米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長(79歳、免疫学者)は6月30日、徹底した感染対策を取らない限り、アメリカの1日の感染者数が10万人を超える可能性があるという見解を示した。そして更に同所長は、かかる懸念があるにも拘らず、米航空会社が押しなべて、ソーシャル・ディスタンシング(注後記)を設けず、満席のままフライトサービスを行うとする姿勢を痛烈に批判した。
7月1日付
『AP通信』:「保健担当トップ、満席でのフライトサービスを行う航空会社に懸念表明」
NIAIDのアンソニー・ファウチ所長は6月30日、米国中で新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題が依然深刻化する中、米航空会社が満席でフライトサービスをしようとしている姿勢を非難した。
同所長は、“どういった過程でそのような結論になったのか問題視している”とした上で、“搭乗客の間でCOVID-19感染が増大することを懸念する”と強調した。...
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7月1日付
『AP通信』:「保健担当トップ、満席でのフライトサービスを行う航空会社に懸念表明」
NIAIDのアンソニー・ファウチ所長は6月30日、米国中で新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題が依然深刻化する中、米航空会社が満席でフライトサービスをしようとしている姿勢を非難した。
同所長は、“どういった過程でそのような結論になったのか問題視している”とした上で、“搭乗客の間でCOVID-19感染が増大することを懸念する”と強調した。
米航空会社の何社かは、感染防止のために各フライトを60~67%で運行すると発表していたが、ユナイテッド航空は一切空席を設ける措置を講じていないし、また、アメリカン航空も先週、7月1日以降真ん中の席を空席とすることを止めると発表している。
米疾病予防管理センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長(68歳、ウィルス学者)も、“航空会社の発表に愕然とした”とした上で、“COVID-19感染が収まっていない状況下、正しい判断だとは思わない”と主張した。
両専門家は、上院公聴会の席上、バーニー・サンダース上院議員(78歳、バーモント州選出民主党員)から出された、感染予防のために人と人との間を6フィート(1.8メートル)空けるとの提言に関わり、今回の航空会社の対応についての質問に答えたものである。
かかる批判に対して、アメリカン航空のロス・ファインスタイン広報担当は、“当社は、感染防止のために、マスク等着用義務、徹底的な消毒作業、また、事前のCOVID-19感染有無の確認等、何重もの措置を講じている”とした上で、“搭乗便が満席となった場合、希望のある乗客には搭乗便の変更も可能とするサービスを提供している”と表明している。
(注)ソーシャル・ディスタンシング:感染症等の感染拡大を防ぐために、物理的に人との距離を保つこと。医学論文で2006年、効果的な薬もワクチンもない感染症の大流行を防ぐための措置として記載された。なお、目下日本で使われているソーシャル・ディスタンスは、人間の心理的な距離を示して使う言葉として1940年代以降、子供の社会性に関する研究などで使われるようになったもの。黒人やエイズウィルス(HIV)感染者への偏見から、社会的・心理的に彼らとの接触を回避する現象を表す言葉として使われたこともあり、ある意味で差別用語と言える。世界保健機関(WHO)は、意味を明確にするため、フィジカル・ディスタンシングに言い換えている。
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