ロドリゴ・ドゥテルテ比大統領は、2016年に就任以降、脱米国、親中・ロ政策を打ち出し、しばしば長年の同盟国である米国との軋轢を生じさせている。そしてこの程、米国が同大統領の右腕の上院議員の入国を拒否したことに腹を立て、同政権一丸となって「訪問米軍に関する地位協定(VFA、注1後記)」を破棄すると息巻いている。
1月25日付米
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「フィリピン政府、米国とのVFA破棄と脅し」
フィリピン政府は1月24日、米・比間VFAを破棄することを検討すると発表した。
実は先日、米国政府が、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の右腕として、麻薬犯罪撲滅運動で取り締まりを率先したロナルド・デラ・ロサ元フィリピン国家警察長官で現上院議員の入国を拒否していた。
理由は、フィリピン当局が、ドゥテルテ政権の麻薬撲滅運動の下で繰り広げられた超法規的殺人を糾弾する運動を展開していたライラ・デ・リマ元司法長官で現上院議員(注2後記)を逮捕・拘留したことは、民主主義に反する行いだとして、米議会がこの事件の関係者の米国入国を拒む手続きを取ったものである。...
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1月25日付米
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「フィリピン政府、米国とのVFA破棄と脅し」
フィリピン政府は1月24日、米・比間VFAを破棄することを検討すると発表した。
実は先日、米国政府が、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の右腕として、麻薬犯罪撲滅運動で取り締まりを率先したロナルド・デラ・ロサ元フィリピン国家警察長官で現上院議員の入国を拒否していた。
理由は、フィリピン当局が、ドゥテルテ政権の麻薬撲滅運動の下で繰り広げられた超法規的殺人を糾弾する運動を展開していたライラ・デ・リマ元司法長官で現上院議員(注2後記)を逮捕・拘留したことは、民主主義に反する行いだとして、米議会がこの事件の関係者の米国入国を拒む手続きを取ったものである。
この措置に対して、ドゥテルテ大統領は1月23日夜、米国は“無関係の事態”でフィリピンに難癖をつけているとして、VFA破棄の手続きを取ると宣言した。
これを受けて、テオドロ・ロクシン外相は1月24日朝、VFAフィリピン側議長として、VFA副議長のデルフィン・ロレンザーナ国防相に対して、“VFA終結のための手続き”に着手するよう指示したと表明した。
同外相はまた、国家レベルの条約締結には上院議会の承認が必要だが、終結や破棄するのにその承認が必要だとは考えていないと付言した。
一方、ロレンザーナ国防相も同外相の考えに同調し、米国側の一方的措置に対して、断固たる対応を取るべきだと語った。
なお、フィリピン政府の対応をみて、在フィリピンのスン・キム米国大使は、ドゥテルテ政権側と本件につき討議するべく動き出している。
同日付フィリピン『マニラ・タイムズ』紙:「VFA破棄の手続き開始」
フィリピン大統領府のサルバドル・パネロ報道官は1月24日、フィリピン政府はドゥテルテ大統領の警告に対する米国側回答をこれ以上待つつもりはないと表明した。
同報道官はまた、VFA破棄の手続きを取るとの大統領指示を、即刻ロクシン外相にも伝達したとした上で、間もなく訪米する同外相は、ロレンザーナ国防相とともに、VFA破棄手続きを踏む委員会を立ち上げたとも言及した。
フィリピン政府はここ1ヵ月、米政府によるロサ上院議員の入国拒否決定を撤回するよう強く求めていたが、米国側からは何ら動きはなかった。
米国では昨年、リチャード・ダービン及びパトリック・リーヒー両上院議員が、「国務省、外国事業及び関連プログラム歳出法」の一部改定案を提案し、リマ上院議員を不当に逮捕・拘束するような反民主主義的行為に関わった人間を米国に入国させないようにすることを上院で決議していた。
一方、フィリピン国防省のある高官は匿名を条件に、VFA破棄は南シナ海周辺国に懸念を抱かせ、中国を喜ばせるだけだとコメントした。
そして同高官は、ドゥテルテ大統領はまず、米国で開催される米国・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議について、もし自身に随行するロサ上院議員の入国を認めないなら、ドナルド・トランプ大統領による米国招待は受けない、と米国側に伝え、再考を促すべきだとも付言した。
(注1)VFA:1951年に米・比間で締結された相互防衛協定に基づき、米・ソ連間冷戦における東アジアの砦とするため、フィリピンに米軍が駐留。1989年の冷戦終結を経て、米軍の東アジア政策見直しに伴い、1991年以降駐留米軍の撤退が始まり、1995年以降は米・比合同軍事演習も取りやめられた。しかし、時を同じくして中国による南シナ海進出が如実となり、フィリピンが領有権を主張する南沙諸島(スプラトリー)内のミスチーフ礁が中国によって実効支配された。そこで中国牽制のため、1998年に本協定が新たに締結され、1999年以降米・比合同軍事演習が再開された。
(注2)ライラ・デ・リマ元司法長官・現上院議員:人権活動家弁護士で、アロヨ大統領の時にフィリピン人権委員会委員長(2008~2010年)、アキノ政権下で司法長官(2010~2015年)を歴任。2016年に上院議員に当選。2016年就任のドゥテルテ大統領が推進した麻薬犯罪撲滅運動の下での超法規的殺人を糾弾していたが、2017年2月、同氏が司法長官時代に職権を使って麻薬取引関係者に便宜を図ったとして当局によって逮捕・拘束。欧州議会や国際人権団体等は、でっち上げの不当逮捕とフィリピン政府を非難。
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