安倍晋三首相はこれまで、ドナルド・トランプ大統領の当選確定後、いの一番でお祝に駆け付けたことから始まって、ゴルフを含めた首脳会談等、緊密な関係を築いてきたとの自負を持っていた。しかし、先のトランプ・金正恩(キム・ジョンウン)両首脳会談の頭越し決定に始まって、今回の米政府による鉄鋼関税で日本製品が適用除外されなかったことに対して、驚きを隠せないであろう。更に、欧州連合(EU)、豪州や韓国など、日本以外の米同盟国は対象外となったとの事実には、計り知れないショックを受けたものとみられると、欧米メディアも安倍首相の心の内を慮っている。
3月23日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「同盟国日本、トランプ大統領の心を読み違え、関税賦課適用の決定にショック」
日本政府は僅か1週間前、ドナルド・トランプ大統領と金正恩両首脳会談が頭越しに決められたショックから立ち直ろうとしていた。
にも拘らず、3月23日にまたしても、トランプ政権が鉄鋼関税について、豪州・EU・韓国・ブラジル・メキシコと違って、日本は免除国に含めないと決定したとの重大ニュースに直面した。...
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3月23日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「同盟国日本、トランプ大統領の心を読み違え、関税賦課適用の決定にショック」
日本政府は僅か1週間前、ドナルド・トランプ大統領と金正恩両首脳会談が頭越しに決められたショックから立ち直ろうとしていた。
にも拘らず、3月23日にまたしても、トランプ政権が鉄鋼関税について、豪州・EU・韓国・ブラジル・メキシコと違って、日本は免除国に含めないと決定したとの重大ニュースに直面した。
これまで安倍晋三首相は、ゴルフ交流、頻繁な電話会談や豪華会食等を通じて、トランプ大統領に最も親しい首脳の一人と考えられてきた。
しかし、上智大国際教養学部の中野晃一教授(政治学専門)の分析では、いくら首脳同士が親しい間柄になったとしても、当事国の国益がまず優先されたということだと評価している。
トランプ大統領の選挙戦中の言動等をみると、同氏は、1980年代の日米貿易戦争に思いを馳せ、米国の製造業等が日本の貿易によって押しつぶされているとの恐ろしい幻想を抱いていると思われる。
実際問題、同大統領はトヨタがメキシコに新たに自動車製造工場を建設したら、“高率の国境税”を課すと脅していた。
また、昨年秋に訪日時、日本の財界代表らに、米国向けに輸出するのではなく、米国内で自動車を製造するよう求めていた。ただ、この点は誤解されていて、実際は、日本の自動車メーカーは現在米国内で400万台近く製造しており、これは日本から輸入される自動車の倍以上となっている。
ただ、同大統領は3月22日、中国からの600億ドル(約6兆3,000億円)相当の輸入品に新たな関税を課す意向だと表明した際、安倍首相は親愛なる友人ではあるが、裏では日米貿易でうま味を得てきてほくそ笑んできた節があり、これからはそれは許されないと言及していた。
従って、これらの背景より、日本としては同大統領を“友を装う敵”とみていくことも必要であろう。
なお、日本製品に関税が課されたとしても、鉄鋼製品は米国総輸入量の僅か5%、また、アルミニウム製品はほとんどないので、日本経済に与える影響は僅少と考えられる。
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