8月3日付欧米
『ロイター通信』:「台湾チームのメダル獲得で、“チャイニーズタイペイ”の名の下でのオリンピック参加に物議」
東京大会のバドミントン男子ダブルス競技において、台湾チームが決勝で中国チームを破って金メダルを初めて獲得した。
そして王斉麟選手(ワン・チーリン、26歳)が試合当日の7月31日の晩、フェイスブック上で、優勝の喜びと共に“自分は台湾出身だ”と書き込んだ。
しかし、この書き込みによって、長く燻っている“ひとつの中国”問題論争が勃発している。
台湾チームは目下、金メダル2個の他8つの銀・銅メダルを獲得する程大躍進していることから、台湾の政治家から有名人まで、“チーム台湾”、“台湾は台湾”との大合唱が起こっている。
そして、王選手のフェイスブックの書き込みを100万人以上が称賛していて、SNS著名人の林佳瑩氏(リン・チアユン)も、“もう「チャイニーズタイペイ」の呼称は使わず、「台湾」名でオリンピックに参加し、かつ、世界にも訴えていこう”と言及している。
しかし、中国政府の台湾政策は不動で、あくまでも“ひとつの中国”と見做しており、必要に応じて将来的に武力で統一する可能性も示唆する程である。
現実問題、中国は国際機関や民間事業会社に対して、台湾が中国の一部であると宣言しており、これに抗って台湾を独立国として認めているのは、世界で僅か15ヵ国、それも小国ばかりである。
中国の国務院台湾事務弁公室(1988年設立)は『ロイター通信』のインタビューに答えて、“「チャイニーズタイペイ」名でのオリンピック参加は、「ひとつの中国」原則の下での取り扱いであり、国際スポーツ機関・連盟も了解してのことだ”とし、“スポーツイベント上の扱いで以て、「台湾独立」を求めることなど全くあり得ない話だ”と一蹴している。
そもそも「チャイニーズタイペイ」という呼称は、1970年代後半に台湾オリンピック委員会とIOC間の妥協で決められた。
IOCは条件として、参加に当たって台湾国旗や国歌は使用しないこととしたが、同様の措置が他の国際スポーツイベントでも踏襲されている。
しかし、今回の東京オリンピックに当たり、開会式で『NHK』が、「チャイニーズタイペイ」というプラカードを掲げて入場した同チームを“台湾”と呼んだことで改めて注目を集めた。
これには、台湾の政治家もまた多くの著名人も称賛した。
ただ、肝心の台湾民衆は少々異なるようで、2018年に実施された住民投票では、「チャイニーズタイペイ」ではなく「台湾」名での参加を認めるようIOCと協議するとの提案が否決されている。
当時の市民は、悪戯に中国を刺激して、台湾をオリンピックから締め出す行動を起こされることを懸念したとみられる。
しかし、与党・民主進歩党の羅致政書記長(ロー・チーチェン、56歳)は、チャイニーズタイペイという呼称の使用は、“力づくで吞まされた受け入れがたい措置だ”と非難の声を上げている。
同日付台湾『フォーカス台湾』(1924年設立の国営台湾中央通信社):「バドミントン決勝で使用された“ホークアイ・チャレンジ(ビデオ判定)”画像ネタに注目」
7月31日に行われた、バドミントン男子ダブルス競技の決勝戦で、台湾チームの打った羽根が中国チームのエリア内に落ちて、台湾チームが勝利した。
しかし、中国チームが“ホークアイ(注後記)・チャレンジ”を要求したため、ホークアイ画像で確認されることになったが、結果は“イン”であって、台湾チームの勝利に変更はなかった。
オリンピックの当該競技で、台湾チームが金メダルを獲得するのは史上初であり、当日夜から、“台湾”、“台湾イン”、“T-aiwan”、更には、“Tに羽根”という画像がSNS上で拡散した。
台湾の人たちにとって、中国側の“チャレンジ”にも拘らず、結果として“台湾が勝利”したことが、現在の台湾の置かれた状況についての不満及び反発を表す格好の材料となったとみられる。
バドミントンチームのスポンサーでもある台湾土地銀行(1946年設立)も8月2日、“T”や “T-aiwan”をイメージしたクレジットカードを作成・発行すべく準備していると発表する程である。
ただ、現実は、台湾チームの表彰式において、掲揚されたのは台湾国旗ではなくオリンピック旗であり、また、国歌演奏は許されず、旗を掲揚する際に使われる台湾の古い歌が使用されている。
この背景は、1981年に台湾オリンピック委員会とIOCが合意した、台湾のオリンピック参加を認めるための条件に基づくものある。
すなわち、中国が当時、台湾が“中華民国”の名の下でオリンピックに参加することを強硬に反対したため、台湾側として止む無く妥協した産物である。
(注)ホークアイ:ソニーが2011年3月に買収した、ホーク・アイ・イノベーションズが開発を進める審判補助システム(ゴールライン・テクノロジー)。球技において、試合中にボールの位置や軌道を分析し、それらをコンピューターグラフィックスで再現することにより、審判が下す判定の補助を行うコンピューター映像処理システム。またボールの位置や軌道の統計を作成し画面に表示する。クリケットの試合やテニスのウィンブルドン選手権等の国際大会で採用されており、他の球技にも応用可能とされる。
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東京オリンピックは、折からのCOVID-19再感染拡大を受けて国内外から中止の声が上がる中、予定どおり開催されようとしている。そうした中、8年前に東京大会招致をもたらした功労者の一人である安倍晋三前首相(66歳)が、7月23日の大会開会式に無念の欠席となると欧米メディアが報じている。
7月22日付
『ロイター通信』:「安倍前首相、東京大会開会式を欠席」
安倍晋三前首相は、在任時の2016年、リオデジャネイロオリンピック閉会式にゲームキャラクターのスーパーマリオの衣装でサプライズ登場し、次回の東京大会を盛り上げようと奮闘した。
しかし、『NHK』の報道によると、同前首相は、東京大会開会式を欠席するという。
同前首相は、2013年の国際オリンピック委員会(IOC)総会の場で、2020年大会を東京に招致すべく、福島原発の放射線量や海洋汚染の問題について“アンダーコントロール”と宣言し、また、日本国民は挙って“熱意、誇り、及び強い信念”を持って大会開催を切望していると強調していた。
その東京大会招致の功労者の前首相は、持病を理由にして2020年に首相を辞任しており、その後任となった菅義偉首相(72歳)が当該開会式に日本側ホストとして出席する。
ただ、世界中で依然猛威を振るっているCOVID-19問題の理由から、開会式の観覧者は、一般客の入場は認められず、950人弱の海外の要人だけで、そのうち首脳級も僅か20人弱となっている。
当該開会式で繰り広げられるショーは、大会ホスト国にとって重要なイベントとなっているが、東京都を含む首都圏で、依然COVID-19感染拡大が続く事情から、上述通り開会式の観覧者がごく少数に絞られ、また、主要競技場でも無観客開催を余儀なくされている。
『NHK』報道によると、安倍前首相は、東京都に対して緊急事態宣言が再々発出されたことを受けて、開会式出席を止む無く断念したという。
なお、日本のワクチン接種率は、1回投与を受けた人が依然全人口の3分の1と低調であることから、大会が開催されることでCOVID-19の感染爆発が発生するのではないかと懸念する声が多い。
『朝日新聞』が行った直近の世論調査によると、回答者の68%が、大会組織委員会によるCOVID-19感染防止対策は不十分とし、また、55%が大会開催そのものに反対している。
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