トランプ政権側近の情報によると、米国が推し進める北米自由貿易協定(NAFTA)見直し交渉がメキシコとの間で合意間近であるという。トランプ政権にとっては、11月の中間選挙を控え、少しでも多くの公約を実現したいとの思いが強い。また、メキシコは、今年7月初めの大統領選で、メキシコに不利益となるNAFTA改定には応じないと主張する左派政党の新大統領が誕生することになっており、政権移譲前の駆け込み合意を狙っているとみられる。一方、総選挙等の予定もなく、急ぐ必要のないカナダは、じっくり静観の構えである。
8月16日付
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙:「トランプ政権、NAFTA改定交渉でメキシコと合意間近」
NAFTA改定交渉の行方を追っている専門家によると、トランプ政権は、主要点である自動車貿易取引に関してメキシコ側と合意に近づいているという。
ドナルド・トランプ大統領は就任以来、NAFTAからの撤退や、関係国のカナダ・メキシコ両国の鉄鋼製品への関税賦課等で脅し、ともかくもNAFTA改定に向け1年余りも交渉に注力してきた。...
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8月16日付
『ロス・アンゼルス・タイムズ』紙:「トランプ政権、NAFTA改定交渉でメキシコと合意間近」
NAFTA改定交渉の行方を追っている専門家によると、トランプ政権は、主要点である自動車貿易取引に関してメキシコ側と合意に近づいているという。
ドナルド・トランプ大統領は就任以来、NAFTAからの撤退や、関係国のカナダ・メキシコ両国の鉄鋼製品への関税賦課等で脅し、ともかくもNAFTA改定に向け1年余りも交渉に注力してきた。
ここへ来て進展がみられるのは、トランプ政権が11月の中間選挙までに、少しでも多くの公約実現という成果を得ようとしていることである。また、メキシコ側では、今年7月初めの大統領選挙で、メキシコに不利益となるNAFTA改定交渉には応じないと主張する左派政党のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール候補が勝利したことから、新政権発足前に決めてしまおうという思惑がある。
そこで、ロバート・ライトハイザー米通商代表は、トランプ政権が最優先課題としている自動車貿易に焦点を当てて交渉に臨んでいる。すなわち、自動車部品等の製造業における米側産業を守ることに重点を置いた。その代り、メキシコ側には、かねて要求していた5年前事前通告によるNAFTA自動終了条項について柔軟な対応をすることとし、また、メキシコ産トマトなどの反ダンピング提訴についても寛容に扱うなどを提案しているとみられる。
なお、米国内法では、かかる国際契約・協定について、議会宛通知から署名までに90日間の猶予を設けることが求められている。従って、メキシコの新大統領就任が12月1日であることから、8月末までに合意の上で米議会側に通知をしなければ、エンリケ・ペーニャ・ニエト現大統領の下では署名が実行されないことになる。
一方、NAFTAのような3ヵ国協定の改定交渉において、米・メキシコ間で先に進めてしまうのは異例、かつ、リスキーである。何故なら、8月末までの最終合意には、当該国カナダの同意も必要であるからである。
カナダ側は、自動車貿易取引には大きな関心はないものの、カナダ国内で不評なトランプ大統領が推進する政策交渉について、ジャスティン・トルードー首相に安易な妥協を認める雰囲気ではない。
すなわち、トランプ政権がカナダ産鉄鋼・アルミ製品への関税賦課除外を拒否していることや、トランプ大統領自身が度々トルードー首相をツイッター等で直接非難していることから、米・カナダ間関係は非常にぎくしゃくしているからである。
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