7月17日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「ドゥテルテ比大統領、米海軍に中国攻撃を示唆」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は7月17日、フィリピン領有権内で傍若無人に振る舞う中国に対して、米比間で締結しているMDTを引き合いに出して、米海軍に中国を攻撃するよう求めた。
同大統領が、同国テレビ番組のインタビューに答えたもので、南沙(スプラトリー)諸島内に押し寄せている中国漁船を追い出すよう、国内外からの猛烈な圧力を受けて、その対応策として言及したものである。...
全部読む
7月17日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「ドゥテルテ比大統領、米海軍に中国攻撃を示唆」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は7月17日、フィリピン領有権内で傍若無人に振る舞う中国に対して、米比間で締結しているMDTを引き合いに出して、米海軍に中国を攻撃するよう求めた。
同大統領が、同国テレビ番組のインタビューに答えたもので、南沙(スプラトリー)諸島内に押し寄せている中国漁船を追い出すよう、国内外からの猛烈な圧力を受けて、その対応策として言及したものである。
今年6月初め、同諸島内のリード礁において、中国船によってフィリピン漁船が沈められ、その中国船が乗組員を救助しないで立ち去るという事件が発生していた。
大統領府のサルバドール・パネロ報道官は当初、“野蛮な事態”だと非難した。
しかし、同大統領は、“些細な海上事故”として中国側を責めることをしないばかりか、中国漁船にフィリピンEEZ内での漁を許容するとまで言い出していた。
更に、フィリピン軍が束になってかかっても中国人民解放軍(PLA)には全く歯が立たないので、刃向うこともしないとも言及した。
これに対して反ドゥテルテ派を初めとして、多くのフィリピン市民が不満の声を上げたことから、業を煮やした同大統領が、MDTに基づいて米海軍第7艦隊がPLAと対峙してくれるなら、フィリピン軍も参戦すると大口をたたいたものである。
一方、在フィリピンのキム・ソン大使は、6月初めの沈没事故が、果たしてMDTに定める、第三国による攻撃に当るのかは確かでないとしている。
すなわち、同大使は、リード礁近海にいた中国船は違法操業をしていたのか、フィリピン漁船を沈没させた当該中国船は武装していたのか、また、武器等を用いて沈没させたのか等が不詳であるため、MDT条項が適用されるのか判断できないという。
なお、中国政府は、当該沈没事故を民間漁船間で起きた事故だと主張している。
7月18日付フィリピン『フィリピン・タイムズ』紙:「フィリピン大統領、南シナ海問題で米国を焚き付け」
ドゥテルテ大統領は7月17日、南シナ海のフィリピン領有権内で傍若無人に振る舞う中国に対して、MDTに基づき、米軍艦隊を派遣するよう迫った。
今年3月にフィリピンを訪問したマイク・ポンペオ国長官は、フィリピンが攻撃されたなら、MDTに基づいて米軍がフィリピン軍を助けると明言していた。
ただ、専門家の分析では、6月のフィリピン漁船沈没事故を以て、MDTによる米軍参戦を求めるのには無理があり、同大統領の発言は、中国に弱腰だとする非難の声を弱めようとする意図だとする。
なお、反ドゥテルテ派の急先鋒である、アントニオ・カルピオ最高裁判事は、中国との交戦など何の解決にもならないとした上で、2016年に国際仲裁裁判所が下した勝訴判断に基づいて、中国及び国際社会に対して、フィリピンの正当性を粘り強く訴えていくべきだと主張した。
更に同判事は、国連の海洋法条約に基づいて、フィリピンのEEZ範囲を超える海域までフィリピンの大陸棚であることを認定するよう提訴することも一案であると付言している。
(注1)MDT:米国とフィリピンの間で結ばれた、相互防衛のための安全保障条約。1951年8月調印、有効期間は無期限となっている。第三国(構成国以外の国)から攻撃を受けた際に、共同で攻撃国に対応する共同防衛義務を謳う。
(注2)第7艦隊:ハワイのホノルルに司令部を置く米太平洋艦隊の指揮下にあり、国際日付変更線以西の西太平洋・インド洋(中東地域を除く)を担当海域とする。1943年創設で、司令部を横須賀海軍基地に置く。
閉じる