9月12日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国、COVID-19用ワクチン提供で東南アジア諸国を懐柔」
中国は、武漢(ウーハン)が発症地とされるCOVID-19が世界流行となり、国際社会における信頼度回復に躍起になっていて、COVID-19用ワクチン開発に率先して取り組んでいる。
そして、間もなく同ワクチン開発が完了すると触れ回っていて、更に、南シナ海で領有権問題を抱えるASEAN加盟国にまず提供するとしている。...
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9月12日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国、COVID-19用ワクチン提供で東南アジア諸国を懐柔」
中国は、武漢(ウーハン)が発症地とされるCOVID-19が世界流行となり、国際社会における信頼度回復に躍起になっていて、COVID-19用ワクチン開発に率先して取り組んでいる。
そして、間もなく同ワクチン開発が完了すると触れ回っていて、更に、南シナ海で領有権問題を抱えるASEAN加盟国にまず提供するとしている。
これは、米国が最近になって、南シナ海問題においても対中国強硬戦略を展開していることから、その中国包囲網構築を何とか打ち破ろうとしてのことと考えられる。
この一環で、7月には中国外交部(省に相当)が、まず親中派の大統領がいるフィリピンに対して、当該ワクチンを最初に提供することを約束したと表明した。
そして8月には、中国大手製薬会社シノバック・バイオテック(北京科興生物技術、1999年設立)が、インドネシア国営製薬会社バイオ・ファーマ(1890年設立)に対して毎年2億5千万回分のワクチンを提供する契約に調印したと発表した。
更に9月初め、中国共産党政治中央政治局委員(外交トップ)の楊潔篪(ヤン・チエチー、70歳)氏がミャンマーを訪問した際、同国にもワクチンを率先して提供すると約束した。
米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS、1962年設立)東南アジア研究専門家のグレゴリー・ポリング氏は『VOA』のインタビューに答えて、“ASEAN諸国はどこも、南シナ海領有権問題に関わっていようといまいと、COVID-19問題をどうするかが最優先される”とした上で、“これらの国々は、中国のやり方が気に入らなくとも、また、南シナ海領有権問題で大人しくしたくはないと考えても、もし中国が開発したワクチンしかないとなれば、それを求めざるを得ないだろう”とコメントした。
また、ジョージタウン大学(1789年設立、ワシントンDC近郊の私立大学)国際衛生法専門のローレンス・ゴスティン教授も『VOA』に対して、“中国がワクチン外交を進めようとしていることを大いに懸念している”とし、“本来、人命救助のためとすべきワクチンを、政治的、経済的、かつ軍事戦略上で活用しようとしていることは問題”だと強調している。
実際問題、ASEAN諸国内でのCOVID-19感染は依然深刻である。
フィリピン、インドネシアでは感染者が20万~25万人と(アジア最大のインド、パキスタンに続いて)多い。
また、シンガポールでも6万人近くが感染していて、ミャンマーでは感染者が急増している。
(編注;9月12日午後8時現在データでは、フィリピン感染者25万7,964人・死者4,292人、インドネシア同21万4,746人・同8,650人、シンガポール同5万7,357人・同27人、ミャンマー同2,009人・同14人)
ゴスティン教授は、“COVID-19用ワクチンの価値は計り知れず、間違いなく近代において最も重要な医療薬となろう”とし、“何故なら、数多の人の命と経済を救うことになるから”だともコメントしている。
一方、ワクチン開発で米国と英国も先行しているが、このワクチン提供先については、米国・英国の自国以外、日本、欧州連合(EU)等が真っ先に手を挙げており、アレックス・アザー米厚生長官は、“自国や同盟国向けのワクチン提供が完了した後に他国への提供を検討する”とコメントしている。
従って、CSISのポーリング氏は、“ASEAN諸国は順番を待つしかないため、中国製でもロシア製でも頼らざるを得ない”と付言している。
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