ロシアの米大統領選挙介入問題に関し、新たな報告書が米上院情報委員会より公開された。ロシアのプーチン寄りの調査機関が、2016年の大統領選挙でトランプ氏に有利になるようにと、ソーシャルメディアを使って、想定されていたよりも大規模に、黒人票を抑えたり、米国の分断を促すような投稿を多数していたことが明らかとなった。また、これらのアカウントは今も現存するものがあるという。
12月17日付米国
『NBC』は「ロシア、黒人をターゲットにトランプ支援との報告書」との見出しで以下のように報道している。
選挙でトランプを優位にしようと支援するロシアの工作員が、米国の大手IT企業を相手に巧妙なプロパガンダを想定されていたよりも大規模に流していたことが、上院調査委員会提出用の報告書から明らかとなった。
この調査は、サンクトペテルブルクに拠点を置くプーチン大統領派のインターネット調査機関(IRA)によるフェイスブック、インスタグラム、ツイッター、ユーチューブへの投稿を精査したもの。
当件に関する2つの報告書からは、IRAが2016年の米大統領選挙でトランプを支援し、民主党候補だったクリントン氏を不利にし、黒人を含む左派の投票を抑制するよう働きかけていたことが読み取れる。
黒人を対象とした多数のアカウントが存在する他、警察による黒人への暴力に関する動画が571投稿されていたという。フェースブックの元セキュリティ担当長者は、黒人をターゲットとしたソーシャルメディアが右派の人を操作するのに用いられるのは常だと示す良い例だとするが、これは左派をも巻き込むものであった。また、SNS上では性的、個人的悩みを話し合うホットラインも開設されており、これらの情報を脅しネタに使うためのとみている。トランプへの関心を惹く投稿は2017年1月に登場。
上院調査委員長リチャード・バールは、この報告書のデータは、ロシアがいかに米国を人種、宗教、イデオロギーで分断し、民主党への信頼を失墜させようとしていたかを示すもの。委員会副議長のマーク・ウォーナー上院議員は、「米国へのこれらの攻撃は、想定されていたより大規模かつ巧妙で広範囲なものだと明らかになった。これは、誰もが脅威に晒されていると示す米国全体への警鐘であり、この問題を真剣に考える時である」とコメントしている。
偽情報が専門のサイバーセキュリティ会社New Knowledgeは、フェースブックやインスタグラムのいいね、コメント、シェアを含む263,769,228件のコンテンツを丹念に精査。ロシア支援のコンテンツを閲覧した米国人の総計は、1億2600万人に上ると推計している。同社はこれほど大規模に外国の宣伝、操作に利用されるとは、ソーシャルメディアの失態だとしている。
ロシアの意図は、米国の部族主義を強めさせ、二極化分断させ、社会問題から政治候補に至るまで、ロシア政府に有利となるような普遍的価値感を植え付けることだった、と同社の報告書に書かれている。
IRAは2015年9月から動画を製作、17チャネル、1107の動画を投稿、中には2017年まで投稿されていたものもある。ツイッターには3840アカウントを持ち、140万人がツイートに関係していたとされる。
投稿からは米国の文化、メディア、インフルエンサーへの深い造詣がみうけられるという。他方ではニュース機関を語り109のツイッターアカウントを展開し、一方で本物のメディア機関への信頼を損ねるよう働きかけた。
ロシアはモラーの捜査が腐敗し、ロシア疑惑をリベラル派による陰謀と見せかけた。
同日付『AP通信』は「ロシアによるソーシャルメディア操作は継続中、との報告書」との見出しで以下のように報道している。
ロシアによる米国ソーシャルメディアへの偽情報キャンペーンは想定より広範なものだった。2016年の大統領選挙でトランプを優位にするため、黒人有権者を投票させず、現実と仮想のラインを曖昧にさせた、との報告書が上院調査委員会により公表された。そして、このキャンペーンはトランプ就任後も終わっておらず、操作機関は、今も米国人の人種や政治的熱意を掻き立てようと稼動中なのだという。
報告書に関しFacebook, Google and Twitter はコメントを控えている。
報告書は、2つの機関によるもので、サイバーセキュリティ会社New Knowledge による報告書と、オックスフォード大学とソーシャルメディア解析会社Graphikaによる統計プロパガンダ調査プロジェクトによるもの。
報告書によれば、工作機関は、黒人コミュニティの目的を通すためには、選挙をボイコットし、別の事に従事するのが最良だというメッセージを押し出していたのだという。
同時に、保守派や右派の有権者へのメッセージは、次の3つ。愛国者的・反移民スローガンを繰り返す、リベラル派が自国民より”他者“へ歩み寄ることへの怒りを焚き付ける、そして、トランプに投票するよう促すというもの。
New Knowledgeの報告書によると、活動が最も盛んだった時は、内外の行事や米国のカレンダーで重要な日と重なっていたといい、今も現存するアカウントがあるという。
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