米国を凌いで超大国になる野望を抱く中国は、気候変動対策でも主導的地位を確立すべく、昨秋の国連総会の場で、2060年にカーボンニュートラル(注後記)を目指すと宣言している。そうした中、この程中国共産党中央政治局(上級機関)が、“掛け声”に留まらず確実に脱炭素化を推進すると改めて公式に表明した。それに伴い、脱炭素化の真逆にある鉄鋼産業が深刻な打撃を受けると見込まれて、鉄鋼製品等の先物価格が大幅に急落している。
8月2日付
『ロイター通信』:「脱炭素政策推進で鉄鋼生産減少を懸念して中国鉄鋼製品先物価格が急落」
中国鉄鋼製品の8月2日の先物価格は、中国政府が改めて脱炭素政策を強力に推進すると表明したことを受けて、鉄筋及び熱間圧延鋼材ともに6%近く急落した。
すなわち、上海先物市場では、最も取引高の多い建築用鉄筋価格(1トン当り)が▼5.6%減の5,414人民元(837.16ドル、約9万2,100円)まで、また、車や家電製品用熱間圧延鋼材価格が▼5.7%減の5,780人民元(893.75ドル、約9万8,300円)まで急落している。...
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8月2日付
『ロイター通信』:「脱炭素政策推進で鉄鋼生産減少を懸念して中国鉄鋼製品先物価格が急落」
中国鉄鋼製品の8月2日の先物価格は、中国政府が改めて脱炭素政策を強力に推進すると表明したことを受けて、鉄筋及び熱間圧延鋼材ともに6%近く急落した。
すなわち、上海先物市場では、最も取引高の多い建築用鉄筋価格(1トン当り)が▼5.6%減の5,414人民元(837.16ドル、約9万2,100円)まで、また、車や家電製品用熱間圧延鋼材価格が▼5.7%減の5,780人民元(893.75ドル、約9万8,300円)まで急落している。
また、ステンレス鋼板も▼2.5%下がって1万9,390人民元(2,998.24ドル、約32万9,600円)となっている。
これは、習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)が議長を務める中国共産党中央政治局の7月30日会合で、かねて表明したカーボンニュートラル政策を“掛け声”倒れに終わらせない、との固い決意が表明されたことが背景にある。
香港の海通証券(ハイトン・ヒューチャーズ)のアナリストは、“政治局方針に伴い、粗鋼生産計画が減産修正されるとの見方の下、短期的に鉄鋼製品先物価格に影響が現れている”と分析している。
ただ、国営メディア『新華社通信』は社説で、一方では、排出ガス及びエネルギー消費量が多量なプロジェクトが無分別に立ち上げられているかと思えば、他方では、“過剰反応”としか思えない早急すぎる排出ガス削減プロジェクトが存在する、と批評した。
その上で、かかる状況では悪戯に正常な経済発展が阻害されかねない、と指摘している。
なお、粗鋼生産減産の可能性から、大連商品交易所(1993年設立の先物取引場)で取引される鉄鋼原料価格も下落している。
まず、鉄鉱石標準価格は1トン当り▼0.9%減の1,054人民元(約1万7,900円)となり、鉄鉱石直物価格は▼12.5ドル(約1,400円)減の185ドル(約2万400円)と5月26日以来の安値を付けている。
更に、原料炭先物価格も▼0.2%減の2,289人民元(約3万8,900円)に、また、コークス価格も▼1%減の2,900人民元(約4万9,300円)に下がっている。
(注)カーボンニュートラル:環境化学の用語のひとつで、二酸化炭素の放出と吸収が相殺されている状態をいう。植物燃料を燃焼する場合(燃焼時に発生する二酸化炭素と光合成時に吸収される二酸化炭素が相殺される)や、企業が二酸化炭素を削減するための何らかの取り組みを行う場合(事業で発生する二酸化炭素との相殺を図る)がある。
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