8月15日に第二次大戦(太平洋戦争)終戦から75周年を迎える。安倍晋三首相は、中韓両国を慮って、2013年12月以来靖国神社(注後記)参拝を見送ってきているが、今回の節目の年も、同様に不参拝となる見込みである。更に、依然猛威を振るう新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題より、終戦記念式典の縮小や、戦争責任等に関わる同首相自身の談話も希薄化されるとみられる。
8月12日付
『ロイター通信』:「日本、COVID-19感染問題最中に終戦記念日」
75年前の8月15日、昭和天皇(当時)は4分半のスピーチを行い、“堪え難きに堪え”て降伏することとし、今後は平和への道を辿ると宣言した。
75年経過した現在、中国と韓国との間で戦時における遺産は未解決のままとなっているが、今年の終戦記念日は、COVID-19感染流行問題の最中でもあり、記念式典の縮小等が強いられることになろう。...
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8月12日付
『ロイター通信』:「日本、COVID-19感染問題最中に終戦記念日」
75年前の8月15日、昭和天皇(当時)は4分半のスピーチを行い、“堪え難きに堪え”て降伏することとし、今後は平和への道を辿ると宣言した。
75年経過した現在、中国と韓国との間で戦時における遺産は未解決のままとなっているが、今年の終戦記念日は、COVID-19感染流行問題の最中でもあり、記念式典の縮小等が強いられることになろう。
一方、安倍晋三首相が発してきた同式典に臨むに当たっての談話は、従来の首相より陳謝の気持ちが後退し、平和憲法改定を標榜する等の戦後の国の在り方を変えつつある。
戦争放棄を謳う日本国憲法は、二度と過去のような過ちを犯さないための防波堤の役割を担ってきたが、保守派にとっては屈辱の象徴ともみられてきた。
しかし5年前の70周年時、同首相は“この上ない後悔”の気持ちを表現したものの、過去の戦争の過ちについて若い世代にいつまでも謝罪を言い続けさせることは止めにしたいと発言し、物議を醸した。
スタンフォード大学(1885年設立、カリフォルニア州私立大学)東アジア研究センターのダニエル・スナイダー講師は、“戦争の遺産、歴史上の未解決の問題は依然歴然と残っている”とし、“戦争経験者が全くいなくなってもこれらの問題は残るし、全ての関係国の成り立ちや国民性に内包されているから”だとコメントしている。
現に、多くの韓国人は8月15日を“国家解放記念日”として祝う一方、1910~1945年の間の日韓併合について不快に思っている。
また、中国は、1931~1945年の間の日本の侵略に苦い思いを抱いており、毎年9月3日を“日本に打ち勝った日”として祝っている。
コロンビア大学(1754年設立、ニューヨーク州私立大学)のゲリー・カーティス名誉教授は、“軍事衝突の恐れは世論に非常に強いインパクトを与え続けることから、保守系の指導者たちは近隣諸国に対して、日本は本当に後悔している姿を印象付けるように努めてきた”としながらも、“第二次大戦の暗い影を払い除けるには、恐らく100年はかかろう”と説いている。
なお、日韓関係はここへきてかなり揉めている。
韓国側が依然、徴用工への報酬補償や元従軍慰安婦への賠償問題を日本側に突き付けている。
しかし、前者の問題については、1965年国交正常化に伴う日韓基本条約で解決済みとの日本側主張に対して、韓国大法院(最高裁に相当)が個人賠償の権利は除外されるとの判断を示したことより、全く相容れない状態に陥っている。
また、後者については、2015年に日韓両政府による合意が成立し、日本側からの謝罪並びに元慰安婦支援の基金拠出までなされたにも拘らず、文在寅(ムン・ジェイン)政権は前政権の合意は不十分として同合意を反故にしている。
一方、日中関係は、習近平(シー・チンピン)国家主席の訪日を成就すべく、関係改善に向けて双方の歩み寄りがみられた。
しかし、COVID-19問題のために同主席の訪日が中止になったこと、更に、直近の中国による香港民主派取り締まり強化と、東シナ海の尖閣諸島をめぐる領有権争いに強硬手段を取り始めようとしていることを理由として、与党・自民党内からも同主席の国賓招待の全面中止を求める声が上がっている。
安倍首相は、75周年の節目の年でも、中韓を慮って、靖国神社参拝を取り止める意向のようであるが、中国人民大学(1937年設立、北京在国立大学)の日本研究専門家の黄大輝(ホァン・ダーフイ)氏は、“長い年月が経過したが、戦争によって受けた中国人民の苦しみは未だ全く癒えることはない”とコメントしている。
(注)靖国神社:明治維新の激動の中、国家のために命を落とした志士、軍人の御霊を慰めるため、1869年(明治2年)に明治天皇の命によって建造された神社。坂本龍馬や、吉田松陰といった幕末の志士たちをはじめ、日清戦争、日露戦争、第二次世界大戦といった外国との戦争で亡くなった人々約247万人が祀られている。しかし、東京裁判(極東国際軍事裁判)によってA級戦犯(平和を脅かした罪)とされた28人が、1978年に同神社に合祀されたことから、中国と韓国が、自国を侵略・植民地化した戦争を引き起こした主導者を祀っている神社に、時の首相が公式に参拝することは、「侵略戦争を起こした人物を肯定しようとしている、日本は全然反省していない」等々として抗議の声を上げてきている。
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