フィンランドの独立研究機関CREAは19日、中国では、新型コロナウイルスの流行による経済活動の低迷などが影響し、二酸化炭素(CO2)の排出量が大幅に減少しているとの研究結果を発表した。
『AFP通信』や科学・技術紙などの報道によると、フィンランドの研究機関Centre for Research on Energy and Clean Air(CREA)は本研究で、中国国内のCO2排出量が、過去2週間で少なくとも1億トン減少したとしている。これは世界全体の昨年同期の排出量の約6%に相当し、中国経済を麻痺させている新型コロナウイルスCOVID-19の流行は、気候変動や環境保護の面に限ってはプラスの影響をもたらしたようだ。
本研究は、英国を拠点とし、気象やエネルギー関連の政策に関する情報発信を行うカーボン・ブリーフ(Carbon Brief)のサイトに公表された。CO2排出量の激減の主な原因は、新型コロナウイルスの影響により、石炭や石油の需要が低迷したことである。
過去2週間に、石炭火力発電所での1日当たり発電量は、同期比で4年ぶりの大幅な落ち込みを記録。鉄鋼生産量も同5年ぶりの急減となった。石油についても、中国は世界最大の輸入・消費国であるが、同国の石油精製の中心地である山東省の製油所での生産量は、2015年秋以来の低水準を記録した。国内の航空機需要も前月から60~70%減少した。
中国の経済活動は例年、春節(旧正月)休暇の後に好転していくが、各自治体の当局は今年、殆どの地域で同休暇を1週間ほど延長し、市民に外出を控えさせて、COVID-19の流行を抑えようとした。その結果、企業は長期にわたり事業を停止することとなった。
CREAの報告書は、「コロナウイルス流行の抑制措置により、主要産業分野での生産量が15~40%減少した。これにより例年は春節休暇後の経済活動回復期である過去2週間に、中国のCO2排出量は25%以上減少した。」と説明している。なお、CREAが衛星データで実施した別の研究によると、中国の自動車や発電所による化石燃料の燃焼で排出された二酸化窒素(NO2)の排出量も、春節休暇後の週に前年同期比36%減となったという。
環境活動家らは、CO2排出量の減少については、当然一時的なものであり、排出量が多い分野の生産が再開すれば、それまでの減産分を取り返すために生産量を最大化する動きが起こり、事態は逆戻りすると指摘した。そして、新型ウイルス流行の収束後には、過去の事例から、環境汚染が逆に悪化する揺り戻しの状況が必ず発生すると警告している。
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