今夏に延期になった東京オリンピック・パラリンピック大会に関して、日本の為政者・大会組織委員会はもとより、国際オリンピック委員会(IOC)も新型コロナウィルス(COVID-19)感染症に打ち勝った証しとして、開催は必要と声高に叫んでいる。しかし、COVID-19感染者数急増がとても制御できなくなったとして、ついに非常事態宣言の再発出を余儀なくされた。そうした中、欧米メディアは、日本人の多くが今夏での大会開催は益々困難になったと吐露していると報じている。また、IOC古参委員も、ここへきての非常事態宣言再発出によって、大会開催は不透明になったと明言している。
1月8日付
『ロイター通信』:「東京大会開催は“不可能”と日本人の多くが吐露」
政府は1月8日、COVID-19感染急増を制御するため、昨年4月に続いて非常事態宣言を発出した。
日本政府とIOCは昨年3月24日、COVID-19感染世界流行問題を受けて、昨夏開催予定だった東京大会を今夏に延期することを決めた。
現行、7月23日から8月8日までの開催予定とされているが、菅義偉首相(72歳)は1月7日、依然予定どおり開催するとの意思表示をした。
しかし、これに先立つ昨年12月下旬、『NHK』が実施したアンケートによると、回答者の約3分の1が、海外から多くの選手団及び観戦者・旅行者の来訪によってCOVID-19感染爆発が起こることを懸念して、東京大会は中止すべきと回答している。
中止ではなく更に延期することを希望したのが31%で、今夏での予定どおりの開催を求めたのは僅か27%であった。
『ロイター通信』のインタビューに答えた75歳の男性は、“聖火リレー開始まで2ヵ月半しかなく、それまでにCOVID-19抑え込みができるようになるとは思えない”とし、“従って、東京大会開催は難しい”とコメントした。
大会の花形のひとつである聖火リレーは、3月25日に福島県を皮切りに121日間行われることになっている。
74歳の別の男性は、“現状からみて東京大会開催は無理なので、政府は然るべくタイミングで中止の決定を下すべき”と述べた。
また、23歳の女子大生は、“(東京大会開催で)人と人との接触が増えることによって更にCOVID-19感染拡大の可能性があり、また、感染拡大に連れてウィルス変異種も多く発生する懸念もあり、非常に恐ろしい”とコメントしている。
同日付『AP通信』:「IOC古参委員、東京大会開催は“不透明”とコメント」
IOC古参委員が1月8日、日本及び多くの国でCOVID-19感染拡大が深刻化していることより、東京大会開催は“不透明”になったとコメントした。
菅首相が1月7日に発出するとした緊急事態宣言を受けて、カナダ代表IOC古参委員のリチャード・パウンド氏(78歳、元競泳選手、弁護士)が、英国『BBC』のインタビューに答えたものである。
同委員は、“皆はっきり触れようとしないので述べるが、ウィルス禍は確実に深刻化しており、従って、現段階で東京大会開催について確かなことは何も言えない”と強調した。
日本のCOVID-19感染状況は直近で深刻度が増しており、1月7日の東京都の感染者数は2,447人と前日より50%も増えており、これまでの記録を2日続けて更新している。
ただ、全国の死者は3,500人超と、1億2,600万人の人口に比べて比較的低い。
東京大会組織委員会は、開催に向けてはっきり説明すべき時期に来ているが、開催に当たっての詳細案については、今春まで明らかにする意向はない模様である。
一方、のべ1万人が参加する聖火リレーは、3月25日から4ヵ月にわたり行われる予定である。
なお、パウンド委員はCOVID-19ワクチンに関して、参加選手は優先して接種されるべきで、これが“皆の模範”となるからであると付言している。
何故なら、“選手が率先してワクチン接種することによって、選手自身の安全確保のみならず、その他一般社会の人たちに対して(ワクチン接種を奨励する)非常に強いメッセージとなるからである”とする。
一方、『NHK』が先月、1,200人を対象にアンケートを行ったところ、実に63%の人たちが中止、もしくは更なる延期を望むと回答していた。
しかし、IOCはかつて、昨春に1年延期を決定した際、更なる延期はせず、中止するのみだと言及している。
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7月5日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース他:「新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題に関わる直近の状況」
