11月20日付米
『CNNニュース』、豪州
『スカイニュース豪州』、
『ABCニュース』等は、豪州首相が、中国軍艦による危険な行為を糾弾したと報じている。
アンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)は11月20日、CNN傘下の『スカイニュース豪州』のインタビューに答えて、日本海に停泊中の豪州軍艦に対して中国軍艦が行った“危険かつプロ意識に欠ける行為”によって、“1人の船員が負傷した”として非難した。
同首相は今月初め、長らくギクシャクしていた中・豪関係修復のため、豪州首脳として7年振りに訪中したばかりであった。
これに先立つ11月18日、リチャード・マールス国防相(56歳、2022年就任)が声明文を発表して、“長距離フリゲート艦「トゥーンバ」(2005年就役)に乗船していた豪州人潜水夫が11月14日、同船のスクリューに絡まった漁網を取り除こうとしていたところ、中国軍艦が危険を伴うソナー(水中を伝播する音波を用いて、水中・水底の物体に関する情報を得る装置)を操作した”とし、“事前に潜水行為を実施していると通知したのにも拘らず、中国艦による無謀な行為で潜水夫のうちの1人が軽傷を負った”と糾弾していた。
同首相は11月16日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席している習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)と会談していたが、メディア側質問に対して、同国家主席に本問題について話題にしたかどうかは答えず、ただ、“本件については適切な機会に明確かつ率直に中国側に伝えており、中国側も我々の関心事をよく理解している”と付言するに止めた。
しかしながら、中国外交部(省に相当)の毛寧報道官(マオ・ニン、50歳、2022年就任)は11月20日の定例記者会見で、“中国軍は、常に高度に規律を重んじており、かつ常に国際法と国際慣行に基づいて専門的な活動を行っている”とコメントした。
その上で同報道官は、“政府関係者は中国の玄関口で悪戯に騒ぐのは止めて、中国と協力して中豪関係改善に向けて邁進して欲しい”とけんもほろろに付言している。
この問題について、スタンフォード大学(1891年設立のカリフォルニア州立大学)安全保障問題研究センターのレイ・パウウェル所長は、“中国軍艦の無謀なソナー操作の指示は誰が出したのか不詳だ”としながらも、“もし艦長が指令していたとしたら、豪州海軍の場合に照らし合わせると、同艦長は即座に解任されるか、もしくはもっと悪い懲罰が下されるだろう”とコメントした。
しかし、同所長は同時に、“中国軍においては、一切不問に付されるだろう”とも言及している。
(注1)クワッド会議:日・米・豪・印4ヵ国でつくる連携や協力の枠組み。メンバー国は、民主主義等の価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で影響力を高める中国の行動を抑えたい狙いを持つ。特に米国は、中国に対抗する上で価値観を共有する同盟国や友好国との連携を重視していて、クワッド会議を首脳レベルに引き上げて、2021年3月にオンライン形式の首脳会議を主催。同年9月には対面での首脳会議を初めて開き、今後は毎年開催することで合意。2022年5月には日本が主催。
(注2)AUKUS:2021年発足の米・豪・英の軍事同盟。米・英国は、豪州による原子力潜水艦の開発および配備を支援し、太平洋地域における西側諸国の軍事プレゼンス(影響力)を強化することを目指す。
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11月3日付米
『CNNニュース』、11月4日付欧米
『ロイター通信』等は、豪州首相として7年振りにアンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)が訪中しているが、中・豪首脳の各々の思惑に関する国際政治専門家の分析について詳報している。
豪州首相として7年振りに11月4~7日に訪中するアンソニー・アルバニージー氏は、その直前に記者団に対して、中豪間の関係改善に向けて“積極的に”対応していくと述べた。
すなわち、懸案となっていた中国による豪州ワインへの高額関税について、10月下旬に撤廃に向けた交渉についての合意がなされたばかりで、同首相としては、総額12億豪州ドル(7億7,360万ドル、約1,160億円)の再興が悲願となっているからである。
ただ、同首相は10月下旬(編注;10月23~26日)に訪米し、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)と会談したばかりである。
米豪首脳はその際、南シナ海における“中国の過度な海洋権益主張”について非常に懸念する旨同調している。
更に、両首脳は、AUKUS(2021年発足の豪州・米国・英国の軍事同盟)及びクワッド会議(注1後記)を通じての連携強化を確認している。
かかる背景の中、豪州首相の対中国交渉と中国側の思惑について、国際政治専門家が分析している。
● シドニー大学アジア太平洋地域安全保障問題専攻の元京東准教授(ユアン・チンドン)
・今回の訪問は象徴的なものであるが、しかし重要な意味を持つ。何故なら、昨年5月(保守党政権退陣時)まで中豪関係は非常にギクシャクしていたばかりであるから。
・そこでアルバニージー首相は、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)他幹部と会談するに当たって、AUKUSやクワッド会議は安全保障関連での長い関係性を持つものだが、決して中国を標的としたものではないと強調しよう。
・更に、米国と密接な関係を持っていても、豪州が米中関係の間を取り持つ役割を果たすことができるということをアピールしたいとみられる。
・一方、習国家主席は11月中旬に米国・サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC、1989年設立の非公式協議体)に出席する予定であることから、その直前に豪州関係を改善しておくことが、APECに出席した際に中国の好印象を他国に与えることになると期待していると考えられる。
● シドニー工科大学傘下の中豪関係研究所のエレーナ・コリンソン主査
・中国としては、再生可能エネルギー政策強化のため、豪州の天然資源及び再生可能エネルギー産業へのアクセスが必須と考えており、今回の豪州首相の来訪は良い機会と捉えている。
・また、中国が希望している「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP、注2後記)への加盟について、豪州からの後押しを期待している。
・更に、米国との緊張が高まっている一方、中国国内経済に陰りが見える中、米国の同盟国であり、かつ天然資源が豊富な豪州との関係修復が必要と判断しているとみられる。
・一方、これまで貿易上の圧力で以て、米同盟国をして米国から離反させることを試みてきたが、反って豪州含めた多くの国の疑念や警戒心を高めるだけだったことを悟ったものと考えられる。
(注1)クワッド会議:日・米・豪・印4ヵ国でつくる連携や協力の枠組み。メンバー国は、民主主義等の価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で影響力を高める中国の行動を抑えたい狙いを持つ。特に米国は、中国に対抗する上で価値観を共有する同盟国や友好国との連携を重視していて、クワッド会議を首脳レベルに引き上げて、2021年3月にオンラインの首脳会議を主催。同年9月には対面での首脳会議を初めて開き、今後は毎年開催することで合意。2022年5月には日本が主催。
(注2)CPTPP(またはTPP11):2017年に米国がTPPを離脱した後に再開されたFTA(自由貿易協定)であり、世界のGDPの約14%を占める巨大自由経済圏。TPP11では関税撤廃が定められていることから、ヒトやモノの移動がより活発化することを期待。加盟国は、日・豪・NZ・加・チリ・メキシコ・ペルー・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・ベトナム。
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