バイデン政権は、非情なロシア軍事侵攻に懸命に抵抗しているウクライナを擁護すべく、武器供与含めてあらゆる手段で支援を行っている。そしてこの程、経済的に窮地に陥ったウクライナを救うためには何でもするとばかりに、米国にとっては鉄鋼製品総輸入額の僅か1%(約1億ドル)と精神的支援としかならないかも知れないが、ウクライナ産鉄鋼製品への25%輸入関税賦課措置を1年間停止すると発表した。
5月9日付米
『AP通信』は、「米国、ウクライナ産鉄鋼製品への輸入関税賦課措置を一時停止」と題して、ウクライナへの支援の一環で、トランプ前政権が発動した25%の輸入関税賦課措置を一時的に停止する旨発表したと報じている。
米国は、ロシアによる軍事侵攻のために窮地に陥っているウクライナを支援する一環で、同国産鉄鋼製品への25%輸入関税賦課措置を一時的に停止する意向である。
商務省が5月9日に発表したもので、米国の鉄鋼製品総輸入額の僅か1%しかならないものの、同国産製品への関税賦課を1年間停止するという。...
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5月9日付米
『AP通信』は、「米国、ウクライナ産鉄鋼製品への輸入関税賦課措置を一時停止」と題して、ウクライナへの支援の一環で、トランプ前政権が発動した25%の輸入関税賦課措置を一時的に停止する旨発表したと報じている。
米国は、ロシアによる軍事侵攻のために窮地に陥っているウクライナを支援する一環で、同国産鉄鋼製品への25%輸入関税賦課措置を一時的に停止する意向である。
商務省が5月9日に発表したもので、米国の鉄鋼製品総輸入額の僅か1%しかならないものの、同国産製品への関税賦課を1年間停止するという。
同国の主要製鉄所の一部は、ロシア軍の攻撃によって大きな被害を被っていて、特に、ロシア支配下でない輸出港を抱える東南端のマリウポリ(ドネツク州)の製鉄所の損害は甚大である。
ジーナ・レモンド商務長官(50歳、2021年就任)は、“ウクライナ国民の不屈の精神を称賛して止まず、同国の経済にとっての主要産業を少しでも支援したい”と語った。
そして同長官は、“同国の経済上の命綱である製鉄所の操業が継続できるよう、同国産鉄鋼製品の輸出の道を確保したい”と付言した。
米国は2018年、トランプ前政権下で、これまでほとんど適用されていなかった条項に基づいて鉄鋼製品に対する輸入関税(注後記)が賦課されている。
この措置を急に適用された米国の同盟国等は激怒し、米国を非難した。
また、米鉄鋼業界関係者等も、安価な輸入製品の横行は偏に中国の過剰生産が原因であるが、米中貿易紛争で中国産の対米輸出量が減少していることから、当該措置を講じても同業界を支援することにはならないと批判した。
ただ、バイデン政権になって、前政権の遺物のひとつとされる上記輸入制限措置について、欧州連合(EU)、英国、日本等との取引では、輸入割当制を新たに適用することで制限を緩和している。
なお、今回の商務省発表では、ウクライナ産製品には輸入割当制は適用されず、米国に輸出される全量が対象となる。
5月10日付ウクライナ『ウクルインフォルム』(1918年設立の国営通信社)は、「米国、ウクライナ産鉄鋼製品への第232条適用を一時停止」と、同国にとっては大きな支援となると報じている。
米商務省はこの程、ウクライナ産鉄鋼製品への米通商拡大法第232条の適用を1年間停止する旨発表した。
同省の声明文によると、“レイモンド長官は5月9日、ウクライナ産鉄鋼製品に対して、第232条に基づく関税賦課措置を1年間に限って一時的に停止すると表明した”とし、“ウクライナにとって鉄鋼業界は重要産業のひとつであり、同国の8%の人が携わる良好な雇用産業である”としている。
ウクライナは現在、プーチンの野蛮行為によって、同国鉄鋼産業も大きな被害を被っている。
その中でも、ウクライナ軍が徹底抗戦するために立てこもっているマリウポリ製鉄所は、ウクライナがロシアの侵略には決して屈しないことを示すシンボルとなっている。
なお、ウクライナの他の製鉄所の多くはこれまで通り生産を継続していて、疲弊した同国経済への貢献役を担っている。
(注)鉄鋼製品に対する輸入関税:米国に輸入される鉄鋼やアルミニウムに対して、高い関税を課す異例の輸入制限措置。1962年制定の「通商拡大法」第232条に基づくもので、輸入製品が米国の国家安全保障に脅威を与える場合、大統領は輸入調整などの措置を取ることができる、と謳われている。トランプ大統領(当時)は2018年3月、同条項を適用して、鉄鋼製品に25%、アルミニウム製品に10%の関税を賦課する大統領令を発動している。
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