移民・難民政策を巡る連立政権内の亀裂によって窮地に立たされているドイツのメルケル首相は6月30日、移民や難民の流入に対する規制を強化する措置を、キリスト教社会同盟(CSU)などの他の連立与党に宛てた文書で提案した。
欧州連合(EU)の28加盟国は29日、EUの構造自体を脅かす移民・難民危機への対処方針について、激しいやり取りの末に合意している。ブリュッセルで行われた首脳会議で、EU行きの人身売買業者の船に乗った移民や難民の流入を阻止するため、北アフリカなどEU域外に共通の審査施設の設置を検討することで一致した。
また、新規流入者を経済移民として強制送還すべきか、受け入れの意思がある国で難民として認定すべきかを決定する申請管理施設を加盟国が任意で設置することや、域内での移民・難民の移動の制限、対外国境の管理の強化、移民・難民流入の抑制のためにトルコ、モロッコ、北アフリカ諸国への資金援助の拡大などについても合意している。...
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欧州連合(EU)の28加盟国は29日、EUの構造自体を脅かす移民・難民危機への対処方針について、激しいやり取りの末に合意している。ブリュッセルで行われた首脳会議で、EU行きの人身売買業者の船に乗った移民や難民の流入を阻止するため、北アフリカなどEU域外に共通の審査施設の設置を検討することで一致した。
また、新規流入者を経済移民として強制送還すべきか、受け入れの意思がある国で難民として認定すべきかを決定する申請管理施設を加盟国が任意で設置することや、域内での移民・難民の移動の制限、対外国境の管理の強化、移民・難民流入の抑制のためにトルコ、モロッコ、北アフリカ諸国への資金援助の拡大などについても合意している。
メルケル独政権は4期目に入り、ほぼ100日が経過したが、2015年以降100万人を超える難民認定希望者を受け入れたことにより、連立政権を組むCSUの党首、ゼーホーファー内相の激しい反発を受けており、政権崩壊の瀬戸際に追い込まれている。CSUは、欧州内で移民・難民の流入抑制に向けた取り決めが成立しなければ、地盤のバイエルン州の国境で、警察に移民らを追い返させる国境管理に踏み切るとして圧力をかけている。
メルケル首相は、EU首脳会議の後、他国で登録された難民認定希望者の送還に関し、スペインおよびギリシャと個別合意に達したと発表した。連立政権筋が30日に明かしたところでは、フランスや、メルケル首相の移民政策を厳しく批判しているチェコ、ハンガリー、ポーランドなどの中欧諸国を含む計14カ国と同様の合意に達したという。
CSUと社会民主党に宛てた文書でメルケル首相は、他のEU加盟国で先ず登録され、ドイツに移動する移民らは、制限された条件下で、特別な管理センターに留め置くことを提案した。首相は、今年1~5月期の移民等の流入数は、前年同期比で20%減ったとして、「ドイツに来る移民の数を引き続き減らしていきたい。」と語っている。
首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)とCSUは1日以降、各国との合意事項や首相提案について協議するが、その結果により、今後の政権の命運が決まることになる。
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