている。
同氏の弁護人のマリア・エイスモント弁護士(47歳、ロシアに踏み止まる数少ないリベラル派)は、同氏が法廷で判決を告げられた時、“自分が行ってきたこと全てが正しかったと理解した”とし、“自身の行動や、市民及び愛国者として信じてきたことが最高に評価された禁固25年だ”と落ち着いた様子でコメントしたとする。
裁判を傍聴していた駐ロシア米・英国大使は、“カラムルザ氏に対する有罪判決は、反対意見を封じ込めようとする試みだ”とした上で、“即座の解放を求める”と異口同音に訴えた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも、“昨年のウクライナ軍事侵攻以来、ロシア政府が拡大解釈して取り締まりを強化している最悪のパターンだ”とし、“市民生活を脅かす冷酷な証拠だ”として非難している。
ロシア当局は、カラムルザ氏以外にも直近で、反政府活動をしたとして一般市民らを多く逮捕・拘留している。
昨年8月には、野党政治家のイルヤ・ヤシン氏(39歳)に対して、ロシア軍に関わる虚偽情報を流布した罪で8年半の有罪判決を下した。
先月には、SNS上に戦争批判の投稿をしたとして、一般市民の男性を2年の禁固刑に処している。
更に、その13歳の娘が、学校で戦争反対を表す絵を描いたとして、孤児院に送られてしまっている。
また、その数日後には、米『ウォールストリート・ジャーナル』紙のロシア特派員のエバン・ゲルシュコビッチ記者(32歳)が、スパイ活動容疑で逮捕されてしまった。
ロシアの独立系ニュースサイト『メディアゾナ』(2014年設立)は、ロシア最高裁の公表データによると、2022年に市民に対して、軍事活動の虚偽情報流布の罪で合計4,439件検挙していて、罰金額は総額180万ドル(約2億4,100万円)に上っていると報じている。
一方、4月17日付ロシア『タス通信』は、ロシア政府報道官が、カラムルザ被告に対する有罪判決について一切コメントする意向はないと表明したと報じている。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官(55歳、2012年就任)は4月17日、モスクワ地裁がジャーナリストのカラムルザ被告に対して、25年の禁固刑に処したことに対して、一切のコメントを控えるとした。
同報道官は、“これまでも裁判所判断に決してコメントしてきていないのと同様、今回も何ら物申す意向はない”と表明した。
なお、同被告に対する起訴状によると、2022年3月、同被告が米アリゾナ州議会において、ロシア軍がウクライナにおいて使用禁止の兵器で軍事活動を行った等の根拠のない演説を行ったとしている。
更に同被告は2021年10月、(ロシア国内では好ましくない国際機関とされる)NGO自由ロシア財団(2016年設立)の援助を受けて、モスクワ在のサハロフ・センター(1996年設立の美術館・文化館で人権擁護活動を展開)において、政治犯を支援する会合を開いたとしている。
これらの行動全てが、ロシア国家反逆罪に相当する、として起訴されたとしている。
(注)ロシア刑法改正:まず2022年3月、前月のウクライナ軍事侵攻(ロシア政府は特別軍事作戦と標榜)等を非難する活動家らを取り締まるため、軍事行動に関わる虚偽報告流布罪を新たに追加。同国の軍事行動に関して虚偽の情報を広げた場合に刑事罰を科すというもの。情報の戦時統制を強化し、言論の自由を大きく損なう内容で、ロシア人だけでなく外国人も対象となり、最長で15年の懲役や禁錮など自由はく奪の重い刑罰を科される。
次に同年7月、ロシアが参加する外国での紛争や軍事行動における敵への寝返りを国家反逆罪とし、最長で懲役20年を科す刑法改正を実施。更に、外国の情報機関や国際組織との間に、ロシアの安全保障に脅威を与える目的で秘密の関係を築いた場合は、最長で懲役8年を科すことも盛り込まれている。
閉じる