米通商代表部(USTR)は16日、米国の鉄鋼・アルミ関税に対抗し、中国、欧州連合(EU)、カナダ、メキシコ、トルコが米国産品に報復関税を課したことについて、それぞれに対し、世界貿易機関(WTO)への提訴手続を開始したと発表した。
ロバート・ライトハイザー米通商代表は声明で、米国の農産物や工業品など総額285億ドルの輸出品に対する報復関税は、WTOの協定に違反するとして、「これらの関税は、WTOの協定の下で、加盟各国が約束した内容に違反すると思われる。米国は国益を守るため、全ての必要な対策を講じ、貿易相手国に対し、鉄鋼・アルミ分野で過度な輸出がもたらした問題に関して、わが国とともに建設的に取り組むよう求める。」と述べた。
もしWTOが報復関税は協定違反と判断すれば、米国の受けた損害を算定し、さらに必要な関税を米国が課すことを認めることになるが、その手続は長い期間を要する。...
全部読む
ロバート・ライトハイザー米通商代表は声明で、米国の農産物や工業品など総額285億ドルの輸出品に対する報復関税は、WTOの協定に違反するとして、「これらの関税は、WTOの協定の下で、加盟各国が約束した内容に違反すると思われる。米国は国益を守るため、全ての必要な対策を講じ、貿易相手国に対し、鉄鋼・アルミ分野で過度な輸出がもたらした問題に関して、わが国とともに建設的に取り組むよう求める。」と述べた。
もしWTOが報復関税は協定違反と判断すれば、米国の受けた損害を算定し、さらに必要な関税を米国が課すことを認めることになるが、その手続は長い期間を要する。既に中国は米国をWTOに提訴しており、報復合戦と提訴合戦が同時に起きている状況だ。
USTRは、米国が3月から導入した、鉄鋼・アルミニウムの輸入品にそれぞれ課した25%、10%の追加関税は、輸入金属が国の安全保障への脅威になるとの理由から例外的に取られた措置であり、WTOの協定の下で容認されるとの立場を堅持している。
ライトハイザー代表は先月、EUその他の貿易相手国は、米国の鉄鋼・アルミ関税が、米国の生産者の保護を意図した違法なセーフガードの措置であるとする誤った主張をしており、報復は法的な根拠を欠くと指摘していた。
しかしながら、WTOは安全保障上の利益については、加盟国に広範な裁量を与えているものの、加盟国はこれまで長い間、滅多にこのカードを切って提訴することはなく、トランプ政権の鉄鋼・アルミ関税はこの不文律を破るものだ。
提訴された5つの国と地域の内、メキシコの経済省は、「米国がメキシコから鉄鋼やアルミニウムを購入することは、国家安全保障への脅威にはならない。」との声明を発表し、米国の関税は不当であるとして、自国の報復関税を擁護した。同省はさらに続けて「それどころか、メキシコと米国間の確固たる貿易関係が、統一された地域市場を作り、自動車、航空機、電気製品などの様々な戦略的な製品分野において、鉄鋼・アルミ製品が、地域の競争優位性に貢献してきた。」と、米国も貿易の恩恵を受けていることを説明した。
閉じる