米中関係は、香港問題、相互の総領事館閉鎖事態、中国製通信機器排除問題等々で緊張が否応なしに高まっている。そして、火に油を注ぐかのように、米政府閣僚が台湾を電撃訪問したことから、苦々しく思った中国は台湾近海で軍事演習を行う等、態度を硬化させている。そうした中、米海軍空母が中国による台湾への実力行使を牽制するかのように、台湾海域を巡回していることから、中国軍は、本気を見せるべく、同空母搭載戦闘機を撃墜する実戦訓練まで実施している。
8月12日付
『ニューズウィーク』誌:「中国軍、“台湾海域を巡回”する米軍空母を牽制すべく搭載戦闘機撃墜の実戦訓練実施」
中国軍は今週、中国の一部と主張する台湾海域を米軍原子力空母が巡回していることを警戒して、同海域で対空射撃訓練を実施している。
軍部関係メディアの8月10日放送では、中国南東部の広東省(クワントン)沖の台湾海峡で、中国軍が大規模な対空射撃訓練を行っている映像を流している。...
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8月12日付
『ニューズウィーク』誌:「中国軍、“台湾海域を巡回”する米軍空母を牽制すべく搭載戦闘機撃墜の実戦訓練実施」
中国軍は今週、中国の一部と主張する台湾海域を米軍原子力空母が巡回していることを警戒して、同海域で対空射撃訓練を実施している。
軍部関係メディアの8月10日放送では、中国南東部の広東省(クワントン)沖の台湾海峡で、中国軍が大規模な対空射撃訓練を行っている映像を流している。
映像には、中国軍最新鋭の09式自走対空機関砲(35ミリ機関砲2門装備)及び95式自走対空機関砲(25ミリ機関砲4門装備)による射撃訓練が映し出されている。
中国国営メディア『環球時報』は8月12日、台湾独立を煽るような米軍の行動に断固として立ち向かうとの中国軍の意思が表れている、との軍事専門家のコメントを掲載した。
また、同メディアは、北京大学海洋研究院の研究検査機関“南シナ海戦略態勢感知計画”作成の報告書を掲載し、米原子力空母“ロナルド・レーガン”が8月8日以降“台湾海域を巡回”し、次に東シナ海に向かっている、と報じた。
これを裏付けるように、米太平洋軍報道官のジェームス・アダムス大尉が『ニューズウィーク』誌のインタビューに答えて、“インド太平洋海域での平和と安定を維持するために、空母打撃群を派遣している”とした上で、“米海軍の活動は国際法に則った適切なもので、同法が許容する範囲で航行、飛行、及び関係作戦を展開している”と表明した。
一方、中国軍は今週初め、J-10(殲撃十型)及びJ-11(瀋陽十一型)戦闘機を台湾との“正中線”を超えて台湾領空内を飛行させ、台湾側に圧力をかけている。
これは8月10日、米国高官としては最高位となるアレックス・アザー厚生長官が台湾を電撃訪問した上に、中国政府によるCOVID-19対策を大いに問題視する発言をしたことに端を発する。
中国外交部(省に相当)の趙立堅(チャオ・リーチアン)報道官は8月12日、“米中間で確認しているひとつの中国原則は中国の核心利益であり、これに反するトランプ政権の対応に断固抗議する”とした上で、“台湾独立勢力に対して誤ったメッセージを発信するのは即刻止めるべき”だと非難している。
一方、8月13日付『ロイター通信』:「台湾、中国軍の軍事演習強化に対抗するため軍事費増額」
台湾は8月13日、中国軍が台湾海域での実戦演習を行うとの発表がされる中、来年度の国防予算を421億台湾ドル(14億ドル、約1,480億円)増額すると公表した。
この結果、今年の国防予算比+10.2%増の4,534億台湾ドル(約1兆5,940億円)になる。
台湾国防部(省に相当)は、“国防予算を毎年順当に増額していくことで、必要な軍事力及び実践対応力を備えていくことができ、これによって台湾の安全保障及び地域の平和と安定に寄与できる”と表明した。
台湾の国防費増額が公表されてから僅か3時間後、中国人民解放軍東部戦区は、直近数日にわたって、台湾海峡及び台湾北部・南部において攻撃訓練を実施したと発表した。
これについて、中国外交部は、米国のアザー厚生長官による台湾訪問で、台湾海峡地域の平和と安定が脅かされることが懸念されるため、断固たる対応に出る必要があるからだ、と表明している。
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