米商務省の経済分析局が11日に公表した統計数字によると、2017年の海外からの企業の買収、新規事業の開始、事業拡大などのための対米直接投資額は、対前年比32%減の2,596億ドル(約29兆円)となった。2015年に記録した過去最高の4,395億ドル(約49兆円)からは41%減と、投資熱が急速に冷え込んでいる。
海外からの直接投資は、様々な要因により影響を受ける。例えばドルが強ければ、米国資産の魅力が高まる。過去2年間は、ドル高は海外投資額の増加の一因となっていたと思われる。また、海外の金融市場が不安定であることにより、相対的に安全な米国市場への信頼度が高まることも、増加の要因の一つだろう。もっとも発展途上国が競争力をつけるにつれ、海外からの直接投資先に米国が選ばれる割合は、この数年間で低下していた。
海外からの投資が大きく減少した国は米国だけではない。...
全部読む
海外からの直接投資は、様々な要因により影響を受ける。例えばドルが強ければ、米国資産の魅力が高まる。過去2年間は、ドル高は海外投資額の増加の一因となっていたと思われる。また、海外の金融市場が不安定であることにより、相対的に安全な米国市場への信頼度が高まることも、増加の要因の一つだろう。もっとも発展途上国が競争力をつけるにつれ、海外からの直接投資先に米国が選ばれる割合は、この数年間で低下していた。
海外からの投資が大きく減少した国は米国だけではない。経済協力開発機構(OECD)によれば、世界の海外直接投資は昨年、前年比18%減少し、金融機関や企業のリストラ、各国の税制改革などが功を奏し、景気後退後の最高だった2015年から24%近く減少した。
昨年、対米直接投資額が一番多かった国はカナダの662億ドルで、英国、日本、フランスが続いた。海外の大企業は、対米投資を維持する傾向があり、米国経済を潤している。海外企業は、米国内に工場などの拠点を建設して安定した米国事業を展開し、米国での研究開発事業にも資金を供出するなどして、680万人の米国人を高賃金で雇用している。
トランプ政権は、米国内の外国企業による事業を歓迎しているが、国内の技術が中国の手に渡ることを警戒し、一部の買収案件の承認を拒否しており、そうした買収などの商行為を監視する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を拡大する法案を支持している。
トランプ氏の貿易に関する顧問であり、国家通商会議(NTC)のトップを務めるピーター・ナヴァロ氏は、外国の投資を「購入による征服」と呼び、「長い目で見れば、米国は外国によって所有される。」と昨年述べた。
そうしたトランプ政権の姿勢が、海外投資を急減させている原因と見る専門家もいる。英国のEU離脱と同様、米国では昨年、先行きの不透明感が高まり、政府の外国企業への対応に懸念を強める多国籍企業が投資を控えたとする見方だ。米国だけでなく世界的に広がる経済的なナショナリズムが、国境を越えた買収などの経済活動を阻んでいるという。
閉じる