米ホワイトハウスは先週、ドナルド・トランプ大統領が、1月下旬の世界国際フォーラム(WEF、注1後記)の年次総会(ダボス会議)に出席すると発表した。「米国第一主義」を標榜する同大統領はかつて、エリートや自由貿易の象徴といわれるダボス会議を批判していたが、同会議において自説をどう唱えるかが注目される。しかし、多くの保護主義政策反対者は、トランプ大統領には同会議出席の資格も権利もないとして、会議10日も前から反トランプ運動を展開し始めている。
1月14日付米
『ロイター通信米国版』:「反トランプを叫ぶデモ行進がスイスの首都で展開」
保護主義政策に反対する約500人のグループが1月13日、今月スイスで開かれるWEF総会出席を表明したドナルド・トランプ大統領を非難するデモ行進を、スイスの首都ベルンで展開した。
デモ隊は、“商業資本主義に未来はない”、“富裕層くたばれ(注2後記)”、“トランプを殺せ”等のプラカードを掲げて平穏に行進した。...
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1月14日付米
『ロイター通信米国版』:「反トランプを叫ぶデモ行進がスイスの首都で展開」
保護主義政策に反対する約500人のグループが1月13日、今月スイスで開かれるWEF総会出席を表明したドナルド・トランプ大統領を非難するデモ行進を、スイスの首都ベルンで展開した。
デモ隊は、“商業資本主義に未来はない”、“富裕層くたばれ(注2後記)”、“トランプを殺せ”等のプラカードを掲げて平穏に行進した。ただ、ダボス会議の開催場所に通ずる地区には、5千人程のスイス兵や1千人の警察官が警戒に当った。
1月13日付フランス『フランス24』オンラインニュース(『AFP通信』配信):「ダボス会議開催前に反トランプ派がスイスの首都でデモ行進」
WEFの年次総会開催時には、毎年少しの反対派行動が認められたが、今年1月22~26日のダボス会議については、反トランプ派の数百人のグループによるデモ行進が繰り広げられた。
同デモを呼び掛けたRJGはウェブサイトで、警察隊等の異常な警戒があったが、デモ行進は平和裏に実施されたと告げた。同グループはまた、WEFは世界的な問題を建設的に解決していくための集りだとするが、依然ネオリベラリズム(注3後記)を討議するエリート達の集合体だと非難している。
Campaxという別のグループは、“トランプは歓迎せず、ダボスには来るな”との標語を掲げたところ、1月13日までに1万2,880人が支持を表明する署名をしたとする。
1月14日付スイス『SWI(スイス公共放送)』:「WEFデモ:スイス警察は大規模デモ対応のため予算増を要求」
トランプ大統領が突如出席するとしたダボス会議開催日を間近に控え、スイス警察は、例年以上の反対派の活動が予想されるとして、デモ等取り締りのためもっと多くの予算を割り当てるよう要求している。
ベルン市警のレト・ノーゼ署長は、今年は例年以上に反対派の活動が予想されるため、政府に対して、ベルンやチューリッヒでの取り締り用の予算増額を求めたいと表明した。
また、グラウビュンデン州(ダボス市のある州)警察署長委員会のハンス・ジュルグ=カイザー委員長は、WEF開催中のベルンやチューリッヒでの抗議行動は例年になく大規模となるとみられるので、治安対策費は増大するとコメントした。
例年、治安対策費は900万スイス・フラン(900万ドル、約10億円)が計上され、連盟、グラウビュンデン州、ダボス市及びWEFで分担している。
なお、WEF広報担当は、トランプ大統領の出席のために治安対策費が増大するという事態はないと表明した。
(注1)WEF:経済、政治、学究、その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界・地域・産業の課題を形成し、世界情勢の改善に取り組む、独立した国際機関。ジュネーブに本部を置きスイスの非営利財団の形態を有している。1971年設立。スイスのダボスで開催される年次総会が特によく知られており、約2500名の選ばれた知識人やジャーナリスト、多国籍企業経営者や国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会し、健康や環境等を含めた世界が直面する重大な問題について議論する場となっている。
(注2)富裕層くたばれ:米国ロック・バンドのエアロスミスの曲名“Eat the rich”から取ったものと思われるプラカード。
(注3)ネオリベラリズム:1930年以降に主張され始めた、社会的市場経済に対して個人の自由や市場原理を再評価し、政府による個人や市場への介入は最低限とすべきと提唱する運動。
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