中国人の男女が、私欲から、マーシャル諸島の環礁に、台湾のような自治領を樹立しようとしたとして米国で起訴されたという。マーシャル諸島は米国が太平洋の軍事拠点として安全保障協定を結んでいるが、中国が影響力拡大を図っている。
9月8日付英
『Yahooニュース』(BBC):「マーシャル諸島:中国人カップルのミニ国家計画」:
米検察によると、中国人カップルが、議員や高官への賄賂を通じ、マーシャル諸島にミニ国家を作ろうと画策したという。彼らは議員らを賄賂でほのめかし、同国内の環礁に「半自治領(SAR)」を樹立しようとした。
マーシャル諸島は、ハワイとオーストラリアの間にあり、1979年米国から独立。今も米国の太平洋上の戦略拠点となっており、米国が安全保障協定を結んでいるが、中国が影響力拡大を図っている。
米検察によると、中国人被告のヤンとチョウは、2018年と2020年に、SAR成立を盛り込んだ法案に関わり、議員数名が賄賂を受け取った後、議案に賛成票を入れたとされる。2人は2020年タイで拘束され、先週米国に送還された。
彼らはマーシャル諸島の当局者への支払いや連絡に使うため、ニューヨークを拠点とするNGOで活動していたとされる。米国の水爆実験で放棄されたロンゲラップ環礁に自治領を樹立するため、2016年から協力者とコンタクトをとり始め、海外からの投資に繋げようと、減税や移民制限緩和を狙い「同国の法律を変えること」を目的としていたという。
SAR推進会合の際は、協力者の議員や高官らのニューヨークや香港への渡航費や滞在費を負担し、少なくとも6回会食を行っていたという。ヤンはマーシャル諸島の特別顧問に任命され、2人は帰化市民権も得ていたとされる。
2018年、賄賂を受け取った議員らは、SARを支持する議案を議会に提出。だが、当時のハイネ元大統領からの強い反対にあい、議案は通過しなかった。当時ハイネ氏は中国の利益ため「環礁を国内に組み込もうとする」反対派を批判していた。
その後、ハイネ氏は2019年の総選挙で敗退。 2020年の新議会では、SARのコンセプトが決議で承認された。しかし、その後同年、ヤンとチョウはタイで拘束され、米国で海外汚職、マネーロンダリング、収賄罪の容疑で起訴された。マーシャル諸島では、野党の要求にもかかわらず、この事件の存在をまだ認めていない。
9月7日付中国『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』:「米国が防衛拠点とするマーシャル諸島で香港のような国家樹立を目論んだ中国人カップルを逮捕」:
米司法省は、旧米国領マーシャル諸島における自治領計画を含む「長期的策略」の罪で、中国人カップルが逮捕起訴されたとしている。
先週の司法省のプレスリリースによると、ケーリー・ヤン(50歳)とジーナ・チョウ(34歳)が、マネーロンダリングと海外汚職行為防止法違反の罪に問われているという。
彼らは米国領に居ながらにして、マーシャル諸島の高官に賄賂を渡そうと試みたとされ、ニューヨークの非政府団体(NGO)の関係者のふりをして、話を持ちかけたが焦点となっている。起訴内容によると、このNGOは2016年~18年頃に、国連経済社会局の特別顧問だったとされる。
ヤンとチョウ他の組織は、ロンゲラップ環礁という所に、香港のような自治政府を作ろうと策略、その自治領に経済や社会プロジェクトを誘致する狙いがあったとみられる。マーシャル諸島は、台湾の友好国で、台湾と正式な外交関係を結んでいる14カ国の一つでもある。
米FBIマイケル・ドリスコル副長官はプレスリリースで、ヤンとチョウが「マーシャル諸島の人々を犠牲の上に、個人的利益のため、複数の不法行為を行った」とし、米司法省は声明で、彼らは「マネーロンダリング罪により最大20年、海外汚職行為防止法違反により最大5年の刑となる見込み」だとしている。
マーシャル諸島は1986年米国から独立、戦後米国が水爆実験を行ったビキニ環礁で知られ、米国が軍事面で今もなお「完全なる統治義務」を維持している。
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1週間前、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)の最側近と言われる政治学者の娘が爆死した。ロシア政府はすぐさま、ウクライナ側の陰謀と非難したが、西側からは、ロシア連邦保安庁(FSB、1995年設立の旧ソ連KGBの後身組織)が間髪を入れずに犯人を特定したと発表したこと等から、FSBの自作自演だと疑問視する声が上がっている。また、当該事件の1週間前にも、プーチン批判の急先鋒のロシア人実業家が自殺とされる事件が発生している。しかし、自殺と特定するには多くの疑問があることや、家族から自殺の可能性を全否定するコメントが出ていることから、本件もFSBの極秘任務の仕業だと疑われている。
8月27日付
『ニューヨーク・ポスト』紙は、「2つのショッキング事件はプーチン脚本の暗殺事件か」と題して、プーチン最側近の娘の自動車爆死事件も、プーチン批判の急先鋒のロシア人実業家の自殺疑惑事件もプーチン差し金ではないかとの声があると論じている。
先週末(8月20日)、モスクワ郊外でプーチン大統領の最側近と言われる政治学者の娘が爆死するという事件が発生した。
