フランスで16日、「市民と道徳」の教育授業で、表現の自由の例としてイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を授業で見せた公立中学校の教師が、イスラム教過激派の若者に殺害された。フランス政治界や教育関係者らは、国民教育の中で、共和国としての国の理念を脅かすイスラム主義の浸透を許してきてしまったことが問題だとし、共和国の理念の教育を守るための具体的な対策が必要だという声が上がり始めている。
『BFMTV』はこの事件に対し、元国民教育監察総局局長で、「イスラム主義の教育現場への浸透はどのようにして許されたのか」という本を 9月に出版したばかりのジャン=ピエール・オバン氏の見解を報じている。
オバン氏は、2004年に、学校でのイスラム主義の影響についての憂慮すべき報告書を提出していた。しかし、当時報告内容は注目を浴びることなく、政府は本腰を入れて対策を取ることはなかったと説明している。...
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『BFMTV』はこの事件に対し、元国民教育監察総局局長で、「イスラム主義の教育現場への浸透はどのようにして許されたのか」という本を 9月に出版したばかりのジャン=ピエール・オバン氏の見解を報じている。
オバン氏は、2004年に、学校でのイスラム主義の影響についての憂慮すべき報告書を提出していた。しかし、当時報告内容は注目を浴びることなく、政府は本腰を入れて対策を取ることはなかったと説明している。9月、RMCラジオのインタビューに対し「2004年から今日までの間に、状況はさらに悪化し、より広範囲に広がってしまっている 」と述べ、宗教と教育の境界線の欠如について警告していた。
『ルポワン』によると、世俗主義に違反する事件について国民教育省が2019年末に出した報告書では、教育内容に異論を唱える宗教的な声の割合は10~20%だった。しかし、オバン氏が9月に出版した本では、はるかに懸念すべき状況が報告されている。
教師に匿名で回答を求めた際、38%が、学校で本人または同僚が教えている特定の科目が、論争の対象になっていると回答している。そのうちの56%は、移民家庭の多い優先教育地区の学校だった。もっと深刻なのは、37%の教師が、論争が起こることを避けるために、自己検閲をしていると回答していることだ。優先教育地区の小中学校では、53%に上がる。
最も論争が起こりやすい科目は、歴史、地理、体育、生物、そして宗教の歴史であるという。
国民教育プログラム最高審議会の委員長を務めるスアッド・アヤダ氏は、イスラム教の浸透は、祈りの場の要求やラマダンの断食月の時の授業免除などの要求といった学校生活の面だけでなく、フランスの学校が提供している教育内容そのものに対する攻撃があることがより深刻であると訴えている。
今回の殺人事件を受けて、フランス共和党は19日、イスラム主義と戦い、教育現場の教師を支えていくための緊急対策を提案した。共和党代表のアバド氏は、「この事件で、共和国で最も神聖である学校が攻撃を受けた。これは分離主義的な行為ではなく、宣戦布告だ」と「ル・パリジャン」のインタビューで語っている。
緊急対策としては、過激派思想のモスクと祈りのホールの閉鎖、外国人である過激派イスラム教指導者の国外追放。また、教師が、世俗主義に対する攻撃を報告できる、特に教師に対する脅迫や侮辱がある場合には、生徒の親を起訴することを可能にする無料ホットラインの設置などをあげている。さらには、中学の卒業国家試験に共和国の価値についての試験や教師の国家試験にも世俗主義についての試験を導入することを求めている。
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