英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」は14日、世界の軍事情勢を分析した年次報告書「ミリタリー・バランス」の2020年版を発表した。これによると、19年の世界の防衛費は、前年比4%増の1兆7300億ドル(約190兆円)となり、過去10年で最高の伸び率を記録した。米中両国の大きな伸びが、全体を押し上げたとしている。
『AFP通信』などの報道によると、IISSのジョン・チップマン所長は、14日から開催された「ミュンヘン安全保障会議」で、世界171カ国の調査に基づく同報告書を公表し、「経済が金融危機の影響から回復し、国防支出は増加しているが、脅威の認識が高まることによっても増大している。」と防衛費の増加傾向について語った。
IISSは、過去10年間で最高の4.0%を記録した世界の防衛費の伸び率について、大国間の競争、新たな軍事技術、ウクライナやリビアなどで続いている紛争などによるものと分析している。...
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『AFP通信』などの報道によると、IISSのジョン・チップマン所長は、14日から開催された「ミュンヘン安全保障会議」で、世界171カ国の調査に基づく同報告書を公表し、「経済が金融危機の影響から回復し、国防支出は増加しているが、脅威の認識が高まることによっても増大している。」と防衛費の増加傾向について語った。
IISSは、過去10年間で最高の4.0%を記録した世界の防衛費の伸び率について、大国間の競争、新たな軍事技術、ウクライナやリビアなどで続いている紛争などによるものと分析している。
IISSは、中国が軍の近代化計画を進めていることに米国が警戒感を強め、防衛費を増加させたと指摘した。2019年の米中両国の防衛費はともに6.6%増加し、米国は6846億ドル(約75兆円)、中国は1811億ドル(約20兆円)となった。米国の前年からの増加分534億ドル(約5兆8600億円)は、英国一国の防衛費全体に匹敵するという。
中国の軍近代化計画についてIISSは、「その規模、スピードや野心の面で著しい」と表現した。同国は昨年10月、撃墜を避けて超高速で飛行し、核弾頭を運ぶよう設計された極超音速滑空ミサイル「DF-17(東風-17)」を軍事パレードで公開し、米国や日韓などのアジアの米同盟国をけん制した。また、ロシアも軍や兵器の近代化計画を推進しており、昨年末に国産の極超音速ミサイルシステムの実戦配備を発表している。
欧州の防衛費は、ロシアをめぐる懸念が続く中で4.2%増加した。但し、これによって世界金融危機により国防予算が大きく削減される前の2008年の水準に戻ったとしている。トランプ米大統領は、ドイツなど欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、米国の防衛力にただ乗りしていると繰り返し非難しており、各国は防衛費の増額に努めてきた。
中国を含むアジア全体の防衛費は、同地域での急激な経済成長を背景に、2010年の2750億ドル(約30兆円)から19年の4230億ドル(約46兆5000億円)へと、過去10年で50%超増加した。
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