米ロ関係は、両首脳同士の友好は別として、軍拡競争だけでなく、米大統領選不当介入を理由とした米国による対ロシア制裁問題で、緊張が緩むことはない。そうした中、ロシア新興財閥の実業家が、自身に科された制裁は不当であるとして、米財務省を提訴した。ただ、同実業家は、ロシア政府の後ろ盾があっての提訴ではなく、あくまでも個人としての闘いだと述べている。
3月18日付
『CNBCニュース』:「プーチン大統領と親密なロシア実業家のデリパスカ氏、米財務省提訴はロシア政府とは関係ないと明言」
ロシア新興財閥の実業家であるオレグ・デリパスカ氏(ロシア最大手のアルミニウム生産会社“ルサル”社長)は3月17日、『CNBCニュース』モスクワ支局のジェフ・カットモア支局員のインタビューに答えて、米財務省が同氏を“金融システムを武器のように使って”攻撃してきていることが不当だとして、3月15日に同省を提訴したと語った。...
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3月18日付
『CNBCニュース』:「プーチン大統領と親密なロシア実業家のデリパスカ氏、米財務省提訴はロシア政府とは関係ないと明言」
ロシア新興財閥の実業家であるオレグ・デリパスカ氏(ロシア最大手のアルミニウム生産会社“ルサル”社長)は3月17日、『CNBCニュース』モスクワ支局のジェフ・カットモア支局員のインタビューに答えて、米財務省が同氏を“金融システムを武器のように使って”攻撃してきていることが不当だとして、3月15日に同省を提訴したと語った。
同氏によれば、昨年同省から科された制裁によって、自身を取り巻く環境は悪化するばかりで、一日も早く当該制裁は誤りであったことを認めさせたいとする。
ただ、同氏は、この提訴はあくまで個人の判断で行うもので、ロシア政府の支援や指示を受けてのものではないと明言している。
同省は2018年4月、2016年米大統領選へのロシア不当介入への対抗措置として成立した「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA、注後記)」に基づいて、ロシア企業や実業家らを制裁対象としている。
同氏は、麻薬、核兵器拡散、人身売買等明らかな不法行為を取締るための制裁なら理解できるが、通常のプロセスで行っている事業に対して、金融システムを武器のように駆使して制裁を科すのはとても不公平だと訴えている。
同氏の資産は36億ドル(約4,000億円)と言われるが、同省による不当な制裁のお蔭で、財産は大幅に目減りし、自身の評判のみならず生計にも非常に支障を来しているとしている。
トランプ政権は今年1月、野党・民主党の反対にも拘らず、デリパスカ氏が関係する、ロシア最大のアルミニウム生産会社“ルサル”及びアルミニウム生産・発電事業グループ“En+”に科した制裁を解除したが、同氏個人への制裁は維持することとしている。
なお、同氏がワシントン特別区米連邦地裁に提訴した訴状によると、被告は米財務相のスティーブン・ムニューシン長官及び同省傘下の外国資産管理局のアンドレア・ガッチ局長である。
(注)CAATSA:トランプ大統領が2017年8月に同法案に署名して成立した、現行の対ロシア経済制裁を強化し、イラン及び北朝鮮への制裁を拡大する内容を含む規定。対ロシア制裁については、経済制裁に限定されているものの、金融サービス、エネルギー等の分野への経済制裁が強化されるのみならず、ロシア政府のためのサイバー活動やロシアの諜報・国防分野との取引等に従事する者に対して新たな強制的制裁措置が賦課されている。
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