インドは、冷戦時代からソ連及びロシア製兵器に大きく依存してきた。しかし、国境問題で対峙する中国がロシアとの連携を深めることに嫌気するのみならず、ロシアそのものが欧米経済制裁に喘いで兵器供給継続に問題が発生しつつあることを懸念してか、いよいよ米国製最新鋭兵器に大きく注目し始めている。
2月17日付
『ロイター通信』は、「米国、航空機見本市に最新鋭戦闘機を出品してインドからロシアを引き離す目論見」とのタイトルで、ロシア製兵器に大きく依存するインドに対して、米国が最新鋭戦闘機をインド航空機見本市に出品して、ロシア離れを加速させようとしていると報じている。
米国はこの程、2月13~17日にインド南部ベンガル―ル(旧称バンガロール)で開催されている航空機見本市に、第4世代のF-16戦闘機(1978年運用開始)、F/A-18スーパーホーネット(1999年運用開始)及びB-1B爆撃機(1986年運用開始)の従来機に加えて、第5世代最新鋭戦闘機F-35(2015年運用開始)を初出品した。...
全部読む
2月17日付
『ロイター通信』は、「米国、航空機見本市に最新鋭戦闘機を出品してインドからロシアを引き離す目論見」とのタイトルで、ロシア製兵器に大きく依存するインドに対して、米国が最新鋭戦闘機をインド航空機見本市に出品して、ロシア離れを加速させようとしていると報じている。
米国はこの程、2月13~17日にインド南部ベンガル―ル(旧称バンガロール)で開催されている航空機見本市に、第4世代のF-16戦闘機(1978年運用開始)、F/A-18スーパーホーネット(1999年運用開始)及びB-1B爆撃機(1986年運用開始)の従来機に加えて、第5世代最新鋭戦闘機F-35(2015年運用開始)を初出品した。
この背景には、インドが長い間ロシア製兵器に依拠してきていることから、脱ロシア政策を進めさせたい意図がある。
インドとしても、空軍力を押し上げるべくソ連時代から多く導入してきた戦闘機の近代化を図りたいと考えるも、ウクライナ戦争に伴う対ロ制裁でロシア側の供給に不安を覚えているだけでなく、西側諸国からのロシア離反圧力が高まっているという事情がある。
かかることから、米国軍需企業が、当該見本市27年の歴史の中で最大規模のキャンペーンチームを派遣して、米印間の戦略的関係を更に高めようとしている。
これと対照的に、ロシアは、国営兵器輸出企業ロソボロンエクスポート(2000年設立)が、国営統一航空機製造(2006年設立)及びアルマツ・アンティ(防衛システム等製造、2002年設立)と一緒のブースに、航空機・軍用トラック・レーダー・戦車のミニチュアを陳列するだけの、名ばかりの参加に止まっている。
かつてロソボロンエクスポートは、インドが欧米製戦闘機に関心を見せ始めて以来10年ほど、戦闘機そのものを出品することは控えていたが、当該見本市では常に中央にブースを構えてきていた。
これに対して、ボーイング(1934年設立)は既に、インド海軍の空母用艦載機候補としてF/A-18スーパーホーネットの商談を開始しており、また、ロッキードマーティン(1995年合併で設立)も、2019年開催の見本市に初出品したF-16を改良したF-21戦闘機を、同様にインド空軍向けに提案している。
インドは当初、200億ドル(約2兆7千億円)かけて114機の多機能戦闘機を手当てする計画だったが5年間何ら進展していなかったものの、国境問題で中国及びパキスタンとの緊張関係が俄かに高まっていることから、急遽当該計画を実現することとなっている。
ただ、今回初出品されたF-35戦闘機については、インド空軍関係者によると、“目下のところ”導入検討対象外だが、米国側との戦略的関係の重要性に鑑み、敢えて出品してもらったものとみられる。
軍事評論家のアンガド・シン氏は、同機出品は“販促用”ではなく、むしろインド太平洋地域における米印両国関係の重要さをアピールし、かつ、“米印間の軍事レベルでの連携を示す”という意図であると分析している。
一方、在インド米国大使館駐在武官のマイケル・ベイカー少将は、F-35についてはどの国に提供すべきか政策上の検討を加えて実施しているとした上で、インドについては“(その検討の)初期段階”だとコメントした。
なお、インド自身は、兵器調達先の多様化を求めるのと並行して、大手軍需企業と提携して兵器の国産化、更には将来的に国産兵器の輸出までを目論んでいる。
閉じる