10月19日付米
『AP通信』:「中国、ミサイル発射実験との指摘に対して、宇宙開発用新技術の実験だと即座に否定」
中国は10月18日、8月に実施した発射実験は、宇宙船の再利用が可能かを確かめるための技術実験だとする声明を発表した。
外交部(省に相当)の趙立堅報道官(チョウ・リーチアン、48歳)が記者会見で明らかにしたもので、(英国メディア報道のような)ミサイルなどでは全くなく、“一度発射した宇宙船の再利用が可能になれば、宇宙開発コストの削減ができるだけでなく、将来人類の宇宙船による往来につながる有意義な新技術だ”と強調した。...
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10月19日付米
『AP通信』:「中国、ミサイル発射実験との指摘に対して、宇宙開発用新技術の実験だと即座に否定」
中国は10月18日、8月に実施した発射実験は、宇宙船の再利用が可能かを確かめるための技術実験だとする声明を発表した。
外交部(省に相当)の趙立堅報道官(チョウ・リーチアン、48歳)が記者会見で明らかにしたもので、(英国メディア報道のような)ミサイルなどでは全くなく、“一度発射した宇宙船の再利用が可能になれば、宇宙開発コストの削減ができるだけでなく、将来人類の宇宙船による往来につながる有意義な新技術だ”と強調した。
同報道官は、“中国は、世界の他の国々と協力して、宇宙の平和的利用や人類の恩恵に貢献できるよう努めている”とも付言した。
中国は、先週末に3人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船の打ち上げに成功し、独自の宇宙ステーション建設を着々と進めている。
しかし、宇宙開発に注力する一方、中国は、極超音速ミサイル等の新規軍事技術開発も促進していて、西側諸国からは、南・東シナ海での覇権のみならず、ヒマラヤ山脈をめぐるインドとの領土問題で優位に立とうとしていると懸念の声が上がっている。
米国務省のネッド・プライス報道官(38歳)は、8月の発射実験についてのコメントは避けたが、中国が進める核兵器の移動手段を含めた核開発能力強化政策を注視していると述べた。
その上で同報道官は、今後も中国の核開発能力政策について関心を払いながら、米国及び米同盟国への脅威となる事態がもたらされないよう抑止政策を継続していくと言及した。
一方、松野博一官房長官(59歳)は10月18日、中国が取り組んでいることは日本にとって“新たな脅威”となるとして、日本としても“如何なる飛翔体”も迎撃できるよう、技術開発強化を推し進める必要があると表明した。
同長官は更に、中国は一切詳細説明もせずに、核やミサイル開発を進めるべく軍事費を増額していると批判している。
同日付英国『BBCニュース』:「中国、核弾頭搭載可能な極超音速ミサイル発射実験との報道を否定」
英国『フィナンシャル・タイムズ』紙は10月16日、匿名の関係者5人の情報を引用して、“中国が今夏、核弾頭を搭載できる極超音速ミサイルの発射実験を行った”と報じていた。
これに対して、中国当局は10月18日、通常の宇宙船打ち上げ実験だったとして、この報道を否定した。
一方、国連ジュネーブ本部駐在のロバート・ウッド米軍縮大使(50代)は同日、“とても憂慮している”と述べると同時に、米国は“この技術の軍事転用を控えてきている”とも言及した。
ただ、米下院軍事委員会のマイク・ギャラガー委員(37歳、ウィスコンシン州選出共和党下院議員)は先に、米政府が現行の対応を続ければ、10年以内に中国との新たな冷戦に敗れてしまうと警鐘を鳴らす発言をしていた。
更に、米同盟国からも懸念が表明されている。
例えば、オーストラリア戦略政策研究所(2001年設立の防衛戦略政策の半官シンクタンク)国防・戦略・国家安全保障問題研究部のマイケル・シューブリッジ部長(50代)は、極超音速ミサイルの試射実験がなされたとしたら、“核やその他の爆撃兵器の増強を拡大する動き”だと分析している。
そしで同部長は、中国が透明性を重視せずに、ミサイルサイロ(注2後記)の拡充、空中発射弾道ミサイル、潜水艦発射核弾頭ミサイル開発等を推し進めている、とも述べている。
(注1)極超音速ミサイル:発射・加速をロケット(弾道ミサイル)で行い、弾頭部分をグライダー(滑空翼体)とする兵器。大気の上層部を大陸間弾道ミサイル並みのマッハ20(時速2万4,480キロメートル)で滑空し続けると、空気の断熱圧縮で高温となる時間は弾道ミサイルよりも長くなる上に、高温でプラズマ化した空気は外部との通信を阻害して誘導を困難にすることから、開発には弾道ミサイルよりも高い技術が必要。
(注2)ミサイルサイロ:大陸間弾道ミサイルなどの大型ミサイルを格納する建築物。この名称は、穀物を貯蔵するサイロに由来すると考えられる。
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