米マサチューセッツ大学で社会学を研究するジョヤ・ミスラ教授とエコノミストら研究チームが共同でまとめた論文によると、チームは長期間にわたって調査を続けたが、1980年代から今日に至るまで、働く母親は一貫して子どものいない女性よりも収入が少ないことがわかったという。子どもを1人もつ母親と子どものいない女性を比較すると、1986年から95年の間では9%の格差だったものが、2006年から14年の間では15%となり、賃金格差が拡大している。子どもが2人の場合は13%の格差、3人の場合は20%の格差であり、いずれも80年代から違いに大きな変化はなかった。
格差が発生する主な要因として、米国の育休制度、家族政策、就学前児童の教育制度が他の国と比べてかなり制限されていることにあると、ミスラ氏らは述べている。同氏は、米国の母親は仕事と育児のバランスをとることが難しいため、経験や生産性、それに伴う賃金を上げることが困難である可能性があると示唆した。さらに男女平等化社会への取り組みも1990年代後半を境に停滞していると考えられるという。
育児ペナルティーと呼ばれる、女性が子どもを持つことで収入が減るという現象は、男女の性別賃金格差にも大きな影響を与えている。今回の研究は米国内限定であったが、デンマークの調査では世界中の女性が同様の問題に直面していることを発表している。全米経済研究所が発表したデンマークで行われた調査によると、育児ペナルティーが原因の男女格差は1980年に40%だったものが、2013年には80%まで劇的に広がっているという。調査をしたエコノミストは「雇用主は長時間働くことが、責任と才能の表れだと考えている。」「しかし、高額な育児施設や学校の短縮授業など、世の中は子どもが両親と家にいるように組まれている。その多くの場合が母親だ。」と述べた。
ミスラ教授は学術界へ就職を目指す女子学生に対し「子どもがいることを伝える必要はない」と話しているという。
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