米国防総省は4日、比較的爆発力の小さい核弾頭を搭載した潜水艦発射型の長距離ミサイルを新たに配備したと発表した。ロシアによる同様の兵器の試験などを受けての措置と説明しているが、核使用の敷居を下げ、核戦争の危機が高まるとの懸念が広がっている。
『AP通信』や
『AFP通信』などの報道によれば、新たな低出力の核弾頭W76-2は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載されており、ミサイルが配備された潜水艦は、大西洋を巡回する米海軍の原子力潜水艦テネシー(USS Tennessee)だという。
ジョン・ルード国防次官(政策担当)は声明で、W76-2低出力核弾頭の配備は、「ロシアのような潜在的な敵対国が、低出力核兵器の利用により、米国やその同盟国、提携国に対し優位性を持つと考えていることに対応するためのものだ。...
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『AP通信』や
『AFP通信』などの報道によれば、新たな低出力の核弾頭W76-2は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載されており、ミサイルが配備された潜水艦は、大西洋を巡回する米海軍の原子力潜水艦テネシー(USS Tennessee)だという。
ジョン・ルード国防次官(政策担当)は声明で、W76-2低出力核弾頭の配備は、「ロシアのような潜在的な敵対国が、低出力核兵器の利用により、米国やその同盟国、提携国に対し優位性を持つと考えていることに対応するためのものだ。」と説明した。
核問題の専門家などを中心とした非営利団体、米科学者連盟(FAS)のウエブサイトに掲載されたウィリアム・アーキン氏とハンス・クリステンセン氏の説明によると、W76-2の爆発規模は5キロトン程度と見積もられており、既に米国の潜水艦に配備されている核弾頭W88の475キロトンやW76の90キロトンと比較するとかなり小規模となる。米軍が広島に投下した原爆の爆発規模は約15キロトンとされている。
国防総省は、2018年に「核態勢の見直し(NPR)」を公表した。トランプ政権は、これに沿って速やかに新たな兵器を製造し、配備していくこととしているが、爆発力の小さい核兵器を配備していく方針も表明していた。
今回の動きは、米国の防衛態勢や核兵器戦略の重大な変更であり、オバマ前政権時代の核のない世界を追求し、核兵器への依存度を下げる政策を完全に転換することとなる。しかし、ルード国防次官は、新たな核弾頭が「抑止力を強化し、機敏でより存続可能な低出力の戦略的兵器を米国に提供する。」として、核戦争の危険性を低下させると強調した。
一方、専門家や議会民主党の一部の議員らは、核兵器はその大きな爆発規模が使用の抑止力として働いてきたが、新たに配備された低出力核弾頭は、敵に与える打撃が相対的に少ないために、実際に使用される可能性が高くなり、核戦争を抑止するより、その危険性が逆に高まると批判した。また、既存の空中発射式の低出力核兵器とW76-2が重複するとも指摘している。
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