「プーチンの頭脳」と呼ばれた、超国家主義政治学者アレクサンドル・ドゥーギン氏(60歳)の娘のダリア・ドゥーギナ氏(政治評論家・ジャーナリスト、享年30)で、運転していた車に仕掛けられた爆弾によって父親の目前で爆殺されたものである。
FSBは即刻、ウクライナ側の陰謀だと非難したが、ウクライナは、ロシアの反戦派に責任があると反論している。
一方、この事件が発生する1週間前(8月14日)にも、米首都ワシントンDCに逃れていたプーチン批評家のロシア人実業家が不審死する事件が発生している。
ダン・ラポート氏(享年52)で、ロシア居住時からプーチン批判の急先鋒であって、ウクライナ軍事侵攻についても糾弾していたが、身の危険を感じて米国に脱出していたところ、事件当夜の18時前、滞在先の高層アパートから“飛び降り”て即死した。
当局の捜査によると、遺体発見時、かなりの所持金の他、携帯電話や鍵等を保持していて、飛び降り自殺として処理するには疑問が残ったという。
更に、ロシアから別々に脱出し、目下デンマークに避難しているラポート夫人は、自殺の心当たりが全くない上に、直前の3日間連絡が取れなかったと証言している。
以上2件の事件は、まるで小説家トム・クランシー(1947~2013年)のスパイ小説を彷彿させるが、ロシアのスパイ活動は小説より更に奇想天外である。
何故なら、これまで何人もの反対勢力の政治家や政府批判のジャーナリスト、また元スパイまでも、“暗殺”と疑われるような非業の死を遂げているからである。
冒頭のダリア・ドゥーギナ氏の爆死について、プーチンが背後にいるとは考えずらいが、国際社会において劣勢の同大統領にとって、対ウクライナ攻勢を強める上で格好の理屈付けができることから、全くあり得ないことではない。
例えば、第二次チェチェン紛争再開の契機となった1999年のモスクワのアパート連続爆破事件(犠牲者200~300人)は、FSBの偽旗作戦(注後記)と言われているが、当時のロシアはチェチェンの反政府武装勢力の仕業だとして同地に攻め込んで制圧し、この成果によって当時首相だったプーチンが、2000年3月の大統領選で勝利を収めるに至っている。
その他、プーチンが黒幕となって行われたと疑われる暗殺事件が、以下のとおり多く発生しているが、いずれも犯人が特定できなかったり、首謀者も判明しないままとなっている。
●アンナ・ポリトコフスカヤ(ジャーナリスト、2006年10月暗殺、享年48)
・主に第二次チェチェン紛争における内情を詳報して、FSBを批判。
・モスクワ市内の自宅アパートのエレベーター内で射殺体で発見。奇しくも、プーチンの誕生日の出来事。
・複数の実行犯は逮捕され服役したが、黒幕は依然不明。
●アレクサンドル・リトビネンコ(FSB元職員、英国に亡命した反政府活動家、2006年11月暗殺、享年44)
・1998年に、FSBの一部幹部職員が政治的脅迫や契約殺人(殺人教唆)等の犯罪活動にFSBを利用していると告発。
・当時のFSB長官のプーチン(1998~1999年在任)に直訴するも関心を示されなかったために記者会見を実施。
・以降、政治的弾圧や迫害に苦しめられたために2001年に英国に亡命し、反政府活動に勤しんでいたところ、2006年11月に自宅で何者かに毒(追って、放射性物質ポロニウム210と判明)を漏られて3週間後に死亡。
・英国当局が、犯人は元KGB職員2人と認定したが、ロシア政府は全否定した上で、犯人の引き渡しを拒否。
●ポール・ジョイヤル(現68歳、元CIA職員、2007年3月暗殺未遂)
・プーチン政権を批判する活動をしていたが、3月初め、メリーランド州の自宅側で暴漢に銃で撃たれて重傷。
・事件発生の4日前、『NBCテレビ』ニュース番組に出演し、元ロシア・スパイのリトビネンコ氏毒殺は、ロシア政府によるプーチン政権批判者への見せしめだと強調。
・今現在、犯人特定、逮捕に至っていないが、当人はロシア政府の差し金だと主張。
●ボリス・ネムツォフ(エリツィン政権の第一副首相、2015年2月暗殺、享年55)
・2014年のクリミア半島併合に反対したり、ロシア軍がウクライナ東部の親ロシア派に軍事支援していると暴露。
・クレムリン宮殿至近のモスクワ川にかかる橋上で後ろから銃撃され死亡。犯人グループは逃走したままで未解決。
●ミハイル・レジン(ロシアメディア元幹部・プーチン顧問、2015年11月暗殺、享年57)
・2011年にビバリーヒルズ(カリフォルニア州)に居を構え、米ロ間を行き来。
・2014年、米上院議員の告発に基づき、連邦捜査局(FBI)が海外腐敗行為防止法(1977年制定)違反や資金洗浄容疑で捜査開始。
・2015年11月、ワシントンDC在のホテルの部屋で遺体で発見。ID等一切保持していなかったが、後日、駐米ロシア大使館が本人と特定。
・絞殺された疑いが濃厚で、犯人含めて特定できていないものの、CIAはロシア政府の差し金だと推定。
・米司法省の審問のためにワシントンを訪れていたためだが、奇しくも審問前日の出来事。
(注)偽旗作戦:攻撃手を偽る軍事作戦の一種。海賊が「降伏」の旗を掲げて敵を油断させて逆に相手の船を乗っ取るという行為に由来。自国の軍民が他国やテロリスト等からの武力攻撃を受けたかのように偽装して被害者であると主張したり、あるいは緊張状態にある両勢力間で漁夫の利を狙い、いずれかの側から攻撃が行われたように思わせて戦争を誘発させるといった行為を指す。
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