米中関係は、貿易摩擦問題以外でも緊張関係にある。特に軍事的確執も同様で、どちらも容易に譲る状況にない。例えば、トランプ政権は、中国が自国の一部と主張する台湾に対し、武器輸出を増やしただけでなく、中国がロシア製戦闘機やミサイルを導入したことに対して中国軍に制裁を課した。これらの措置への抗議の意味で中国は、決まっていた中国海軍トップの訪米を突如キャンセルしたり、自国の島嶼近海に勝手に侵入してきたとして米軍艦に自国戦艦を異常接近させて威嚇したりしている。このままでは、特に南シナ海において、両国間の小競り合いや軍事衝突が起こりかねないとして、米中国防トップがシンガポールで急きょ会談することになったが、緊張緩和に向けた合意には至らなかった模様である。一方、中国メディアは、米国側が中国側主張を傾聴し、実のある会談だったと過剰報道している。
10月18日付米
『AP通信』:「マティス国防長官、中国国防部長と会談するも、何ら新たな合意はなし」
シンガポールを訪問中のジム・マティス国防長官(68歳)は10月18日、中国の魏鳳和(ウェイ・フォンホー、64歳)国防部長(大臣に相当)と会談し、直近数ヵ月間で高まっている米中両国間の緊張緩和に向けて協議したが、何ら新たな合意は得られなかった模様である。
両国防相は今回、シンガポールで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議の機会を捉えて会談することにしたという。...
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10月18日付米
『AP通信』:「マティス国防長官、中国国防部長と会談するも、何ら新たな合意はなし」
シンガポールを訪問中のジム・マティス国防長官(68歳)は10月18日、中国の魏鳳和(ウェイ・フォンホー、64歳)国防部長(大臣に相当)と会談し、直近数ヵ月間で高まっている米中両国間の緊張緩和に向けて協議したが、何ら新たな合意は得られなかった模様である。
両国防相は今回、シンガポールで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議の機会を捉えて会談することにしたという。
ランドール・シュライバー国防次官(アジア太平洋安全保障担当)によると、マティス長官は、合意に至らなかったものの、両国防担当大臣が“率直かつ遠慮なく”直接対話したことは価値あることだとコメントしたという。
特に、南シナ海問題については、双方の応酬が続いていて、中国海軍トップの訪米が突然キャンセルされたり、また、数週間前にマティス長官が訪中する予定だったのが、魏部長が不都合との理由で、これも急に取り止めとなっていた。
シュライバー次官によると、今回のシンガポールでの両トップ会談は、中国側の要請で実現されたもので、両国の主張が異なっていても、かかるトップ会談が行われることで何らかの進展が期待できるとする。
なお、両トップ会談で、魏部長の訪米が再確認されたとするが、時期等詳細は今後詰めることになるという。
一方、マティス長官は今週初め、中国との領土問題を抱えるベトナムを訪問し、南シナ海問題等での支援につき協議している。
シュライバー次官は、ベトナムのような中小国は中国のような大国に対して公式には強く出られず、しかし、非公式には中国の一方的なやり方に随分困らされていることを告白していると付言した。
一方、10月19日付中国『環球時報』(『新華社通信』配信):「米中両国、軍事面での協力強化で合意」
魏国防部長兼中国共産党中央委員会委員は10月18日、訪問先のシンガポールでマティス国防長官と会談した。
その結果、両国防トップは、米中両国の軍事面での協力関係を更に高めていくことで合意した。
中国側高官によれば、両国が相互利益の発展に努めることが両国関係を継続させる唯一の選択肢であるとし、相互信頼関係の構築が最善の結果をもたらすものだとする。
魏部長はマティス長官に対して、台湾及び南シナ海における中国方針は確固たるものだと再度強調した。
これに対して同長官は、両国間に主張の違いはあるが、だからと言って、それは対立と呼ぶ必要はないし、また、軍事力の競争があっても、それは敵対行為を意味するものでもないと述べた。
なお、米国側は、今後とも米中両軍の協力関係構築・強化に向けて努力していく考えだと表明している。
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