<注目ニュース>
●世界保健機関(WHO);米大陸(特に米国及びブラジル)及びアジア(特にインド)の感染者数増が深刻と報告。
●米国;フロリダ州、カリフォルニア州及びアリゾナ州で感染者が急増。
●インド;1日の新規感染者が+7.2%と依然感染者が急増。
●メキシコ;死者が3万366人(全体の5位)と、フランス(2万9,896人)を上回る。
●豪州;感染者急増で1ヵ月の都市封鎖措置が取られたメルボルンで、ビクトリア州政府が公営住宅居住者に家賃補填。
<WHO>
・7月4日発表の報告では、直前1日の感染者が+21万2,326人と初めて20万人超となり、これまでの1日当たりの平均16万3千人を大きく上回っているとして警告。
・急増しているのは米大陸(特に米国及びブラジル)で全体の61%を占め、次にアジア(特にインド)が12%。
・かつて新規感染者を占めていた欧州は9.3%と、感染拡大は減少傾向。
<米国>(感染者283万9,917人、死者12万9,676人、致死率4.57%)
・7月4日時点で、新規感染者が前日より+4万6千人増と、依然感染率は深刻。
・特に、フロリダ州で+1万1,458人(+6.4%)、カリフォルニア州で+6,510人(+2.6%)、アリゾナ州で+2,695人(+2.9%)と勢いは止まらず。一方、かつて最悪の感染状況であったニューヨーク州では、+726人(+0.2%)と漸く鎮静化傾向。
・トランプ大統領は7月4日の独立記念日祝典で、“COVID-19の治療薬やワクチンは年末までに提供が可能”だと、改めて強調。一方、国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、“ワクチンが提供できるのは来年早々”とコメント。
・2001年9月の同時多発テロ発生時、崩れ落ちるワールドトレードセンターから逃げ惑う人々を写したスクープ写真を撮影したステファン・クーパー氏(元電気技師、フロリダ州在住)がCOVID-19のために3月28日に死去していたことが判明(享年78歳)。当該写真は、ニューヨークの9/11メモリアルミュージアムに展示。
<インド>(感染者67万3,165人、死者1万9,268人、致死率2.86%)
・7月4日の新規感染者は+4万6,679人(+7.2%)と依然感染拡大中。
<メキシコ>(感染者25万2,165人、死者3万366人、致死率12.0%)
・保健省が7月4日夜、死者が3万366人に達したと発表。フランス(2万9,896人)を抜いて世界5位。
・一方、1日の感染者も最多更新の+6,914人増。
<豪州>(感染者8,449人、死者104人、致死率1.23%)
・メルボルンでの新規感染者急増により、同市は7月1日より1ヵ月間の都市封鎖措置を決定。
・これに伴い、休業を余儀なくされた同市公営住宅居住の約3千人の住民に対して、ビクトリア州のダニエル・アンドルーズ首相は家賃補填の一環で、1世帯当たり1,500豪州ドル(1,040ドル、約11万1千円)補助すると発表。なお、元々無職の世帯は半額支給。
<イラン>(感染者24万438人、死者1万1,571人、致死率4.81%)
・7月5日の死者が163人と同国最多記録更新。
<ドイツ>(感染者19万7,198人、死者9,022人、致死率4.58%)
・7月4日の新規感染者は418人と、感染のピーク時に比し、かなり低く抑えられていて、11日間連続の低水準。
<インドネシア>(感染者6万3,749人、死者3,171人、致死率4.97%)
・7月5日の死者が82人と同国最多記録更新。
・新規感染者も+1,607人増で、依然東南アジアで最多。
<イスラエル>(感染者2万9,366人、死者330人、致死率1.12%)
・ベンヤミン・ネタニヤフ首相は7月5日、新規感染者が再び増加に転じたことより、目下継続中の緊急事態措置を更に強化する必要があると表明。
<日本>(感染者1万9,815人、死者977人、致死率4.93%)
・『NHK』は7月5日、東京都の新規感染者が111人と、4日連続で100人超えとなったと報道。
・小池百合子都知事は前日、不要不急の都外への移動・旅行等を控えるよう都民に要請。
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