ドイツの憲法裁判所が、過去の事件の殺人犯が、インターネットで事件を検索した際に検索結果に自分の名前が出てこないようにする権利を認めたという。インターネットの検索エンジン表示をめぐっては、情報を得たいという公共の利益か忘れられたいというプライバシー保護かの間で、しばしば裁判が起きている。
11月27日付英国
『BBC』は「ドイツの殺人犯が“忘れられる権利”を勝ち取る」との見出しで以下のように報道している。
ドイツ最高裁の判決により、1982年に殺人罪で有罪判決を受けたドイツ人男性が、インターネットの検索サイトで自分の名前を検索結果から削除する権利を勝ち取った。カールスルーエの憲法裁判所は、ヨットで2人を殺害し終身刑となっていた男に有利な判決を下した。男は2002年に釈放され、犯罪歴と名字の関連性をなくしたいと主張。...
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11月27日付英国
『BBC』は「ドイツの殺人犯が“忘れられる権利”を勝ち取る」との見出しで以下のように報道している。
ドイツ最高裁の判決により、1982年に殺人罪で有罪判決を受けたドイツ人男性が、インターネットの検索サイトで自分の名前を検索結果から削除する権利を勝ち取った。カールスルーエの憲法裁判所は、ヨットで2人を殺害し終身刑となっていた男に有利な判決を下した。男は2002年に釈放され、犯罪歴と名字の関連性をなくしたいと主張。出版社がネット上でアクセスすることが制限されることとなる。
当時カリブ海を石油タンカーで航海中、二名を射殺し1人を重傷を負わせた。この事件に関する本やTVドキュメンタリーが制作されている。1999年、雑誌「デア・シュピーゲル 」(Der Spiegel) が1982から翌年にかけ作られた男のフルネーム入りの3つの記事を同誌ホームページ上にあげた。その記事は今もグーグル検索で簡単に見つかるという。2009年男はその記事に気づき削除を求めた。裁判陳述によると、彼の「権利と人格形成能力を侵害する」として認められたのである。
2012年、最初連邦裁判所は彼のプライバシーは公共の関心や表現の自由に勝るとは言えないとして、棄却したが、憲法裁判所でその決定は覆され、連邦裁判所に戻されることとなった。
出版社はネット上に記事のアーカイブを保存できるが、要請があれば削除しなければならなくなる。「忘れられる権利」問題は賛否ある問題であり、EUとグーグル間で訴訟も起きている。
同日付ドイツ『DW』は「ドイツの最高裁が殺人犯の忘れられる権利を認める」との見出しで以下のように報道している。
ドイツの憲法裁判所が1982年に有罪判決を受けた男がネット上にある自分の名前を削除する権利を認めた。男のフルネームがネット上の大手雑誌のアーカイブに残っている。1982年におきた犯罪に関する記事が、名前検索の上位に来るため削除を求めた男の申し立てが認められたこととなる。
水曜出された声明によると、サーチエンジンが現在の犯罪についてのニュース記事を載せるのは妥当だが、時が経過すれば、加害者を突き止めようとする公共の関心は薄れるものだとの判断が成されたという。
1982年、当事件はドイツで大ニュースとなった。タンカー船がカリブ海を航海中、船上で乗組員のもめごとが起き、男が複数名を殺傷した。当時40代前半だった男は2002年釈放されている。
事件は2004年に本や民放番組(ARD)で取り上げられるほど有名になり、1999年雑誌「デア・シュピーゲル 」(Der Spiegel) が過去に作成した彼の名前を含む記事をホームページ上にあげた。その記事は今もグーグル検索で簡単に見つかるという。
弁護士や報道の自由提唱者は、今回の決定を歓迎。個人弁護士は、特殊な重罪事件のような場合でも、犯人は社会の中で、忘れられ新たなチャンスを得る権利があるとする。
ネット検索エンジンを巡るプライバシーの権利と情報を得る自由とのバランスは、ドイツや欧州でしばしば裁判沙汰となっている。4月には、欧州司法裁判所がEU法の下では、EU圏外の国の要請により、検索結果を削除する必要がないとの判決を下し、グーグルが勝訴。フランスのデータ監視当局CNIL(情報と自由に関する国家委員会)が、ネットサーチ結果から機密情報を削除する事を拒否したことで、グーグルに2016年罰金を科したこともあった。ドイツの憲法裁判所は、EU法は合法だが、この件では、ドイツ国民の憲法上の権利を守る義務があると判断した。
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