アルメニアとアゼルバイジャンの係争地であるナゴルノ・カラバフ自治州で、27日発生した両国軍の戦闘が激化しており、これまでに少なくとも60人の死者を出している。アルメニアの同盟国であるロシアとアゼルバイジャンの友好国であるトルコの今後の動向に注目が集まっている。
『レゼコー』によると、アゼルバイジャンはトルコの友好国であるため、トルコは27日に、「可能な限りの手段」で友好国を支援する準備が出来ていると述べている。しかし、アルメニアはロシアの伝統的な同盟国であるため、今回の戦闘は、周辺国を巻き込み拡大化する懸念がある。
トルコのエルドアン大統領は28日に、アルメニアに対し、「ナゴルノ・カラバフの占領」を終わらせるよう呼びかけ、アゼルバイジャンに対し、「自分の手で問題を解決する」よう促した。...
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『レゼコー』によると、アゼルバイジャンはトルコの友好国であるため、トルコは27日に、「可能な限りの手段」で友好国を支援する準備が出来ていると述べている。しかし、アルメニアはロシアの伝統的な同盟国であるため、今回の戦闘は、周辺国を巻き込み拡大化する懸念がある。
トルコのエルドアン大統領は28日に、アルメニアに対し、「ナゴルノ・カラバフの占領」を終わらせるよう呼びかけ、アゼルバイジャンに対し、「自分の手で問題を解決する」よう促した。トルコはこの問題でアゼルバイジャンを支援してきており、1993年以来、アルメニアとの国境を閉鎖したままにしている。
アルメニアとアゼルバイジャンの双方に武器を販売しているロシアは、シリア内戦とリビア内戦という2つの軍事紛争でトルコと敵対する立場に立ってきたが、トルコとの対立をエスカレートするのをなんとか防いできた。
NGO「国際危機グループ」の専門家Olesya Vartanyan氏は、「紛争の最前線では、互いに準備の整った陣営が、それぞれ非常に調整された行動をとっていることが目撃されている」ため、今回の衝突は、事前に計画されているかのようだと述べている。そして、主に新型肺炎のパンデミックが理由で、7 月の両国家間の軍事事件以来、国際的な調停が欠如していたことが悔やまれると述べている。
『エルサレムポスト』は、トルコ、イラン、ロシアの3ヵ国が関わってくる可能性があるため、この紛争は、中東に大きな影響を及ぼしてくるだろうと報じている。
ロシアはまだアルメニアとアゼルバイジャンの衝突には関与していないが、ロシアの同盟国であるアルメニアを敗北させることはできない。反面トルコは、シリア北部に侵攻し、イラクを空爆し、イラク北部全域に軍事基地を設置するなど、軍事介入に積極的で、今回もアゼルバイジャンと並んでアルメニアと戦うことを望んでいる。
もしトルコがアルメニアとの衝突に過度に関与するならば、ロシアはトルコと取引を求めるかもしれない。ロシアの目標は、まず西側諸国を追い出すことであり、それがウクライナ、ベラルーシ、そして2008年のグルジアとの戦争での目標だった。
一方、イランは貿易や情報収集などでコーカサス地方に目を向けている。アゼルバイジャンとの新たな鉄道プロジェクトを推し進めているイランだが、真の目標は中国やロシアとの関係の緊密化であり、米国の制裁や米国に対抗するためのより多極化した世界を作るのが狙いだ。
しかしイランは、北部の国境地域での紛争ぼっ発は、自国の利益にはならないため、戦闘の激化は望んでいないと思われる。イランには多くのアゼルバイジャン人が住んでおり、不安定化がどのような影響をもたらすか予測不能なためだ。
なお、『エルサレムポスト』は、ロシアやトルコなどは、防空・軍事システムのテストをしたいと考えているのではないかと報じている。アゼルバイジャンがドローンに多額の投資を行うことを決定したことが、戦闘での勝利に役立つかどうか、注目されている。
ドローンは、死傷者を減らすのに役立つことで知られているが、大きな戦闘に勝つために戦術的に使用されたことがまだない。
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