目下開催されているワールドベースボール・クラシック(WBC)は、主催者のメジャーリーグ・ベースボール(MLB、1903年創立)地元では、注目度が今一つと言われている。しかし、閉塞感漂う日本においては、大谷翔平選手(28歳)の活躍が起爆剤になると思われる程注目されている、と米メディアが報じている。
3月10日付の米地方紙各紙が
『AP通信』の記事を引用して、閉塞感漂う日本にとって、WBCでの大谷選手の活躍が起爆剤になると報じている。
今日の日本は、数十年前に比べて、文化でも政治面でもかなり脆弱になったと言われている。
何故なら、経済は停滞し、出生率は世界で最低レベルとなっており、元首相が昨年暗殺されたりしているからである。
更に、“クールジャパン(格好いい日本)”と世界でみられているものの、国内では、東京オリンピックに関わるスキャンダルに見舞われ、また、大国中国の脅威にもさらされている。...
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3月10日付の米地方紙各紙が
『AP通信』の記事を引用して、閉塞感漂う日本にとって、WBCでの大谷選手の活躍が起爆剤になると報じている。
今日の日本は、数十年前に比べて、文化でも政治面でもかなり脆弱になったと言われている。
何故なら、経済は停滞し、出生率は世界で最低レベルとなっており、元首相が昨年暗殺されたりしているからである。
更に、“クールジャパン(格好いい日本)”と世界でみられているものの、国内では、東京オリンピックに関わるスキャンダルに見舞われ、また、大国中国の脅威にもさらされている。
そうした閉塞感漂う日本にとって、MLBで大活躍し、WBC出場のために帰国している大谷翔平選手の活躍は、それら悪い面を寛解してくれる解毒剤となっているとみられる。
大谷選手の卓越している点を挙げると、長い歴史を持つMLBの中で、投手と打者両方で秀でた実績を上げていることである。
かつてMLBで活躍した日本人選手に、イチローや野茂英雄両氏がいるが、彼はその二人を越える存在であり、米国出身であれ、中南米出身であれ、数多のMLBトップ選手の中でも傑出している。
更に、彼は、スキャンダルがゴシップ紙で報じられることはなく、純粋に野球に取り組む姿は多くの野球少年に夢を与えている。
日本関係の多くの書物を執筆しているロバート・ホワイティング氏(80歳)が昨年、『AP通信』のインタビューに答えて、“大谷選手は、根性論や年功序列が跋扈する日本の野球チームで育った”とし、“例えばイチロー選手も、高校入学時から秀逸と評価されていたが、一年生時はチームのために洗濯をしたり料理担当を強いられていたが、大谷選手も、同様の扱いであった”と述べている。
そして、両選手とも、夜中に起きて素振りの練習をする等、見えないところで努力を積み重ねてきて、今日の活躍を遂げている、とした。
ただ、二人は対極にあって、イチロー選手は、日本の古い言葉にある、“出る杭は打たれる”という扱いを受けたが、大谷選手は逆に羨望の目でみられていたからである、と解説している。
なお、昨夜の日本対中国戦での大谷選手の活躍について、日本の野球関連ニュースとして稀有な存在として、主要紙の一面を飾っている。
(注)ロバート・ホワイティング:日本の野球や日本で活動する米著名人など、現代の日本文化に関する多くの本を執筆しているベストセラー作家兼ジャーナリスト。野球を主なテーマとして日本人論、日米比較文化論を展開している。1962年に米空軍諜報部員として訪日して以来、日本野球や日本の裏社会についての著作や講演をしており、合わせて30年以上日本で生活を送る。現在は日本とカリフォルニア州の自宅を行き来している。
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